有得 [アリナシセカイ]
++ 零隼・IF太極伝記 ++
最終話. ビーストマスター/ああ、髪を撫でて〜
<詳細設定>
【霜月シュン/シモツキシュン】
真名:神崎零(カンザキレイ)
前世:P4→黒バス→“太極伝奇”→ツキウタ
成代:鳴神→火神大我→霜月隼
一人称:俺
備考:
・転生者
・前世の影響でとにかくよく食べる。胃袋ブラックホール
・バスケバカ
・運動するのが大好きで、現在は剣術をならっている
・火神の時に犬に襲われて以降、犬が怖い
・ペルソナの能力が・・・
・前世がもう一つあって、“獄族”だと最近判明した
運命なんて言葉はいらない。
「ハル、なのか?」
「カイ?だよね」
一目見て、それが“だれ”なのかわかった。
思わず泣きそうになって、口元を手で覆った。
新しく生まれた世界で、再び出会えたこと。再び言葉を交わせた。それだけで満たされた。
それだけで信じられないぐらい幸せになれた。
“縁”がまだつながっている。
ただ、その事実だけがあればよかった。
“契約”の縁は、まだ続いている。
だからこれは運命なんてちゃちな言葉では済まないのだ。
これは魂の繋がりがなせるもの。
この出会いが、涙がこぼれるほどうれしかったなんて―――
【最終話. ビーストマスター
/嗚呼。髪を撫でて、頬を撫でて、御前を愛してやる】
「太極伝奇・零」 〜Side 弥生ハル〜
いや、もうぶっちゃけそんな事実ないけど。そうだよ、あのときは涙が出そうになっただけで。泣いてなんかないんだからね。
泣いてないからね!
始「お前が持っている“それ”は、俺のもののはずなんだが?(ニッコリ)」
海「そういうハジメこそ。俺のもんとってるだろ(ニカっ)」
始「返せ」
海「ハジメこそ返せよ」
いまなんかもう・・・ちょっと違う意味でいろいろ悲しくて涙が出そうなんだけどさ。
泣いてないからね!!!
目の前では、カイとハジメが、どちらもゆずらないとばかりに、額と額をくっつけて掌を握ってギリギリと力任せ押して押しての攻防を繰り広げている。
彼らが言う“アレ”とは、実は同じものをさしてはいない。
ハジメがしめているのは〈シュン〉のこと。カイが言っているのは、〈ハル〉のこと。
人名を言わず周囲にはわからないように言葉をぼかしているところからして、まだ理性はあったようだと、そこは称賛にあたいするけど。
もうため息も出尽くした光景だ。
せめて時と場所を考えて喧嘩はしてほしい。
つか、そもそも喧嘩するなということなんだけど。
なんにせよ。最近うちのハジメとカイがやたらと残念になってきている。
俺がカイとはじめて会ったときは、こんなんじゃなかった。
もっとこう神秘的な再会に胸がキュンとしたもので・・・。
――あれは、グラビ結成時のこと。
この寮への引越しをするとき、引っ越し業者のひとりにカイがいた。
寸前まで笑顔で「はい!おまたせ!」とか言いながら軽快に荷物を運びこんでいた。
その人物と同一人物だと思えないぐらい俺と目があったカイは、動きを止めて唖然として―――いまにも泣きそうな顔で笑った。
そのときの今にも消えてしまうんじゃないかっていう不安定なカイの姿は、忘れることはできそうもない。
勿論、俺も酷い間抜け面だったろう。
互いにまだ名乗ってないのに、俺達は無意識に名前を呟いたのだ。
もうお互いに、泣きそうな顔で「久しぶり」と言うのがやっとだったのを覚えている。
その言葉で、前世の記憶をお互いに持っていることの確認になったのだ。
人間として転生したことで、前世の契約の恩恵である“相方の契約者の存在は必ずわかる”といった探知機能は役に立たず、
ましてやこの地球上に、それも互いに記憶を持って転生しているとは思ってもいなかった。
だから前世の姿そのままに生まれてきたのは、きっと自分だけで、この世界のこの時代に、カイはいなのだと思っていた。
きっと前世の仲間たちはどこかでまっさらな魂となって生きてる――そうであればいいと願っていた。
だから生きてる間に、前世の仲間に出会えるなんて、それも偶然な出来事がきっかけで見つかるなんて、予想もしていなかったから、カイをみつけたときはひどく驚いた。
驚いたけど、それよりもすごくうれしかったんだよ。
そもそも昔より更に離れた西と東じゃ容易に見つかるわけないと納得したけどね。
運が良かったのは、この出会いでそれきりとはならず、社長がカイをスカウトしたことで、めでたくライバルユニットとして新たな縁が出来たこと。
俺たちはまた近しい場所にいる。
あれから数年。
現在、前世の記憶がある仲間たちが数人いる。
その中の二人が、目の前で、喜びとは違う感情なのに笑みを浮かべながら喧嘩している文月カイと睦月ハジメだ。
最近ではハジメとカイの二人が、眉間に皺を寄せてたり、笑いながらだったりしつつ言い合うこの光景をよく見るようになった。
この二人の喧嘩の原因が、もう悲しくなるぐらいバカバカしいのだ。
ハジメが前世の記憶を思い出したことで、互いの契約者が、自分とは違うやつの相棒におさまっているのが許せなくなったらしい。
春「二人ともバカじゃないの」
あまりのバカバカしさに、思わず言葉はトゲトゲしくなってしまった。
だってこの世界では、以前とは生まれた場所も環境もなにもかも違う。当然、出会いも違う。
そりゃぁ、出会い方や幼馴染や腐れ縁になるきっかけが違うんだから、前世と同じような関係になれるわけもない。文化や風習も違うから余計だよね。
そもそもプロセラはシュンがリーダーで、カイが参謀。グラビはハジメがリーダーで、俺が参謀。これは仕事として決まっていることだから変えようがない。
相方がどうのというのは、グループが決まった時点でポジション変更なんかきかないんだし、ハジメが前世を思い出す前まではそれでやってきたんだから、
いままでどうりやれよと。さすがに温厚と言われている俺でも、たまにいらっとするんだよ。
春「あのふたり、いつまでダダこねる気なの」
零「あー・・ハジメが特に“前の記憶”に引き摺られすぎてんだろ。悪いなハル」
春「わかってはいるんだけどね。でもいい加減にしてくれないかな。というか、周りの視線が痛いというか。
ああ、でもカイはハジメに合わせてるうちに、“前の記憶”あおられて、そのまま記憶に感情がのまれちゃった感じではあるよね。
木乃伊取りが木乃伊になってどうするのって、激しくつっこみたいけどね」
零「まぁ、そう言ってやるなって。
それより“前の記憶”って、ふつうは“人間様”にはこうも影響でるもんなのかね」
春「俺たちはここまでじゃないよね。
今の感覚と“前”の感覚が違いすぎて感情移入しづらいから、記憶にあおられることもない。
あの二人みたいにいつまでも引きずってることの方が、よくわからないかな」
零「……だな」
未だニコニコと壮絶に微笑みあいながら、けれど大声はあげず静かに口論する2人を見やる。
どちらかといえば、前世の記憶がともにあるほうが嬉しい。
そうでなければ、あのハロウィンで中華企画なんて提案なんてしなかったよ。
ただ・・・
その結果が少々よろしくないだけだ。
こじれすぎだろ。
始「いいかげん返せ。“アレ”は俺のだ」
海「お前もな。その手元に置いてあるの返せよ。“あれ”は俺のだから」
零「――なんでここでやらかすんだろうなぁ」
春「だねぇ」
ちなみに今は、仕事で撮影にきていて、その休憩の最中である。
仕事の時は二人ともちゃんと部をわきまえてしっかりしてくれるんだけど、それから解放された瞬間いがみ合うのだ。
仲良しなツキウタ。メンバーとして俺たちは有名なのに、笑顔といえど険悪なムードはさすがに周囲にも感じ取れるらしく、スタッフからも「喧嘩したの?」と心配げに聞かれるほど。
始「らちがあかないな」
海「そうだなぁ」
始「なぁ、カイ。そろそろ妥協しろよ。お前は“昔”から、俺の“アレ”と、お前ので両方持ってたんだから、“今”は一つ返せ。な?」
海「そういうハジメは、“今”は何年“俺のもん”を手元に置いていたのかな?ん?(^−^)」
始「いい年した爺が年下の若造いじめはよくないぜ」
海「たかが3,4年生まれるの違っただけで年寄り扱いはないだろう。うん。よくないと思うぜぇ。
ああ、そうだ。年齢の話を持ち出すなら、年上の言うことは聞かないといけないよなぁ?なぁ、ハジメくん?」
始「っち。そうきたか」
ハジメが示しているのは、きっとカイの精神年齢だろう。
前世の記憶があるということは、カイの精神年齢は数百はいっているはずだ。
そういえば獄族と契約したら、不老不死になるという噂が昔あった。
だけどそれは大きな間違い。
獄族だって、契約者だって、ちゃんと死はあるのだ。
そうでなければ、俺たちは今頃この世界に生まれていない。
ただ不老不死ではなく、不老に近いぐらい成長速度が遅くなり、寿命が伸びるってのは間違いがないが。
正確には、契約者同士の寿命が足して2で割られ、互いの寿命が均一になる。これにより人間では信じられないぐらいの長生きとなる。その分成長速度も止まるわけで。
これが「不老不死になった」と周囲が勘違いした理由。
俺とカイが契約したのは、たしか獄族のシュンが生まれるより・・・・・・・えっと、何百年前だっけ?
そう考えると、アレだよね。
カイってたしかにかなり年を召しているわけで。
春「もう。カイもどうしてそう若い子相手になにむきになるんだろうね」
零「・・・・いちおう言わせてもらうと、その“若い子”の中に春もはいるからな」
春「え?どうして?」
零「・・・・いや、だって今春は20代の若者だからな」
春「あ・・・・そういえばそうだったねぇ。オレ、まだ20年とちょいしか生きてなかったっけ。うっかりうっかりwwwちょっとトリップしてたかも」
零「春も“昔”にのまれかけてるからな!特に常識が!ついでにいうと年長組の中では、春が一番年下だぞ」
春「俺が年下・・・違和感凄いねぇ」
零「いや、事実だから!やっぱり“昔”に感化されてるのがここにもいる!!」
っと、言う感じに和んでいられたのもいまのうち。
そろそろ休憩時間も終わるからいい加減にしてほしいのと、スタッフの戸惑いがもう抑えきれないレベルになっている。
スタッフ「“アレ”ってなんだろう?」
ス「睦月君と文月君が冷戦してら」
ス「昨日まで和やかに打ち上げしてたのに」
ス「霜月君と弥生君も関係あるのかな?」
ス「あの睦月君も年相応な顔するのねぇ」
ス「文月君、ちょっとビーストモードはいってない?」
そんな空気の中、スタッフが現状を聞いてくるのは、わかりきっていたこととはいえ、理由が理由なため、聞かれたこっちとしてはたまったものではない。
ス「ねぇねぇ、霜月君。睦月君たちの言う“アレ”ってなに?」
スタッフのターゲットにされたのは、シュンだった。
まずいなと思いつつ視線むければ、慌てたシュンと目があい・・・
零「え゛!?俺にそれきくの!?えーっと、ハル!パス!」
当事者であるハジメとカイが、まだ理性があるのか、人名でやりとりしてないだけ世間に変な誤解や恋愛騒動とかおきないのはいいけど。
前世の契約に関することなんです〜とは、言えないし。
そりゃぁ、言葉に困るよね。
説明に困ったシュンは、そのまま質問を俺に全面的に投げわたしてきた。
それに思わずため息をつきつつ、しょうがないな〜と言葉を引き継ぐ。
黒の参謀だと自他ともに言う以上、この展開の打破に俺は適任なんだろうけど、今の俺はすごく嫌そうな顔をしてるんではないだろうか。アイドルのする顔ではないだろうなと自覚はしている。
なんであの二人の言い争いに巻き込まれなきゃいけないのさ。
春「二人が喧嘩しててごめんね。
そのせいで皆さんまでギスギスなんてしてほしくないんだけど」
いや、だってあの二人がああなった原因って、本当にくだらなくて、俺からしたら大したことじゃぁないしね。
当人以外からしたら、本当にもうね、過ぎ去った過去のことなんだよ。
春「えーっと、あの二人のいう“アレ”ってのは、むかし・・・・ああ、うん。子供のころの大切にしていた物。って思ってくれればいいかな。
それを二人が失くしたと思っていたのに、見つかったらしくてですね。
なんとそれをお互いが持っていた…というのが、最近発覚して。
思い出したからにはやっぱり返してほしいらしくて、ああやって言い合ってるんですよ。
バカなんですあの二人」
零「だな。とんでもないバカだ二人とも」
春「…だって、もう。返すなんてもう無理な状態だから、二人とも返すことが出来ないのにね。それでも、二人はお互いの宝物を返して欲しくてしょうがない」
春「俺としてはね、それを俺とシュンまで巻き込んで、バカ騒動に巻き込んでほしくないんだけど(ニッコリ)」
春「そろそろやめないと、俺もそろそろ
こうイラっとしてきて、ね?」
グシャッ!
思わず感情がこもってしまって、俺は笑顔のまま、手にしていた缶コーヒーを握りつぶしてしまった。
おっと、いけない。力の加減間違っちゃった。感情が高ぶると、前世の力のバランスがとりづらくなってつい暴走させちゃうのはよくないねぇ。
正直、スチール缶程度なら、片手で軽く潰せるし、道具なしで捩じ切ることも容易い。
風が反応しなかっただけましかな。
ス「え、あれスチール缶…」
零「あっ。あーぅ、ハ、ハルのはアルミなんだ、です!!」
ス「やだ。霜月君たらおかしな語尾になってるわよ」
零「あは、ははは。ハルぅータオルな」
春「あははは、俺ってばうっかりさん☆シュン、ありがとう」
海「そんなうっかりさんなハルも可愛いぞっ」
零「カイっ、いつもの常識は何処に置いてきた?!お前は常識人枠のはずだぞっ」
せめて飲みきっていて衣装を汚す大惨事にはならなかっただけマシ。と、思っておこうかな。
最後になにげなく背後にまできていたカイのことは見もせずに、そのままおもいっきり裏拳くらわしたけど。
え、どこにあたったって?さぁ、しらないなぁ。
契約者って、魂のつながりが深いから、その存在がとても大切であることは変わらないんだよ。
でもね。
ちょぉっと、最近のカイは調子乗りすぎ。
(だって、パートナーは、仕事の都合で決まってることだし。
今世で出会って腐れ縁になったのは、俺とハジメという展開だし。もうどうしようもないよね?
俺だって、自分じゃない奴が契約者の横に相棒面して立っているっていうのは、モヤっとしなくはない。まぁ、シュンだから許すけど。
けれど、横に立ちたいからって、我侭言って、世界の理でも捻じ曲げないと無理なことは言ったりしない。社長に言えば短期間なら何とかなりそうなきもするけど・・・)
ここが現場でなかったら、「いつまでも前世にひきずられてんな!現実みなよバカぁ!!」ぐらい、大声で言っていただろう。
そんなに相方になりたいなら、生まれところからやり直せ!と言いたい。
そうでもしないと、二人の喧嘩の原因って、この新しい世界では叶えられない気がする。
なのに。
海始「「譲るわけにはいかないんだ!!」」
な〜んて、元人間の前世ひきずりまくり組が声をそろえて言うものだから。
春「(ニッコリ)天誅!!(怒)」
ゴッ!!
っと、ハジメとカイの首を手刀で叩き落とした。
うーん。今の手ごたえからして、身体強化の術でもかけていた感じかな。
二人ともハイスペックだから本当に嫌になるよ。
零「こんな事になるんなら、そのまま再び記憶が吹っ飛んだほうがハジメとカイの為なんじゃ…」
春「あぁ。そういうの昔のハジメは得意だったよ。俺も教わっておけば良かったかなぁ」
零「え?俺、そんなの知らなかったんだが…!!」
春(シュンには黙ってたのか)
今も昔もハジメは天才型だが、それに胡座をかかず努力するタイプだ。
ただし、“使える限りあらゆる方面で”が注釈に付くけれども。
そしてダークゾーンな技が出来ることは、やはりシュンには教えなかったらしい。
ハジメが記憶操作が得意と俺が知ったのは、偶然なのだけれど。
あの時の笑みと言ったら…術が光属性だからって、性格も光とは決まってないって実感したっけ。
味方側としては頼もしいが、敵としては相手にしたくないとも思ったよね。
月城「ちょっ!ハルくん?!人の鳴らす音じゃないよ!!二人は大丈夫なの?!」
春「彼らは丈夫なので大丈夫です(にっこり)」
始「う、いてぇ・・・少しは手加減しろハル」
海「いやぁ、まさかブレがない手刀とはなぁ。昔もよくやられたなぁwww」
春「(やっぱり無事か)まっったく痛そうな顔してないじゃないの」
まったくもう、いやになっちゃう。
俺、僅かばかりとはいえ獄族の力出したよ。
それをあっさり前世の力で防ぐとか、2人は油断ならない。
傷一つなくピンピンしてるし。
まわりがひいてたよ。
え?俺のせい?いや、カイとハジメのせいだと思うな。
とりあえず、もう一つだけ釘を刺しておこうかな。
そのためには。
うん。時には武力行使も必要だよね。特に、人の話を聞かない奴らには。
春「力使うとボールペンとかうまく持てないなぁ〜。ねぇ、二人とも、こうなりたくなかったら、時と場所を考えようね?」
ニッコリ笑って、手にしていたプラスッチク製のボールペンをにぎってみせる。
バキバキとわれてくだけたそれは、見事に内側の金属まで粉々になって、さらりと俺の手の中から落ちて机の上の灰皿におちていく。
キラキラした光の粉の山が完成した。
それをみて、騒いでいた二人の動きがピタリととまる。
春「ね?」
ニッコリわらって聞けば、二人は貝のように口をとじ、そのまま勢いくよく首を縦に振った。
「さすがにあれは防御できない!」
「いまだけは休戦だ!」
そんなヒソヒソ声が聞こえたが、「ん?なにかな?(^v^)」と微笑んでみせれば、
なんでもないと首を振って、二人は乾いた声で笑いながら手を取り合って肩をたたきながら、仲直りとばかりに手を組んでいた。
よし。
零「バキバキ…って、ハル。手に怪我はない・・・ようだな。うん、欠片が刺さってもないな。良かった」
シュンが口を引き攣らせてツッコみつつ、俺の掌を確認する。
ああ、相変わらずウチの子は、前世も含めイイ子だなぁ。
ちょっと和んだので、シュンの頭をなでなでしておいた。癒された。
俺は前世ほどではないが、異能力を今でも使える。
だけど、この世界とは相いれないそれは、この世界に満ちる力を応用して使っているので、たまに暴走する。
もともと風なんて大雑把な能力であったこともあり、俺はいまいち繊細なコントロールが苦手だ。大技は得意なんだけどなぁ。
そうやって感情にひきずられて引き出された力は、第三者が介入してくれないと、その力を安定させることがあまりできない。
さっきうっかりスチール缶を怪力で破壊してしまったも感情に力がひきずられたせい。
こうなると直後の持ち物に加減が効かない。この流れでダメにした物と数は思い出したくない…
普段なら、契約者が傍にいると落ち着くものだけど。
今は契約者ズがいると、俺の心が落ち着かなくて、逆に暴れてしまいそうだ。
で、こういう時に頼れるのはヨウだ。
能力のバランサーは、獄族の中でも彼が随一だった。それは転生した今でも同じ。
寮に帰ったらとヨウに調整をお願いしようと決めた。
そこからは休憩中におかしな騒動があることもなく、無事に撮影は進んだ。
ちょっと俺が力加減を間違いそうになったけど、そこはカイがフォローしてくれて助かった。
―――っという、エピソードを寮に帰ったあとヨウに告げれば、ため息まじりでヨウがソファの横を進めてくれたので、そのまま彼の横に腰を下ろす。
春「おねがいしまーす」
陽「はいはい、分かりました。こちらにドーゾ」
皆まで言わずとも遠い目をしながら了解するあたり、状況把握に慣れたもんだと思う。
額と額をこつんとふれあわせ、互いに目を閉じる。
目を閉じることで互いの波長を感じ取りやすくし、互いの体の中にある“力”が滞っている場所を確認していく。
陽「体内の方は、ああ、やっぱり。手に力がたまってるな。春さんキレタとき手に何か持ってたでしょ」
春「スチール缶」
陽「それのせいで一気に力が手に流れたんすよ。流れが滞ってるせいで、力が手でせき止められて、他のリンクがふさがった感じっすかね」
春「うん。風がわかんなくて息がしづらいなぁとは思ってた」
陽「じゃぁ、次は体外へ通じる流れをもどしますよー」
第三者から見ると、ひたいをくっつけて目を閉じているだけの光景。
だけどさっきより体が軽くなるのを感じれる。
あ、風とのリンクが戻ってきた。
さすがはヨウだ。温度調節とか細かい作業が、能力に作用するヨウならではだ。おかげでヨウの“調整作業”は的確で、とても速い。
体のどこかで滞り淀んでしまっていた力がほぐされて、再び体に力がめぐる。
その流れを、うまく体内に循環させて、次は周囲の自然のエネルギーもうまく取り込めるように、正常にもどるように流れをうみだす。“流れ”がうまれていく感覚に、ほっと息をつく。
そうやって力の調整を図ってると。
カイが泣きそうな顔で
海「はるぅー…だったら俺が」
と、後ろから大型犬のようにきゅんきゅんしながら訴えてきた。
目を開けば、なんだか・・・・なんだかもう・・しおれた尻尾と犬耳がみえそうな、かなしげな哀愁漂わせるカイが目の前にいて。
………少し良心が痛む。
とか、思いたくない。
確かに獄族のパワーコントロールが一番上手なのは、その獄族の契約主であるのは間違いない。
けど、俺は怒ってます。
怒 っ て る ん で す !!!
春「触らないでくれる?」
海「ハルがきびしい!」
零「お前がいるとハルの体調が悪化するだろうが!」
海「あだっ!俺がハルの体調悪化させるとかないわ!ないって。だって契約者だぞ俺www」
零「不純混じったオーラが感じる(真顔)」
スパーンとキレのいい音とともに冊子を丸めたやつでツッコむシュン。……ここだけだと漫才だよね。
陽「なぁ、ハルさん。ハルさんの契約者大丈夫か?」
春「(ものすごい渋い顔)常識どっか置いてきたらしいね」
おかしいな?再会当時のカイは、格好良かったし、マトモだったんだよ。
そんな中ハジメが「ざまぁ」って笑うので、背後からシュンがハジメに膝カックンした。
零「お前もだ!」
うーん。これはこれで平和なのかな。
今日もツキウタ寮は、相変わらず騒がしいです。
とりあえず―――【急募】常識。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さてさて。
そんな感じでハジメとカイの変な騒動は収まった・・・・・・かにみえたが、実際そうでもない。
喧嘩はしなくなったが、変なところで張り合うのは相変わらずだ。
おかげで、年下組からの視線の種類が変わった。最初は険悪な二人にハラハラしていたが、
いつしか一種の恒例行事と認識しだし、「このやりとりがハジメさんとカイさんだ」と微笑ましく見守るものに変化していた。
寮内で剣呑とした悪い空気が漂わないだけマシなのかな。
それにしてもうちの寮の年下組の胆のすわりぐらいと、状況への適応能力の高さは本当に見事だと思ったね。
そんな折、とある歌のバラエティ番組で、スペシャルゲストに俺達年長組四人が呼ばれた。
もちろんバラエティというだけあり、歌うだけではなく、様々な企画やトークが盛り沢山なわけで・・・
「相棒のことをどこまで理解しているか!まずは睦月君と文月君からやりましょうかっ」
と、いう王道で手堅く好評な企画もあった。
趣味は?とか好きな食べ物とかマイブームなど俺達四人は質問事項に予め答えを記入してあって、
あとは本番でフリップに書いて合っているかって流れだ。
司会者「へぇ。弥生君のマイブームは・・・・ですか。なるほどほなるほどwww」
春「えぇ。すごく面白くて」
みたいな感じで、そこからトークの枝を広げるわけなんだけども。
これが、もうね。俺達が想定していなかった悪い方向へと進んだのだ。
むしろあの二人がやらかしやがったというべきかな。
もちろん原因は、前世にひきずられすぎのハジメとカイである。
そのフリップに書かれている答えが問題で。
カイ→俺の回答
ハジメ→シュンの回答
だったんだよ!しかも二人して、俺とシュンが口挟む余地もないパーフェクトな補足までするから、こちらは固まるしかない。
ちなみに俺達全員答えは、一切答えを教え合っていないにも関わらずだ。
なぜ、それをお前が知っている!?
っと、思うよなこともあって、そのときは思わず組んでいた手の拳に力がこもっちゃったりしてね。
シュンなんか、魂が抜けたようにポカーンとしてたからね。
司会者「合ってる。うん、全部の質問合ってるんだけどね?
睦月君は霜月君の答えだし文月君は弥生君の答えだし、お互いのライバルユニットの回答だよね?…………あ、そうか!仲良しか!!!('ω'*)」
春零((ですよね!!!))
キレの良いツッコミは司会者がお笑い芸人さんだからなのか笑いが起こる。それに対し
海始「「シュン(ハル)のことは俺が分かって当然!!!!」」
胸を張ってイキイキと返答した二人に、俺はその場で頭を抱えたくなった。
その瞬間、観覧者方の割れんばかりの悲鳴が轟く。
ん?歓声だったかな?
どっちでもいいけどね、これはヤバイと、そこですかさずフォローを叩き入れた…微笑みを携えてねっ。
春「ふふ、いたずらバレちゃったみたいだね。もう。駄目だよ二人とも。そりゃ俺たちグラビとプロセラは、仲が良いけどさ。笑いを取ろうと、そんなおかしな解答したら司会者さんが困るだろ」
零「よーし!俺達も頑張って相方の答えを当てなきゃな!うんっ」
司会者「い、悪戯なんだね!睦月君達の意外な一面が垣間見えたところでお次は弥生君と霜月君どーぞ!」
俺とシュンはちゃんと主軸に沿ってやりましたとも。一大企画だし―――カイとハジメのくだりで大幅カットはないんだろう、なぁ(遠い目)
そして沢山のトークした後、恒例の歌の収録もあるわけで。
準備で一度、四人全員が楽屋に戻る。
周りに人の気配がないのを確認し俺は釘を差す。
春「この後、ハジメの撫で撫でとカイのビーストマスターの収録がこの番組で控えてるけど。わかってると思うけど
―――この間の酒飲みでのカラオケの時のように俺達を見ながらとかしないでよ。やったら・・・
潰すよ?(小声低音)」
今日のスチール缶のごとく。
そう言ったら、シュンにまで頷かれた。
思い出すのは少し前のオフの時。
まだハジメが不安定だからと、気晴らしに年長組だけで居酒屋にいったんだ。
愚痴だけを聞くつもりが、酔った勢いって怖いね。
そのままハイテンションでカラオケになだれこんだ。
まぁ、俺が酒に強くてよかったね。全員がなにかしでかして報道されやしないか気にしてられたし。
あの時はお酒が入っていたし、テンション高くなってたし、人間サイドが情緒不安定だったから、そのうさばらしのつもりだったから、好きにさせてた。
だけどカラオケで歌いながら、今の相方ではなく前世の相方を見ながら歌うものだから、なんだか何とも言い難い場が出来上がっていた。
しんみり?もうシトシト雨が降ってきそうな勢いだった。
ハジメなんか泣きながら歌って、シュンをこまらしてたし。
まぁ、あの場は酒の勢いで盛り上がっていたということにしておく。そう、酔っていたんだ。酔っていたんだよ。
あの時はハジメとシュンの記憶が戻って間もない頃で、ああいうおかしなテンションになるのも仕方ないしって許せた。
あのシュンですらハジメが〈睦の月〉を歌っていた辺りとか、ちょっと涙ぐんでいた。
真の意味で再会出来たんだから、まぁ、泣くよね。
うん、酔っていたんだっ!!(2回目)
だが、仕事でカメラ目線ではなく、俺かシュンに視線を向けられても非常に困る。
しかもこの番組のハジメとカイへの指定曲が〈嗚呼、髪を撫でて、頬を撫でて、 お前を愛してやる〉と〈BeastMaster〉
……歌詞の内容も過激な曲コンボである。
最近発売したやつなのだから当たり前なんだけど、この前のカラオケ思い出すというか、もうタイミングが!
もちろん俺達も指定されていて〈Faith and Promise〉と〈Monochrome sky〉となっている。
ちょっと、待って!
なんで番組さん、その四曲選んだの!?
もしかして俺たちの前世とかご存知の誰かがたくらんだ!?
そうとしか思えない抜群の選曲センスだったといっておこう。
春「いい、二人とも。また何かやらかしたら・・・二人とも一週間接触禁止令出すから。あと口も利かないから。誰と?なんて愚問は無しだよ( ´∀`)」
海始「「仕事全うする」」
零「あーあれだ。ま、全うしたら今日の夕飯好きなやつ作ってやるからさ」
始「きっちりこなしてみせる(王様の本気顔)」
海「お、シュンの飯かー久しぶりだなwww」
春「シュン、甘いよ」
ほんとハジメはシュンが主軸になり過ぎてない?
っていうか、甘い。
ぬるいよシュン。そんなだから二人が調子に乗るのだ。
撮影自体は無事だった。
撮影だけはだ。
俺の心は無事じゃない。
春「……結果オーライだけど、オーライなんだけどね・・・・・・・ちょっとカイ!!!!!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
始「ハルは記憶が戻る前は、いや、あいつはもとから記憶があったか。
まぁ、俺が知るいわゆる今世の弥生ハルというのは、高所恐怖症だったんだ」
郁「え?高所恐怖症・・・春さんが?」
始「いまも怖がって椅子の上にも乗れないレベルなんだ。どうも自分の力以外で浮かぶことが怖いみたいで・・・」
天井を見上げながら、ハジメがしみじみと思い出すように告げる。
それに横にいたイクも、また同じように上へと視線を向けながら頷いている。
その頷きにこたえるようにハジメが呆れた視線をオレに向けてくる。
目があったけど、そっちもプイっとそらした。
聞こえません。
始「観覧車に乗った時、窓から離れようと必死で、しかも震えるほど怖がって。
あいつ、今にも死にそうな真っ青な顔で。てっぺんに来た時、突然立ち上がったんだよ。
何事かと思ったら、そのまま扉に近づいて《こわい!こわいこわい、ねぇ観覧車降りていい?!降りて自分で飛びたいっ!》って言うんだよ。当然、慌てて止めるよな。
そもそも、その段階では俺の記憶が戻る前だったから、紐なしバンジーを考えるほど頭壊れたかと当時思って全力で止めたな。
まぁ、今になって思えば、あの心配じたい必要なかったわけだが。・・いや、まてよ。たしか契約者のカイと会ってからこの世界の自然エネルギーを能力に変化する方法をあみだしたんだったか?その場合、あそこでとめなかったらハルは死んでいたな・・・・・まぁいい、なんにせよ観覧車から飛び降りたくなるほど高いところはだめらしい」
郁「は、はは(苦笑)」
始「だが。この状況を見ているとそれを疑いたくなる」
始「なぁ、イク。ハルが怖いと思う感覚と今の状況の違いってなんだと思う?」
郁「やっぱり自力かそうじゃないかですかね」
始「よくわからないな」
苦笑するイクにハジメがため息をついたあと、視線をおろし、興味が失せたように歩いていってしまう。
そんな二人の話に聞き耳を立てていたのがばれたのか、イクに困ったように手を振られた。
目が合ってしまったので、慌ててそらす。きいてないふりだ。
だってそんな恥ずかしいこと、今更、ねぇ。
いや!今はそれじゃない!!
もっと重要なことがあって・・・
海「おーいハル。ごめんってばー!な!わるかったって!」
春「ふん!」
撮影翌日。
少し時間を戻して、俺はまたしても怒っていた。
ごめんと、手と手のしわをあせてしあわせ〜ではなく!謝罪をしてくるカイを無視し、手をつかまれそうになればそれを払い落とす。
そのままカイの手の届かないところに逃げたわけだ。
それが、今。
カイがこれない場所で、そのまま待機中なわけで、ハジメやイクと視線が合おうが、通りすがりの仲間タイに目撃されるはめになるが、ここを動く気はない。
怒ってるんです!!!!!
海「ハールー」
恋「シュンさんに関して。以外は、菩薩のようなハルさんを怒らせるなんて、カイさんなにしたの?」
零「あー…昨日の特番収録でちょっとな」
「「「「あぁ」」」」
シュンの一言でそこにいるメンバー皆、納得気な顔をしてきた。
え、それで納得出来るほど当たり前になっちゃったのこの光景?
実際、何があったかというと、あの収録の時、カイがやらかしてくれてね。
やるな!と言った傍から、やりやがった。
(よりによって最後の最後で…!いくらカメラマン跨いだ後ろに俺がいたとはいえ、視線がバチンッと合ってからのウィンク………確信犯だと長年の勘が告げてる)
もう恥ずかしいやら、いらつくやら。
ばれてたらどうしようとか、変な報道されたらどうしようとか、気が気じゃなかったよね。
約束破られたこちらとしては、怒りたくもなるよね。
本当に一週間口を利かずにいてやろうかとも思ってしまう。
海「はぁーるー!もうしないから!な!だからおーい降りてこいって」
春「やだよ」
俺はただいまストライキ中である。
場所は、梁の上。
カイの手が届かない場所ってこのあたりしか思いつかなくて。
トンと軽く地面をけって、周囲の風に干渉してふわりと飛び上がり、そのまま手が届かないような天井の梁に座って、カイへストライキを決行。
春「狡猾爺め」
海「はるぅ?!い、今の俺はぴっちぴちの20代だぞ…?!」
カイが訴えてるのは聞こえるがスルーする。いくら身体能力自慢のカイとはいえ梁は登ってはこれないだろう。
前世の世界と違って、ぜいせい自分の半径1mぐらいの範囲の風しか操れないとはいえ、それだけあれば自分の身体を風で操ることは容易い…こういう時に便利だ。
そのため最近では、寮では構わず能力を使用している。
そんな俺に対抗して、人間サイドの転生者たちも今では札を作ったり霊力のかわりに魔力を籠めたりして、
すっかり前世の能力を使えるようになっている。
それに対して、最初のころは戸惑っていた仲間たちだったけど・・・
駆「最近ハルさんに超能力が目覚めたようで。空飛んでるんですけど・・・えー。あれ、ありなの?」
葵「リアルラムちゃんかぁー。って、あれ?カイさんなんで年齢を強調すんだろ?」
新「でっかいラムちゃんだな」
涙「僕もとびたい」
夜「天井の梁に乗ったままだけど。そのまま。そのまま是非!ハルさーん!よかったら手の届かないところをいつか掃除してください!!」
ヨルの言葉に指でオーケーサインを作る。
それに気づいたヨルはパアッと顔を綻ばせ今度お願いしまーす!と喜んでいた。
カイはそのやりとりを見て更に落ち込んでいたようだけど、俺、知らない。
陽「・・・お前ら、あれ見てもなんとも思わないのか?」
ふいに呆れたようなヨウの声が共有ルームに響く。
たとえ人が飛ぼうが、シュンが周囲を氷結させようが、ヨウが手もふれずカップの中身の飲み物を温めようと。
寮の住人たちが、気にしたことはない。
彼らは俺たちが思うより遥かに図太かった。
結論。
俺がとんでも誰も気にもしなかった。
なぜなら
「「「「だってうちにはTVダンジョン化する魔王がいるのに。今更?」」」」
陽「・・・・・それもそうだな。まだサイキック能力か、風の力で飛んでますって言われた方が、現実的。
つぅか、TVダンジョン化より納得できるよな」
うんうん。それに関してはヨウと同じ意見だよ。
異空間化や空間能力は、最強といわれた獄族でも出来るもんじゃないからね。そもそもそんな能力きいたことないよ。
シュンは以前は白い炎からいろんなものを召喚してたけど、その能力が歪んでしまってこの世界ではTVという空間に影響を及ぼしている。
いちおう空間能力というくくりであれを考えると、流石は俺の(見出した)子というだけはある。
遠くで「ぎゃー!」という話の当事者であるシュンの悲鳴が響いた。
原因は言わずもがな、ハジメだろうね。
どっかでパキパキパキと何かが凍り付くような音が聞こえたけど、まぁ、いっか。
まぁ、最近恒例になったのでそれすら気にする者はやはりおらず。
心優しいヨルが、風呂場にお湯をわかしにいった。
ツキノ寮は今日も平和に、超常現象に見舞われている。
海「はるぅ〜・・・・・(しょんぼり)」
ああ、そういえば。まだ問題が一個残っていたね。
春「……………カイ。後で荷物持ちで買い物付き合って」
海「っ?!どこでも付き合ってやる!!車持ってくるな!」
こんな一言で、みるみるテンション上がるカイを見て思う。俺、塩対応過ぎたかなと。
零「塩対応どころか、ハルもじゅうぶんカイに甘いぞ」
涙「あれはもうお塩じゃなくて、砂糖だね」
零「って、ルイ!?いつのまに」
契約とは
魂をしばる鎖
ハジメはその重圧に、相方の命も背負うそれに、その古いきおくに苦しんでいる。
けれどその結ばれた縁が、けっして悪いものばかりはないって思うときがある。
魂の縁が、俺たちをまた出会わせてくれた。
二度と会うことはないと思っていた人たちと
再び
出会い、触れあい、笑いあって・・・
これ以上の喜びはない。
―――出会えた奇跡に 感謝を
春「ありがとうみんな」
出会えて、よかった。
これから咲(サキ)も
こうして 咲(ワラ)っていこう