死んで死後の世界にたどりつき
- B LEACH -



06.その言の葉は物を語りうみだす





きをつけて。“水”を使うものは皆言葉巧みだ。

水は変幻自在。
目に見えない空気の中にも水は存在する。
同時にすべての生物にも植物の中にも。

気が付かないうちに体の中に入っているかもしれない。


そうそう、オレの"墨"も結局のところ水分には違いない。
では、問おう。

オレの出した水はどこへいったか(笑)

答えはーーーー





 ::: side オレ :::





一角先輩を引きずって、オレが卍解できることを伝えれば、案の定先輩は驚いた表をしてみせる。いやぁ、何て愉快な顔だ。

まぁ、そりゃぁそうだな。

死神が持つ斬魄刀は所持者が解号(特定のキーワードと斬魄刀の名/例:朽木白夜なら「散れ千本桜」など・・・)を唱えることで二段階の能力解放が可能であり、一段階目の解放が「始解」、二段階目の解放が「卍解」と呼ばれる。
死神一人一人が持つ斬魄刀は全て名前が違い、その名を呼ぶことで第一段階の解放である「始解」が完了する。
これは、席官クラスの死神のほとんどが習得している基本の形である。当然オレもできる。
だが『卍解』は違う。
斬魄刀戦術の最終奥義で、「卍解」に至った死神は一人残らずその名を歴史に刻む、と言われているほど凄いものであるためだ。
卍解に至るのは才能のある者でも10年以上の鍛錬が必要とされ、斬魄刀本体の具象化と屈服が必要となる。これは隊長になるために必要なの習得条件でもある。

…卍解が隊長になる必須条件なのに、卍解はすごい技だからできたら歴史に名前を残せる?なんか若干違和感を覚えるというか、いろいろ矛盾しているような気もするが、まぁそういう世界設定なのだからしょうがない。そこはスルーで。

とにかく!卍解とは隊長レベルしかできない凄いものだと覚えてくれればいい。
それを席はあるものの一回の下っ端なオレができるようになってしまったのがおかしいのだ。
夢の中での黒羊への勝利は、この「斬魄刀本体の具象化と屈服」だったわけだ。

なお、我らが11番隊の更木隊長だけが、「斬魄刀本体の具象化と屈服」がというか斬魄刀とうまく対話ができていないのに力だけでごり押しで隊長になったというつわものである。
あと、一角は、ただの努力の子ゆえの『卍解』である。


「ま、そんなわけでオレの修行相手になってくださいね先輩☆」
「はぁ!?つか、どんなわけだよ!おい!!」

どんなって、夢見が悪かったなぁーとおもって夢の中の黒い羊と戦って勝ったから、新たな能力を手に入れたって…経緯は今話した通りなんだが。

凶悪な夢をみた日。
それが原作に入ることを危惧するうちの斬魄刀によるものだと知った日。
そしてやっこさんから名前を聞きだしたときのこと。
能力は、想像の範囲内といったところだろうか。


オレの斬魄刀の正式な名は「夜宴御伽語/ヤエンオトギガタリ」という。
略して「夜宴」だ。

名の通り夜のような物語をつむぐ。
簡単に説明すると――ここでいう
《夜》とは、「墨」のこと。
《宴》とはオレの能力を見て楽しんでくれた人たち、そしてオレの能力で具現化した者たちも丸めて含めて示す。つまりこれは「能力の使用時」をさす。
《御伽語》とは読んで字のごとく「物語を語る者」。

そう。それらの意味から察するに、オレの能力は前世と同じ。

前世の能力は、水分から無尽蔵に墨を作り出すこと。
そしてその墨で描いた絵は具現化する。
なお、具現化するのはオマケだった。

先程の「語り部」という意味にくわえ、《御伽語》に関してはもう一つ意味がある。
絵とはひとつの物語だ。
ゆえに「御伽話」=「御伽」。
「語」はまさに「語り部」を示す。
それは物語の語り部であったり、「かたられた物語たち」=「具現化した絵」をもさす。

ネーミングセンスそのままの能力だ。

その名を精神世界で聞いたとき、やっぱりなというのが第一の感想だ。
オレの能力は墨。それは前世の世界で赤毛としてはじめて生まれた時に授かった能力だったからだ。
さすがに死んだくらいでは、魂という根本など変わらないだろう。
案の定、名を継げてきた斬魄刀の能力は、墨を操ることだったというわけだ。


さてここで前世の能力を紹介しようか。
名称は若干違えど、生前は空気中の水分を墨に変換することができた。
その墨で描いた絵は、実態化したがそれがオレの本当の能力ではない。
オレの能力は書いた絵に“能力を与える”ことだ。
実体化はいわば“それ”のオマケにすぎない。

一度転生をへて、こうして死後に死神となるべく魂魄だけで生きている今は、その能力にも差異がうまれているだろう。
第一にこの世界では刀を媒体として能力を発動するから当然と言えば当然だ。

だが、わからないなら知るだけだ。

「前世とどう違うのか、ためさせてもらおうか」

目の前で斬魄刀をかまえる一角に、口端が持ち上がる。

鞘から抜いたオレの刀の刃先からポタリと黒い水滴が一滴こぼれる。これがオレの斬魄刀の力。ただし『始解』の段階では〜という条件付きである。

始解では、刀身が触れている水分だけが液状の墨となる。
まぁ、水分さえあれば無尽蔵に出せるのは相変わらずだ。いちおうこの段階でも自分が出した墨ぐらいは操れる。
相手の目つぶしが限界である。

だが、その上の能力解放『卍解』になるとどうなるか。想像もできないが、前世同様に描いた絵が具現化するかもしれない。


さぁ、その真実の姿とやらを見せろよ、相棒。

君が描くは夢現の百のおとぎ話。
オレが描くそれは君の生み出す現実となる。



「世界よ哂え、夜の舞台で踊り狂え――夜宴御伽語!卍解っ!!」



一角を練習台に、最近本人から聞いたばかりの『本当の名』を詠み、刀を目覚めさせる。

卍解をしたら、あら不思議。
刃がじわりと黒く染まっていくではないか。
しかも刀の刀身がすべて黒く染まった瞬間、パキーンと柄も残さず砕けた。
黒い破片はガラスのように粉々になり、これは白夜の千本桜のような見事な散り方だな。とか思っていたらーー

そのまま消えてしまった。


「え?」
「は?」


あれ?消え・・・た。
え。オレの斬魄刀なくなっちゃったんだが。

白夜の技は綺麗に花びらが舞っているようだったが、消えたままだぞオレの刀!
せめて水とか花びらは出ないのかね!?誰かのように氷の龍でもでてくれよ!
つまるところ白夜と似たような現象が最初に起きたとはいえ、まったくあれとは違うのだと理解する。

これは花びらや吹雪のように"現象を起こすもの"ではない。
オレの斬魄刀は、卍解することで"現象を解除する"ものだ。

空気に溶けはしたが、斬魄刀の感覚、手ごたえはある。
驚いている一角には悪いが、そこまで周囲を警戒しないでも平気だと思う。
本当に能力として解除されているだけなので。

つまり刀身が墨→炭へとなり→くだけ→液体になり→水になった。という流れである。

だが、しかし。
これで終わらない。感覚を伸ばし、斬魄刀の声に耳を傾ければ、案の定、これは前座にすぎないようだ。
想定した通り、やはりオレの卍解は、この後が重要のようだ。
斬魄刀を再構築すると、これは黒い筆となるらしい。その筆の状態で書いた文字や絵は具現化するそうだ。まんま前世と同じ能力だな。

「あー大丈夫だよ一角先輩。オレの斬魄刀が剣になるようなことはないから」

ただの墨なんだよね〜。いや、まじで。
とはいえ、墨をだす状態は『始解』の状態でも同じだ。隊員の誰にも見せたことないけど。

そしていま、斬魄刀は砕け散って消えたまま。これを再構築して絵をかかないと真の能力は発動しない。

だが、そこまで教えてやる気はないので、少し全力の『墨操作』能力を試させてもらうとしよう。
今までは「ふれていた水分」しか変えられなかったが、さて今回はいかほどまでの範囲が可能か。

つまり真の能力を発揮しない段階だと、根本的なオレの能力ってやっぱりショボイ。

せめて毒ぐらいに変化しろよとは思うが墨は墨だ。
そして墨は水分で、水だ。

「卍解したことでどうやら空気中の水分を元に無尽蔵に墨がつくれるようなっただけみたいです。現在うみだしてないので、なにもない=本当にオレの斬魄刀は水になって消えちゃったみたいです」

真の形態(黒い負腕に再構築するらしい)をしらないと、しょぼいよなやっぱり。いや、筆に姿を変える斬魄刀もかなりダサいというかしょぼくみえるような気もするが。そこはそれ。

ひとまず、無尽蔵に墨が作れます。って、墨や筆の文化のこの世界にシャーペンやボールペンはないから便利っちゃ便利だけどさ。
ここ戦闘武装国家ソウルソサエティーよ。力と刀がすべてを決める死後の国よ。
墨作れるだけってどうしろと?
え?書類仕事に役立つ?いやだそんな能力。
書類は誰かに押し付けるものだろう?え。オレに押し付ける?馬鹿言うんじゃねぇよガキどもが。倍にしていつか返してやるからな。
まぁ、一角先輩は許す。このひと、ある程度は自分の書類もきちんとやるから。書類作成でわからない分だけ聞いてくるとか「何だいい人か」って認識したものだ。ただし、事件と喧嘩というとすぐ飛び出しちゃうからそれは困ったものだけど。

「おいおいよ。本当に墨だけなのか?」
「そのようです」
「まじかよ」
「ええ。残念ながらマジですが、これけっこう便利ですよね。書類処理とかわざわざ墨をすらなくて済みますよ。だが、しかし!オレは書類仕事をもうしたくない!!!」

「いや。あー・・・その、なんだ。なんというかお前らしい能力だな」
「・・・ですね。もう一度言いますが、オレは書類仕事をしたくないぃーーー!書類は自分でやれよ!あの更木隊長や副隊長だって自分の仕事は自分でしてるのにぃ!!!」
「・・・いや、なんかすまん」

どれだけ叫んでもオレが戦えなくなるわけはなく、書類はやっぱり消えないのだろう。


さて、現状姿もなにもなく散ったままのオレの斬魄刀であるが。
そもそも墨ってのは水分である。

つまり霧状にすることも固形化もできるわけで――


「剣はでませんが液体で窒息死とかなら」


「あ゛?」
「いや、なんかきえちゃった斬魄刀、水になってるだけみたいで。ちなみにそこから水を墨にできるんですけど・・・オレの斬魄刀が散った範囲の水分どうもオレの手の内らしく。のぞむだけこれで無尽蔵に墨を生み出せそうです。あと墨あやつれそうなので、液体の状態なら敵を何とか殺せそうだなぁと」
「や、やめろ!!えげつないなお前・・・」
「いえいえ。誉めても何も出ませんよ。あ、墨ならだせますが」
「誉めてもいねぇし、墨なんざいらねぇよ。どうしろと?つか、それはもはや死神より文房具屋に就職すべきじゃねぇ、お前のそれ?」
「え。戦うために死神になったので、文房具屋で利益求める戦争に参加するより、実力行使でなんとか敵をぶったぎりたい。うさばらしにこの手で敵をひねりつぶしたい。メガネとか」
「そういえばお前更木出身だったか。ああ、そんなだからお前11番隊なんだな・・・・・・・・・・・・・最後なんて言った?」
「さぁ?(ニコニコ)」

何かを聞き取ったらしい一角がめっちゃ顔引きつらせてたけど、何も聞こえなかったよ。
胡散臭いメガネは滅びろとか言ってない言ってない。

さて、概要はわかったところで、引き続き実験をつづけるとしようか。

「感覚があるんですよ」
「は?」
「斬魄刀のです。早く形をさだめろと訴える相棒(斬魄刀)の声が聞こえます」

まぁ、再構築したらでっかい筆になるらしいので、まだださないけど。

墨は筆で絵をかくもの。
そしてオレの斬魄刀の真の姿は、巨大な黒い筆だそうで。
かいたものがまた具現化するんじゃないか?前世では書いた絵に能力を与えられたが、今世は具現化するだけかも。
やっぱショボイ。


さて、悲しい未来はおいておいて。
まずは空気中に散ってる状態の斬魄刀をもとに水を墨へ変えようか。そうしたらその墨を操れるだろうから。
掌を前にだし、水をかき集めようと意識を集中しーー

ふむ。これは・・・

いぶかしげな一角が「どうした?」と覗き込んでくるが、掌どころか見える場所に斬魄刀も墨もない。
やべぇ。なにこれ、楽しい。

「あ、自分の意志で好きな場所に墨を集めることができそうですよこれ」
「あ、ああ。それで、斬魄刀は」


さて、問題です。


「足元には一角先輩の影があります。その影、本当に"あなたの影"でしょうか?」

クスクスと笑って、足元を指さす。
余裕を崩さないのも強さの秘訣。駆け引きにはよく回る口が重要。あと奥の手は最期まで見せないのも戦略の一つ。

「あ゛?だってお前の方にも影はあるだろ」
「本当にそうだと思いますか?実はオレの墨が化けていて、あなたの息の根を狙ってるとか」
「お前の能力よりその言葉の誘導の方が怖いわっ!!」

ちぇ、なぁ〜んだ。誘導ってばれてたか。
でもまぁ、あながちまちがいではないのだけど。

「好きなんですよ言葉遊び」



ああーーでも次は"本物"ですから。





「よけてくださいね、一角先輩☆」





瞬間、影がぬぅっとふくれあがり、地面にある影だけでなく周辺の影という影から「ナニカ」がでてきた。








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