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* 第2世界 0NE PIECE * 09.麦わら帽子 |
ようやく爺様の宝物を取り戻せたと思ったのに。 爺様、セカイ・・・。 ごめんなさい。どうやらオレはまた死んでしまったみたい。 ああ、でも。 死後というものがあるのなら。 叶うなら・・・ どうか 爺様のいる場所にいきたいなぁ。 ::: side 夢主1 ::: っと、おもってたのに。 『あり?』 パチリパチリ。 なんど瞬きをしても現状は変わらない。 意識もはっきりしているし、血みどろの服もない。 そっと手を動かせばしっかり動くし、どこにも穴は開いていない。 そのまま右耳を触っても原型がちゃんとあるし、抉れた腹はツルンとして穴なんてないし、心臓はまだ体の中にあるようで、傷一つない皮膚の下でドクドクと脈を刻んでいる。 『え?』 わけがわからない。 思わず〈黒姫〉と声をかけてみれば、いつものようにフォンと声をあげて、オレの影から黒い鯉が姿を見せる。 能力も使えるし、怪我もない。 自分は今、地面の上にたっている。 どこっかの島の海岸なのだろう。目の前は海。 海と空がつながって見えるそこはまさに一面青の世界だ。 これではまるで、今までのは痛みの伴う夢でもみていたようだ。 とはいえ、途中から本当に痛みもなければ感覚もなかった時点で夢の確率は高い。 とりあえず。 なぜかまだ生きているようです。 * * * * * あの海岸から少し歩けば、にぎわう街へとついた。 そこは大きな港のようで、様々な商人たちが店を出していたし、先程までいた海では見れないような品も扱う店がまばらに並んでいる。 市場では"グランドライン"や"能力者"、"海賊が増えた"などの会話が聞こえてきたので、ここは間違いなくあの青い海の美しい《ワンピース》の世界なのだとしる。 ここが同じ世界なのはともかく、いつでどこなのかわからなかった。 〈黒姫〉のマーカーもはずれてしまっていて、場所が分からないのだ。 それにどうも"麦わらのルフィ"の名がどこからも聞こえてこないのも、場所だけではなく時間的にも"いつ"かわからないといえる要因でもある。 だが、ひとつ嬉しいことがある。 それは、オレがまだこの世界に生きていること。 どこかわからないところに飛ばされたとはいえ、世界に嫌われたわけではないのだと知りほっとする。 まだ、オレは世界にいてもいいらしい。まだ消えなくていいらしい。 原作がはじまってからも、主人公と接触しても、痛いことも怖いことも何もなかったのは、やはりこの世界に自分がいることを許されたからだろう。 いまもこうして同じ世界にいれることが何よりの証。 そうとわかれば、気は幾分か楽になった。 店をひやかしながら、現在地を把握しようと頭を働かせ、言葉から必要な情報を探していく。 そうして市場の中でも衣類が山積みされた露店で、ふいに視界に懐かしい色がよぎり、思わず足を止める。 自分をひきとめたのはなんだっただろうかと首をかしげつつ暖簾をくぐって覗き込めば、いろんな種類の帽子が天井からつるされていた。 そこのひとつをみて納得する。 ああ、これか。 オレを呼んだのは、オレに懐かしさを覚えさせたのは、リボンのついていない真新しい麦わら帽子。 麦わら帽子――主人公ルフィのシンボル。 自分の養父、赤髪シャンクスのもの。 そして・・・ 『爺様とお揃い』 若かりしゴール・D・ロジャーが身に着けていたもの。 流通しているコインのデザインが違うことから、自分の知っているどの時代とも違うのだろうが、この世界では物々交換も可能だし、古い時代の遺跡から発掘されたものをそのまま使用もできる。 原石でも旧コインでも問題なく買い取ってもらえるのは、すでに調査済みだ。 コインのデザインが違うのに気付いてからは、こっそり建物の影で能力を使用し、"加工"の能力を願い、一匹の兎の絵を描いた。 兎なのは、たまたまだ。 そうして具現化したその兎に、金貨を数枚渡した。 うさぎは持っていた杵を振り上げると、金貨を小さな破片にかえてしまう。 もちろん一回っぽきりの能力であるため、仕事が終わるとウサギはパシャンと弾け水になって消えてしまった。 これだけで結構オーラを持って行かれたが、運動後の微かな疲労感ぐらいなので問題はない。 どこかで休めば生命力なんてものは回復する。 地面に散らばった小指の爪ほどの欠片を拾い集め、袋にしまう。 『この麦わら帽子をくださいな』 それと、服と・・・。 いちおうここが【ワンピース】の世界であるのは確定なので、旅に出ようと思った。 この場でとどまっていられるオレではないのだ。 そのために必要なカバンと衣類という装備と一緒に帽子を買い、店の親父に金を渡す。 金は課金してもらいなと、亭主からありがたい助言を得たので、彼からきっちりおつりをもらい、礼をのべてあとにする。 新しいにおいのする麦わら帽子は、まだ誰の匂いも沁みついてはおらずお日様の匂いがした。 それをポスっとかぶれば、日差しの暑さが少し和らぐ。 麦わら帽子をかぶっただけだが、なんだか大好きな人たちが側居いるようでうれしくなって「ふふ」っと笑い声が漏れてしまう。 たかが麦わら帽子。 それでも気分が高揚するのを抑えられず、足はいつのまにかステップを踏んでいたし、鼻歌まで歌っていた。 帽子ひとつで喜んだり。 ましてはスキップをするなんて・・・。 外見のどこにも怪我も異変もなくとも。 どこかで きっと もう オレは壊れていたんだろうね だからその子をみて―― 『・・・じ・・ぃ・・さま?』 思わず手を伸ばしていたんだ。 |