【SS-16】 聞いてほしいこと、聞いてはいけないこと |
<詳細設定> 【弥生字】 ・本名《字》 ・魔法のある世界の春成り代わり主 ・三つ前の世界は【ナルト】、いのちゃんは嫁 ・二つ前の前世【復活】より超直感引継ぎ ・一つ前の世界は【黒バヌ】の花宮成り代わり ・魔力豊富な世界で、生まれつき魔力0体質 ・だれも本名を呼べないので、むかしは《花》と呼ばれていた ・芸名『春』 ・前世から変わらず、見えてはいけないものが視える ・世界に嫌われてるのでよく死にかける ・始の魔力で生かされてる ・始は充電器か空気という認識 『――その話、話題の転換として、よくあるじゃないですか』 『女子なんかだと定番に近いよね』 『番組とかのトークでもよくあって、よく聞かれるんですよ』 『うんうん。俺もそれきかれたことある』 『あるあるー』 『あるな』 『俺たちは別にいいんです。そういうのきかれても。だけど』 『ああ、そうだな(遠い目)』 『だけど、どうかうちの母さんにだかは聞かないでください』 『恋バナだけは!!!』 【コイバナだけはやめておけ】 〜 side 春成り代わりな字 〜 弥生字。 その名を持って生まれたけど、この世界では誰もその名を呼ぶことができず、《花》と呼ばれるようになった。 オレは転生を繰り返す者。 肉体に死はあっても、魂に死はない。 それは死んでもなお自分についてきてくれたロジャーが、「死ぬな」と願った――その代償。 ゆえに、この魂が完全に消えるまで、オレはどこかで生まれ続ける。 まぁ、たまに相性の悪い世界というのがあって、そういう世界だと、ある程度すごすと世界から排除されてしまうことが多いのだけど。 そういうときは、オレという存在そのものが消える。 そうなると、オレが消えた後には、何も残らない。オレの存在、生きてきた形跡、思い出――そんなすべてが人々の記憶の中から、データ上からも消えてしまう。 今回はしょっぱなからそれだから、あまり長くはこの世界で生きることはできないのは確定だ。 字『――そういうわけで、オレはこの世界にとって異分子になる。だから世界そのものに嫌われてる。 こういうときは、いつも長くは生きれない』 誰にも言うつもりはなかった。 どうせ消えてしまう存在だ。誰も覚えていないのなら、誰かに詳しい説明をする必要はないように思えたのだ。 だけどこの世界に生まれて、あまりに両親が自分のことを気にして、大事にしてくれているのを理解してしまったから黙っておくことはできなかった。 オレのことで悲しむ二人の顔をこれ以上みたくなかった。二人に迷惑も心配かけたくなくて。 オレの事情について説明した。 この体質の原因さえわかっていれば、今よりも少しは二人の負担がなくなるのではないかとおもった。 それだけをおもい、嫌われても怖がられても頭がおかしいとおもわれても何でもいいと――自分が転生者であることを告げた。 その事実を両親にだけは告げた。 前世の記憶があること。 たくさんの世界を生きていること。 この世界で、オレは長くないこと。 字『ごめんね。せっかくお腹を痛めて生んでくれたのに。本来ならちゃんとした子供だったろうに、オレの魂がはいちゃったから・・・』 親より先に死ぬのは親不孝だという言葉がある。 でも、オレは死ぬのだ。みんなの記憶からすり抜けて・・・ ただただ、いろんな意味を込めて――申し訳ないなくて、ごめんねと告げた。 健康な体じゃなくて。 一緒に生きることができなくて。 思い出さえも残していくことができなくて。 頭がおかしいんじゃないかと思われたか?精神病院に突っ込まれるのだけは嫌だなぁ。それともただの夢見がちだと思われただろうか。 まぁ、それで二人の負担が軽くなるならいい。 ――そう思うのに。 なのに、顔をあげて二人顔を見ることはできなくて。 話していくうちに、視線がさがってしまった。 だって、まだ数年しか生きていない自分でさえ、この二人のことがとてもとても好きになっていたから。心のどこかで嫌われたくない自分がいて。 そのままうつむいた視線をあげることができなかった。 もっと生きたい。 もっとこの二人と一緒にいたい。 もっと・・・ そんな欲が出てきて、うつむいたまま自分の膝を見つめていたら、目からなにかがあふれてしまいそうになる。 まだまだ小さくてまるっこい拳を膝の上でぎゅっと握って、あふれ出しそうになる願望をもらすまいとこらえる。 おかしいな。オレの涙腺はこんな弱くはなかったはずなんだけど。 まだこどもだからだろうか? ふわり 字『?』 ふいに、何かに包まれる感覚がして、顔をあげれば、二人がいた。 『話してくれてありがとう花くん』 『そこまでわかっているなら、いまよりより対処ができるよね』 字『あの・・でもオレは』 『なにを遠慮する必要があるの?花くんは私たちの家族でしょう?』 『これでもっと僕らは花くんに近づけたね!』 『そうね。花くんてば子供らしくなくて。ふふ、まったく手間がかからなくて。これで疑問が解消されたわね』 『どんな君でも。花くんは僕らの家族だよ』 『花くん、僕らと一緒に生きてくれるね?』 父のあの言葉はずるいと思う。 それぐらい胸にきた。 それ以上はもう限界で、思いっきり泣いた。 その後、いまは痣として存在している蝶、もといロジャーさんを二人に紹介した。 母は「花くんの首元にあった痣はロジャーさんだったのね」と嬉しそうに笑っていた。 父は「彼のおかげで今の花くんがいるんだね。ありがとう」と首に話しかけてきた。首・・・に。え?そこ首よ。くすぐったい。 オレに直接言えばいいのにと言ったら、父曰く「僕が直接ロジャーさんにお礼を言いたかったんだよ」とのこと。なるほどと、納得していいのかな。 母が微笑みながら「ふふ、やぁねタラシは」と父のわき腹を突っついていた。よくわからない。 『ねぇ、花くん。花くんはどんな世界を旅してきたの?』 『うんうん。きになるなぁそれは。もしかして恋人とかいたりしたのかい?』 二人はオレがこの世界で長く生きれない。思い出も沢山は作れない。と理解し、なら作れない分、 オレのことをもっと聞かせてとほしいと言ってきた。 自分の息子のことだから、どんなことでももっと知りたいという。 それにオレは頷き、語ったのだ。 始まりの世界のこと、そこからいろんな世界を旅したこと。 ぶっちゃけて語りすぎた。 語りまくった。 この段階では、まだオレは動き回ることができない身体だった。そのため、物語を語るように、前世のことを二人だけに語った。 なにせ外に行くことなどなく、ほぼベットの上での生活だ。 ベットの上ではすることもほとんどないため、ほぼ毎日に見舞いに来てくれる両親とする話のネタもない。 新しい話題など自分からは見つけることができなかったともいう。 そのため、オレからする話といえば、もっぱら前世の話になってしまったのだ。 それでも両親はニコニコと最後まで聞いてくれた。 オレが長く生きれないなら、この世界で彼女を作る必要はない。どうせ忘れ去られるのなら、悲しい想いをする人間を増やす必要はない。 むしろ部屋の外に出ていないのに、出会いなどあるわけもない。 そんなわけで、オレは両親にはじめから「彼女と孫はあきらめてね」と告げてある。 だけど“両親は寿命のせいであきらめろ”と言ったとはおもっていなかったらしく、不思議な勘違いが起きている。 なんと両親のなかでは、「オレはいつまでも前世の恋人が好きすぎて、彼女以外好きなる気がない」と判断されているのだ。 そのまま「花くんは彼女以外興味ないのよね」と公認?の仲となった。 『花くんと彼女さんのこどもかぁ。いいな〜。わたしもみたい!残念!花くん、念写とか無理?』 『僕らにとっては孫だね。うーん、その子の成長が見れないのは残念だけど、すくすく成長したようだし。花くん!よくやったね』 前世での嫁と子供のことを告げたら、父にグッジョブとウィンクされた。 母よ、念写は無理だ。 どうしてそうなったかはわからない。 とはいえ、彼女以外好きになれる自信がないのも確かなので、微笑ましそうにオレと彼女の話を聞いてくれる両親に、今日も熱く彼女について語ったのだった。 いのちゃん大好き。 妹たちに物心がつくころには、オレは前世の話はしなくなった。 そのころには両親に語りつくしていたというのもある。 なにより、前世とか転生とか、今を生きる上では必要ないことだと思って言わなかったのだ。 だって、今を生きてるだけでも幸せだ。 こんな自分でも受け入れてくれてる家族がそばにいる。 今が幸せすぎるのに、それ以上の何を望めというのさ。 ――ある日のこと。 『花君の彼女は、もうきまってるのよ』 恋話になると、両親だけでなく妹たちまで最近そう言ってくる。 そしてなぜか四人とも、オレが前世の彼女意外とつきあうことを反対するという。なんというか、不思議なことになっている。 思わず首を傾げた。 家族公認なのはいいんだけど。でもほら、前世のだし。もういないひとだよ? 『だって花君、まだそのひとのこと好きでしょう!』 言われてみればそのとおりですね。 あれ? でもオレが「今世で彼女と孫を期待しないで」と言ったのは、そういう意味ではなかったような・・・?ないよね? 妹たちや、始にも隼にも「前世」や「転生」って言葉は一度も言ったことないんだけど。 いや、でもたしかに前世の彼女のことはよく聞かれるから語るけど。 そんなある日、オレ狙いのおねえさんがいたらしい。 たしか妹の部活の先輩・・・のご友人だったかな?そのひとが「お兄さんかっこいいわよね!紹介してよ」と言ったらしい。 そのときのセリフが上のアレだ。「きまってるのよ」発言。 そして「花君に似合うひとは〜〜〜じゃないと絶対だめ!」と、前世のオレの彼女と、その先輩のなんたらを比べたらしい。 おねえさんは敗北感まるだしで帰っていったらしい。 うん?それってつまり、オレの“いのちゃん”は世界一できたひとだったってことだよね。彼女を褒められたみたいでなんだか嬉しいねぇ。 その話を聞いた始が、「あの妹たちをたおしてお前を勝ち取るのは大変そうだな」と肩をポンとたたいてきた。 よくわからないなぁ。 どうせ今世では、恋人作らない予定なんだけどなぁ。 満足げに先輩のなんたらを撃退(本人談)してきた妹たちは、その日、ニコニコ嬉しそうに「花君の彼女の話、またしてほしいな♪」と言ってきたので、“いのちゃん”の格好良くてすごいところをまた話た。 『あの人のことを語る花君とっても楽しそうだもの。みててこっちまで幸せになっちゃう!』 『うんうん。花君の彼女は、あのひとぐらい出来る人じゃなきゃ!』 『『ねー』』 どうやらオレの妄想の彼女・・ではなく、“妹たちが物心つく前に、オレにはわかれた彼女がいた”という設定になっているらしい。 チラリと両親を見れば、父がおっとりと微笑み、母がウィンクをよこしてきた。 母さん、父さん、妹たちに何をきかせたの? 『春くんが“いのちゃん”をどれだけ好きかを教え込んだだけだよ?――物心つく前から』 最後が!最後がよけいです! まぁ、そんなわけで家族公認。 オレが“いのちゃん”について語るのは、もう定番。 恋話をふられるといつもそのことばかり語っていたわけで。 中学校の頃には、オレにはずっと想ってる彼女がいるという話は、デフォになってました(笑) * * * * * 字『―――るような金の髪に』 陽『ハイカット!長い!!』 字『えー、ここからが彼女の魅力を語るいいところなのに』 陽『えーじゃない!つか、長い!長すぎるんだよ春さんのノロケ話!!!!』 字『だってまだどれだけ“いのちゃん”がかっこいいか、まだ全体の2割ぐらいしか語ってないよ!!』 陽『2割かよ!』 字『それでね、オレと彼女との出会いなんだけど。オレがどうして惚れたかと言うと』 陽『だからやめい!長いっつーのっ!』 字『まだ彼女の容姿しか語ってないよ!せめて出会った瞬間!あの段階でもう意思が強くて!将来をみす』 陽『ストップ!!やめろ!そこからが長いからやめろつってんの!』 夜『はは・・(苦笑)』 涙『それでその子はどう』 郁『涙!それ以上きいちゃだめー!!』 海『ははwwこれはグラビのメンバーに聞いていた以上だなwww』 隼『うーん。何度聞いても凄いなぁ〜。春の表情もころころかわるし。彼女の話をする春が一番幸せそうなんだよね。こまったこまったw 長いけど。とにかく長いけど。でもいきいきしてるでしょ春』 海『ありゃ、ただの恋する乙女だろ』 隼『春は乙女ってタイプじゃないけどね。だからこそ、ああいう顔するとかわいいよねw まあ、完全にノロケなわけだけど』 海『しかもやたらと長いつー・・な』 海『そういえば・・・お前って、たしか春とは長い付き合いだったよな。つーことは、あのノロケ話何度か聞かされてるのか?え?春のあれって昔からああなのか?』 隼『そうだねぇ(苦笑)』 隼『直接会ったのは中学からだけど、まぁ、それ以前も手紙や電話や人づてて交流はあってね。あのときも何度かきいたねぇ。いやぁ〜春の恋話は本当に素敵な話なんだけど。さすがに一回でいいかなぁ。全力で彼女のいいところを語るからねぇ春は』 海『ああ、たしかに・・・あれは、全力だな』 隼『でしょ』 海『だからグラビのやつらが、春にコイバナだけはするなって青い顔で言うわけだ』 隼『さっきも始を筆頭に、蜘蛛の子を散らすように逃げていったしねー』 隼『まぁ、春があそこまで彼女のことを語るのは、ご両親が聞き上手でさらに伝え上手だったせいもあるんだろうけどね』 海『家族公認だもんなー』 隼『ふふ。弥生家は素晴らしいなご家族だよ、本当にね。――だからこそ、春はいまこうして僕たちの傍にいてくれる』 海『?』 隼『なぁに、春をここまで育ててくれてありがとうってことさ♪』 海『そっかーw』 涙『僕は恋とか、そういうのよくわからないけど。わかることはある』 郁『涙?』 涙『春の話は長い』 陽『そこかいっ!?』 字『うーんと、じゃぁ、まとめる?』 涙『それはいい』 字『・・・そう(しょんぼり)』 涙『あとね』 字『うん?』 涙『もうひとつだけわかったこと』 涙『春は、本当にその子のことが好きなんだね』 字『――大好き!!』 海『・・・うわー・・あの笑顔はないわ』 隼『あの笑顔はいつでも見たい!!僕の大切な春の!なによりも素敵な笑顔、最高!・・・とは叫びたいんだけど、だけどあれを見るためには話が、その、ちょっとね(苦笑)』 海『あれみたら、たいがいのやつおちるよな』 隼『おちるね〜www』 涙『わーぉ(淡々と)』 夜『(*ノωノ)も、もうだめぇぇぇ//////(顔を全部覆ってうずくまる)』 郁『そ、そのちょっと・・・反則です///(口元抑えて顔をそらす)』 陽『・・・・・・(床に倒れて悶えているので顔が見えないが、耳は真っ赤)』 隼『うわーみんな顔真っ赤だねぇ〜』 海『あちゃー、傍にいた陽と夜がノックダウンしたぞ』 隼『僕たちは離れていてよかったね海』 海『だな。至近距離であの笑顔を食らうのは勘弁だなw』 隼『さすが春!破壊力抜群だwww』 海『ところで。あの笑顔を向けられてもなんの反応も見せない始といい、うちのプチ魔王といい・・・あいつらいろな意味で大丈夫か?』 |