有得 [アリナシセカイ]
++ 零隼・IF太極伝記 ++
外伝04 白日に贈るこの心を
<詳細設定>
※魔法はないが、前世もちが多くいる世界
【霜月シュン】
・真名は「神崎零」
・隼の成り代わり主
・前世は黒バスの火神大我
・一人称:俺
・前世の影響でとにかくよく食べる。胃袋ブラックホール
・バスケバカ
・運動するのが大好きで、現在は剣術をならっている
・火神の時に犬に襲われて以降、犬が怖い
・ペルソナの能力は、異空間でなら使える
・元、獄族
・獄族としては、氷系の能力者だった
・ハジメの契約者
こことは違う世界。
その住人たちにおいて、“契約”とは、命よりも重いつながりである。
それは魂に作用する結びつき。
想いがあれば。
その結びつきが強ければ強いほど、来世でもその縁は再び巡りだす。
必然の出逢いさえ呼び起こす――それが獄族と人がなす“契約”だ。
始「つまり、俺得の日!!」
11月のカレンダーをジッと見つめつつおかしな発言をしているのは、黒の王様。
正確には、その月のとある一日を注視していた。
始「これは堂々とプレゼントを渡せるチャンス!」
新「ある日突然を境に、なんだかわからないぐらいシュンさんのことをハジメさんが大事にしている。しかもそれが恋愛感情じゃないってのは、よーくわかるんですがねー。
あれだけシュンさんに贈って、まだ贈るとか…(いちご牛乳ズコーッ)」
始「アラタ、よく分かったな」
新「え…分からないと思ったんですか」
ハジメは“誰に”とは明言してなかったが、その場にいたのがアラタでなくてもこの寮の誰もがその相手をあてることは可能だっただろう。
なにせ前世の《契約》の影響で、ハジメは最近シュンへのアプローチが異常なまでに激しいのだ。
前世のことを知らない者でも、そのハジメの行動で、猛烈なアタックというかセクハラと訴えられかねない接触過多がよくわかるほどで。
推理するまでもない。
そしてハジメがみていたのは、11/24―――彼の前世の契約者。その生まれ変わりである霜月シュンの誕生日だ。
アラタが覚えてる限り、近頃のハジメはシュンにお土産や贈り物をよくしてる。いっそ貢いでるという言葉が合うレベルでだ。
去年は年に一回の誕生日プレゼントの案ですら出尽くして困っていたというのに、今の彼は次から次へと品を変え贈っているのだ。
はてさて、その我らがリーダーは白のリーダーに何を贈るのやら…
【白日に贈るこの心を/生まれ、出会えた喜びに感謝を】
11.23―-23:58
霜月シュンこと零は、疲労に見舞われていた。
仕事がながびき、帰りがこんな真夜中になってしまったのだ。
疲労感がハンパナイから、このまま寝てしまおうか。
シャワーだけでもあびるべきか?
疲れたなぁと、真っ暗なままの自分の部屋の電気をつける。
カチッ
バンッッ!!
始「シュン!誕生日おめでとう!!」
なにがおきたかというと、電気をつけたつ瞬間、数秒前にしめたはずの扉が勢いよく開いたのだ。
それは突然訪れた。
むしろ自分は電気のスイッチではなく、ハジメが飛び出てくるびっくり箱のスイッチを押してしまったかと一瞬勘違いするほど、タイミングがよすぎた。
なにせ電気をつけた瞬間のできごとだ。
扉が壊れたのではないかと思うほどの音がしたかと思えば、そこにいたのはハジメだったのだから、驚かずにはいられない。
まぁ、ノックもなにもなしに、いきなり他人が部屋に入ってきたら、電気も関係なく驚き以外の何物でもないが。
零「うわっ…ハジメ?!」
始「誕生日おめでとうシュン」
零「え、誕生日??………あぁ今日か」
ハジメの言葉を思い返し、零がチラリと時計を見ると――ジャスト0時。
なるほど24日か。
誰よりも一番乗りだった。
ハジメはよほど自分を祝いたかったようだ。
零「…ぶはっ。今までのハジメの中でも俺を祝うタイミング過去最短記録だな(笑)」
始「そうだろうな…なにせメールアプリ使うんでもなく直に0秒だ」
ハジメは笑いながら、小さめの紙袋を零に手渡す。
誕生日プレゼントといって渡されたそれ。
今すぐにでもあけてほしいとハジメの顔に書いてあったので、紙袋をあければ、でてきたのはぬいぐるみ。
零「11月ツキウサ…この服って」
始「あぁ、“お前の”だ」
包みを開けると11月の小ウサが中華服を着ていた。
正確には“前世の獄族シュン”が着ていた衣装そのままの“獄族ウサ”だ。
帯に包丁が挿してあって、札や耳飾りも再現されていて、ディテールのこだわりは彼らしいと思えるものだ。
零「これ…手製か?」
始「わりと楽しかったぞ。ぬいぐるみのハジュの隣にでも置いてくれ」
零「………相変わらず器用だな」
始「シュン…誕生日おめでとう。お前が同じこの世界に生まれたこと改めて祝いたい」
零「…………ハジメ、サンキュ。俺も同じ世界で嬉しいよ」
今までにないくらい綻んだ顔のハジメを見て、気恥ずかしさが一気に零を襲う。
零が耳まで真っ赤なのをハジメはニコニコと眺めている。
そして、ここまで自分を想ってくれて祝ってくれるハジメに対し、どう自分は返そうと。来年の彼の誕生日について零は今から酷く頭を悩ませ、うなることとなるのだった。
11.24――昼。
春「なるほど。だから、その獄族ウサをことある事に眺めてるわけか」
零「え、そんなにか?!」
春「それはもうデレデレだよ」
本日の仕事はハルと零の組み合わせであった。
仕事が終わり、たまにはと某コーヒー店に足を運んで、季節限定コーヒーを楽しみつつ日時の切り替えどきに起きた出来事をハルにつたえれば、「デレデレ」だったと指摘される。
零は早速、件の獄族ウサくんをカバンにつけ、持ってきていたのだが―――眺めていたのが無意識なだけに、恥ずかしさが際立つ。
ハルはよく見てるなぁと思わず感嘆してしまったのは、また別の話。
さすが前世のおかんである。前世のとはいえ、息子のことはよくみている。
海「二人ともお疲れさん」
良いタイミングで、前世のおとんが合流してくる。
春「カイもお疲れ様」
零「お疲れ様。そっちも撮影終わったのか?」
海「まぁなー。シュンが寮に帰る前に間に合ってよかったぜ」
零「間に、合って?」
海春「「シュン、 HAPPY BIRTHDAY 」」
そう言って獄族ウサの隣に1月ウサ――もとい前世のハジメをモチーフにした術者ウサくんがちょこんと置かれる。
首元のリボンにハジメが使っていたのと似た花の髪飾りが留められていた。
それに零は目を開く。
零「コレ」
海「さすがにおそろいで寮に帰宅させてやりたくてな♪」
春「ハジメってば、俺やメンバーの前でまったく隠す気なく獄族ウサくんの衣装を作っていたからねぇ。
なのに、自分モチーフは用意してないようだったから。
あれだけ一対!一対!と騒いどいて、なんで獄族ウサくんの相手を用意しないのか不思議でしかないよ」
零「ハル達が用意してくれた、のか?」
海「ハル発案で、俺はどっちかってと手伝いに近いけどな」
春「カイもかなり衣装を助けてくれたでしょ。これでも“睦月ハジメ”ってのは、今のオレの相方でもあるからねぇ。
たまには相方の肩くらいは持つよ。ほんと、たまにはね。それ以外はちょっといかがなものかと思うけど」
零「ありがとう、二人とも。すごく嬉しい!!」
その後、ウサぬいぐるみを大いに喜んだ零は、さっそくその二匹をツ●ッターに(自慢したくて)上げた。
ツイッターように枚数の写メをしたところで、ハジメにもその写真を送ったのだった。
恐ろしいぐらい即、ハルとカイへハジメからの通知が届く。
それにハルから苦情が来た。
春「今までにないくらい長い文で、感謝の意を述べられた。あと、シュンと写ってるのも送れってさ。自分で直接シュンに言えばいいのにね!」
ハルはその長文を零にみせつつ、少し顔をしかめていた。
カイは逆に微笑ましそうにその様子を見まもりながら、零にぽーずをとらせてツキウサ二体を同時に写真におさめた。
送った瞬間、「うらややましいそこかわれ」と変換さえされてないなんだかドロドロした空気を纏う通知がカイに届いたが、生暖かい笑みを浮かべたカイはあっさりその文章を削除し、電源を落としたのだった。
11.24――夕方。
零、ハル、カイの3人で寮に戻ると、零の元に色とりどりの箱や袋が舞い込む。
言わずもがな。プロセラとグラビのメンバーからの贈り物だ。
年少組「「「「シュンさーん!おめでとうございます!!」」」」
恋「俺達年少組でそれぞれ作りましたっ。小ウサくんにどうぞ!」
駆「俺とコイはコレ、耳につける小さめシュシュですっ!柄が雪と蝶がそれぞれのシュシュに入ってるんです」
郁「俺はマフラーですね。季節柄的にお出かけの時はつけたくなりますし。ウサたちにも言えると思うんで」
涙「僕は羽のブローチだよ。2匹のマフラーとかに留めてほしいかな」
夜「シュンさん、誕生日おめでとうございます。俺とアオイで沢山作ったので遠慮無く食べてくださいね。目玉はバースデーケーキですよ」
葵「シュンさん、お誕生日おめでとうございます。今年の力作です。シュンさんがツ●ッターに上げていた獄族ウサくんと術者ウサくんのキャラケーキに挑戦してみました!」
新「シュンさーん、誕生日おめでとうございますっ。小ウサ達にはフカフカかぼちゃパンツを!2匹ともこの寒い日々を乗り越えろ!」
陽「シュンさん、誕生日おめでとう。俺からは小ウサ2匹にコート代わりのポンチョな。この冬の際はどうぞ使ってくれ」
零「皆…ありがとな!!」
零は貰ったプレゼント全てを机に並べる。
幸せの光景でしかない…と無意識に呟くほどだ。
どうやらすべてお気に召したらしい。
それにこどもたちもほっとしたように、嬉しそうに顔を見合わせている。
零「だけど見事に全員から“ペア物”とは…」
春「ふふ。言ったでしょ。ハジメ、隠す気なかったって」
新「ペアなのはハルさんとカイさんから事前に通達されていたんで」
始「根回しいいな…」
春「これでも参謀だからね!ハジメ、今日はおおいにオレに感謝してね?」
零「これは、思い出の写真が増えていくなぁ…」
その日から零のツイッターには、獄族ウサくんと術者ウサくんが零とともに写真にあがるようになる。
もちろん、皆がくれたプレゼントを身につけて。