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[花悲壮] → ツキウタ



【SS-19】 レンズ越しの日常を

<詳細設定>
【弥生字】
・本名《字》
・魔法のある世界の春成り代わり主
・二つ前の前世【復活】より超直感引継ぎ
・一つ前の世界は【黒バヌ】の花宮成り代わり
・魔力豊富な世界で、生まれつき魔力0体質
・だれも本名を呼べないので、むかしは《花》と呼ばれていた
・芸名『春』
・前世から変わらず、見えてはいけないものが視える
・超直感は今日も元気に活躍中www
・始の魔力で生かされてる
・始は充電器か空気という認識
・原作とは違って、甘いのがめちゃくちゃだめ。辛党派。
・ちょっと思考回路が人とズレてる、ボケてるともいう









“それ”は寮が空になる日、グラビの共有ルームにひそかにつけられた。







【レンズ越しの日常を】
 〜 side 春成り代わりな字 〜








無人だった部屋もしばらくするとバタバタと足音が聞こえてきて、SIX GRAVITYのメンバーたちが帰ってくる。

恋『たっだいまーです!お!一番乗り!』
駆『ただいま帰りました!』
新『いやー帰った帰った』
陽『おっさんか』
夜『お邪魔しまーす』
葵『みんなはやいよ!あ、ただいま戻りました』

海『お、お前ら元気だなwww』
字『ふふ。年下組はいつも元気だねぇ。時間的にみんな今帰ってきたところかな』

年中、年少が戻ってきたあとにつづき参謀ズが部屋に入ってくる。
Procellarumの方も階段で子供たちが駆け上がってくる。
この寮にはエレベーターもあるのだが、こどもたちはわざわざエレベーターを待つほどではないと階段を使うことが多い。
そうすると3階に行くのを面倒くさがり、一度2回のグラビ共有ルームで落ち着いてから戻ることが多い。
徐々にプロセラ、グラビのメンバーが集まってくるのはそのせいだ。

春(こと、字)はニコニコとこどもたちをむかえるが、その手は大量のビニール袋がぶるさげられている。

字『おかえりみんな』
海『いや、お前はただいまだろ』
字『あ・・・ただいま』

『『『おかえりなさい春さん!!』』』


字『ん?』
涙『春、どうかした?』

字『いや・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふふ、“がんばって”ね』

字は誰にともなく"軽く手をふった"あと、くるりと葵の方へ視線を向ける。
その表情は嬉し気だ。

字『ねぇきいてよ葵くん!』
葵『お、俺ですか?』
字『やったよ!』
葵『?なにがですか?』
字『今日は!今日はなんとユズがついに志季さんに勝ったんだ!オレは一回戦負けしちゃったんだけどね。
ついにじゃんけんに勝ててね!なんだかずいぶん久しぶりに蕎麦以外のお昼を食べたよ!!』

その言葉に居合わせた仲間たちがざわりと沸き立つ。
彼らの中で、志季の蕎麦好きはとても有名であった。

葵『やりましたね春さん!それで今日は何を食べたんですか?』
字『葵君ならきいてくれるとおもったよ!ありがとう!ありがとう!!今日はいつものメンバーでピザです(ドヤ)』
恋『ひとりめちゃくちゃ渋い顔をしてそうなひとが浮かぶのはなぜだ』
字『ユズはドヤ顔してたよ?オレも久しぶりのイタリアンで・・・・幸せでした〜( *´艸`)』

駆『あ、あの志季さんから蕎麦をうばうなんて』
陽『むしろ勘がいいはずの春さんがいつもじゃんけんに負けるその理屈が分からない』
字『いや、なんかこの型を出した方がいい気がすると思ってだすと・・・・たいがい一番に負けてしまうという』
駆『それ負ける方に勘が効いている!』
字『こういうとき、もう少し直感で細かく診断が出るなら無敗いけそうなんだけどなぁ』

始『どうだか。春はへんなところでずれてるから、その直感もずれてんじゃないのかww』

ふに廊下から声がかかる。
扉を開けて入ってきたのは、本日はオフのため今の今まで惰眠をむさぼっていた始だ。
寝起きと丸わかりのぼさぼさの髪に、しゃつもよれよれのねむそーな始が登場し、葵が何事もなかったようにさくさくと苦笑しつつその乱れを直していく。

字『あ、おそうよう始。また寝てたんだね。そんなだらしないかっこうして。
いまごろ、そんな始を見てる何人かがティッシュにかけよってるよ』
始『何言ってんだお前?ふわ〜。ねむい・・・』
字『・・・ずいぶん前だけど、始を見ると全国のファンのひとは吐血するって・・・・・・だれだっけ?隼だったかな?誰かが言ってたよ。始が色っぽいんだって。色っぽいってどのへんが?』
始『色っぽい?そんなのものしるか。まぁ、間違いなく血を流すのはお前じゃぁないな』
字『そうだね。オレ、始のファンじゃないし』
始『ふぁぁ〜』

字『おーい、寝るの?立ったまま寝るとか』

字『・・・器用だね(真顔)』
始『あほか。どこをどうみたら寝てるんだ。眠いとは言ったが寝てるとは言ってないぞ。ふわ〜・・・ねむい・・・お前、いいにおいするな。腹減った』
駆『あ!それ俺も思ってました!!!はるさぁーん!!なにか隠し持ってるでしょ!!ぜひ!ぜひ!!』
字『あ、忘れてた。さすが駆だねぇ』

字『みんなにお土産だよ〜。ジャーン!今日志季さんから勝ち取った昼ごはんの残りです!!ちなみに志季さんがおごってくれました!』

『『ピザだー!!!やったー!!』』

字『プロセラの分もあるからみんなよんできて食べよう』


スマフォの音が響き、3階からパタパタとかけてくる足音も聞こえる。
テーブルを二つつかってピザと飲み物と取り皿を並べ終わるころには、メンバーが勢ぞろいしていた。

字『はーい、今日のおやつは志季さんに感謝して食べましょう。では、いただきます』

『『『志季さんいただきまーす!!』』』


食べたい種類のピザがあっちの机だ!と年下組が楽し気に二つのテーブルを行き来する。
年中組女子力コンビが「はしたないよ」と注意するも、「今日は無礼講だ」と年長組が笑う。

字『こら始!その油まみれの手でリモコンに手を伸ばさないで!』
始『ん』
字『はいはい。もうしかたないなぁ』

フォークは使わず手でペロリと一切れをあっさり食べた始が、そのままTVのリモコンをとろうとしたのを字がとがめれば、逆に手を突き出される。
字は言葉のないそれに呆れつつ、いつものこととばかりにだいふきんで始の手をふきふきする。そのあとにリモコンと、空になりかけていたコーヒーに新しいものを注いで渡す。
阿吽の呼吸である。

その横では、陽と恋がとある味の最期の一枚のピザを求めて争奪戦をしている。
勝ち取ったのは脇からひょっこり乱入して奪い取っていった新だが。

頬をリスのようにふくらまし、モグモグと幸せそうにしている駆の汚れた口周りをふいてやりながら、字は楽し気にニコニコして騒がしい共有ルームを見守っている。
駆の汚れを落とすと、周囲を見渡しながらのんびりと食後のお茶とばかりに緑茶をいれてほっこりする。

これはいつもの日常のツキノ寮である。



字『ねぇ、始』

始『?』
字『あんまり“人前”で寝巻のままうろつかない方がいいよ?あとそのまま寝るのもなしね。寝相がすさまじく悪いの“目撃”されちゃうよ?』
始『オフだオフ。家ぐらいゆっくりさせろ』
字『家、ねぇ。まぁ、普段ならいいんだけど。時と場合によるよね』





字『ふむ。この場合って出演料出るのかな?』





 


* * * * *





 


「LIVE」の文字が点滅する画面の隅。
その画面を凝視していた何人かが、寝起きのだだもれのあは〜んな雰囲気の始に鼻血を流した。
またあるときは、黒年長のあまりの阿吽具合に、顔を赤くし眩暈を起こして倒れ込む。

『始さんの寝間着姿!!!』
『あああ、もう!!!色気がぁぁああ!!!!!!』
『始さんうるわしい』
『寝起きとかかわいすぎか!!!』

『本当に鼻血だした女子多いなぁ』

『つか春さん!!春さんがおかんか!!』
『さすが黒年長(かおひきつり)なんだよあの熟練夫婦みたいな流れは!!!』

部屋に全員が集まるまえに秘密裏に設置された隠しカメラで、“アイドルの日常に迫るというドッキリ企画”はSIX GRAVITYだけではなくProcellarumのアイドルとしてではない彼らを着実に映し出していく。
この企画は大成功だなと、ディレクターや番組の司会者が状況を解説しながらほくそ笑む。





『なぁ、あれって弥生さんにばれてない?』








 


* * * * *





 


おいしくピザをいただき、全員が「御馳走様」をしたところで、共有ルームの扉が勢いよくひらいた。


『ドキドキッ!アイドルの日常を生中継!!』


バーン!と「ドッキリです」という看板を掲げた番組司会者と、カメラとその他大勢のスタッフがなだれ込んでくる。
それにきょとんとするツキウタメンバーたち。

一人、パジャマ姿の始だけが、ビキリと動きを止めかたまっている。

『本当に普段でもツキウタの皆さんは仲がいいんですね〜』

『ん?えーっとどちら様?』
『某モニタリング系の番組の者です』
『ああ、あの生中継でドッキリをしかけるっていう・・・・・え』
『い、いま、いま・・・生中継って(あわわ(汗))』
『ドッキリですから(*'▽')』

『え』
『ドッキリです(ニコリ)』

『!?』
『え?』
『うそ』

『いえいえ、ドッキリです。ほら、ここに隠しカメラが』


『ドッキリ!アイドルの日常を生中継!!生放送企画です。現在進行形で映ってますよみなさん(ドヤ)』

『『『え』』』



『『『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』』』



『いやぁ、みなさん、ご協力ありがとうございました!いい絵がどれましたし、視聴者の皆さんもさぞ喜んでくれたことでしょう』






始『・・・着替えてくる』
葵『はは(苦笑)さすがにもう遅いと思いますよ』

字『だから“言った”のに』
始『お前、隠しカメラの存在に気づいてたな。だったら早く言え』
字『言ったよーもう。“人前”ではシャンとしなって』

始『おぼえてろよ』

字『だってさ、隼』
隼『僕?いや〜僕もきづいてはいたけど。気付かないふりをしてあげたじゃないか。そ、れ、に、始のパジャマ姿、最高でした!キュンキュンしちゃうよね!!寝起きの色気にぐらり!仕事では絶対見せないこの人間味あふれた感じにハートをバキューンと撃ち抜かれたよ!!さい』
始『うるさい隼。お前も同罪だ!』
隼『アイアンクロー!痛い!いたいけど!!ご褒美です!!』

字『ふふ。隼をしめてないで、そろそろ着替えてきたらどうかな?』
始『・・・・・部屋にもどる』

字『はい、いってらっしゃい』

始『明日の弁当の中身がすべて生クリームになる呪いをかけてやる。葵、明日のこいつの飯はすべて甘くしろ。後は頼んだ』
葵『う、う〜ん。考えときますね(苦笑)』

字『え!?』










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