07.舞台の上で踊りの練習を |
ああ、でも次は"本物"ですから。 「よけてくださいね、一角先輩☆」 ニッコリわらって告げた瞬間、影がぬぅっとふくれあがる。 地面にある影だけでなく周辺の影という影から「ナニカ」がでてきた。 ::: side オレ ::: 「開幕の時間だ。夜宴!」 影から飛び出た「黒いナニカ」が、ざぱぁっと大きな音を立てて一角を狙う。 「おまえは虚かなにかかよ!!!どっかからこの量のわけわからねぇ生き物をだしてきた!!!」 「いやぁ、それ、生き物でさえないです。そこらの水分かき集めて墨にしたものを影に潜ませてみました。以外といけますねぇ。あと墨を動かしているだけなので、ぶっちゃけ飲み込まれたら水死する確率が高いのでお気をつけてください先輩!」 「先輩先輩言うぐらいならもっと敬え!!!」 一角をおそう黒い津波の襲撃。うごうごうごく姿は、彼が言うように、たしかにあれまではまるで生き物のようだ。 なお、これはまだこの墨のウゴウゴ能力は卍解の初期段階である。 その波に対して抜刀した一角は、「やってやらぁ!!!」と声高らかに吠えると、斬魄刀を始解し、第一陣の墨の津波を薙ぎ払う。 「延びろ『鬼灯丸』!」 「水に浮かんだ月が捕まえられないように、水を刃物で切ることはできませんよ先輩」 「んなっ!」 「いやぁ、凍らせられたらおしまいだけど。いや、まてよ。そのまま水に戻してしまえば……無事だったり?」 槍のようになった一角の斬魄刀『鬼灯丸』が全ての水を薙ぎ払うようにふるわれた瞬間、オレの卍解状態の斬魄刀があちらの刃に触れる前に霧散する。 そのままびちゃびちゃと地面に水となってこぼれおち、地面に大きな黒い池を作り出す。 黒い池はすぐに盛り上がると一角に休みを与えず、今度は小さな水玉がとびだして第二波として襲い掛かる。どこの砲丸ですかと自分もびっくりしている。形態変化も可能らしい。 形状変化可能なら、いっそのこと物質そのものも変化すればいいのに。たとえばこのまま墨=炭=炭素=ダイヤモンドみたいな強引方程式の名のもとにこの墨が硬化できれば最高だ。できないけど。 まぁ、今の状態の一角ぐらいなら「液体」状態だけで対応できそうだ。 うねうねうねと黒い液体は一角の足元、頭、心臓、股間、足や手の腱、顎などなど急所を狙うが、見事な身体能力でよけられてしまう。 ちぇ。全部急所を狙ったのに。 さすがは機動力のある体力馬鹿の集まり11番隊の隊員である。 狙う攻撃がすべて交わされてしまう。 「おまっ!おまえぇぇ!!!ヤベェ急所ばっか狙ってくんじゃねぇよ!!!殺す気か!」 「あ。ごめん気付かなかった。いやぁ、魂に染み付いた習慣だねこれ」 「そういえばお前更木出身…」 「あ、たしかにそれも原因の一部だね。生きるための処世術だよ」 「急所を狙うことをふつうは処世術とは言わねぇ!!!」 あっははは。まぁ、いいじゃないか。 前世から死に近い世界にいたので、「やられる前にやれ」が魂にまで染みついていたようだ。つい狙ってしまった。かなりガチで悪気も悪意もなにもなかった。 うーん。では、もうちょっとましな箇所を狙おうか。 たとえば墨の能力をとけば、あら不思議。あっという間に黒かった液体が水に逆戻り。ただし空気中にあった水分も墨に変換した場合、気体には戻らず液体のままなのが難点だ。これは水という「形跡」が必ずのこるから、乾いた大地の上では決定的な証拠となってしまうので隠密などにはあまりむかない前世からの弱点だ。 だが、その弱点はときに、フィールドの属性さえをもかえさせる好期となる。 先程はすぐに津波を墨に戻してしまったので水分はどこにも残らなかったが、今度は違う。 途中で解除したためにバシャリと地面におちた大量の水は、地面を一瞬で足場の悪いぬかるみへと変えた。 すぐに条件が悪くなったのを察知した一角は、とっさに地面を蹴り地上での戦いを捨て空中戦にかえてきた。 槍術の腕がいいのだろう。何回も突き付けられたそれが、まるで頭上から雨のように槍が降ってくるようにみせる。 なら、オレも遠距離モードにしよう。 このまま手をうごかすだけで、墨は自由自在にうごめき、光線のような細い激流となって一角を四方から襲う。 水は細くすると勢いが増すんだよ。 どうだ。ビームもどきの墨の水鉄砲だ! しかしさすがは一角。しばらく槍を回転させたりしつつ墨があたらないようにしていたが、オレが出す物がやはりただの墨であり酸でも毒でも何でもとないとわかるなり一角は突如逃げるのをやめた。 「水鉄砲にあたると先輩は黒く染まりまーす。ぶっちゃけオレの能力なんて正月の罰ゲームぐらいしか役に立たないけどさ」 「なめんじゃねぇ!「裂けろ『鬼灯丸』!」 一角は激しく舌打ちすると、一角の『鬼灯丸』の柄の部分に亀裂が入り、ジャラジャラと鎖がのびて三節棍のような形状になる。 『鬼灯丸』をブンブン振るって扇風機の羽根のようにして風圧だけでオレの墨は吹き飛ばされてしまう。 まぁ、オレの方にふっとんできた黒い液体はオレの正面でとまっているが。 あげくオレが墨を止めている間に、槍の形状だった一角の斬魄刀が柄の部分で分裂し、鎖がのび距離を一気にのばしオレを直接狙ってくる。 だが、オレの手前で空中にとめていた大量の液状の墨にそれはツッコミ、水の塊の中に突っ込んだ一角の攻撃は威力を弱めてしまう。 だが。一角よ、残念だったな。はい、オレも斬魄刀さんも無傷です。 「くそがっ!」 「先輩物理、オレ液体。相性最悪なのはわかりきったことじゃぁないですか」 かつ。 「安心安全無害の墨はただいま無限製造中です(テヘ☆)」 砂漠地帯でない限り、水分って世界中のどこにでもあるので。 ぶっちゃけ水分なければ、前世のように敵の人体から水分を墨に錬成してもいいわけですし。 なにせ死者の世界といっても、この世界の住人、普通に傷を負えば血が流れます。普通に肉体破損します。普通に酸素ないともがき苦しみます。 つまり人体構造は、生者と同じということ。 ホロウでさえ色は違っても血はながれるので。 水分を自分の力に還元するこの斬魄刀では、生き物が生きていける世界である限り、オレの有利でしかない。 始解の段階でも十分やれる気がしてきた。 始解だと、『触れている箇所しか水に変換できない』が、逆に言うなら、その状態でオレが敵の肌にでもこの斬魄刀を押し付ければ、相手の水分は全部手の内ということだる? やだ、オレってば無敵になったのかしら。 もう笑うしかない。 ほら、しかも今回は卍解中だ。始解のときよりやれることは多いわけで。 まだまだ無限に墨が出ますとばかりに、プカプカ浮かぶ墨に墨をたす。 墨の球体はかなりでかくなった。 それをいじくっていれば、「はぁ〜」とばかりにバカでかい溜息が聞こえてきた。 そちらをみれば状況の不利をそれを理解したらしい一角先輩が、ふいに怒りを収め、肩から力をぬいた。 そのまま呆れたように再度溜息をつき、斬魄刀を槍状にもどすと『鬼灯丸』で肩をトントンたたいている。 肩凝ったのかい? 「おい。卑怯すぎないかお前の能力」 「まぁ、オレも改めて自分の能力が意外とやばいことを理解したところです。先輩は自分の弱点が分かってよかったじゃないですかぁ」 「あ゛?弱点だと?」 「だって先輩の能力、全体的に物理じゃないっすか。オレみたいな液体や気体相手にどう戦えばこれで慣れますよ」 「あーなるほど。なら、俺も本気を出していいってことだよな」 「かまいませんよ。オレがきっちり相手をさせていただきます」 こうみえても魂だけで言うなら君たちの倍の戦闘経験はある。 しかもオレの斬魄刀はまだ本気を出してない。 そんな事実を教える気もないが。 そもそもオレの斬魄刀の能力が、墨を出して操ることだけだと思っていたら、それは間違いだ。 たぶんいがいと頭のきれる一角のことだから、それにはもう気付いているだろうとは思う。 それにきちんと「言葉には気を付けて」と、事前に言ってある。 なのにオレの言葉をうのみにしたのならば、愚の骨頂というやつだ。 世の中、おきれいごとばかりで回ることはない。すべての真実をペロリと語る者はいないだろう。ましてやそれが、今から戦う者であるならば、相手に自分の弱点を暴露はしないものだ。 あとあとを考えて、ある程度能力は隠しておくのも重要だと思う。これぞ奥の手というやつだ。 「先輩もガツン!とやちゃっていいですよ。オレも一角先輩も"慣れ"が必要だろうし」 「ほう。じゃぁ今度は俺の番だなぁ!!」 にぃ!!!っとばかりに一角が凶悪に笑うなり、ビリビリと空機が揺れる。 おっと。これはさすがに結界を貼ってないとヤバイパターンでは?殺気モレモレすぎて、他の死神さんにばれそうじゃね? そうなると後々が面倒なんだよなぁ。 うむー。できるかわからんが、しょうがない。"くっちまう"か。 よし。この空間を隔離しよう。 当然、墨だけのオレの能力は、空間を隔離するような力はない。だが、オレの斬魄刀の力が"前世と同じ"ままであるならば、できないこともないだろう。 「っと、おもうんだが可能か?夜宴」 問いかければ「まぁ、耐久度は保証しないが」と回答があった。 ならば、よし。 一角が気合を込めて卍解の準備をしている間に、墨を無限製造していたオレの斬魄刀を呼び戻す。 それと同時に墨に変えられたいた水分が、ただの水に戻りあちこちでパシャンパシャンと水がはじける音がする。 オレの足元にあった影だけが音もなくスッとのびあがり細く長く姿を変えていく。 墨と言う黒い液体が巻き付き何かわからないそれは自分の目の前までふわりと浮かぶと、パァーと墨が流れ落ち「形」があらわれる。 これがオレの斬魄刀の真の姿。 ーー夜宴御伽語/ヤエンオトギガタリ。 今はオレの手の中で巨大な筆の形をしているこの状態こそが本領発揮である。 大筆を手にした瞬間、オレは悟った。 これ、墨で絵を描けるパターンだな。と。 オレの墨の新しい形態を見て内心「ほぉほぉ」と興味津々である。なにぶん、オレも始解はともかく卍解までしたのは初めてなもので。 「まぁ、お手軽にドームでいいか」 こいつを。夜宴御伽語をただ墨を扱う能力だと思うなよ。 前世の力は"そっち"じゃねぇ。 オレの能力は、絵に"能力を付与する"力だ。 ああ、まだオレの能力は健在のようだ。 筆をとればわかる。 オレは筆から勝手にあふれ出る墨をみつつ、"力"をこめてオレと一角をかこうように宙に半円を描く。 するとそれはキラキラ輝き、一瞬にして墨ではなく、透明なドームとなりオレたちをおおう。 「空中戦はある程度制限されますが、この範囲であれば先輩の力ももれないとおもいますよ」 オマケにニッコリ笑顔をつけてやれば、一角先輩の顔が物凄い引きつった。 ああ、いまのでわかりましたよね。 オレの能力が、"墨をだすだけ"でないのが。 そういう察しのいいところ、大好きですよ。 「ではーー"死合”と、いきましょうか?」 頑張って生き抜いてください一角先輩。死なない程度には手加減いたしますので。 一角の悲鳴がしばらく響いていたが、まぁ外には漏れてはいないので気にしない♪ * * * * * あの日、団子屋で捕獲した獲物、もとい一角先輩は、とてもよき修練相手となってくれた。 かわいいよね、ああいう察しがよくて努力家の子って。前前世のうちの息子と気が合いそう。あ、ハゲだからか?息子のお友達にハンゾーって言うハゲがいたけど。そのせいでハゲに親近感を持ってるのかも?あの子、凄い努力家だったから、そのせいでハゲは努力家っておもっちゃってるのかも。まぁいいか。 事実、ハゲの子って、なんか努力家の子が多い気がするし(偏見)。 メガネはダメだね。イイコか腹黒どっちかしかいない(偏見)。 さて。とてもお買い得品だった一角先輩だが、彼もそこそこ卍解になれたし、いろんな能力者相手でもある程度は張り合えるだけのものを習得したと思う。 オレも調子にのって、雷や氷や炎や眠り粉やらいろいろ能力を付与して遊んでみたので、十分能力の検討は楽しめた。へたすると、一角先輩に毒耐性ついたかも?まぁ、いっか。スパルタ?いやだなぁ。どこまでできるか試したかっただけだって。 ああ、そういえば。先輩の斬魄刀何度か壊れたなぁ。あれはとてもおもしろい斬魄刀だった。 でも、ほら、治癒の効果もあの結界に追加したから、あとあとからは怪我もなくかなりイイ感じで練習できたはずだ。 なお、別れ際に、「天下だけは取ろうとするなよ」と青い顔をして言われた。 いや、天下とかいらねぇし。メガネのメガネをぶっ壊せれば、なんかたぶんそれだけですっきりしそうだから。 だって、オレこの隊に入っていっぱい書類仕事やっているうちにすごい字は上達したんだよ。なのにあのメガネ、いまだにオレの書道教室入門を拒否しやがる。もう少しきれいな字を書けるようになりたいのに。教えてくれる手本がいなきゃ上達しないじゃん。 だからいつかあのメガネを黒く塗りつぶすのが夢だ。 書道教室への道はなぜか遠そうだが、卍解の訓練を始めてからいいことがあった。 卍解の特訓をふたりで始めてから、あの一角が!一角先輩がたまに書類仕事も手ってくれるようになったのです!それも自分の分以外のことも! もう、それだけでオレは涙が止まらなくなったよね。 「け、けんちゃん!っちゃんがないてるぅ!ないてるよ!どうしよう!!」 「・・・そこまでか」 書類を手伝ってくれる威嚇を見て号泣しているところをみられ、やちる副隊長をあわてさせ、剣八隊長に遠い目をさせた。 オレはわるくない。 悪いのは戦闘狂バカの他の隊員たちですぅ〜!!! え?他のやつら? 相変わらず下っ端に書類を押し付けてくるけど?最近そいつらの隊服の上に水をぶちまけてやってますががなにか? あと補充が面倒なので、常に卍解状態で筆の形の斬魄刀の大きさを刀サイズでなく、掌文房具サイズにして使っているので、墨切れがなくてとても便利です。一角が隊の墨の減りが少ないのに違和感を持って“オレが何をしているのか”気付いた。理解したあげく、真っ青な顔をメチャクソ引きつらせてこちらの手元を見てきたが、知ったことではない。 ふと思ったんだけど。この書類って上層部にも届けたりするよね。オレの墨になにも能力を付与されていないことを祈って、大人しく仕事してくださいね上層部の皆さん。って、思っていたりしないわけではない。なにかあったら、オレの書きまくった書類が君らの「敵」になるとだけ。 「時限爆弾かよ」 「いやぁ〜それほど怯えないでくださいよ。ただの墨ですよ。ただの(笑)」 その笑顔がこえぇよと一角先輩に言われた。なんでさ?能力付与してない墨はただの墨だよ。いつでも好きな時に動かせたりはするけど。 「上がちゃんと仕事していれば何も起きませんよ。ええ、なにも」 「上、なぁ〜」 「グチグチグチグチ口だけしか動かさない害悪の無能は、上司には不要ですから」 「・・・お前、この尸魂界(ソウル・ソサエティ)のどこまで掌握してんだよ?」 「さぁ?卯ノ花さんこわいなぁ〜とか。砕蜂さんいまどこにいるなぁ〜とかぐらいならわかりますね。あと、メガネがどっかで可愛い誰かを洗脳しようとしたり、裏でこそこそ虚となにかやらかそうとしてるとか。その辺は目にした瞬間に、飲み込んでます」 悪い眼鏡の支配下になった子は、メガネがいなくなったあとに墨で丸呑みして、洗脳を解いてポイします。 なにせ影という影に、偵察能力付きの墨を配置させているので、あらかたの動きはバッチシですよ! と、小声で答えてやると、物凄いげんなりした顔をした一角先輩が一度息を止めたあとに「だっはぁ〜〜〜」みたいな壮絶な溜息をつかれた。 なぜだ。とても便利ぞ。自分の穏便な暮らしを守るためにはちょうどいいじゃないか。 騒がしいやつとか、書類を押し付けようとする奴から逃げるのに凄い便利だし。書類仕事をさぼったやつの追跡とか凄い楽。 あとこの世界、せまい。 前世は海が広大すぎて能力に制限があったが、この世界だと結構使える。なので尸魂界(ソウル・ソサエティ)のほぼ全土にマーキングしもいける。ぶっちゃけよそ様の生活環境は興味ないので、下町や住宅地や屋敷の中にはそういうマーカーはしてない。 ハッハッハ!やばい侵入者を恐れて瀞霊廷の周りをぐるっと門を建てたのが仇になったな! 瀞霊廷ならすでに丸っとオレの包囲網のなかである。 「すでに瀞霊廷の中に世界の敵がいる」 一角が鼻水たらしながら遠い目をしていた。 やだな。そんなすごい世界の敵がいたら、オレが殺しますよ?ええ、それは躊躇なく。 っと、だいたいこんな感じで、一角先輩とはよく面白い会話をする。 お互い『卍解』できることを隠す間柄。(※隊長になりたくて卍解を習得したわけではないので)。つまるところ、ふたりともに同じ穴の狢。共犯である。 あれから何度も秘密裏に手合せを重ね、『卍解』もある程度使いこなせるようになってきた。 あちらも己の弱点に気付けたと言っていたし、切磋琢磨するには相性は最悪ゆえに功を奏したといっていい。 「雷は別の鉄に誘導して地面に流して防ぐ」「炎なら届く前に風を作って直撃を食らわないようにする」「水分が相手なら燃やして蒸発させちまえばいい!」「鉄が相手なら鬼灯丸で力ごり押しだぁ!」 とか、凄い発想だよね。 そういう思考が柔軟なとこが、槍の斬魄刀が三節棍に変化したりする理由だろうね。 なにせ、この世界の住人は、ちょこっと頭が固い。 自分能力が一つだと思い込む・・・というような。 元が刀であるせいか、「目で見える形」にとらわれすぎてるところがあるようなのだ。 たぶん斬魄刀の解放という自分の能力を把握したことで、それで「理解したつもり」になって自己完結してしまうのだろう。 その能力を「どう生かすか」こそが本領発揮だと思うのだ。 オレだって最初は、「墨を作って操るだけの能力」だと思ったけど、それだけでもベテラン死神の一角をある程度までは追い詰められたのだ。 ようは、「ものは使いよう」というあれだろう。 一角を見習ってほしい。一角の斬魄刀は、三節棍タイプの槍だが「突く」「縛る」「きる」しかできないと思ってはダメだ。槍状態でさえその飾りを使ったりしてふり幅は半端ないし、鎖の部分を振り回してあいつ風を生み出してるからな。もはや飛び道具。 ここまで一角も強くなっただ。この状況なら、原作軸に突入しても地上の旅禍(りょか)ごときにオレも一角も殺されずに済みそうだ。 それぐらいまでオレたちはレベルを上げたつもりだ。 なお、最近オレの力が上がったからか、やっかいなものが聞こえるようになった。 そのせいで“とあるひとの斬魄刀の声"が聞こえるようになってしまい、ちょっとうんざりしている。 夜宴、可能なら、そういうよそ様とのリンクはきってくれ。あれ完全に他人だぜ。 《こえを・・きいて・・・なまえを・・よんで》 「え、やだ」 《……え?》 「オレじゃなくご本人に聞こえるように呼び掛けてください」 《だれ?!》 「あ、通りすがりの貴方の相棒の部下その1です。お気になさらず、ではっ!」 《!?》 |