* 第2世界 0NE PIECE * 10.きせき |
「きせき」ーーその音にはたくさんの意味がある。 沢山の海をまわり、航海を続けた。 その果てに見つけた価値が高くて綺麗な石ころを「輝石」。 奇妙な石ともであった。そいつは「奇石」。 二度と帰ってこなかった彼岸にいっちまったやつもまた「鬼籍」といったか。 不思議で運命的な出来事は「奇跡」。 人間が生きていくために必要な空気、その空気の総量を「気積」。 俺たちが長い年月をかけて築きあげて、紡がれたいままでの冒険譚。その俺達の歩き続けてふみかためてきたこの “道”も「軌跡」。 ならば、この出会いも「きせき」なんだろう。 お前は彼岸にいたと言っていた。鬼籍をぬけて、そこからかえってきたのだろう? お前が俺達のもとにおいつけるように残してきた奇石を拾いあつめて。 俺達が歩いてきた軌跡をたどって。 輝石のようなとびっきりの輝くような満面の笑顔で。 とんでもない奇跡をひっさげて。 かえってきてくれたんだろう? 「"その世界"がお前を捨てたというのなら、俺達が拾って何が悪い?」 はじまりは、おかしな「大人」の男とであったこと。 赤い髪の彼は、はじめから俺のことをしったように話しかけてきた。 しかもあいつの方が年上だというのに、こちらを「爺様」と年寄り呼ばわり。 その時、まだ俺は、あいつのことは何一つも知らなかった。 あいつは追い払ってもついてきて、気が付けば一緒に冒険の旅に出ていた。 小さな小舟に二人で乗って出港した。 しばらくすると仲間がふえていく。 そうすると今度は自分よりもはるかに年下の赤毛のこどもをみて「親父殿」と声をかけていた。 逆じゃないのか?とみんなが笑っていたが、それでいいんだと男は笑う。わらってあいつより若いクルーたちを育てていく。 おかしなやつだった。 外見と言動が一致しない。 言っていることはめちゃくちゃで、言動は子供のようなのに大人で。 すべてがチグハグなやつだった。 そんなやつだったけど嫌いにはなれなくて、気付けばあいつを誰もが仲間だと認めていた。 むしろあいつがみつけてきた仲間だっていた。 けれど道半ばであいつはいなくなってしまった。 俺達の手の届こないところに行ってしまった。 先に逝くんじゃねぇよ。 まだお前と話したいこと沢山あったってのに・・・。 だからこれは“奇跡”なんだと思った。 突然空から降ってきた赤毛のこども。 赤ん坊ほどの小さな子供との出会いは。 本当ならば、こいつにはいくべき場所があったのかもしれない。 今度こそ彼岸に向かわなければいけなかったのかもしれない。 だがそれを指をくわえてみているだけなんて、俺達海賊団が許すと思うか? ああ、そうだとも!俺達は海賊。ほしいものを奪って何が悪い! この子供がこの世界にいるのは、きっとあいつを好いていたこの世界があいつを攫ってきたからに違いない。 海賊ばかりいるからか、この世界もかなりたちが悪いんだ。 どこからかはじき出されたあいつを掬いあげて、そのまま自分の中に連れてきたんだろう。 けっこうやるじゃないか俺達の世界は。 お前を捨てた世界なんて忘れてしまえ。 そんなくそったれなもん放っておけ! そんなもののために泣くんじゃない。 なぁ、俺達をみてくれよ。 だから、さ。 もう一度始めようぜ。 俺達の冒険を――― 「よぉ、チビ。俺の名はゴール・D・ロジャー。お前の名前は?」 |