死んで死後の世界にたどりつき
- B LEACH -



02.やってきました!そしてここはどこ!?・・・と言いたい





 -- side オレ --





「死にさらせっ!!」
「クソガキがぁ!!」
ガキじゃねぇ!!ってかてめぇらがうせろ」
「へっへ。ガキなんかにまけるかぁよ!」


 ハイ。前回に引き続き、容姿のせいでなめられたあげく、囲まれちゃっているオレことです。
そして次が――

「ドチクショウらめがぁっ!!」

 相変わらずのオレの第一声です。
え?元女性らしくない罵声だって?
これでもすでに百年近く男として生きていますからね。 そりゃぁ・・・というか、転生する前からこんな感じですがなにか?

 さてさて。
この世界で目覚めてからすぐに更木地区に飛ばされ、子供だし成長しないし派手な色合いだし。 そんなこんなで目立つ外見ゆえに襲われまくりなオレは、不毛な争いに嫌気がさし、逆切れしたあげく【上】に行くことを決めた。
決めた瞬間のオレの行動はたぶん早かったと思う。
 口端を持ち上げ、側にあった棒キレを拾って大暴走。
迫り来る奴らをバリバリある生前に魂に刻まれた剣術でもって打破。
それでも倒れないある程度強い奴には、【海賊】世界で身につけさせられた『殺気』でもって気迫だけで圧倒して気絶させた。
 この世界ではオーラや気とよばれる生命エネルギーが“霊力”とよばれ、それが大きいものが死神になれる可能性がでる。
霊力のあるなしをみわけるのは簡単だ。
力ある者は空腹感を覚えるが、死神以外の普通の魂魄たちは空腹感がないという。
更木にいる間中のオレは、ずっとはらぺこだった。
つまり自分は死神になるだけの霊力はとりあえずあるらしいということがわかっていた。
それがわかっていれば充分だった。

オレはせまりくる筋肉馬鹿どもを蹴散らしつつ、そのまま死神になるための学び舎真央霊術院にいくため、更木地区を抜けた。


 だけどうっかり。

オレは真央霊術院なるものがどこにあるかさっぱりわからなかった。
とりあえずオレをめがけておそってくる実力さもわかっていない馬鹿共をあしらいつつ、どこからでも見える馬鹿でかい建物――中心へとむかった。





**********





 あの更木地区オレ様爆走事件から、行く年月。
オレは袴姿の学生を卒業し、黒い死覇装に身を包んだれっきとした死神となった。
 留年しまくったオレは、学院を卒業してもどこかの隊にも入れるはずもないだろうと思っていたし、 周辺警備みたいな部署に派遣されて、一、下っ端死神として終わるものだと信じて疑わなかった。
ひそかに「これで原作に関わらなくてすむぜ!仕事も楽そう。ひゃっほーい☆やったぜ♪」――なぁ〜んてことを思っていた。
今となっては自分の愚かしさに泣けてくるほど浅はか過ぎる考えである。
だってねぇ。まさか自分なんかを“勧誘”しようと思うようなひとがいるとは、とうてい思えなかったし。





 “ここ”までくるのにはいろんなことがあったなぁ〜と、思わず、書類に筆を入れていた手を止めて、意識を飛ばす。

うん。本当に大変だったナァ。
特に真央霊術院卒業付近――・・・。



 死神になろうと思い立ったあの日から、しばらく更木で過ごした。
そうして春の入学試験のようなものまで時間があるので、 とりあえずそれを目標に移動しつつ、真央霊術院への行きかたを聞きだし、 そこからなんとか死神になることを許されるまでがまた長かった。
そして真央霊術院にはいったあとは、斬魄刀(ザンパクトウ)と対面し、勉学と戦術をひたすら叩き込まれた。

 はじめはこの世界の仕組み。
つぎに虚(ホロウ)についてと、基礎的な四種類の『戦術』について教わった。

 先程あった『戦術』とは、基本的に四つに部類わけされる。
戦術――斬術。
白打――素手による体術。
歩法――移動術。
鬼道――呪術。

 これら四つすべてが得意な死神はいない。
得て不得手を見極め、やがて自分が進むべき道をみつけるための土台とすべく真央霊術院はあった。

 しかし、そこで問題が発生した。
オレは生前やさらにその前の前世の記憶まであるため、肉体はないが、いままで学んできた剣術などすべて、この魂を通じて、この身が覚えていた。
そしてそれは、同時に文化も風習もすべて覚えているということ。
何が言いたいかというと、日本語なんて随分ご無沙汰で、どんだけぶり〜?みたいな気分だ。
流魂街にいたときは文字なんてあまり必要としなかったから気付かなかったが、学院に入ってから焦った。
前世を含め数百年ぶりといえるほどに久しぶりに日本語見たときは、何が書いてあるのかさっぱりわからなかったのだ。
達筆すぎる筆でかれた字など読めるはずもなく、しかも漢字をきれいさっぱり忘れていたりして、文章の読解に物凄く苦労することとなった。
 元々オレは実技派であり、体を動かして物事を覚え、感覚ですべて動いていたので、頭脳戦は弱い。
さらには元からの記憶力の弱さもあいまって、オレは筆記試験に落ちまくった。

 ――たとえば鬼道。
あれはオレにとって鬼門だ。まじやばい。
なにがどうやばいかって、オレには鬼道を扱うだけの力は人一倍あるのだが、その引き金となる言葉の羅列をいえない。
 呪術は言葉を発することで、それを力に還元する。
だけど残念。記憶力のないオレは、いまだに一つの呪も覚えられずじまい。
むしろ卒業後は、鬼道をいっさい使ってないから、学院時代猛勉強して(テストのときだけ)覚えた呪ももうとっくに忘れた。
そう。オレは鬼道をカンペなしでは、一言一句間違えず言えたためしがないのだ。
絶対途中で言葉を忘れるか、舌をかむ。
まぁ、それくらい言葉が「単語」ではなく、「文章」として長いのが悪い。

 今なら、心の底から、変身系魔女っ子魔法少女たちを尊敬できる。
魔法使いも尊敬しちゃうな。
発音ってなんやねん!と、つっこんであげるよハリー・○ッター。


 そんなこんなで、入るのはともかく真央霊術院をでるのに、 かなりの歳月を要したオレは、実技以外はダメダメの落ちこぼれというレッテルを貼られた。

 まぁ、それもこれもオレが記憶力がないのが悪いのだろう。
卒業だって、先生が必死に教えて、カンペ見てもいいから!と泣きながらの、追い出されるような形でやっとの卒業だ。
しかたないと言われればしかたない。


「さすがは更木出身。野蛮極まりないね」
「文字もかけないなんて」

 ――っと、まぁ、これが学院時代のオレに与えられた周囲からの評価だ。
 たしかにあそこの土地柄は非常に悪いが、出身地域は関係ないだろうと思う。
向こうにもいい人はいたんだぞ。土地柄ですべてを決めつけるなんて、彼等に失礼だ。
まったく、最近の若いもんはこれだから。
 そもそも平凡を望んでいたオレは、自分を貶められようと、周囲から見向きもされなくなるのならもってこいだと思っていた。 ただどこにでもいる「ひとり」として埋没したかったので、これといって否を唱えるでもなくそれを容認した。
事実だし。

しかし見ている者は、表面だけでなくしっかり内心まで見ていたのを・・・後日知ることとなった。



 当時のオレは、前世からの習慣で、常日頃から“気”を完全に消すという癖がついていた。
おかげで学院では影が薄いといわれ続け、何度存在を忘れられたかわからない。
 同時に、生き延びるために必死になって覚えた癖というのはそう簡単には抜けないもので、 無意識に足音を消すことまでしていたらしい。
そのせいで、オレが学院を卒業し、振り分けのための書類をさぁ書くぞというとき、 隠密機動から勧誘の声がかかった。そのときは度肝を抜かれるほど驚いた。
けっして、原作のあの砕蜂さんが突然目の前にいて、自分の部隊にこないかと誘ってきたから驚いたとか、原作だ!ハーレム目指せ!とか、憧れの人☆とかでミーハー心からびびったわけではない。
「お前、実力を隠してるな」と、出会い頭に斬魄刀を抜き身の状態で突きつけられて告げられれば、誰でもびびるというものだ。
 結果、オレは砕蜂さんの脅しにも近い勧誘をなんとか断り、再び日常に埋没する道を選んだ。
 気配が薄いのも、足音を殺すのもすべて無意識の、“生前”からの習慣。
いまさら気配を出すなんてことのほうが難しい。
それはどうしようもない事実であり、嘘のつきようがない。
しかたないので、こうなったら前世のことを含めすべてを――

オレが明かすはずないだろう。

秘技口だけでまかせの術!

 嘘をつく場合――若干の「本当」を混ぜると、それは100%の真実を語るよりはるかに真実味を増す。
弱肉強食の世界で生きてきたなかで、オレがあみだした必殺技だ。

それを、斬魄刀を構えて詰問してくる相手に使う。

 相手を確実に信じさせるためには、“いつもの自分を崩さないこと”。
もし普段からビクビクして怯えているようならそのままに。
信じてほしいときに目をみて話す。ただしこれは度がすぎれば嘘っぽいので、こういうときこそ“普段の自分らしさ”をみせる必要がある。

だからオレは、疲れたようにため息を吐く。
いつもの“やる気はないがそのぶん小さなことぐらいじゃ物怖じしない普段のオレ”なら、面倒ごとは嫌だと、とっと白状して真実を言うのだろうから。
あとたまに私情をはさむのはありだろう。
そんな肉付けにより、うすっぺらい嘘が深みを増す。

 さぁて。どうごまかすか。
とりあえずはずっと流れている『更木出身だから』というあのウワサとレッテルを逆に利用させてもらうとしようか。

「だからですねタイチョー。オレは“更木出身”なんですよ。知ってるでしょ?」
「ああ。だがそれがどうした?強さの理由にはなれど、お前の異常さの理由にはならない」
「頭かたいですタイチョー。
オレは別に怪しくもなんでもないんですって。
更木ってのは、弱肉強食の場所なんです」
「早く用件を言え」
「だぁーからぁっ!!察しろよそこはさ!オレが自分から自分の傷を抉るようなことをいいたくないのわかってよ!!」

 本当はもっと知的な会話でもすべきだったのだろう。
そちらの方が“策略”っぽくってかっこよかったにちがいない。
だけど少しの真実――私情を混ぜようとしたら、なんだかそっちの方がオレの中で強く出た。
おかげで策略とかそっちのけで、9割本音というか私情でもって話が進んでしまった。

うんん?策略?じゃなくて、マジもんの本音だね。
――哀しいことに。

 そう。オレは断じて自分からチビだと認めたくはなかったんだ!!
だって悔しいし!!
ってか、なんで嘘をつくためにオレは自分で傷を抉らなきゃいけないんだ!!

ああ、もういいさ。私情?万々歳だ。どんときやがれコンチクショー!!
オレは自分の胸にナイフを刺す覚悟で、その言葉を告げる決意を決めた。

「お、オレは・・・」
「なんだ?」

「オレはチビなんだよ!!

 ああ・・・言ってしまった。
胸が痛い。物凄く痛い。

泣きたいほどに・・・。

 さらにオレの言葉になにかを察したように砕蜂さんの顔が若干歪んだ。
聡い彼女ならいまのでオレの言いたいことは、大体察してくれているのだろう。
あぁ、それとも彼女のことだ。もしかすると、少なからず“小さい”ことで、なにかしら彼女にも嫌な覚えがあるのだろう。

わかる。わかるぞその気持ち。
そしてそれが更木地区ではどういう扱いを受けるかというと――

「チビだからって。毛色が変だからっていう理由でオレは日々襲撃を受けてきたんですから。
オレはこんなチビで童顔で、弱そうだ。と、あげく目立つ外見のせいで一番に狙われるんですよぉ!! え?もう泣いていい? なんで、この世で一番気にしていることを自分で力説しないといけないんでしょーかね。
ただでさえ生きるのに必死だっただけなのに、この外見のせいでよけいな面倒ごとに巻き込まれるわ。 あくどいひとたちにからまれるわ・・・・・・今思い出してもよくオレ生きてたなって思うんですけど。 そこはマジで察してくださいよ隊長!
怖い人にいつもかこまれて気の休まる暇もなく戦闘に明け暮れる日々。でもオレはまだ死にたくないですからね!
戦うすべを知らなかったときは、とにかく逃げるか、身を隠すしか生き残れるすべがなかったんですよ!」

つまりは気配を消すのも足音を立てないのもすべて、追手から逃げるためなのだと――。

嘘だけ本当の言葉たち。
回想した自分の記憶にオレは涙をこぼしつつ、若干ひきぎみな砕蜂さんにすがって訴える。

 本当にねぇ。オレがなにをしたよと思う。
ただ海賊の戦いにまきこまれて死んだだけだろ。そんで気付いたら死後の世界に放り投げられてただけじゃん。

 あー・・・。
それにしても。
小さいっていうところと戦闘の日々ってのは本当だな。

過去を振り返ると本当に泣けるわコッチきてからのあの辛い日々。
ま。ぶっちゃけていうと、オレは逃げたり隠れたりしてないし、売られた喧嘩はすべて勝利をおさめちゃったし、余裕であいつらけちらしてたけどね。
それでもつらい日々だったんだ。

 だけど、今までの訴えはすべて本当。この今オレの目にたまっている涙も本物。
だから目の前の相手は信じかけている。
目の前の彼女さんが、口をつぐんだのもその証拠。

あとひとおし。

「だから死ぬ気で、でも死にたくないから必死で必死で。逃げて隠れてたんだよ!
隠れるときは自分の口をふさいで極力みつからないように息をひそめたさ。
相手に見つからないために、ときには捕まったときとか相手が寝てる間に逃げるために足音を立てないようにも努力した。
いつもいつも必死で逃げて・・・そうやってギリギリで生きているうちに、気配を消す方法とか足音を消せるようになっていた。
それが癖になってたってしかたないだろう!?」

 自分でも吸い語彙言い訳だなぁとは思うけど、全部が嘘じゃない。半分本当で半分嘘。
なぜなら気配を消すのも足音を殺す癖も、すべては前世からの習慣。
だから、こればかりは嘘。
でもいつも逃げていたのは本当。
おいかけてくる相手は「ひと」ではなく、「裏庭に住んでいた怪獣のような珍獣たち」だったという違いだけで。

 それから前世というかこの恐怖を思い出し、さらに自分のチビ発言に哀しくなって、 本気で泣き出したオレに、砕蜂ひきいる隠密機動さんたちが微妙に焦り始めた。

「隊長さんがぁー(外見だけとはいえ)小さい子泣かしたー」
「いけないんだー」
そんな声と、焦る砕蜂の「なっ!?わたしでは…ちがうんだ!これは!」っという声が聞こえた。

 ・・・小さい子って、チビってことですか?
ええ、ええ。なに言ちゃってくれてるんですか。

こいつらオレの傷を抉って楽しんでるんですね。
そうなんですね。
去ねや馬鹿野郎ども!!
もうオレが支離滅裂だよ!

そんなこんなで結局泣き脅しになってしまったが、オレの無実は晴れたのだった。



 そしてオレは懇切丁寧に彼らの勧誘を断った。
 ついでにいうと実技の結果だけはよかったので、学院の教員どもには十一番隊を進められた。
さらには十一番隊の鈴を頭につけた隊長さんが、隠密機動の隊長さんとは違った意味で勧誘に来たけど、 オレは平穏を望んでいるので「戦闘が苦手なの無理です」と笑顔で拒否した。
あんときの笑顔は完璧だったね。

 その勧誘騒動(内密な)からまもなく、オレは無事に学院を卒業した。
希望書とはいえ、配属先がかなうかもしれない。憧れの人に近づけるかもしれない。とか、そういう個人の理由は違えど、入隊したい隊の希望をかく書類を提出し、オレを含めた卒業生たちはそのときを楽しみにしていた。

さすがに常識から考えて、第三希望以内に決めてくれるだろうと思っていたから――。



<オレの配属希望書>-------------------------------

 オレは第一希望に四番隊とかいた。
だって救護・補給専門の部隊だよ。
オレはそこにオレの安然をみた。いかずしてどうする!?
それに鬼道とか向いてなかったような気がするけど無視。

 第二希望には五番隊。
まだ原作にはかけ離れた時間なのか、そこにはまだ愛染がいるが、穏やかな雰囲気の隊風に惚れた。
なにより月に一度書道教室が開かれているらしいので、ぜひ日本語の復習をさせてほしいところだ。
原作?裏切り?うん、どうでもいい。
大事なのは『今』だ。
今はまだまともそうだったから思わず書いた。

 第三希望には、十番隊。
理由は至って簡単。
隊長と副隊長以外は個性豊かでもなさそうで普通そうな部隊だし、なにより外見が同じくらいの隊長さんがいるので選んだ。
ぜひあの銀色の隊長さんとは仲良くなりたいものだ。

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 そもそもオレは、原作をどうこうしたいわかえでもなければ、関わりたいわけでも、世界を救いたいとか、変えたいわけでもない。
ただただ、どこまでも自分本位なのがオレであり、オレはオレの穏やかな日々を望むだけだ。
更木地区なんかにいたからよけいに穏やかなんて不可能だからこそ、オレは死神になることを選んだんだ。
だってあそこは日々襲われる。
そうならない日々をおくれることを・・・ぶっちゃけ願ってやまない。

だからこそオレは面倒ごとから遠ざかるために 十一番隊以外 を希望した。





そして――――



オレはなぜか『十一番隊』いる。





「あっれぇ?まじでおかしいですよ」

 なんで完全希望外なの?
四番隊は向いていないから?いやいや、やってみないとわからないもんよ。意外とできるかもよ。
ってか他はなんでよ。

 思わずいろんな隊舎にかけこんで聞ける限りの人に理由を聞いてみた。
え?よくできたなって。まぁ、気分は殴りこみです。 それがどうしたこのやろうって気分で聞いてきましたよ。
 さすがは更木の・・・とか、十一番隊隊長をさしてるのか出身地を指されてるのかわからないが、 オレの物怖じしない態度にはあまたの評価が増えたのはいうまでもない。
そうしてなんとか聞き出した。



 さて。入隊を断れた理由だが、どこかの隊では隊長にあうことはできず、ひとづてに聞いた話も混ざるが、 だいたいは以下のような感じだった。

一番隊は、風格も威厳もなく、記憶力もすこぶる悪いから当然無理だって。
まぁ、しかたないな。

二番隊はオレ的に論外。一番労働が多そうだ。めんどいの嫌。
それに、すでに一度断っちゃったから当然だね。

三番隊は市丸隊長のイタズラですでにせいいっぱいだから、オレのようなイタズラ好きはこないでほしいと。
・・・っち。
だってさぁ、教官とかちょいむかつくし。オレの出身で馬鹿にしてくる奴らに泡を吹かせたかっただけじゃないか。
心が狭いなぁ。

四番隊は、オレに治癒力なしと判断。
もうそれはピシャリとお断りされた。さすが烈さん、手厳しいな。

五番隊は・・・は?定員オーバー!?ひどっ。
眼鏡めぇ〜。しかも断るときのあの冷たい目。笑顔でいい人な仮面が落ちかけている。くそ。身長が高いイケメンだからって見下すんじゃネェよ!

六番隊は、ね。
朽木白夜が隊長ゆえに、規律が厳しいんだ。そこで、おちゃらけた(主に外見)感じのオレは隊を乱すと却下されたらしいよ。
いやね、オレ元からこういうはっちゃけた性格なだけでおちゃらけては・・・って誰も聞いてねぇ!!

七番隊では、あのワンコがステキな狛村隊長が、オレの写真を見て悪寒を感じたらしい。
え〜なんだそれ?
ってか動物・・・好きなのに残念だ。モフモフしたかった…。

八番隊の隊長いわく、女の子ならともかく男のそれもガキなんかおことわり〜と、笑って呟いてくれたらしい。
アホか。ってか、それでいいのかよ!?

九番隊は、オレがあまり情報処理スキルというか文章スキルに問題あることを言って、遠回しに拒否られた。
そういえばこの隊は「瀞霊廷守護及び瀞霊廷通信」の編集・発行を担当していたはず。 たしかに字が汚いオレには無理か。
嘆願書の字が汚かったためか、漢字(それも旧漢字がメインの漢文)が読めなかったのが悪いのか・・・。
とりあえずこれをきっかけに、愛染さんの書道教室にでも、後ほど通わせてもらおうと思った(むりだったけどね)

十番隊は不真面目そうっていう理由だけできりすてられた。
たぶんだけど、オレが入ると、まちがいなく隊長にからむのがあの氷使いさんは直感してしまったのだろうと思う。
チッ。するどいな。

っで、十一はスルーして〜♪

十二番隊の方はね、オレを目にする時間もおしいと、会話にもならない。
マユリさんにラブレターもどきの嘆願書を出してみたけど、めのまえですてられた。

十三番隊は今忙しそうでちょっと空気がギクシャクしているのが重かった。
そもそもオレは、元から苦手なんだよね十三番隊。
だって命をなにより尊ぶ彼らに、彼らを前にしたらオレは明るい性格ではいられなくなりそうだ。 生前の『強ければ人殺しさえもが普通の世界』で生きていた自分には、甘すぎて、 ぬるいと感じているオレは、命だ誇りだという奴らを見て、きっと冷めた目を向けてしまいそうで・・・。



 ――ここまで結論と結果が出ていると、なんと滑稽だろう。

 考えるにオレは、“ここ(護艇)じたい”に向いてない気がしてくる。
しいえていうなら、オレが死神となるなら、ここではなく、現世にいるべきだろう。
そう。ひとりでフラフラと自由気ままに動きつつ、“ついで”で虚でも倒している方が性に合っていそうだ。

思わず現実をみないように、逃避するように、苦笑する。


 いや。たぶん本気でこれは現実逃避だ。
だってオレの所属、十一番隊だぞ。
なんだかんだいってその単語は、二番隊の勧誘よりはるかに嫌な予感しか覚えない。

 っで。なぜにオレが十一番隊なのか。
更木隊長がオレをほしいってさ。

わぉ。ふざけんな。なにそれ!?

って。ええええー!?同郷のよしみ!?
いやだわ隊長。そんな戯言で入隊させられるなんてオレが可哀想じゃないですか・・・・・・って・・・





「冗談言ってないで誰か仕事しろよ!!!」



 だれもいない十一番隊の隊舎はがらんどうとしていて、オレの悲鳴はとてもよくこだました。
結局オレのツッコミや絶叫に返って来る返事は一つもなかった。
 ちなみにここにくるまでにのろのろしていたせいで、この世界に来てからあっという間に八十年の月日がたっていたりする。
 まだまだ十歳ぐらいのままほとんど成長しているようには見えない自分の姿には泣けた。
八番隊の伊勢七緒ちゃんだって、オレがここに来た時と比べると子供から大人の姿に成長してるっていうのにさ。
死神世界は時間も外見も何もかもおかしいからなぁ。
そういう理由でオレも成長が遅いだけならいい。これが転生特典とか言われたら、マジで泣くわ。

「あ〜・・・・・・オレ、書類仕事のために雇われたんだっけ?」

 思い返してみる。なぜか十一番体に入れられてから、オレが記憶している限り、ずっと子供の姿のまま。そしてずっと書類とにらめっこばかり。
ちょっとね。ふと思ったんだけど。
もしかしてこれだけのために、オレはこの隊に連れてこられたんでしょうか?

有り得そうで怖いな、おい。










ちゃんまじめねー」
「そういえばお前、学院で座学がてんでダメだったんだって?それなのによくやるなぁ書類なんか」
「え・・・あ、先輩たち。いや、でも目の前にあったらかたさなきゃとか思いません?」
「ぜんぜーん。そんなのあとで誰かがやればいいとは思うけど」
「え。でも一角先輩に弓親先輩。これとかあっちとか期限は今日まで・・・」

「「!!」」

」「ちゃん」
「へ?」
「「これも(たのむ!/お願いね)」」

ドサッ バサー

「・・・・・・」
「「じゃぁよろしく」」




うん。やっぱり現世にでも逃げようかね。はは・・・



前世でオレより先に逝ってしまった爺様。
ねぇ、爺様。
オレはやっていけそうにありません。

そろそろキレてもいいでしょうか?








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