有得 [アリナシセカイ]
++ 零隼・IF太極伝記 ++



外伝09 ウグイス・コード
<詳細設定>
※魔法はないが、前世もちが多くいる世界

【弥生ハル】
・元獄族
・獄族シュンの育ての親
・空間能力者(風、重力も支配下に置けていた)
・神話世代の生き証人
・カイの契約者

【霜月シュン】
・真名は「零」
・転生者にして隼成り代わり
・元獄族
・獄族ハルとその契約者であるカイによって育てられた
・大ぐらい
・氷の能力者(+ペルソナ)
・ハジメの契約者



あの日、出逢うことがなければきっと

日々はつまらないままで
あの歌は
悲しい思い出だけがつまったものだった

あの歌に明るい未来を重ねられるようになったのは
やはりあの出逢いのおかげで


春「というか、たまに思うんだけどうちの社長って何者?」

海「あ、ああ・・・それな(遠い目)」
零「言えてる!なんで社長の作る曲の歌詞ってさ、俺達の過去については丸っとばっちり知ってますよ〜てきな、あんな意味深なんだよ!?こえぇよ!」







【ウグイス・コード】
「太極伝奇・零」世界 〜side ハル〜








――・・声は確かにする

澄ました耳鳴らして さえずり響く花の街
君は今何思う?
若葉の風に問う
自己表現の警告 虚しく羽広げて

窮屈な鳥籠嫌いじゃないけど
甘やかすその代償 誰もさわれない嗚呼

ウグイスコードは鳴り止まない
春を迎えに行こう

ウグイス 高架の下抜けて ため息ひらひらり―――・・・





デヴューが決まり、はじめて社長にそれを渡された時、はっきり言ってどういう顔をしたらいいかわからなかった。

君をイメージして書かせてもらったと渡された曲。
その歌詞を見た時、俺は歌詞の書かれた紙から目を話せなかった。

胸が、しめつけられるようだった。


青い、あおい空を。
空を映した海を突然見に行きたくなった。





《探しても見つからない 確かに声がする》

うん。そうだね。
昔みたいに、きみの声が聞こえれば・・・よかったのに。


《君は今何思う?若葉の風に問う》

ねぇ、きみはいまなにをしているのかな?
会いたくても会えなくて、今はもうお得意の風を操作する力もない。
きみを探そうと風に聞いても、収穫はない。


風よ。どうか伝えてほしい。

《ウグイス・コード鳴り止まない》

俺がここにいること。
探し人がいますと――伝われば良いのにと。



何度思ったか。



誰かなんて。
絶対に口にはしないけど

《春を迎えに行こう》

そういうなら、むかえにきてよ。


《透かした手のひらから》

いくど、きみと同じあの空を眺めただろう。





始「お前、なんて顔してんだ」
春「…なんのことかな」
始「隠せてないぞ。誰のことを考えてるんだ?歌っている間の自分の顔見直してみろ」

そう言ったハジメから、レコーディング中のときの動画を渡された。
そのときの自分の顔を見て―――ベッドで丸まった。

切なそうな顔。と、言われたのを理解した。

前世の記憶がない黒の王様でも聡いのが憎い。 いや、記憶あれば俺が誰を浮かべたかなど明白だ。 それよりマシだろう。
まったく…ハジメも俺の白の愛し子のことで共感する歌が今後出るよう呪っとこう。 それで俺と同じ想いすればいい。
悔しいことにハジメに記憶無いけど!


動画を見直す。

俺が映っている。
自分の歌だ。
自分の声だ。

でも・・・思ってしまう。
なんて、なんて――胸を締め付けられるのだろう。

ああ、涙が出そうだ。


春「っていうかこれ普通に恥ずかしいね」

収録シーンをとられていたとか。恥ずかしい!!恥ずかしすぎる!、が・・・これは獄族なら誰でも共感してくれると思うのだ。


―ウグイスコードよ鳴り響け
     きみのいない空を〜♪


俺の歌――初めての俺のために書かれた歌。
印字された歌詞に目を奪われ、何度も何度も読み込んだ。
曲を聴き込んだ。
それはアイドルとして自分の歌という当たり前のこと。

そして、それ以上の気合いの入れ様なのは、自覚していた。


だって、しかたないじゃないか。

これはやがていろんなところで流れる。
そうしたら、あの大海原の向こうにもこの小さな鶯の声が届くのではと、願わずにはいられないんだ。
そう思ってしまうのも仕方ないじゃないか。


待って。待ち続けてるひとがいる。たった一人を。


《ウグイス啼くよ 待ちわびて 呼んでる 今一人》


嫌ってほど思い当たる歌詞。
それを形にし、音となって彼に届かせたい。



もし、この世界にいるのならば。

願ったていいじゃないか。



どうか。風よ。同じこの世界に〈俺〉がいると知らせてくれ。


例え、きみに前世の記憶がなかったとしても。





歌よ。届け――







「すんませーん!これ、どこに運びま・・・・・・ハル?」
「カ、イ?」


ずっと探していた


「ハル、なのか?」
「カイ?だよね」


ずっときみを待っていた



――ウグイス高架の下抜けて ため息ひらひらり
ウグイスコードは鳴り止まない 君と同じ空を
ウグイス啼く 花の街で
見つける 今一人

《逆さまブルースカイ》


きみを想って、何度この空を見上げただろう。
青くてきれいな・・・。
それは天と地に広がる海の色。


風の海をかける小鳥の歌は空に響き
空の色を溶かし込んだ水の海にしみわたる。


いまなら、殻に閉じこもっていた俺も高架の下を抜けてきみのもとへいける。


“その色”を持つ俺のただひとりの顔
盟約により分かち合った“青”に――

この誓いをもう一度かわそう



「「ようやく会えた」」





《飛んでく》





 


◆ ◆ ◆ ◆ ◆





 


それから自分の浮かれようは、恥ずかしいことに分かっていても止められなかった。

ウグイス・コードを更に熱を入れて歌うようになった。

誰のためになんて自分にとって自覚済だ。だから言わないで!(*ノωノ)
当の本人は気付いてないが、俺からすればそのほうが都合が良い。
これからも是非気付かないでくれ。それはもう切実に!!!

伸び伸びと歌うためにも是非ともだ!


始「つまりお前にとってカイに会えないときのラブレターか?どうりであんな顔で歌っていたわけだ」
春「は?いきなり何言ってんですかハジメさんんんんん?!!!」

俺のこころなんか誰も見るんじゃない!
そう願っていたのに・・・記憶の戻った黒の王様がサラッと爆弾かましやがりました。

本人の前で言うとかやめてぇーー!!!!!

海「は?え?」
始「ウグイス・コード。後でこいつ(ハル)が今まで歌ってるやつ見返してみろよカイ」
海「お、おう?」



海「ん。これかハジメがいってた映像は・・・」
零「なになに鑑賞会?俺もみてー!」

海「おーハジメのやつ昔から王様オーラが、ハルがわかい・・・ってーーーーえ」
零「あ、いろいろ把握」
海「これ・・・////」
零「おおお。見たことないくらい顔真っ赤なカイ」


春「み、みた?」
海「///」

あのハジメの発言からしばらくして、廊下でばったりであったカイが俺をみて視線を勢いよくそらした。
みたのか。みたんだな!!!

春「み、みないでっていったのに!」

思わずカイの方を見ると、いかなる時も余裕な顔が真っ赤に熟れていた。
驚きだ…カイでもそんな顔をするのか。
っていうか、俺もいろいろ恥ずかしんですけど!!!

なに、この空気!?


って、その原因はハジメの問題発言からだ。

春「ち、違うからね!あれはカイのことじゃなくて!!そ、そう!ちょっと始めてのレコーディングで緊張してただけで!!!」
海「えーーもっとデレてくれていいんだぜ♪」
春「しません!!!そ、そもそも、で、でれてないし!!!これそういう歌じゃないし!!社長が勝手に!」

零「いや、それがデレでなくてなんだというんだ」
始「お前の両親は相変わらず仲がいいな」
零「かえるか」
始「そうだな」

春「ちょっと!ハジメぇっ!!!あ!シュンまで!ふたりとも帰らないでよ!」


今度から俺はどんな顔でこの歌を歌えばいいのさ?!


春「・・・・・も、もう恥ずか死ぬ////」





 









 









【ウグイス・コード-春告鳥の歌-】

探しても見つからない 声は確かにする
澄ました耳鳴らして さえずり響く花の街
君は今何思う 若葉の風に問う
自己表現の警告 虚しく羽広げて

窮屈な鳥籠嫌いじゃないけど
甘やかすその代償 誰もさわれない嗚呼

ウグイスコードは鳴り止まない
春を迎えに行こう
ウグイス高架の下抜けて ため息ひらひらり
ウグイスコードよ鳴り響け 君のいない空を
ウグイス啼くよ 待ちわびて 呼んでる 今一人
逆さまブルースカイ

何してもツマらない 声は遠くにある
透かした手のひらから
嘯(うそぶ)く これからの自分
僕は今何処にいる 答えは返らない
自己犠牲の告白 殻に閉じこもる本音

僕たちの明日 取り零さないように
深追いしない でも本当は壊すのが怖い嗚呼

ウグイスコードは鳴り止まない
春を探しに行こう
ウグイスどうか教えてくれ 世界はゆらゆらり
ウグイスコードよ鳴り響け 君の笑顔が見たい
ウグイス勇気に火を付けて 飛んでく 今一人
…何処まで

窮屈な鳥籠嫌いじゃないけど
甘やかすその代償 誰か気付いて嗚呼

ウグイスコードは鳴り止まない
春を迎えに行こう
ウグイス高架の下抜けて ため息ひらひらり
ウグイスコードは鳴り止まない 君と同じ空を
ウグイス啼く花の街で見つける 今一人
逆さまブルースカイ

飛んでく








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