死んで死後の世界にたどりつき
- B LEACH -



03.原作が近いという、前兆なんだとさ





 -- side オレ --





『ひさしぶりメェ』
「だれ?」
『ああ。これだから空気の読めないボケをかます奴は死ねばいいメェ』
「あ、いや・・・なんというか随分久しぶりな辛らつな言葉の数々で・・・・・思わずありきたりなボケをかましてみたんだが」
『だれがおまえなんかにつっこむかメェ。だからマスタァは嫌いだメェ。
そしてマスタァはいつものように勝手に事件やらなにゃらに巻き込まれて、勝手に死ねメェ』
「あ、相変わらず辛らつだなぁ〜《夜宴》ってば・・・・・・おまえなんかオレの“能力”のくせに」
『その最後のつぶやきは宣戦布告ととるメェ。マスタァの死亡推定時刻のカウントダウンを開始。30、29、5、4、3、』
「一桁以上吹っ飛んでるから!!」
『1、0。さぁ、死ねメェ!』
「優しいツッコミがほしい!!」

めぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!





「ぐはっ!!」

 ガバリと布団が吹っ飛ぶ勢いで上半身を起こす。
強烈な蹴りが腹にきたと同時に、物凄い圧迫感を覚えて、いっきに“目が覚めた”。

 夢を見た。
黒い羊の人形のような生命体が、物凄い口汚い言葉の数々で持ってオレをののしる――そんな夢。

「お、おはよう。ずいぶんうなされてたけど大丈夫か?」

 目を開いたとたん目に入ったのは、ようやく見慣れるようになった十番隊の宿舎の天井で、先程のショックが現実世界にも影響しているのか、蹴られた腹部の消えない痛みに思いっきり肺から息を吐き出してむせこんだ。

 起きて早々ゲホゲホと咳き込んで腹を押さえるオレに、同室の隊員が何事かと目を見開く。

「・・・げほっ・・・・・。あ、ああ。な、なんとか」

 思わず見た夢を思い出し意識が飛びかける。
 プリティーなそ人形そのものの羊の外見からは想像もつかないほど、可愛らしさとはかけ離れた口の悪さに―― 見たはずの夢の、羊の悪態以外の内容がまったく思い出せない。
ふつうなら、奴の辛らつすぎる言葉の数々以外にも夢の情景やら事細かに語るべきなのだろうが、 あの羊の蹴りによる痛みのせいでなにもかも、もう頭からきれいさっぱり消えている。
つまるところ。
それだけ“奴”の存在は強烈だったとだけ告げておこう。



 たぶんあの夢は、夢ではなくぞくにいうオレの精神世界に違いない。
黒い羊こと“夜宴”の会話から察するに、あれこそがオレの斬魄刀なのだろう。
オレの人生を支えてきた勘が、それが真実であると告げるように、その言葉はオレの心にストンと落ちていく。
 なぜならオレは、あの外見だけ可愛い凶悪羊に、この世界で一度会ったことがあるのだ。
あの黒い一羊は、“前世でのオレの能力”だったソレと瓜二つの姿である。
この世界、それも前世の能力もなくなったオレの前に現れた。それが重要なのだ。
 オレの生前の能力は、墨で書いたものを具現化するという能力だった。
もっぱら話し相手にあのぬいぐるみのような黒い羊をいつも側に出していた。
 それが死という一つの区切りを境に世界を超え、“能力”が《斬魄刀》へと姿を変えた。
だから夜宴の姿で斬魄刀が夢で語りかけてきたときは、一発で始解に通じるその名を当てることができたほど。
まぁ、若干“斬魄刀そのもの”というには、その名前は若干語弊があるような気もしたが、それが今につながるとは思いもよらなかった。
遠征して喧嘩ばかりするに嫌になって死神になって、隊に配属され――ルキアがどうのと不穏な噂が飛び交うようになってきたころ。
夢にまた黒い羊が姿を見せるようになった。
《夜宴》はやたらと名前を尋ねてきたから、以前始解のとききいた《夜宴》という名を呼び返す。しかしそれは違うのだと蹴られる。
だから間違いなくあいつがオレの『斬魄刀』なのだろうと今なら頷ける。

名は死神には大切な意味を持つ。
だから、呼んでやってるのに、違うとぬかす。そして蹴られる。

はて。なんでこんな自虐的なコントを毎夜しなければならないんだろう。
もうな目を呼べた時点で死神に慣れたんだからいいじゃないかと思う。

 思うのだが・・・。
なんどもいうが――とんでもなく“違和感”があるのは間違いない。

なぜ、ああも“名前”にこだわるのだろうかと。



 夢、会話と名前。
これらの単語から考えるに、斬魄刀関連であることは明白だ。
 以前学院で習ったことだが、死神になるために一番始めの試練――それが斬魄刀との対話。すなち『始解』である。
これは斬魄刀解放の第一段階であり、自身の斬魄刀との“対話”及び“同調”を通じてその“名”を知ることで発現することが可能だとか。
そんでもってその能力を使って通常の戦闘時に使用すると。
 教科書にもあったように、たしかにオレも『名』を呼んだ。
だからこうして死神になれたのだ。
そのときは姿とか見えず、ただ聞こえてきた“懐かしい名”を呼んだのだ――《夜宴》と。
 それが今になって、“姿”をみせたかと思えば、今度はまた名を呼べと連呼してはオレを蹴り飛ばす。
間違っているならそれはそれで直す努力をしよう。だけど、だからといって蹴るなといいたい。

いったいぜんたい何なんなのだと叫ぶことしばしば…。


「本当にオレに死ねと言いたいのかあいつは?」

 斬魄刀ならオレの半身だろうに・・・なぜわからない。
オレの疲労が。

 そこへ睡眠時間を削るようなまねをされてみろ。
あいつが「死ね」というその言葉のままに、いつか死ぬ。
魂の半身である斬魄刀とはいえ、たのむから唯一の心を休まるときである睡眠時間を削らないでほしい。

「あはー・・・オレ、殺されるかも・・・」

 主に寝不足で。
 あ、まちがった。寝不足は二重線で消してくれ。
奴の暴力の影響で、死にそう。の、間違いだから。

元来、死神の見る夢には意味があることが多いという。
だけど夢でボロクソ痛めつけられれば、誰でもカンベンしてくれと叫びたくもなるというもの。

おかげで寝た気がまったくしない。
むしろよけいに疲労困憊だ。


 乾いた笑い口からよだれが出るほどには、今のオレの意識は壮絶にヤバイ。

あ〜。
なんだか綺麗な河の向こうで、死んだ爺様が手を振ってるのが見える気がする。

あはは・・・

「お花畑が綺麗だね〜あはははは。 書類も悪夢も十一番隊も斬魄刀くんもすべて消えればいい。 ふふふ。そうだ消しに行かなきゃ・・・どんだけ大きな消しゴムならあの書類の束は消えるのかな。あはははははははははは」
「ちょぉっ!?っ!?しっかりしろ!!!」

 同室の死神さんが悲鳴を上げてオレを揺さぶるが、オレはしばらく壊れたままだった。
その後、時間になってもやってこないことと騒ぎを聞きつけた我らが更木隊長と他隊員たちによりひっぱたかられるまで、オレの意識はお花畑の中にあった。

追記――起きたまま意識をどこかへ飛ばす程度なら、自分の斬魄刀に夢を侵略されたりはしないようだ。
ははは。










 それから間もなく、オレは“手にしたもの”に、規格外すぎだろうコレはとおかしくなって笑った。
同室の死神におかしい顔して笑ったところをみられていて、「またがくるったー!!」っと騒がれたのは、また別の話。










こないだは花畑と爺様の幻影みちゃったけど
大丈夫

たぶんね!








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