有得 [アリナシセカイ]
++ 零隼・IF太極伝記 ++
外伝10 お子様リターンズ!!
<詳細設定>
※魔法はないが、前世もちが多くいる世界
【弥生ハル】
・元獄族
・獄族シュンの育ての親
・空間能力者(風、重力も支配下に置けていた)
・神話世代の生き証人
・カイの契約者
【霜月シュン】
・真名は「零」
・転生者にして隼成り代わり
・元獄族
・獄族ハルとその契約者であるカイによって育てられた
・大ぐらい
・氷の能力者(+ペルソナ)
・ハジメの契約者
郁「どうしよう…シュンさんとハルさんが小さくなった」
小脇にそれぞれハルとシュンを抱えるイク。なんでそうなったとかは最早誰も問わない。
なったもんは受け入れる
それしか飲み込み方はないのだ。あと、この2人だからで納得。これが暗黙の了解であった。
陽「……俺はカイとハジメさん見たら通報すべきか?」
郁「まだ二人に会わせてもいないのに?!!」
【お子様リターンズ!!】
「太極伝奇・零」世界 〜side not〜
◆小さくなったリターンズ!◆
郁「自己紹介願えるかな?」
春「弥生ハル!6歳です!」
零「霜月シュン。推定年齢5歳。ーー前回より小さくなったと確信してる」
元気に答えるハルと、いつものシュン。
陽「…シュンさん!!ある意味アンタが安定で俺たちは安心した!!!」
郁「シュンさんまで記憶無かったらどうしようかと思った…」
2人が名乗ると、ハルは目を瞬かせシュンを見やる。
春「シュン、お兄ちゃん?」
零「久しぶりだな、ハル」
春「シュンお兄ちゃんなの?!可愛いね!!!」
ニコー!と満面の笑みのハルの頭をシュンが撫でた。どうやら、前回の幼くなった時の記憶を継続してるらしい。思わず爪先立ちでハルの頭を撫でたら後ろから「可愛い!!」って呟かれる。
零「…ヨル?」
夜「あ、アオイ呼ばなきゃ!これは前回のお洋服が役に立つ時!!!」
はわー!みたいな謎の感嘆発しながらヨルが下の階へ降りていった…そしてダダダっと駆け上がる足音。
戻ってきたのはヨルではなくハジメだ。
陽郁「「出たーーー!!!」」
零「oh」
始「ーーヨウ、イク。そこを退いてもらおうか」
陽「てか、ヨルは?!」
始「アオイと部屋に行き服を選んでる最中だ」
郁「ですよね!戻るには早そうでしたし…!!」
始「どうでもいいから、プロセラガード解いてシュンを渡せ」
陽「申し出直球!!!」
郁「契約者の異変に敏感なのは痛いほど解りますけど!」
押し問答にキョトンとするハルと悟りを開いたかのようなシュン。幼子たちをプロセラガードするイクとヨウ。そして凄みをみせるハジメーーーという珍妙な状況を変えたのは戻ってきたヨルと一緒に来たアオイである。
2人は可愛らしい紙袋を携え、プロセラ共有ルームの状態に目を丸くした。
シュンは真っ白、ハルは黒
それぞれグレーの差し色と黄緑の差し色の入った色違いの双子コーデとなった。
葵「ハルさんのときに思わず買った色違い役に立ってよかったよー!」
夜「シュンさんのときは一日限定で服用意出来なかったから達成出来たねアオイ!」
そう、前回幼くなったシュンのときは本人の申し出もありブカブカの服をワンピースのようにして戻るまで過ごしていた。対して前回のハルは記憶がなかったためにそのままの格好にするわけにもいかず子供服を揃えた。結果、三日間子ども姿というのもあり用意して良かったパターンとなった。
春「えへへー。シュンお兄ちゃん…シュンくんとお揃い!」
零「お揃いだなー」
春「はるくんね!はるくん、シュンくん大好き!」
そう言ってシュンにぎゅっと抱きつく。
零「ハルはかわいいな!うちの参謀かわいい!!!・・・・・・・・・・・・・・俺まで小さくなかったらな!!!!!(嘆)」
始「何言ってる。そこが良いんだろう、ほらこっちを向け」
夜「分かります!分かりますよ、ハジメさんっ」
そして、そのままスマホを構えるハジメ。涼しい顔してるがシャッター音が断続的だ。
2人を撮っているが比率的に絶対にうちのリーダーが撮られてるのが多いに違いない。
見た目だけはキリッとしててカッコイイのに、なんて残念な人だーーーとヨウは思った。
始「カイに送ったら発狂していた」
ハジメからスマホの連絡アプリを見せてもらうと、カイの返信が、うん、奇声となっていた。今日はルイとカイが一緒の仕事のためいない。イクのスマホにはルイから『ムゥ、間が悪い。この後の仕事終わったら直ぐ寮に帰ろうねイッくん。あとカイのはしゃぎようがスゴい』とスタンプと写メ付きで送られてくる。……ルイにより撮られたカイはブレまくっていた。背景はきちんとピントが合ってるのでカイそのものがテンションにより荒ぶっているのが良くわかる。
春「カイお兄ちゃんは、いないの?」
ポソっと呟いた言葉でハルが泣きそうな顔をする。
葵「今、お仕事で寮にはいないんだー。夜に帰ってくる予定だよ」
春「お兄ちゃん…気配しない」
始「ハァル。これ抱えて待ってること出来るか?」
春「!!…青いうさぎさんだ!」
零「カイが帰ってくるまで俺と遊んでくれるか?ハル」
春「!ーーうん!シュンくんと遊ぶ!」
7月の中ウサを抱え、ハルは元気よく答える。当面、カイが帰るまでは大丈夫そうだ。
途中、イクとアオイもそれぞれの相方との仕事の予定が入っていたため名残惜しみながら寮を出た。
春「ハルくん。外行きたいなー」
零「外か」
春「うん、外とてもいいお天気だし…ダメ?」
アイスココアを飲みながら外を見る。たしかに、快晴である。
始「公園なら大丈夫か?」
夜「ピクニックでもしましょうか」
陽「ーーーまぁ、俺たちがいれば…大丈夫、か?」
夜「幸いシュンさんは記憶ありだし、もちろんそれに頼るのは違うけど心強いのには変わらないからね」
始「なら、俺が弁当を作るからお前らは2人を連れて先に公園へ行ってくれ」
夜「え、俺も作りますよ?!」
始「最近作ってないからたまには俺にやらせてくれ」
夜「それならお言葉に甘えて」
同じく色違いの上着と靴を履き、公園へ向かった。
公園に行くとハルははしゃいでシュンの手を引っ張る。滑り台を目指していた。
陽「あ、飲み物買ってくればよかったな」
夜「なら俺買ってくるーーー」
零「触るな!」
陽夜「は?」
なんと、ハルを抱えシュンのことも抱きあげようとする男ーーーもとい誘拐犯。
この男、目の前に保護者がいるのに良い度胸である。それとも目に入ってないのか、この男。
零「ハルを離せっ」
抱えられた場所からシュンは思い切り男の脇腹に蹴りを入れる。うめき声を上げると、男はシュンをそのまま地面へと突き飛ばす。
「こっの!」
零「あぅっ」
陽夜「シュンさんっっ」
春「あっ」
「可愛い顔して糞ガキが!」
流石に子どもの姿で力には叶わない。
突き飛ばされたシュンは、肘と手を擦ったらしく赤く滲ませていた。
陽「テメェ、何しやがーー」
出そうになった拳は、次の瞬間行き場がなくなった。
春「シュンくんをいじめるなぁー」
「は?うぉわぁぁぁぁ」
ぶぉんっっと風の音が木霊すると男はそのまま宙に浮く
春「いじめる人はメッだよ!!」
「なっなんだこれっっえええええ!!」
そのまま右に左に凧揚げのように男を振り回す。唐突な非科学的空中浮遊は恐ろしいものだろうーーー言うなれば紐なしバンジー、見えない回転ブランコみたいなもの。そして悲鳴が途絶え意識なくなったタイミングでハルは男を地上に落とした。顔を覗き込むと見事に気絶している。
ハルはプクーと頬を膨らませながらヨウの方へ飛んで戻った。ヨウはそんなハルをキャッチしつつ…顔を引き攣らせる。
零「わーお」
陽「流石、神代の獄族…幼いながらもとんでもねぇ」
夜「…ここに昨日買った中華鍋があればこの人の顔をタコ殴りに出来たのに」
陽「目が笑ってない笑顔で低音ボイスやめて、ヨル様。紙面載っちゃう」
夜「え、だって2人を誘拐しようとした挙句、シュンさんを傷物にしたんだよ。それくらい優しいでしょ?」
零「いや、大したケガじゃねぇし。アイドルのトラブルは避けたい」
ヨルに抱えられたままのシュンの肘と手をハルは見つめ顔をクシュっと泣きそうな顔になった。
春「シュンくん、ケガしてる。いたいのいたいのとんでけぇ」
零「平気だ。ハルのおかげで痛みは飛んでったぞ」
春「ほんと?」
零「ほんと、ほんと。ハルのおかげだぞっ」
春「えへへ」
始「お前らここにいたのかーーーん?その男はなんだ?」
陽零「あ…」
始「シュン、その肘と手はどうした?」
その場の空気が何度か下がった気がした。振り向くとお弁当が入ってるであろうバスケットを持った王様がいて、シュンの傷を目ざとく見つけると瞬く間に無表情になった。
零「……転んだ」
春「この人がねー!シュンくんをケガさせたんだよ!!」
零「ハルゥゥ」
陽「(ハルさんまってくぇぇぇ!)」
始「ーーーへぇ。ハル、教えてくれてありがとうな」
春「うんっーーーあ」
優しくハルの頭を撫でるハジメ。さらに体感温度が下がるーーそして更なる悲劇の足音
春「カイお兄ちゃんが来るよ!」
陽「………え」
夜「カイさん!早いなぁ」
笑顔でスマホを持ってたヨル…どうやらカイに知らせたらしい。なんていうことを…
海「ヨウ。犯人くんはどこにいるのかなー?(にっこり)」
わー。降臨しなさった。
ちなみにカイが到着する10分後のことである、ハルは縁でカイの気配を察知したらしい。
始「カイ」
海「ーーーいくらハジメでも止めるのは赦さねぇぞ」
始「まぁ待て。俺だってシュンを傷つけられて黙ってると思うか?良い案がある」
ハジメは懐から1枚の札をカイに手渡す
始「カイ…ここにやりたい事の念を込めろ」
その王様の笑みは凶悪だった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
春「カイお兄ちゃんとピクニックピクニック〜。このサンドイッチ美味しいねェ〜。あ、タコさんウィンナーもあるっウサさんのウィンナーも!」
海「美味いなー、ハル。ほら、口元拭くぞー」
零「美味い…!!!流石、ハジメが作るのはバラエティ富んでるな。この具材の組み合わせ好きだな」
始「久々だから作るの楽しかった。あと、こっちのバスケットにも色々作ってきたから足らなかったら食べろよ」
夜「ふふ、いい光景だね」
陽「ソウダナー」
夜「ヨウ、目が死んでない?」
陽「ちょいと怒涛の展開を頭の中で処理中だ」
海「あとルイからプリンの差し入れな。この後、食べような」
春「プリン?!わぁい!!」
零「ルイらしいな。今、連絡しとこう」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
2人が戻ったのは2日後だった。記憶ありのシュンは問題なかったが、戻ったハルが再び真っ赤になってウサに顔を埋めていた。彼の目の前にあるのはアルバムとなった本にDVD数枚。スマホには2日間の思い出ーーー言うまでもなく幼くなった間のことは覚えているのだから彼にとっては黒歴史が更に増えた。そして己のベッドに青い7月の中ウサも増えた。幼い自分が2日間肌身離さず持っていたため最早この中ウサは私物扱いだろう。
春「またか!また、幼いままーーーシュンが羨ましい!!」
幼くなった二人は特性お子様ランチ食べたり、色違いの服で過ごしたり、青いウサと紫のウサを持っていたり、皆に甘えまくっていた。
春「シュン天使!………俺が幼くなってなければだけど!」
嘆きは凄まじかった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
とある男、その処遇と結末
始「大丈夫。死んではいやしない」(にっっこり)
陽「ハジメさん、アンタ何をしたんだ?」
始「ん?なに、あの男にとって悪夢を毎回夢見る呪いをしたまでだ。怪我1つさせてないんだから気にする事はないぞ。今頃、カイと俺のとびきり念を込めた悪夢を見ているところだろう。前の世界でなかっただけ、男は感謝すべきだろうな」
陽「(絶対この人とカイを敵に回すの止めとこう)」
ちなみに、シュンにハジメが甲斐甲斐しくべったりだったことは言うまでもないだろう。