有得 [アリナシセカイ]
++ 零隼・IF太極伝記 ++



外伝03 指輪のアレコレ
<詳細設定>
【霜月シュン】
・真名は「神崎零」
・隼の成り代わり主
・前世は黒バスの火神大我
・一人称:俺
・前世の影響でとにかくよく食べる。胃袋ブラックホール
・バスケバカ
・運動するのが大好きで、現在は剣術をならっている
・火神の時に犬に襲われて以降、犬が怖い
・ペルソナの能力は、異空間でなら使える
・元、獄族
・獄族としては、氷系の能力者だった
・ハジメの契約者



春「うちのプロダクションは、なにをしたいんだろう?」
零「つか、どこ目指してんだ?」
春「さ、さぁ?」
零「アイドルを売り出すにしても・・・最近グッズの方に力を入れすぎじゃぁないか?」
春「だよねぇ」

春零「「え。これどうしよう?/すんだよ」」

うちのプロダクションが、所属アイドルといってもツキウタ。メンバーだけだけど、なぜかイメージアクセを作った。
なぜに指輪?

いや、まぁ、12人のモチーフイメージどおりの、鳥や植物やらいろいろえがかかれたあげく、月ごとの色の石もついてて綺麗っちゃぁ綺麗だけど。
えー、指輪って。

まじで、なんでだ?







【指輪のアレコレ】
 「太極伝奇・零」世界 〜side 零〜








俺は霜月シュン。
だけどそう呼ばれる前の前世では、黒子のバスケっていう漫画のキャラで、火神大我といった。
火神大我時代、兄弟の証として俺は、小さなころから指輪を一つネックレスにしてつけていた。
その兄弟の証というのが、おわかれになっちゃったけど仲の良い兄ちゃんとの思い出の品。


で、今。

胸元が寂しい時がある。
手が無意識に持ち上がるも何もつかまない。それにこう、胸のなかがポッカリとする。

胸元が、手がさびいしい。

“アレ”がない。
ずーーっと身に着けていたのに。

なにがないのかはわかっている。

零「指輪か」

今世では、チャリリと首から下げるチェーンの音さえない。
買おうかなぁ〜。つけようかなぁ〜。と、悩んでいたところに、俺が今所属している事務所で、所属アイドルのイメージアクセサリーというのが発売されることになった。

しかも指輪。

タイミングがいいんだか。

グラビとプロセラ各メンバーのモチーフの指輪の企画があり、そのサンプルを貰った。
なんだかキラキラした石までついていて随分高そうだが、モチーフにされたアイドル全員がそれをもらったのだった。

指輪を手渡された俺たちは、思わずこの事務所はどこまでつっぱしるんだろうと首をひねったものだ。

テーマパークもあるし、文房具や、人形まで売り出していて。
もう歌ってアイドルだけが売りじゃないよねこの事務所。っというしかなかった。

アイドルって歌ってTVでて笑いとって、芝居して、CDだしてってだけじゃないらしいと、この事務所にきて改めて知った。


さて。いただいた指輪だけど。

俺のは勿論、雪の結晶。
これがまた意匠が細かくて素敵なデザインだった。

零「指輪……よし」

指輪のサンプルを色んな角度から見上げて―――とある決心をする。


俺は指輪と同じく、プロセラコラボのネックレスチェーンを箱から取り出し、指輪をそこに通す。
作業としてはたったそれだけだが。

零「あぁ、この感じこの感じ」

なんだか違和感なくすっきり来る。
ネックレスをして、鏡を覗き込む。

(やっぱ胸元に指輪がないとな)

火神大我として生きていた頃は、死ぬまで身に着けていたネックレス。
この世界に生まれて、今までだって似たようなのを買おうか悩んだことがある…でもあの頃の指輪ではないしと止めていた。
今、首には両親から誕生日プレゼントで貰ったチョーカーを身に着けている。
これもこれで凄く大事なものだが、チェーンを首からつけたこの安堵感は、ちょっと生半可ではない。もはや、つけていた年数の差だと思うことにする。

零「まぁ、この機会にまた付けていてもいいよな」

指輪のサンプルを貰って真っ先に浮かんだのが、“指に嵌める”のではなく、チェーンに通す事だった。
昔のはこんなに繊細な作りではないが、ここにあるというだけで充足感がある。

嬉しくなって思わず、胸元の指輪を必要以上に弄ってしまう。



涙「…シュンって最近ずっとそのネックレスをつけてるね」
零「あ、これか?」
涙「うん。いつものチョーカーも似合うけどネックレスも似合ってる」
零「ははっ。嬉しいなぁ」(ルイの頭撫で撫で)

涙「コラボリング気に入ったの?」(うっとり)
零「そうだなぁ……気に入ってるし、俺にとっては一種の《お守り》かな」

涙「お守り……ハジメのリングだとご利益ありそう」

零「え?」
涙「これ、ハジメのモチーフでしょ?」
零「え?」
涙「シュン?」

ルイに言われ、いつも首から掛けていた指輪をじっくりと見てみる。

キラリと紫の石が輝くのに、唖然としてしまう。
おい、こら。なんだこの蝶は。
俺の雪の結晶どこいった?


なぜか気づいたら、俺の指輪がハジメのものになっていた件。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇





ハルの部屋

零「ーーーてなわけで、ルイに指摘されて初めてチェーンに通した指輪の雪の結晶が蝶のデザインにいつの間にか変わっていたのに気づいた」

春「気づくの遅いよ!」
零「いや、だってあれ、細かい柄だろ」

陽「それって間違いなく」
春「ハジメの仕業だよねー、ああ、もう!ハジメか!」
零「“も”ってなに。“も”って(汗)」

零「で、俺の指輪…見つからないんだよな」

陽「ハジメさんが持ってる可能性は?」
春「え?!まさか………ソレって指輪交換…現代だと意味深になるから切実にやめてほしい」
陽「現にこのネックレスの指輪が1月のデザインの時点で、決定打じゃないっすか? この場合シュンさんのハジメさんに対する警戒心の無さを逆手に取ったとしか。うーん、アレか?《一対のジンクス》」

前世獄族で、記憶があるメンバーで作戦会議。もとい愚痴吐き出し会。
懐かしい言葉が出てきて、なつかしむ・・・というよりは、その場の全員がビキリと一瞬動きを止める。
言ったヨウまでそうなのだから、とんでもないことだ。

春「一対の、ジンクス!?」
零「あぁ、獄族と術者の契約の際に使う一対の品な」
春「ま、まさか。それに使われてる!?」
零「だとしても、今回の指輪は受注生産品だろ。そうすっと、どこまで同じモノが出回るのに…一対って言えるのかこれ?」

陽「サンプル同士なら・・・まぁ一対に含むんじゃないか?ところでハルさん…ハジメさん《も》ってまさか」
春「カイが煩い」
零「・・・OK。把握した。指輪は?」

春「俺のは、“カイのせいで嫌な予感がしたから貰ってない”って言って通しているよ。それで、そこの鍵付きチェストの更に奥の鍵付き小箱に仕舞ってる(笑顔)鍵付きの(ニッコリ)」
陽「すごく良い笑顔ッスね」
零「厳重に仕舞ったんだな」

陽「そういえばサンプルとはいえ、好きな指のとこにサイズ調整してくれるって言ったけど…シュンさんまさか左手薬指とか」
零「あぁ、それ?俺のは右手中指用だ。といってもチェーン通すから意味ないし…ヨウの説が正しければ今はハジメが持ってるになるんだろうけど(遠い目)」
陽「つかさ、そのハジメさんの指輪・・・ハジメさんのどの指のサイズなんだろ」
零「・・・聞くな」

春「右中指って。えっ、ちょっと待って。指輪を付ける位置で意味あるんだけど、右手中指って《行動力・迅速さを発揮する・直感力や行動力を高める》だよ。」
零「う、わぁ…」
陽「シュン、骨は拾ってやる(ナム〜)」

春「今のハジメに行動力、迅速さはつけちゃいけないパワーでしょ」





◇ ◇ ◇ ◇ ◇





横で元獄族組がお通夜のような状態であるのを全く知らない、こちら前世の記憶がある人間組が、ハジメの部屋に集まっている。
メンバーは、イク・ハジメ・カイ。
風変りなメンバーだが、この三人は記憶があると判明してからはよくつるむ。
というか、犬猿の仲の様に言い争いながらもやたらとよく一緒にいるカイとハジメのコンビに、イクが巻き込まれているだけだが。

始「今回のコラボリングでシュンの指輪を入れ替えた(キリッ)」

海「お、イイなー。俺も実行したい」
始「《一対》の証」

郁「ん。ちょっと待ってください。でもソレは《一対のジンクス》に入るんですか?」
郁(というか、奪われたんだな奪われちゃダメでしょシュンさーん!シュンさんはハジメさんに警戒心を持ってください…っ)

始「受注生産なのを見越して、サンプルは俺とシュンだけのデザインを少し加えてもらった。“リーダーズですものね”で、通ったぞ」
海「ほう、そりゃ考えたな」
郁「そうですか・・・」
郁(ハジメさんも指にするのではなくネックレスチェーンをしている辺り不幸中の幸い?いや、でも石の色で気づくよなぁ〜。なんでシュンさん何も言わないんだろう)

始「ハルはどうなんだカイ?」
海「聞いたらさー、サンプル貰ってないって言うんだよ。しかも理由が、俺がそのサンプルにちょっかいだしそうで嫌だったとか。
だが俺の勘が、絶対受け取ってるっていってる! あれはどこかにキチンと仕舞ってるだろうな。ハルの性格からして」

郁(そりゃぁ、いままでの様子を見てたらそうなるって)

始「そっちは正攻法で駄目だったか」
海「かと言って、勝手に変えるのは、ハルが激怒しそうだしな。いまんとこアイツが折れるのを待つ予定だ♪」
始「粘れカイ!成功を祈ってる。こちらは気づいたシュンが溜息ついて「しかたないな」と言ってくれたな」
海「シュンはお前に甘いからなぁ。俺なんか、俺なんか、ハルにバックブリーカー喰らう可能性あるから。そこも良いんだけど」

郁「えっと、カイさん、頑張ってください!!――――――他にツッコミ役欲しいなぁ(ボソリ)」


※バックブリーカー
プロレス技の1つで別名「アルゼンチン式背骨折り」、もしくは「人間マフラー」



その後、イクはツッコミを放棄したのは、いうまでもない。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇





ある日。
ハジメがいきなり変なことを聞いてきた。

始「シュン…耳元が寂しいって思ったことはないのか?」

普通に「はぁ?」っとなったよ。眉をしかめたよ。意味がわからん。

零「いきなりどうしたハジメ?」
始「胸元を気にしているな。とは、以前から思っていたが、耳は?」
零「気にしたことがあるような、ないような??」

耳というと、髪の毛がかかるから気になると言えば気になるが。
なんだか…すごく困る展開な気がしてきた。
嫌な予感がしつつ首を傾げると、ハジメが俺の両肩をガシッと掴んでまくし立てた。
真顔で。

始「その指輪は獄族になる前の人生で、兄弟にもらった証なんだそうだな?しかもお揃いで。
その前世では、指輪を死ぬまで大事にしていて」
零「あ、ああ。なんかずっとあったからないと落ち着かないっつか」
始「今世では、その感覚無くて寂しかったと…………なら俺があげた耳飾りは!?あれも前世の品だろう!? なぜあれよりも前の前世のことはきにして、俺との前世は無視なんだ。 つまり俺はどこぞの男とやらに負けたのか?! 俺もお前とそれなりの年月一緒にいたと思ったんだがっっ?」
零「つか、おいまて!その話どっからっ!?
てか負けたってなんだ負けたって!?いつ誰となにを競ってんだよ」
始「契約の証にわたしだろう!」
零「・・・・あ!あー・・前世のアレ」

ようやくハジメの言っていることが分かった。
獄族だった時の契約の品のことだろう。あの一対の。

零「そもそもそれいうなら、ハルとカイと一緒にいた時間が一番なげぇ」

獄族の寿命って長かったからなぁ。
育ての親二人といた時間が、契約者の始めといた時間より、さらにいえば今までの前世を全部足してもそれよりはるかに長かったと言える。

年月だけでいえば、人外だったからこそ。たしかに指輪を首から下げていた時間より、耳飾りをしていた時間の方が長いっちゃぁ、長い。
とはいえ。

隼「獄族としての記憶は最近戻ったわけだし・・・」
始「あれは俺との証だろう」
隼「・・・(唖然)」

ごめんハジメ。
なんでそこまでこだわるのかわからない。

この間だって指輪勝手に交換されてたし。
なんで俺のアクセにまで文句をつけてくるんだ。

始「ーーーやっぱり、耳飾りも買おう」

零「は?」
始「ピアスにしよう。な?(笑顔)」
零「ピアスってなんのこと」
始「お揃いにしよう」
零「おそろーーーちょっと待て!俺は耳開ける気ねぇぞ!!そもそもあの時の耳飾りはイヤリングタイプだっただろっ」
始「安心しろ、俺がピアッサーで開けてやる」
零「!?」

こいつ本気だ。

始「さて今からショップに行こうな。なんのデザインにしようか?(笑顔)」
零「ちょっ!馬鹿力で腕を引っ張るなァァァァァ」(ズルズル)

耳に穴なんか、あけるかー!痛そうだろうが!!
嫌がる俺をとても爽やかな笑顔でひきづるハジメはガチだった。

だけど無理やりひきずられてるあいだに、俺の雄たけびをきいたハルが駆けつけてきて――


ドゴォッ!!!


春「ふー。だから信用が置けないんだよ」

風の力を利用した見事な飛び蹴りをハジメにかましてふっとばした。
ちょっと近くの扉がふっとんだけど、ハジメ普通に結界張ってたようで、瓦礫にまみれながらも無事だった。
俺ら獄族だってごみぐらいかぶるのに、瓦礫の中にありながら埃一つふれてないって・・・

ヤダ。人間怖い。

思わず俺とハジメの間にたたずむハルの背後に、ピャーっと隠れるよね。
ハルという盾がなければ、今のハジメと向かいあうなんてできない。こわすぎる。

そぉーっと、ハルの背中にすがりながら、ハジメが吹っ飛んだ方を見れば、衝撃を全部流しきれなかったのか頭を振りながらハジメががれきから起き上がってきた。
「いっついの・・・」としょんぼした顔で俺をみてくるハジメとか、まじやめてほしい。

ひょっこりハルの背から顔だけ出して、「イヤリングならいいぞ!」と言って、ハルの背後にまた隠れる。
「シュン、ハジメに甘すぎ」ってハルにため息をつかれた。
いや。でも。だって、そうでも言わなきゃ、なんか知らないうちに何かされそうで怖いじゃないか。


後日。何でも屋なカイが壊れた扉をいい笑顔でトッテンカンと修理し、ハジメからはなぜか嬉しそうに蝶のモチーフの片耳イヤリングを渡された。
ちょっと蝶のデザインをみてげんなりしたのは・・・秘密だ。
だが、「うわー嬉しいありがとう」なんて言葉は一言も言ってないから。

始「言ってたイヤリングだ!これならしてくれるんだろう?」
零「あーうん。言ったなぁ・・・はは・・・」

こんな会話で温度差が真逆のままに受け取った。








涙「あ、またシュンがハジメの押しの強さに負けてる」

郁「お、俺は年長組ほど前世に引きずられてないからね!だから相棒やめるとかやめてねルイ!」
涙「やめないよ」

郁「ねぇ、ルイはルイのままでいてね。俺も迷惑かけないようにするから」
涙「どうしたのいっくん?」
郁「いやーちょっとね。前世の記憶があるって厄介だなぁって思ってね」

涙「あるけど?」

郁「ん?」
涙「僕も前世あるよ」
郁「ん゛?!」
涙「獄族だったよね〜。みんなと会う前からその記憶ならあるけど。それがどうかしたの?」



郁「ん゛んんん?!」








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