24時間のキセキ
- HU NTER× H UNTER 原作軸 -



08.24時間と240時間の違い





 -- side オレ --





 いやぁ〜、わりい。わりい。そう言いながら気にもしていないように笑う奴を水に突っ込みキレイに洗い流し、邪魔なヒゲざくざく切って、服を着させた。
その間にジンのホームコードでネテロ会長に連絡をいれる。


「ひさしいのう。まずは現状確認じゃな」

「オレが詳しく知りたい。そもそも今飛ばされたばかりなんですけどね〜」
「どうも俺達のせいで過去のが未来に飛ばされたらしい。だけど俺が知ってるこいつは、若返った後『離脱(リーブ)』してから24時間以内に戻ってきていて、その時に「世の中何があるかわからない」とぼやいてはいたが帰ってきた。
その後、は本来の姿に戻っていて、俺達と数年一緒にバカやって過ごした。
っで、未来でのこいつは死亡届が出ている状態。っと、こういうわけだな」

「ほぉ〜。なるほどの。随分面白いことになっておるようじゃの」


 オレ達は現在、ジンのアジトの一つで、のんびりとネテロさんが持参してきた日本茶を入れて飲んでいる。
埃まみれでない小奇麗なジンと、少し洒落たテーブル、それに日本茶。
この三つだからこそか、不似合いな組み合わせである。
そしてこんな違和感丸出しの似合わない現象が目の前にあるのが未来だという。

 ただおかしな現状にもかかわらず、恐怖はない。
それはここが、『黒筆 』という自分の生まれた世界というのもある。オレという存在のない平行世界や原作そのままの世界に飛ばされなかっただけ感謝だ。
なにより帰れるめどがあることから、安心していられるのが一番の理由だろう。
 ジンの話を総合するに、現状のチビなオレは無事にもとの時間軸に戻っている。
それも子供の姿のまま。
子供の姿は制限があり、24時間たてばオレの場合は元に戻れるはずだった。
それはつまり24時間以内のできごとということだ。
つまりなぜか未来にきてしまった現象もやがては元の時間軸に戻るということだ。
だから安心して、現状にだらだらしていることができる。
 それにここが未来というなら、【黒姫】が指定した影のターゲットが見当たらないのも頷ける。
彼女がターゲットできる影とのリンク時間は長くはない。
数年前にオレが死んでいるのなら、すでにこの世界にオレがターゲットしていた指定位置の念は消えているだろう。



 ――そしてあっけなくも240時間が流れた。



「ジン。“24時間”じゃなかったっけ?」
「は、ははは…」

 乾いた笑いを浮かべる元凶をオレは冷めた目で見つめつつ念能力を発動して、燃やしてやった。
ターゲットが完全に一人に絞れているので、攻撃威力も増すはずなのだが、それでも少し“服が”焦げるだけですんだジンはやっぱり人間じゃないなと思った。
つい舌打ちをしたくなったのは言うまい。

 結論から言うと、オレはいまだ子供のままだ。
それも24時間なんかとっくに過ぎてしまっている。
一日ぐらいなら気楽でいられた。
しかしこうなってくるとオレはいつ戻れるのかわからなくなってくる。
たぶんこういう場合のセオリーでは、元の時間軸に戻らない限りオレは元の姿に戻れないんじゃないだろうか?
つまりチビのまま…
オレの華麗な大人の姿を返せ!!

せめてもう一撃食らわすかと、念を発動させようとしたところで背後からやんわりとストップをかけられた。

「やめよ

「で、でも…かいちょー…」

 そうこうありまして、オレはこの世界にいる間、ハンターとして仕事をしてほしいと頼まれました。
おぬしがいると、未確認生物やら幻獣がすぐにみつかるからの。
仲間とでも思われてるんじゃないかと、ジンに言われる。
ホッホッホとヒゲをなでながら笑う老人と笑顔のジンに、オレは憎しみの感情を向ける。
 だってオレってば、UMAハンターとして名を上げてしまっているが、そんな怪しいハンターになりたかったわけじゃない。
オレはただの刺青彫師だ!!
なるなら美食ハンターになりたかった。
じゃなかったら、せめて幻獣ハンターと呼ばれたい。
UMAなんていやだ…。

そこでふとオレって、この時代では行方不明で死亡扱いされてなかったっけかと突然思い出す。

「ハンターとして復帰するのはかまわないんですが。
むしろ死ぬ前のオレと今のオレでは年季が違うので、能力も劣ってると思うんですがいいんですか?
っで、すでに死んでることになっているらしいけど。オレの戸籍ってありますか?
この時代ではオレは死人で。しかもハンター証なんか持ってないのに、ハンターとして働いていいの?ってか働けるの?」

「「……」」

「ああ、いわなくていいです。はぁ〜…」

 オレの言葉に黙り込んだ二人を見て、なんだか頭が痛くなってきた。
会長に聞いてみたところ、さすがに戸籍を戻すのは不可能らしい。
さらにいうと、オレの両親はオレがいなくなったあとに、とある事件に巻き込まれた小さな子供を救って死んだらしい。
そうなると保証してくる親もいないわけで、今更戸籍とか戻しても意味がなさそうだ。
それに家族として認めるなら、紙の上であってもあの両親以外いやなので、戸籍は戻したくないなというのがオレの感覚だった。
二人はオレの言いたいことを理解してくれて、それならとハンター試験を受けるように言われた。

本来、すでにハンター資格保持者が、試験を受けることはできないはずなのだが…。
この狸ジジイは何もなかったような顔で飄々としている。

「…おい。ハンター協会の会長自らおきてを破ってんじゃねーですよ会長」
「相変わらず口が悪いのうお主」
「まぁ、おちつけって

 ジンに宥められた。なんかそっちの方がショックだよ。
それはそうとして、オレのこっちでの生き方が呆然としていて話に加わっていない間に、目の前で勝手に決められていく。

「……というわけで、流星街で育ったから戸籍がないってことで。お前、今年のハンター試験、名前を変えて出ろ」
「はぁ!?なんだよその突然なわけわかんないの?」
「わしがうまくやっておこうのう」
「ほら、喜べ。会長公認だ!」
「裏口入学かよ!?」
「いやいや、それは違うの。試験は自力で受かってもらわねば資格はやれんしの」
「ハンター試験にはいかせてやるから、あとは自力で何とかしろとそういうことッスか。
まぁ、オレが死なない程度に頑張らせてもらいますよ。それしかこの世界で生きる道はないようですからね」
「そうしてもらえると助かる」
「あー。そうだ。
かいちょー、念能力使ってもいいですかね?じゃないと今、子供だし、オレ、試験合格する前に死にますよ?」
「うむ。かまわぬが、『念』の存在はばらさぬようにな」
「了解」

「それで名前はどうするんじゃ?」
「黒筆は無理ですよね。では『クロ』でいいっす」

 偽名を名乗れといわれてとっさに思いついたのは、黒筆というオレの苗字からとったもの。
言った瞬間、ジンがポチでいいんじゃね?と噴き出したので殴って黙らせる。

「苗字名前特になし。ただの『クロ』。ジンも他の仲間もきっとオレと会ったら“”と呼ぶなよ。
もうしわけありませんが、手続き頼めますかかいちょー」
「クロか…ふむ。ぶふっ!いや、うん。了解した」
「・・・」

笑いやがった。
 このときオレは、どうやってこいつらに仕返ししてやろうということだけだった。
他にも重要なことがあったきがするけど、忘れた。

さぁさ。ハンター再試験はじまりです。





 ……ん?
オレ、なんか忘れてないか?

「あ…」

今年はゴンが試験を受けるとか、どっかの野獣男が言っていたような…。

――マジかよ!?

 はからずも原作にものの見事に介入する羽目となった。
ええ!?オレの安楽人生はどこへ!?原作に介入しない時間軸を満喫しようとしてたのに!!
 これもなにもかも!ジン=フリークスを踏みつけたあの瞬間が原因に違いない。
あの恥有の出会いの日、飯なんか食わせなければ良かった。
もっと足元をしっかり見ていればよかった。
これからは足だけはつかまれないように生きよう。

そんでもってオレのウハウハ転生ライフをエンジョイするのだー!!



 …てか。オレって『念』能力なくて、生きていけるのかな?
だってさ。原作の記憶では、今期のハンター試験に『念能力者』ってイルミとヒソカしかいなかったような…。

 あれ?ヒソカっていやぁ〜……オレ、やばいなぁ〜いろいろと。
まぁ、いっか。
なるようになる。っというか、なってくれないと困る。










ネテロ会長と出会う。

ただいま原作軸直前。
もうじき第287期ハンター試験開始。








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