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[花悲壮] → ツキウタ



【SS-09】 弥生さんは軽いらしい?

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※魔法の国(字の世界)…『漢字名称』

<弥生字>
・本名《字》
・魔法のある世界の春成り代わり主
・二つ前の前世は【復活】超直感引継ぎ
・一つ前の世界は【黒バヌ】の花宮成り代わり
・魔力豊富な世界で、生まれつき魔力0体質
・だれも本名を呼べないので、むかしは《花》と呼ばれていた
・芸名「春」
・前世から変わらず、見えてはいけないものが視える
・世界に嫌われてるのでよく死にかける
・始の魔力で生かされてる
・始は充電器か空気という認識
・静電気、痛いものがこわい









【不幸なアホ毛は軽いらしいよ】
 〜 春字 世界 〜



番組の録画中に、春が足を怪我した。

俺たちSIX GRAVITYとProcellarumは、兄弟グループというくくりわけをされているが、いっしょくたに呼ばれることはよくあるし、メンバーごちゃまぜで依頼が来ることも多々ある。
まだ合同ライブはないが、それ以外でなら12人でわちゃわちゃしてることが多い。
今回も計12人で招待された。
基本的に海や郁、駆、俺こと始以外は、スポーツが得意というわけではない。基本大人し目なやつらが多い。いや、陽や恋は別枠だ。
春は・・・ぬけているがやるときはやるやつだ。現役バスケ選手だし。
そんな俺たちだけで、CM撮影ということで景気よく動きまくっての屋外撮影だった。

春が飛んできたタライに激突されて倒れた。その拍子に資材置き場に激しい勢いでつっこみ、ぶつかったことで倒れてきた木材で足を怪我した。
どんな経緯だといわれようとも・・・。
本当にどこからかタライがまっすぐ春の顔面めがけて吹っ飛んできたとしか言いようがない。
ピタゴラスイッチのようだったと、つぶやいたのは、片手でタライをうけとめつつ、苦笑を浮かべていた本人である。

その日は、とても風が強かったから、そのせいだろうということになった。
本当のところ、風が吹いていなかったという証言もあったが、だれもそれは聞かなかったことにした。

春いわく「タライなんてずいぶん久しぶりにふってきたから驚いちゃったよ」とのこと。 そのつぶやきをきいていた仲間たちが、なにもきかなかったという顔でスルーしていた。
深く考えないほうがいいという判断は正しいと思う。

面白いものが好物と言っている俺からすると、春といると飽きないから人生が楽しくて今の生活は満足なのだが。
たまに春の言葉の意味が理解でいないときと、春が謎すぎて頭を抱えたくなる時がある。
いや〜・・春がもっと愉快なことをしてくれないかと、言葉巧みによけいな知識を年月をかけてすりこんできたという自覚はあるが、それをぬきにしても春という存在は何かがおかしい。色んな意味で。
まぁ、弥生春といえばそういう生き物だと、みんなが認識しているので、もう気にもならないが。

とりあえず、そんな春でもたぶん痛覚ぐらいはあったはず。むしろ痛みに弱いはずなのに、なんで血だらけでこいつ平然とした顔してるんだろう。
やはり、ただのアホ毛だったか。・・・あ、間違った。「アホ毛」じゃなく「アホ」な。

まぁ、見てるだけでも痛々しいし、バカでかい騒音が響いたせいで、撮影がいったん止まってしまっている。
立ち上がった春の足からだらだらと血がでているのをみて、撮影スッタフたちも騒然としだす。
そうとう痛そうだしな。
だというのに春は、収録も終盤ということで、撮るだけ撮ってから病院に行くという。
だろうなとは思ったけど、まじめすぎだろ。
一応そのあと軽い応急手当を受けた後、再び撮影が再開された。

だが怪我は怪我だ。
ひととおりおわると同時に、春がペタリとその場にすわりこんだ。血が流れすぎたか、それとも痛みに限界だったか。
あまりよろしくない春の顔色に、顔をしかめてしまう。
我慢しすぎにもほどがあるだろうが。
思わず怒鳴りたいのをこらえ、心配したスタッフたちが肩を貸そうとかけつけてきたので、口は閉じておいた。

春には生まれつき魔力が微塵もないから、その結果、周囲の魔力がおかしな流れを生むことがある。持ち上げればそれはあからさまにわかってしまう。人間離れしているその現象は周囲に怖がられかねない。だから春をでスタッフにまかせたくない。
しかたない。俺がかついでいくかと思ったところで――

涙『よっこいしょっと』
字『わ!?ちょっと涙!?』

春の一番傍にいた涙がしゃがみこみ、地面に座り込んだままの春の膝裏に手をまわし、そのまま何事もなかったように軽々と抱き上げた。
バランスが悪いのか、持ち上げられた春は小さな悲鳴を上げた後、すがるように涙の首に手をまわし、身体をあづける。
所詮お姫様抱だ。

俺はいつも「重い」と春を運ぶ際に文句を言うが、実のところ春は軽い。
物理的にはしっかり成人男性分の体重があると体重計の表示では出るのだが、魔力のベクトルがあいつのまわりだけおかしので、あいつを上へ押し上げようとすると重力があいつの周りだけ狂うらしく、あの涙でも軽々運べてしまうぐらいには“軽くなる”のだ。
ただ図体がでかいから、長い脚が邪魔とかいろいろ持ち上げるのが面倒になるだけだ。

ナイトにもたれかかるお姫様。
スタッフのだれかが「お姫様抱っこなんて生で初めてみた」と呆然としたつぶやきが聞こえた。

むしろ涙が春を運んでいることに突っ込めと思うが、春の体重が“持ち上げる”と軽くなるのは、あまり仲間意外に知られたくない。
まぁ、いまのところツキウタのメンバーだけがしっていることなので、慣れているSIX GRAVITYとProcellarumの仲間たちは気にした様子もない。
彼らはむしろ自分で歩いていくと言い張る春をなだめることに集中している。
もちろんこの光景が本来であればおかしな光景であることも理解はしている。それでも春のそばに“普通の態度”をくずさずいるのだから、春は仲間に恵まれている。

メンバーで一番大きな青年を、一番小さな少年が、お姫様抱っこしている光景には、さすがに撮影スタッフたちも事情を知らないマネズたちもポカーンとしていた。
当然といえば当然だ。

字『お。おろして涙!』
涙『やだ。だめだよ春。怪我したら春だって痛いでしょ。ちゃんと治療しよう』
字『治療はするから!おりるよ涙!重いでしょ!!』
恋『いや、それだけは絶対ない』
涙『うん。軽いよ春は』
字『でも涙の・・・・・・・・・・・・衣装が白いのに!!血が付いたら落ちにくいんだよ!おろしてくれていいから!衣装は素材がいいから私服より洗濯が大変なんだよ!』
陽『そこで洗濯物の心配かよ!!!春さんずれてる!ずれてるからぁ!!』
始『春。おとなしく運ばれてろ』
字『でも始!だれが涙の服洗うと思ってるの!衣装さんがかわいそうだよ!!だから降ろしてって涙!歩けるから!』
涙『却下』
始『傷が余計に開くだろうがバカ春。そのまま歩くとか色んな意味で笑えない。ほら、アホ毛までしなびてる』
駆『アホ毛がしなびwwwwwwwwwwwwwww』
隼『アホ毛はともかく。・・・そうだねぇ。僕らアイドルは体が資本だよ。これが毒なら君に関しては放置してもいいけど、怪我が原因でなにか後遺症になったらお仕事続けられなくなってしまうよ。だからね春、君はそのまま医務室にいってくるよといいよ』
字『う・・・そうだねぇ仕事ができなくなるのはいやだなぁ。えっと・・・そのじゃぁ、お願いします?涙、本当に大丈夫?』
涙『僕は春を降ろす気ははじめからなかったけどね』

陽『ほらいったいった!春さんは、俺の精神安定のためにもぜひ治療をして下さいよ!』

始『さすがの春でも刃物や物理攻撃は効果抜群だからなぁ』
隼『今日のは自滅による怪我だけどね』
葵『でも刃物を向けられたら春さんなら余裕でよけますよ。目を閉じてても気配には敏感ですし』
新『夢見草の稽古思い出すわー』

字『目を閉じてよけるとか・・たしかにできるけど。こけたあとの怪我とか不可抗力でおった怪我はどうにもできないからね!!隼じゃあるまいし』
隼『はーる、君は僕をなんだとおもってるんだい。僕とてできないことはるんだよ。治癒なんて無理かな。せいぜい痛みを和らげるおまじないぐらいかなぁ』
海『いや、お前らはそれだけ人間離れしてれば十分だ』

恋『涙!涙!疲れたらかわるよ。春さん軽いから俺も運びたーい』
涙『ん。でもいまのところ平気。むしろ渡すのやだ』
郁『はは、こういの絵面的に涙が運ばれる方だよねふつうは。そうなると涙が力持ちみたいで。いいよね』
恋『俺も春さんぐらい持ち上げられるんだぞー!ってみんなに思われたい!イケメンになりたい!』
駆『まぁ、でも実際は春さん軽いんだよねwwwあ!始さんがやるとすっごいいい絵面になりそうwww』
隼『それはただのイケメン始の完成にしかならないねぇ』

隼『いいねぇみたいというか僕、やってもらおうかなお姫様抱っこ。さぁ、始。僕をだきあげてくれていいんだよ?』
始『断る。駆より重いやつはお断りだ』
恋『あ、俺そうするとギリギリOKってことですかwww』
始『・・・・・・なんだやってほしいのか?(ニヤリ)』
恋『う、うそですやめて!!!はずかしい!!!!!!!ぅぎゃぁぁぁぁぁー!!!!』

字『わー恋がお姫様抱っこされてるー始ってばバカ力はあいかわらずだよねぇ』
夜『そういう春さんも今、涙にお姫様抱っこされてる状態ですよ』
字『そうだけど。始があれやると・・・愉快犯だから。面白がって・・・ほら』

恋『ぎゃー!!!ちょ!ふらないで!!!おちるぅ!!!こわい!!!!ぎやぁぁぁぁぁ!!!!!』

夜『・・・・』
字『ね。ああやって始ってばいい笑顔のまま、遊園地の乗り物のごとく、持ち上げた人間をあの仰向きの体制のまま勢い良く左右に振ったりするんだよ。絶対恐怖ものだとおもうよやられてる子は』
夜『俺、駆より体重あってよかった!!!』
字『オレなんかでかくて邪魔だって投げ飛ばされることよくあるし。あーやさしい涙の腕の中は居心地がいいなー』
涙『どういたしまして?春ならいつでも頼ってくれていいよ』
字『いやいや。そんな年下のこにいつもたのむとかさすがに大人としてできないよ!』
涙『春なら軽いから大丈夫』
郁『うわー涙がイケメンだぁwww』
字『ふふ。じゃぁ、“次”があったらお願いしようかな〜』
涙『まかせて』




スタッフ『あれ・・・わたしの目がおかしいのかな?一番小さい子が一番大きい子を持ち上げてるように見えるんだけど』
スタッフ『ところで。さっきの話だと。怪我はダメで毒はいいんだ。弥生さん何者?』
スタッフ『あ、そういえばそういうことも言ってたね〜(遠い目)』
スタッフ『なぁ。弥生さんって軽いの?え?うそだろ・・・』
スタッフ『わー水無月くんってすごい力持ちだったんだな〜』





* * * * *
 




始『・・・・・・・・・春』
字『わ、わざとじゃないんだけどねぇ』
涙『春。くる?』

両手を広げて「さぁおいで」とばかりの涙と、呆れたような始を前に、思わず字は苦笑を浮かべる。
目撃者がたまたま騒音でかけつけてきたこの二人だけだったのは運がいいだろう。

始『はー次回があったらとか言っていたのはお前だぞ春。その日の夜に風呂場で石鹸ふんで滑って打撲と捻挫って・・・・お前バカだろ』

涙『春。だっこ』
字『うう・・・はずかしい。こんなドジっこじゃなかったはずなのにオレ!』
始『ドジっこじゃなくて自滅だろ。石鹸を片し忘れたあげく自分でそれを踏んだんだから、呆れて物も言えん』
字『なんども石鹸連呼しないで!自分のバカさ加減は痛いほどわかったからもうやめて!恥ずかしい・・・死ぬ・・・』

あまり動かない表情ながら、それでも喜々として手をひろげまちかまえている涙に字は手を伸ばしその首に手を回すと、自分を昨日と同じようにひょいともちあげた涙の肩に赤い顔を埋めて「もう恥ずか死ぬ」とつぶやいた。

新『ん〜やっぱずれてる?』
恋『です。春さんの照れる場所がおかしい』
陽『涙にお姫様抱っこされてることじゃなくて、ドジふんだことへの羞恥で、あれ真っ赤になってるんだぜ』
葵『なになに?これどういう状況?春さん、また怪我したの?』
夜『すべってこけておしりうっちゃったみたいで、重度の打撲だそうですよ。痛くて立てなくて、結果があの状態です』
駆『ああ!尾てい骨っていうか。骨に振動があたると痛いんですよねー(遠い目)。わかりますその痛み!』
葵『はは(苦笑)。駆は不幸体質だからそういうこと多そうだよね。よしよしヾ(・ω・`)』

隼『発見者は始と涙。眼鏡にいたずらをしようと始が風呂場に忍び込んだところだったみたい。涙は風呂場の前をたまたま通りかかったところで。ドッシーンって音と悲鳴が響いたみたいだね〜』

海『お前は見てたのか?』
隼『いいや。さっき始に状況を教えてもらってきていたんだよ』
陽『そこからあの状況にいたると』

海『春の性格から、有言実行が好きってのはわかるんだが。有言実行にも今回のはほどがあるだろ。たしかに涙と次回の約束をしたのは知ってるし、実行してるが・・・。春の一言はもはや“有言実行”ではなく“フラグ”じゃないか?』
郁『まぁ、涙が嬉しそうだからいいんじゃないかな』
葵『春さんも運ばれることには別にイヤそうじゃないですもんねー』
駆『まさか俺の不幸体質が感染した!?』

隼『あ、そうそう。今日のラッキーさんは6月でアンラッキーさんは3月さんだったんだよね〜』

郁『るいー!そのまま春さんをギューってしとけ!ラッキーさんからアンラッキーさんへラッキー与えとけ!!』





 




 




【後日談】


『みんな、ちょっといいかな』

『どうしたんです春さん?』
『ん〜ちょっとね』


『最近、オレ、病弱で可憐なひ弱キャラ・・・だと思われてるんだけど。ねぇ、これどういうことかな?』

『『『・・・・・・』』』


『どう考えてもみんなのせいだと思うんだけど。オレの勘違いかな?
ねぇ、特にそこの年少3人組は?ねぇ、どう思う?(^-^)』

『そ、それは・・・』
『俺も怪力にみられたかったんです!いつまでも年少ってこどもあつかいされたくない!』
『は、春さんを、かっこよく運んだら、騎士っぽいかなとか、みんながカッコイイっていってくれるかなーと』
『だって春を抱っこできるんだって僕のすごさをみせたかった!』

『さすがうちのプチ魔王。涙が一番ひどいな。それは視聴者の皆様に勘違い植え付けてるだけだからな』
『そして春の傷もえぐるとwww』



『もう!!!なんでおんぶじゃなくてみんな抱っこしたがるの!?意味が分からないよ。 それにやたらとオレを運ぼうとするのやめてくれる?! っていうか、重さは変わらないんだからせめて背負ってよ!あおむけの状態で運ばれると、周囲の突き刺さるような視線が痛いんだけど! まだ背負ってくれたら、みんなの頭とか肩とかを盾に、貌だけはみられないですむのに。 おかげで周囲から向けられる視線全部みえるし、目が合いながらすれ違うとか。もうかなり視線が最近つらいんだけど。
ユズには、変人が年下捕まえてヘンタイなことしてるって言われるし。ユズの勘違い解いてくれない!? といてくれないと一緒に遊びに行ってくれないんだけど!!!!』


『最後のが本音か』
『やっぱ微妙になにか訴えてきてる場所が違う気がします』

『『『『おんぶよりだっこがいい!』』』』

『却下!オレがいやなの!!』
『wwwwwwwwwwwwwwww』
『笑うなそこっ!』


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