24時間のキセキ
- HU NTER× H UNTER 原作軸 -



1.その笑顔と未来を語ろう





 -- side オレ --





 呪詛を吐いて丸まっていたオレ。
そのまま寝てしまったらしい。
そうして人酔いから始まったオレのハンター試験は、たまたまオレの脇を通り抜けた知り合いによって運ばれることとなる。

たしかに子供に戻って体力なくなった気がしないでもないけど、できることならジンの息子の方に運んでもらいたかったと、オレを笑顔で俵抱きする人物を見て思った。

「君。だろ?なんで縮んでるんだい師匠?それより師匠、ハンターだったよね◇なんでここにいるのかな☆」
「…く、クロフデは両親と共に死ニマシタ。オレは『クロ』です」
「ふーん。まっ☆どっちでもイイケド☆」
「うっせーよクソガキ。オレよりチビだったガキが数年ででかくなってんじゃねーよ。
誰がおめーに念を教えたと思ってやがる」
「おや◇認めるんだ?」
「認めるよ。だって事実だし。でもいまは“クロ”って呼べよ」
「うん☆わかった」



なつかしいなぁ。

オレがまだ過去にいたころ、これまた、たまたま 自宅前で拾ったちょっと狂い気味の男の子。
誰かを殺してきた後らしく、血まみれで道端で笑っていた。
問題はそこがオレの仕事のための住居の前だったということで――思わず拾って洗った。
 汚れていた子供は、こないだのジン同様にガリガリと洗ってやって、おかしな具合でオーラが溢れているのを見て、念の使い方を仕込んだ。
ある程度念を使えるようになると、こどもはオレのアジトで別の殺人痕を発生させたため、ひきつった顔で彫り師の爺さんい仕事場をおん出された。
しかたなく実家にヒソカを連れて戻れば気に入られ、オレとしてはピエロにしたくなくて連れ帰ったのだが。
うちの両親からいろいろまなんで、それを悪い具合で引き継いでしまってこのようなピエロへの道をたどってしまう結果となった。
 まず、変わらないポーカーフェイスは、我が父のそれ。
どんなときでも変わらない柔和な笑顔は、我が母のそれ。
手品師まがいの所業は、オレが道端で金を稼ぐ際に、空間移動の能力使って手品と称し粗稼ぎしていた。あれをみて育ったせい。
容姿は赤毛の黒筆一家のそれに近いせいで、すっかりオレの子どもと言っても疑う余地もないほど、我が家の家族のよし悪しを引き継いでしまっている。
もしかてこのような目立つ猟奇的なピエロに進化させたのは、そんな愉快な黒筆一家なオレたちが原因かもしれないと思うと、申し訳なくなる。

っでもなぁ。
オレがG.I.からとばされるときは、オレのためにジンの前に飛び出そうとしたイイコで可愛い子だったんだよ。
人殺しにちゅうちょしないのは相変わらずだったけど。
でも、まだピエロの片りんはなかったんだよ。

なぁ。未来のオレよ。
お前、育て方どう間違ったんだよ。
服のセンスが、ナンセスな子にそだっちゃって。

オレ、親としてつらい。



「クロサンさぁ☆」
「ん?」

 オレが変人になってしまったことを申し訳なく思っていると、ふいにニコニコキツネ目をさらに細くしてオレを担いで走るヒソカが、声をかけてきた。
恰好は気に食わないが。
こんなでも一応育てたのだ。
可愛い息子には違いない。
呼ばれればすぐに返事しちゃうの当然だろ。
そう思って返事に下を向くと、いつものような猟奇的な笑みではない、懐かしい笑顔が目に留まった。
どこか幼さの残るそんなちょっとまるっとした柔らかい笑顔。
オレが元の時間軸に帰れば見れるはずのソレ。

大人になった君と出会ってから、はじめてみせてくれた笑顔。
本当に一瞬だったそれに・・・

今はもうこの笑顔はあまり浮かべていないようだと知りちょっとさびしくなる。

「クロサンはしらないだろうけどね☆
黒筆の」
「あの人たちが、“”のあとに死んだっていうのは聞いたよ」
「ん。そっか。師匠が死んだってきいたから、あの家ボクがもらっちゃったよ◇」

 ああ、実家ね。ジャポンの実家はジンが管理してくれてるのかと思ったが、そうか。こいつがいたか。
もうあの家には父も母もいないらしい。
おととしオレが死に、父母もそのにすぐあとに死んだのだと聞いている。
そっか。ヒーちゃんが跡を継いだか。

「道場は継がなくていいぞ」
「うん。家、だけね☆」
「わるいな。・・・“”のやつが先に死んで」

 自分のことなのに、他人の様にその名を呼ぶのには抵抗がある。
それはヒソカも同じようで、本当に一瞬だけど困ったように笑った。
もちろんその笑みはすぐに消え、普段のポーカーフェイスなニコニコ笑顔に戻ってしまう。

 本当になんでかな。なにをしてコチラの時間軸のオレは、死んだのやら。
どうもオレのことだから、未来の死んだ筈のオレはきっと楽しくウハウハ転生ライフその2とかでもやっているんじゃないかと密かに思う。
あと十年ばかりで死ぬ定めだと聞いても辛くはない。
期限が決まっているなら生きるだけ楽しんで生きるだけと決めている。
それに目標だった24歳の二倍も生きれれば十分だ。

 なのでオレ自身のことはあまり気にしていない。

でも置いて逝てしまった人たちのことは気になる。
死んだ自分は知ることはできないけど、過去から未来に来た今のオレは知ることができるから。


いっぱい話そう。ヒソカ。










第287期ハンター試験 一次試験開始








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