外伝 ・ も し も 話
[花悲壮] → ツキウタ



【お題】 隼さんが喚んじゃった♪ B

<今回交わった世界について>
・原作よりの世界
・太極伝奇を前世に持つ隼成り代わりたちが大暴れしたORIGIN世界

<表記について>
※原作寄りの世界の住人・・・「 」
※召喚された人々・・・『 』









『ニンゲンって怖い生き物なんだよ』
『シッテル』
『ねぇ、そんな怖いニンゲンが目の前にいっぱいいるんだけど』
『・・・・・』(バタリ)
『ハジメぇっ!!!!?Σ(゚Д゚)』

『ああ、もう!!しっかりしてよ!トラウマ!?トラウマが発動しちゃったのハジメ!?ねぇ!待って!オレをひとりにしないで!ハジメぇー!!!』





【喚ばれちゃったよ♪ B 太極伝奇・零が乱入したオリジン世界】





命が宿る数多の星々(世界)を管理するものが住まう世界――ORIGIN。
多の星の命が煌めくそこは、巨大な生命の樹を中心に広がり、光と闇の種族が世界をはぐくみ見守っている。

その世界では古い習慣があり、年老いたものほど“色”に執着をみせる。

彼らが気に知る羽根の色とは、背中で羽ばたくそれではなく、自分たちの種族の核である耳の〈葉〉のことだ。
これは生まれたときよりこの世界の住人のすべての耳を飾り、闇葉と光葉の二種類あり、魔族は黒。天族は白となる。
この〈葉〉に色が混じるのを嫌う傾向にあるのだ。
〈葉〉とは核。天使と悪魔たちが生まれもってその耳に持つ種族を示す証ともいえる。違う種族間で対になると、〈葉〉に色が混じる。そうやって一色ではなくなる耳葉が気に食わないものがいるのだ。
それは契約によって対という存在になることで、耳の〈葉〉が、枚数を増やすためだ。そのとき今までの自分の〈葉〉だけではなく、対の相手がもつ葉と同じ色の葉が増えるのだ。
それを“葉がまじる”という。

そもそもこの世界において対になることは、光と闇という種族の差を問わない。
寿命を延ばし、かつ膨大の力を与えるとされている。
ゆえに対の相手が、同族ではないこともあり得るのだ。
色が混じることを今の若者たちは、対ができた喜びに比べれば大した問題ではないと気にしてはいない。
しかし年寄りほどその概念に固執し、まじった葉を持つ者を差別する。

最近この世で最も若かったはずの天使が寿命を迎えかけたが、とあることがきっかけできちんと対となる存在を得て、天使は寿命を延ばした。
新に対を得たその天使は、いまもっとも力が強い六枚羽の天使だったからこそ、古き者たちは天使が対を得るのを批判した。
その対の相手が魔族であたっためだ。
お互いの力を交換し、強い繋がりが結ばれるのが対の契約である。その証として対になると、相手の力が流れ込み、魂の源ともいえる耳元の葉の数が増える。
六翼の天使の相手は六翼の悪魔。
天使には黒に葉が、悪魔には白い葉が対の契約により増えた。

これにより一時その管理世界は大きくゆらいだ。
それは人々の心の波。


――――っと、いうことがあった管理世界オリジン。
現在はずいぶん落ち着きをとりもどし、今日も平和に時が流れていた。

『うんうん。そう思うよね〜ハジメってばいつも』
『俺がなんだってハル?』

『ハ、ハジメ!?いつからいたの!?』

悪魔の中の悪魔。冷酷の魔王といわれるほどに鋭い空気を放っているということで有名な魔族〔ハル〕だったが、普段の彼は小鳥とのんびりたわむれているほんわかした存在だ。
今日も花畑の中で小鳥と会話を楽しんでいた彼の言葉に、小鳥ではなく噂をされていた本人が返事をした。
さぁ、続きを言ってみろと手をワキワキ動かす〔ハジメ〕は、もはや〔ハル〕にアイアンクローをするきまんまんである。

なんでもないよと手を振った〔ハル〕だったが、本人に愚痴を聞かれてしまってはもはやごまかせるとはとうていおもえない。

ならばと〔ハル〕が〔ハジメ〕に謝罪をしようとしたところで―――


『『!?』』


二人の足元に突如光輝く不思議なもんが描かれた陣が浮かび上がった。

『おい、ハル』
『おれじゃないよ!!やだなにこれ!?』
『貪欲な知識の虜がしらないとは・・・・・・・・・』
『うそ!?ハジメもわかなんいの!?』


『『嫌な予感しかない!!!!』』




『あ、ハジメとハルぅ・・?』

二人が怯えて抱き合ったところで、ふあわりと空から白い二の影が舞い降り、声をかけようとしたが・・・

瞬間、光が強くなり――そのまま恐怖を紛らわせるかのように目を閉じた二人が気づいたときには、どこともしれぬ部屋の絨毯の上に座り込んでいた。

一方そのころ、〔ハジメ〕と〔ハル〕を探しに来た天使の〔シュン〕と〔カイ〕は、光に飲まれて消えていく二人の姿をポカーンと見送るしかできずにいた。

『『え〜。またなの(か)』』

瞬間の出来事ということもあっただろう。
なにより、二人の心はそれにつきた。
こういった陣による召喚は、以前逆でこちら側によんでしまったが起きたことだ。それもつい最近と言っていいほどにごくごく最近の出来事だ。
ゆえに、いづこかへ召喚されていった魔族の二人を見て、〔カイ〕と〔シュン〕はもはやあきれたように、なにもなくなった地面を見つめるしかできなかったのだ。



『ねぇ、カイ』
『なんだシュン』
『ハジメたち、いっちゃったね』
『そうだなぁ〜。無事だといいが』

『あれはやっぱり“人間”のしわざなのかな?』

『そういうのを把握できるのは、お前とハジメぐらいだろ』
『いや、ね。うん。“人間の僕”が絡んでいる気はするんだけど・・・・(遠い目)』
『ほぉー。そりゃぁ、ハジメたちはかわいそうに』

『あのさ。人間って、僕らが思っている以上に凄い生き物なんだね〜。ねぇ、そう思わないかいカイ』
『だな。俺らってあいつらの世界を管理する・・・側だとばかり思ってたが。そんな俺らをほいほい呼び寄せられるとか・・・・』

『『人間って怖いな〜』』










バサリ




大きな羽音が響いたかと思えば、大量の黒衣羽根が部屋中に舞った。
何事かとおもい、Procellarumの共有ルームにいた全員がそちらをみやれば、大きな黒い塊が一回り小さな黒いかたまりを包み込む形で、床に転がっている。

『大丈夫かハル?』
『あ、ありがとう・・・こっちこそ思わず抱き着いちゃってごめんね』
『いや、いい・・・が、ここは・・』

モゾリと起き上がったのは、どうやって部屋に入ったのかさえ疑問に思うほど大きな翼を六枚つけた始と、赤黒い皮膜の翼をもった春のふたりだった。
そのどちらの頭部にも立派過ぎる角が二つついている。

「ブッファーーーーーーーー!!!!ごほ!ごほっごほ!!ごほ!!ま、まじか・・・」
「・・・!!!」

二人の姿を見た途端、飲んでいた紅茶をそのまま噴き出しむせかえっているのは陽だ。
傍にいた夜は菓子を盛った皿をそのまま手放し、カラーンと皿が転げ落ちる。その目ははちきれんばかりに大きく見開かれ、驚きのあまり口をパクパクと鯉のように動かすしかできず声が出ていない。

『ヨルとヨウか?』
『!?は、ハジメ・・・待って。まって!似てるけど。似てるけど・・あ、あれ人間じゃ!!!』
『!?』


「なんかいい匂いが!よっるさーん!おかしくだ・・・・」
「ずるいぞピンク!俺に・・・も?」

『『!?』』


「ぎゃぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」


そこからは酷い展開だった。

夜の作ったお菓子のにおいにつられてグラビの恋と新が遠慮なく共有ルームの扉を開け、大きな音に驚いたのかビクッ!と肩をゆらしビクビクと怯える魔族の〔ハル〕と〔ハジメ〕。 その驚きで翼が音をたて、そんな二人に気付いた新は驚きのあまりその場で滑ってこけドスンと大きな音をたて、恋は魔族の二人を指さして驚きの悲鳴を上げた。 そんな悲鳴と音が廊下中に響けば、心配した別の者たちが集まってくる始末。
そうして「なんだい?ずいぶんと楽しそうな気配がするねぇ」「おいおい、どうした?そんな声出して」「どうしたの?大丈夫恋!?」「いったいなんだ」っと、白年長。黒年長までかけつけてくるのは必然であった。

つまり全員が集合した。

恋「あ、始さん聞いてください!!!始さんたちがエロイかっこをしていて!!!って、え?!こっちからも春さんと始さんが!!!」
駆「すご!?向こうの始さんエロスがあふれてますよ!?」
海「おちつけ、始と春が二人いるだけだから」
陽「それだめなやつ!」
夜「え、えっと・・・舞台の衣装・・・とはちょっと違いかますかね?」
葵「あの羽根本物じゃ」
涙「綺麗な、音。木の葉が奏でる音みたい」
春「わー俺にそっくり」
始「そうか?お前、あんなにあくどくないだろ」
新「髪型と眼鏡の有無では?」
郁「どんな格好でも春さんはとってもかっこいいですよ!(キラリ)」

隼「おやぁ。そちらの始はずいぶんとセクシーだね!そんな始も、イイ!!!」

『『ヒィッ!?』』

陽「おい隼、怖がってんぞ。やめろよお前。ところかまわず始クラスタ発動すんのー(はぁ〜)」
葵「あ、羽根が散って・・・やっぱりこれ本物だ」

あちらの世界ではこういう服が一般的なんだ。
そう返したい〔ハジメ〕であったが、怒涛の勢いで12人にせまられ、あげく隼がうっとりとした目で近づいてくるものだから、訂正どころではない。

12人はそれぞれ自己解釈したらしく、最初以外は驚くこともなく、「隼〜」と隼をにらみつけている。
隼は「テヘペロ☆普通に悪魔を呼ぼうとしただけだったんだけどね」とウィンクつきでつげたがために、12人全員がそれだけで事情を全て察してしまった。
そんなわけで、12人は興味津々とばかりに“別世界の”黒年長を囲って会話をし始めたのだった。
そうしてしだいに輪が狭められていき、すっかり12人に取り囲まれた〔ハル〕と〔ハジメ〕は、「人間怖いよー」とガクガク震えながら大きな身体を小さくしている。

ハル『ニンゲンって怖い生き物なんだよ』

ふいに〔ハル〕がどこか遠くを見ながらポツリとつぶやいた。
それにもはやどこをみてるかもあやしい焦点の定まらない〔ハジメ〕がふらーりと左右にゆれつつ、片言でウンと頷いた。

ハジ『シッテル』
ハル『ねぇ、そんな怖いニンゲンが目の前にいっぱいいるんだけど』

バタリ

ハジ『・・・・・』
ハル『ハジメぇっ!!!!?Σ(゚Д゚)』

すでに限界だったのだろう。それを無理やり気付かないふりをしようと、視線を決して合わせなかった〔ハジメ〕だったが、〔ハル〕に指摘されて―――見てしまった。
羽根のない人間の、12人分の好奇心にあふれた眼差しを。

もうだめった。

ハジ『ああ、もう!!しっかりしてよ!トラウマ!?トラウマが発動しちゃったのハジメ!?ねぇ!待って!オレをひとりにしないで!ハジメぇー!!!』

バタンと後ろにそのまま倒れた〔ハジメ〕に〔ハル〕が涙目ですがりついたのだった。
そんな威厳も何もない羽のある黒年長をみて、なんだかとっても可愛そうに思えた12人だった。

海「なぁ、隼。なんかすげぇー悪いことしてる気分になるから、あいつら早くもとの世界に帰してやれよ」
夜「そ、そうですよ!なんか・・なんかすごく怯えてますし」
恋「こ、こわくないですよ!」
駆「俺達なにもしませんから」

ハル『ぴぎゃ!?うぅ〜・・・人間いっぱい・・も、もうむりぃ!!帰りたい、こわいよぉ〜はじめぇ・・・・』

海「あちゃぁーこりゃぁ本格的にダメだな」
陽「あー黒年長がすごい格好で泣いてる・・・ようにみえる。違和感!!!」
涙「ハルもハジメも、かわいそう・・・隼」
春「えーっと、あっちの羽根は本物みたいだから、彼らは本物の悪魔か何かとして。ここの空気が合わない。とか?」
新「なんにせよ、こっちがいじめてるみたいでいたたまれないのでーはよぉ、帰してあげてくださいよ隼さん」
陽「悪魔ってもっと堂々としているもんかとばかり・・・」
郁「人間が怖いって、どういうことでしょうか?」
葵「隼さん、泣いちゃってますよあっちのハルさんが!はやく帰してあげてください!」

警戒するように12人をみる〔ハル〕はもはや泣きながら懸命にたおれた〔ハジメ〕にだきついて、彼らから逃げようとズリズリあとずさりをしている。
とても心が痛んだ11人が隼をみやるが

隼「うーん。ごめんよ。帰してあげたいのはやまやまなんだけどねぇ。
そもそも魔界から悪魔を召喚するだけの予定だったのが、君たちがきた」
ハル『え、えっと、その、俺達が住んでるもの魔界、だよ?そこに帰してもらえればそれで・・』
隼「うん、そうだろうね。でも、問題は君たちがいた次元だ。僕が知る魔界よりはるかに上位の、まったく別の次元の魔界みたいなんだよねぇ。
君たちの様子を見て、さすがの僕も心苦しくなってね(苦笑)
帰えしてあげたいんだけど。
さっきから何度も試してはいるんだけど。時空がよじれてるのか、うまくつながらないんだ。
君たちは僕らのことすごく怖いんだろうけど、もう少しこの世界にいてくれるかい?まぁ、“始”なんていう特別な存在が二人も同じ世界に長くはいれないだろうから、そう長い間のことではないと思うけど」





◇ ◇ ◇ ◇ ◇





〔ハジメ〕の目が覚めて、事情を聞かされた異世界の住人である〔ハジメ〕と〔ハル〕は、しぶしぶという風に了承し、羽をしまい12人とお茶会をすることになった。

隼「どうやら最近平行世界の君たちを呼んだせいで、繋がりやすくなってしまったみたいなんだ。安心して、ちゃんとこの白の魔王様が責任もって君たちを元の世界に帰してあげるから」
ハル『ま、魔王!?』
陽「よけい怯えられてるだろうが!隼、お前は少し空気をよめ!」
春「大丈夫だよ。言うほどうちの隼はこわくないからね〜」
葵「春さんがハルさんをなぐさめて抱き締めてる姿は、双子みたいですね〜(ホッコリ)」
海「とはいえ、そっちの真っ黒い方のハルの方が、外見だけなら大人びて見えるがな。まぁ、外見だけだけど(苦笑)」
涙「うん。中身は向こうのハルのほうがなんか幼いカンジ?」
ハジ『・・・ここのシュンは、いままでみたどのシュンとも雰囲気が違うな。天族のシュンとはまた性格も違うのは、魔王と名乗るからには頷ける』
陽「・・・どんな口調のどんな性格の隼がいっぱいいるんだよ(遠い目)」
夜「なにそれこわい」
ハジ『俺たちは本当に無事に帰れるのか?』
隼「もっちろん!それは保証するよ!次元なんてケセラセラだよ♪できなくともやってみせるからね!なにせ僕の愛しいハジメのためだ!僕頑張っちゃうよ!」

ハジ『次元・・・お前らは、次元を超えれるのか?』

陽「次元とか、頭痛い」
葵「普通は無理です!!!」
恋「ちゅーにびょうっぽいからしかたない」
春「でもそれができちゃうからねぇ、隼は(苦笑)」

隼「そうだねぇ。それくらいなら」

ハジ『容赦なく同一存在の俺たちを殴ったりするのか?」

「え?」
「ん?」
「は?」

隼「え、えーっと?どういうことだい?」
ハジ『人間は俺達を踏みつける生き物だ』
恋「なぜそうなる!?」
駆「うーんと、これって悪魔の力を利用した人間が悪魔を使役しすぎる・・・とか、悪魔を踏み台に力を得るてきな。そういう聖夜にあるあるな悪魔のお話。ではなくて、ですか?」
ハジ『踏み台にしてそのあと利用されるならまだいい!』
ハル『人間に俺達が力を貸すようなことはあっても、俺達上位種だからそんなことされたことないし。普通はできないよ?』
ハジ『人間は強引で、恐ろしく人の話を聞かず、創造主さえ従えるほどに強く、時空に穴をあけるのも余裕で、空からやってきては俺たちを足で踏みつけていくんだ!』

ポツリポツリと事情を語りだした〔ハジメ〕が、それはそれは恐ろしい物を見てきたように語る。
その話を聞いていた数人が、なんだかつい最近そんな恐ろしい人物が次元を引き裂いて現れた光景を思い出し、ちょっと遠い目をした。

そうこうしているうちに〔ハジメ〕が、優雅に紅茶をすすっていた人間の方の睦月始をビシリ!と指さした。

ハジ『お前だって人間だろ!それも"ムツキハジメ"だ。どうせ俺を踏みつけるんだろう。容赦なく!!!』

ドーン!とばかりに、けれど若干の怯えをはらんだ声が断言する。
〔ハジメ〕は、その角やその悪魔らしい格好が不似合いな程、顔は青ざめて虚勢をはるのに必死だ。
そんな〔ハジメ〕に、始は軽くため息をつき、彼を一瞥しただけですぐに紅茶に視線を戻す。

始「俺は自分自身にそんなことをする趣味はない」

駆「始さんは自分じゃなくてもそんなむごいこと俺たちにだってしないですよ!!」
恋「そうだそうだ!」
葵「ですね」
新「アンクロはするけどなー」

ハル『あ、それはうちのハジメもやるよぉ〜。
で、でも(ふるふる震えながら)あ、あの・・・次元を超えられるぐらいだから、やっぱりこっちの世界の俺達は、俺やハジメよりも凄い強くて、あの、す、すごい力があるのは分かるけど。
あの、でもどうかこれ以上ハジメの羽根をむしらないであげて!俺達にとって羽根は力の象徴なんだ!だから!!!』

陽「え、えーっと、なんちゅうか。なにかが間違ってる気がする。そのな。あー・・・ハルさんたち、人間にどういう印象もってるかさきにきいてもいいか?」
ハル『え、どうって。数千年生きてるんだよね?空を飛んだり、重力操ったり、俺達悪魔を椅子代わりにしたり。羽根をむしったり!カマイタチで切り裂かれるかと思ったときは・・・死ぬかと。
あ!クレーターしか作れないレベルは恥ずかしいことだって言ってた!それに岩を壊せる怪力の人が殴っても怪我一つしない人間とか、創世の神々を喚んじゃうとか、パンダ産んだり・・・ や、やっぱり時空を超えられるだけあって、みんな俺たちなんか比べられないぐらいすごいよね(gkbrgkbr)』

「「「んなわけあるかぁー!!!!」」」

ハル『え、で、でも・・・人間の俺達は"そういうこと"してきたし。 君たちも人間だから・・・するんでしょ』
陽「なんだこのいかにも“するんでしょ!エロ同人みたいに!!”なノリは(遠い目)」
ハル『えろど?えっとそれがなにかはわからないけど、でも、俺、羽根ひとつしかしないからその・・・むしるならハジメの羽根だけでかんべんしてください!!』

大きな外見にはあわずプルプルプルとまさに小動物の筆頭たるチワワのように、涙目で震える〔ハル〕に、思わず頭を抱えた者、ツッコミを入れる者でその場はあふれた。

そこでなにか考えるようであった始が、思い出したように春をみる。

始「蝉の春か」

その言葉を聞いて、何人かが思い出したように春をみては、納得したように頷いていく。
それに見つめられた本人も思い当ることがあるようで、訴えるように涙目だ。

春「もうやめてそのネタ!あとその括り嫌だ!」
隼「なるほど!前々回呼んじゃった並行世界のハルなら!たしかに飛べたね」
陽「まぁ、たしかにあの春さんと始さんなら……納得だわ」
葵「蝉の春というと。たしか空を飛ぶ春さんが別世界にいるって言う話を聞いたことがあります」
駆「あとひたすら笑い続ける始さんとか」
海「あ、その始はたしか空飛ぶやつとは別の世界のヤツだな♪」
夜「ちょっと隼さん、どれだけ別世界から春さんと始さんを呼んだら気が済むんですかぁ。はぁ〜」
隼「テヘペロ☆」
海「そういえば平行世界のだけど、始のドヤ顔がインパクトあったよなー」
恋「始さんのドヤ顔・・・なにそれ気になる」
新「風をまといし空を飛ぶ春さん!ってきいてます―――舞い飛ぶ?!」
春「とばないよぉ(つд⊂)エーン」(棒読み)

陽「お前らだまれ!収拾つかねぇぇえ!」


散々春がいじられ、しまいには泣きまねを始めた春。
ただし泣きマネである。
春としては横でパニックになっている者がいると冷静になるとはよくいったもので、春は勇ましい外見をうらぎって怯え切った魔族の二人組を見ているうちに、彼もまたなんだか感情が一周まわって、冷静をうっかり通り過ごしておちついていた。
つまり今の春は調子にのっていた。
当然、それに目ざとく気付いた始が、無言でアンクロをしかけたことで、春が魔族たちになにかいたずらを仕掛ける前に未遂で終わったのだが。
本当に泣きそうだと勘違いした者がひとりおり、泣きまねをしていた春の傍でオロオロとしつつ、慰めようと(棒読みであるのに泣きまねに騙されている)〔ハル〕の姿があった。
誰もがウソ泣きだとわかっていたので、戸惑いを見せる〔ハル〕を年少組がひきとめて、首を横に振っておちつかせている。


とりあえずとばかりに魔族の二人を落ち着かせる。
二人から話を聞けば、魔族の〔ハル〕と〔ハジメ〕は、色々勘違いをしていたことが発覚した。
まず第一に、この世界の“常識があてはまらない人間”を人間と思い込んでいることだ。
そもそもあちらでは、とある条件をクリアしていない一般的な魔族や天族も大概は、千年ほどしか寿命がないという。
それを超えるのが人間だと思っている時点で間違っている。
ツキウタ世界の人間たちは、次々に語られる“間違った人間の知識”を披露され、いっとき共有ルームは阿鼻叫喚地獄となった。
さすがにそれには魔王を自称する隼さえ苦笑を禁じ得ない。

そこからは、のんびりとティータイムを過ごしながら、“正しい人間とはどういうものか”の講座が開催された。

人間はいかにもろく、短命であり、不思議な技は使えず――つまるところ一般人というのはどういうものか。
固定概念を覆すのは難しい。しかし、もとは“人間は自分たちが管理しなければ生きられない儚い存在”であるというのを正しい人間講座によって思い出した魔族の二人は、まるでつきものが落ちたかのような顔をしていた。

ハジ『あやうく“あちらの住人の常識(非常識)”に洗脳されかけていた』
ハル『えへへ。うっかりしてたよ。確かに、“彼ら”が来る前までは、俺達はしっかり“人間がなにか”識っていたんだよね』
始「よけいなものを見すぎたんだろう」
春「むしろそういう“常識”を吹っ飛ぶぐらい魔族の俺たちがみた人間がインパクトありすぎたんだねぇ。・・・・・向こうの俺たち、本当に何をしでかしたんだ(遠い目)」
隼「うーん。ふふ、やっぱり並行世界の“春”って全体的に面白いね」
海「こぉーら、隼」
隼「でもここで遠い目をしてる春と、プルプルほわほわしてる魔族のハル。それに魔力がない代わりに予言者の春。空を飛べる春。本当に平行世界の僕らとはいえ、一番春の個性が豊かだと思わないかい?」
海「ま、まぁそれはな。でも、だからといって呼ぶなよ!」
隼「てへ」
春「もうやめてぇ〜別の世界の俺をみるたびに、なにか心に突き刺さるものが増えていく俺の身にもなってよぉ〜(なみだ目)」

っと、あれやこれや和やかにティータイムはながれ・・・


しばらくして隼がようやく道を開くことに成功し、常識を再インストールした悪魔たちをツキウタっ子たちは笑顔で手を振りながら見送る時間となる。
白い扉が共有ルームの真ん中にドーンと存在している。
扉を開けば、向こう側は白い光の渦がまぶしい世界。
思わずツキウタっ子11人は、そのわけのわからない空間に顔をひきつらせた。向こう側に何があるかわからないのは恐ろしいし、隼が召喚した扉だ。向こう側がまっとうとは限らない。それを身に染みてわかっているがために、無意識に11人は扉から数歩ばかり距離を置いたほど。
けれど魔族の二人は白い世界の向こう側に何かを感じったようで、扉が開くなりどことなくホッとしたような表情を見せた。

ハジ『呼んでるな』
ハル『よかった。この向こう側からセフィロトの気を感じるよ』

「これで帰れる」と「ありがとう」と笑う〔ハル〕と〔ハジメ〕に、隼は「僕を褒めてくれていいんだよ!」と過剰演出後ハートをとばすが、残りの11人は「むしろ謝罪をしろ!」と隼につっこみをいれている。
そんな仲のいい12人をみて、〔ハル〕と〔ハジメ〕は顔を見合わせた後、それは花がほころぶようにわらった。

「「ッ!?」」

それは最初のような怯えたような小動物のおもかげはどこにもなく、愛しい幼い子供みる母親のような慈愛にあふれたもの―――その微笑み一つで、“彼ら”が人間とは別の存在であったと思い知らされるほど。

綺麗だった。

その言葉しか誰にも浮かべることができない。
そして包み込まれるような優しい温かさを感じる。

ハジメ『世話になったな』

ファサリ ファサリ

ハル『きて、よかったよ。もう、心を揺らさないですむ』

バサッ

六翼の漆黒の翼がひらき、続いて赤黒い翼が風をきる。


ハル『君たちのような人間がいるのなら、たまには“世界”を覗くのも悪くないと識れたよ。
六枚羽の言動は、その下々の者たちに影響を与える。それが“心をゆらせばセフィロトの木がゆれる”ということ。
本来であれば、知を司る俺とシュンがハジメの動揺を抑えるために、知識をあたえるべきだった。うっかり俺もつられておびえちゃってた―――任をかわり、セフィロトのいとし子の凪の心を取り戻してくれてありがとう、ひとのこ』
ハジ『この世界は俺達の管理下から外れた次元にある。けれどこの世界には“力”が満ちているからな―――お前らならまかせられる』

瞬間スッと〔ハル〕から表情が消え、かわりにキラリと知をため込んだ翡翠が輝き、口調も正される。まっすぐに12人をみる彼からは先程までのホンワカとした雰囲気は霧散している。
同じように六翼を邪魔にならないようにうまく動かしながら、漆黒の王の紫の瞳が見定めるように12人を捕らえ――笑みを浮かべた。

同じ姿形でありながらもこちらをみて「ひとのこ」と呼ぶ彼らにとっては、自分たちは容姿が似ていても非なるもの。ましてや種族さえ異なる“護るべき存在”と映っているのだと、その言葉で理解してしまう。
彼ら二人が自分たちに向けるのは親しい者への情による微笑みではなく、世界に生きる者すべてにむけられた慈愛と同じ。
それは長い年月を生きる彼らが本当に自分たちとは違う存在であるという証。

長い年月が彼らに相応の格を与えた――彼らはそれだけ異なる存在なのだ。

あんな雰囲気をだすのは、どう考えても演技でも無理だと悟っていた。
それを肌で感じ取ったがゆえに、本当に世界を管理するものたちだったとしる。
あれは自分たちとは違うものだ。


『『セフィロトへの道を』』


「ここからは自分たちで帰れる」と〔ハル〕と〔ハジメ〕が扉の前にたたずめば、その声に応えるように扉の向こう側から、シャーンシャーンとまるで沢山の鈴の音が重なったような木々の梢が響いてくる。
どことなく緑の木漏れ日の中にいるようなそんな錯覚をしそうになる。
その空気の変化を感じて、魔族の二人の口端持ち上がる。

〔ハル〕が一度12人を振り返ると一瞬微笑むように目を細め、躊躇なく扉へ飛び込む。
つづいて〔ハジメ〕が12人をみやり――

ハジ『月の加護を持つひとの子らに。そしてこの世界に・・・大いなる祝福を』

ふわりと弧を描いたアメジストはどこまでもやわらかく、この世界の始では絶対にみせることがないようなそんな美しい笑顔をみせる。

ほぉ〜っと誰もがあまりに美しすぎる存在に魅入っている間に、〔ハジメ〕もまた扉の向こうへとんでいき、黒い羽根が見えなくなると、扉は音もなくキラキラと光となって消えてしまった。


そうして魔王隼による、異世界珍事件は静かに幕を閉じた。
ツキウタ寮はようやく落ち着きを取り戻した





かにみえた



海「――っと、いうか」


海「これで終わりだよな?本当に終わりだよな?異世界からあいつらを迎えに誰か来たりとかないよな!?そんな迷惑なすれ違いはいらないからな!!」
隼「うんうん。本当におしまいだよ」
海「そうか。それ聞いてほっとしたわ」

始「今回はずいぶんとさわやかな別れだったな」
春「うん。あっけないほどにね」

夜「向こうのお二人、すごい綺麗だった〜(ほわ〜)」
葵「うんうん。あれが本来の二人なんだね」
恋「ですです!なんかもう最期の笑顔みました!?次元が違うっていうか!!!>▽<」
涙「凄い綺麗な音がずっと聞こえてたよ」
隼「それは向こうの世界樹の音だねきっと」
郁「はぁ〜すごかったですね(ニコリ)それにしても平行世界って本当に俺たちの世界とは何もかも違うんですね」
陽「つか、それならもうおっかないハルさんはこりごりだ」
春「俺はクレーターつくったり次元を引き裂いたり空を飛んだりしません!」
海「もう変なもん呼ぼうとすんなよ隼」
隼「そうだね。悪魔はやめておくよ」
春「その他もやめて!」



新「でも並行世界って無限大にありそうだし、またなんかきちゃったりして?」


「「「「!?」」」」

葵「やめて新!そういうのフラグって言うんだよぉ!!!」
新「・・・なぁ〜んちゃって☆」
涙「もう遅い」

恋「あ、これやばいやつだ(遠い目)」




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