【お題】 隼さんが喚んじゃった♪ |
<今回交わった世界について> ・原作よりの世界 ・隼に成り代わった零の世界。ただし前世が太極伝奇世界 <表記について> ※原作寄りの世界の住人・・・「 」 ※召喚された人々・・・『 』 「やれるものやってみろよ隼!」 「ふっふ〜ん♪それができちゃうんだよね」 「は?」 「“いる”んだよ。その条件にあう子たちが」 「うそ・・・だろ」 「そぉーれ!ハッピーアルビオーン☆」 【喚ばれちゃったよ♪ @ 太極伝奇・零】 数多の世界の中、睦月始と霜月隼という存在はめったにいないらしい。 それは一種の可能性の話。 もしも〜だったら・・・そういうやつだ。 陽「その途方もない数の、分岐された世界に、隼と真逆のがいたら見てみてぇもんだなっ」 なぜ陽が隼に喧嘩を売るような、そんな話になったかというと。 それはいつもだらけてる隼に、「たまには働けよ」と日常的なツッコミをした。 その売り言葉、買い言葉てきな流れからの、本当に何気ない言葉からだった。 夏真っ盛りの現在。 隼の彼の特殊体質で涼しい(なぜかほかの部屋より間取りが広く感じる)部屋には、部屋の主である隼、涼みに来た始、春、そして陽の四人が集まっている。 その会話の流れで、「良く動く」「働く」そんな隼がいるならみてみたい。と、完全にくつろいで春に紅茶をねだる隼をみて陽がボソリとつぶやいた。 別の世界になら、そんな隼もいるかもしれない。だがそんな別の世界をみるなんてこと、魔王でもなければ不可能だ。 普通ならあり得ない。 だが、話を進めていくうち、隼がなぜかヤル気を見せた。 隼「僕と真逆の僕が居るかって?いいとも!喚んでみせよう!」 ドヤ顔で言い放った。 隼「成功したら陽は今始がやってるイベント物販のランダム仕様ブロマイド10枚進呈してもらうよ!」 陽「じゅ、10枚?!」 隼「なかなか揃わなくてね。勿論、ダブっても保存用、鑑賞用、 保存用予備とありがたく全て保管してるんだけども。 本当は自引きでコンプリートしたいけど、こればかりは運だからね。 僕の手でもってしても揃わない辺り、流石始!ああ!!早く会いたいよ始ぇ!!」 陽「本人を前にして・・・」 隼「ねぇ、始。どうしてブロマイドでは君は僕の近くに来てくれないんだい?僕にデレてくれていいんだよ?」 始「しるか」 始本人にねだれば、全種手渡しで貰えそうなものなに、隼はけっして良しとしない。 そもそも一度、始がかわりにひこうとしたことがあるのだが、隼はそれさえキッパリ断っていた。 ファン活動は平等!という隼のこのスタンスは、全く崩れずことはない。 始の出てる雑誌や握手券入りのCDを買うために、隼は店まで自力で足を運んでいるし、 ちゃんと物販会場に並んだり、パソコンで自引きを行ってる。 陽としては、そういう意味では隼のことは嫌いではない。 だからといって、陽がそのランダム封入ブロマイドで始がでやすいかというとそんなことはないわけで・・・。 一枚でも大変であろうに、それが十枚である。 陽はごくりと唾をのみこみ、そして一つの案を出した。 陽「なら、条件追加だ!アイドルの隼だぞっ。俺達の世界と同じようにアイドルしてなきゃ認めないからな!どうだ!やれるものやってみろよ隼!」 これならさすがに無理と言うに違いない。 それならブロマイドの件はなかったことになるはずだ。 そう考えていたが。 隼「おやおや、手厳しい追加だねぇ」 隼はそう笑いながら「でもねぇ」と付け加えた。 隼「ふっふ〜ん♪それができちゃうんだよね」 陽「は?」 隼「“いる”んだよ。その条件にあう子たちが」 陽「うそ・・・だろ」 隼「いやぁ〜これが本当に居るんだよね!そぉーれ!ハッピーアルビオーン☆」 その場にいた全員が止める間もなく、隼がパチーンと高らかに指を鳴らすと―― 零『うわっ』 ハジ『ぐっ』 「「「「・・・・」」」」 ドサッという鈍い音が響き、春が席を立ったことで空いていたソファの上に、二つの影がどこからともなくふってきったのだった。 そこには、なんだか見覚えのある人間が二人転がっている。 隼と始が団子になっていた。 陽は思わず横に居る始を見たが、呆然とした顔をしている。 また視線を横にずらすと、満足気どころかキラキラした目をする隼の顔。 そしてソファに視線を向けなおせば――うめくリーダーズ。 つまり、今、この場には、睦月始と霜月隼が二人いることになる。 隼「おや!“僕”を呼んだら始も付いてきたなんて………これはブロマイド20枚かな!?」 陽「要求を増やすんじゃねぇ!!」 春「・・・始がふたり・・・・・あ、紅茶あと二つ用意しないとだめだね」(いそいそ) バタン! 海「ふぃーあちー!隼、わりー涼ませてくれ・・・・・・ん?隼が、つか始まで。え、なんだよお前ら何時の間に増殖したんだよーやべぇな。アイス、四つしか買ってないぞ」 隼「アイス!」 春「あ、三つか」 陽「春さんが驚かない!?動じない!?何事もなかったように紅茶を追加してる!つか海はノックぐらいしろ!おい、隼!お前がスッテンコロリンばかりするから参謀ズどもが通常運転だぞ!」 春「うんうん、慣れってこわいね〜(ニコニコ笑顔で遠い目)」 海「人数多いからアイスは今度な。冷凍庫借りるぞー(爽やかスマイル)」 始「陽は落ち着け。日本語がおかしなことになってるぞ」 海「今度はどこの世界から招待したんだ。ははwwそれにしてもこっちのこいつらと本当にそっくりだなwww」 隼「そりゃぁ彼も僕だからね!」 さぁ、ソファーで団子状態になっているリーダーズに声をかけようかとしたところで、勢いよく部屋の扉が開き、コンビニのビニール袋を持った海がはいってきた。 海はそのまま何事もなかったのように、「いらっしゃい」と別世界のリーダーズにそれはもうさわやかなスマイルをむけて、春を手伝い始めた。 そんな通常運転過ぎる参謀ズを横目に始は小さくため息をつくと、ことの元凶である自分の世界の隼を一睨みする。 始「で、隼。今度はなにをした?」 隼「ふふ。みてのとおりだよ!パラレルワールドの“僕”と“始”です!」 本当に白い魔王は、パラレルワールドの自分を呼び出したのだった。 その魔王。 もはやなんでもありだった。 衣装からして、召喚されてしまった二人も陽の条件通りふつうの現代人であろう。 しかも条件にあったというのであれば、きたのはアイドルをしている二人ということになる。 そんな別世界のリーダーズを助け出し、きちんとソファーに座らせ、対面するようにこちらの世界の5人が腰かける。 改めて向こうのリーダーズに自己紹介をしてもらおうとなったわけだが・・・ 零『いいかげん離れろ。邪魔。すっごい邪魔だからハジメ・・・・いいからはーなーれーろぉー!!!』 ハジ『断る!!!』 零『全力でいい顔してんじゃねぇよ!!』 一人称が「俺」である〈シュン〉の腰にしがみついたまま〈ハジメ〉が離れない。 そんなやりとりに、思わず春と陽がポカーンと目を点にする。 始は眉間にしわを寄せている。 隼はうらやましそうだ。チラリと横にいる始をみるも「しないからな」と拒否られて落ち込んでいる。 春「始クラスタの隼は知ってるけど。え・・・逆なの?そっちの始が隼クラスタなの!?」 ハジ『しゅんくらすた・・・いい響きだな。よし!俺は次からそう名乗ろう』 零『よくない!名乗るな!』 陽「・・・・・・たしかにこっちの隼とは真逆の世界のとは言ったけど。真逆すぎだろぉ!!!」 海「ははははwwwそっちの二人も仲良よさそうだな」 なんとか〈シュン〉から〈ハジメ〉をひきはがすことに成功したところで、春がゴホンと咳をし、司会をかってでる。 そのまま若干表情の硬い別世界のリーダズの気持ちをほぐすようにか、笑みを向け自己紹介をはじめる。 春「えっと、まずは、うちの隼が無理やり二人を召喚しちゃってごめんね。 俺は春。わかるとおもうけど、そっちから陽、隼、始だよ。俺達は一応アイドルをしてる」 海「ほら、隼。お前の勝手な都合にむこうは付き合わされたんだ、謝れよ」 隼「うう・・・ごめんね」 ペコリと頭を下げ申し訳なさそうに眉をたれさせる隼は、なんだか愛嬌がある。 それをみて期待のこもった眼差しを〈ハジメ〉が〈シュン〉にむけるが、「ないから」とサラっと流されている。 陽「向こうって、隼だけが真逆っていうか・・・もはや始さんと隼が入れ替わってる気がする」 陽のつぶやきに、思わずこちらの全員が頷いたのだった。 零『えっと、自己紹介っつってもどうしたもんかな』 春「そうだねぇ。じゃぁ、君たちのことおしえてくれる?俺たちの世界との差異が知りたくてね」 零『世界の違いといってもなぁ〜、俺たちもアイドルだし。それほど世界観が違うとは思えないけど』 春「なら、分かりやすく仕事用でもいいから自己紹介してもらえるかな?」 海「なるほど。もっとも分かりやすい違いが出るかもな」 参謀ズの言葉に、〈シュン〉が承知とばかりに頷き、胸をドン!とはって、ニカっと笑顔で名乗り始める。 零『うっし!俺からいくぜ。俺はアイドルProcellarumのリーダー、11月担当の霜月シュンだ。 好きなものは食べる事、バスケ、あとゲームや漫画だな。趣味は居合と料理。食うのは大好きだぜ!』 想像はしていたが、それをはるかに超える斜め上の回答に、陽たちは動きを止め顔をひきつらせた。 違和感が酷い。 見ているものと中身が自分の知るものと違いすぎて、メンバーたちはどう対処したらいいかさえわからないでいた。 まずはじめの態度からして、というか、わらい方からして違う。 なに、あの爽やか爽快スポコン少年みたいな笑顔。爽やかな隼とかなんだそれ?と言いたくなるレベルだった。 違い過ぎる。全く持って違い過ぎた。 向こうの世界の"シュン"は喋り方から驚くばかりなのに、嗜好もなにもかも自分たちのしるの魔王様と違う。 そもそもこちらの隼は「はたらきたくない」が代名詞なのに、向こうの〈シュン〉は超のつくほど活動的だ。 もはや「だれだあそこにいるやつ?」 そう誰かがつぶやいても賛同の声しか上がらないような雰囲気である。 陽「てか、ソファから起き上がって初めて向こうの〈シュン〉がエプロン姿(紫地に蝶と雪が控えめに刺繍されている)だって気づいたんだけど!まじでお前が料理するのかよ!?」 零『ああ。俺大食いなもんで、できる限り自分で作るようにしてんだよ』 海「え!?隼が料理!?つか、大食い?春じゃなくて隼が?」 春「むー。わるかったね!俺は絶賛育ちざかりなのー」 ハジ『俺たちの〈ハル〉とそっちの春の食事量が同じくらいなら。〈シュン〉はそのレベルじゃないぐらい食うぞ』 陽「まじか。そんな隼なんて、俺らにとって違和感しかねぇぞ。隼が料理って」 始「それはれきっとした食べられるシロモノなのか?(汗)」 零『当然だろ。なに言ってんだお前ら』 違いすぎた。 はっきりいって、向こうとこちらの隼のすべてが違いすぎた。 思わずこちらの世界の仲間たちが、「電車の改札は普通に引っかかるよな?」とたずねれば、意味が解らなそうな顔をされ、「魔界生物に知り合いがいるんだろう?」と聞けば首を傾げられる始末。 そして最大のポイントに気づいた者が一人。 海「こっちのシュンは「始好き〜!」じゃないのか?」 零『は?』 ハジ『ん?』 うんうんと頷くは、こちら側の住人。 ポカーンとした顔をしているのは、向こう側のリーダーズ。 隼「僕はこの世界でのProcellarumリーダー霜月隼だよ。好きなこともとい始の大大大ファンでクラスタなのさ!」 海「ーーーとまぁ、これが俺達のリーダーだからな」 ハジ『あ、ああ・・これがさっき言っていた“始クラスタ”というやつだな。なるほど』 春陽「「納得しないで!!!」」 唖然とした顔で、始についつて熱くうっとりと語り始めた隼を凝視する〈シュン〉。 隼と同じ面なのに、滅多に見れないカルチャーショックな表情をしてる。 陽(これは貴重な瞬間かもしれないな) 春「えー・・・えっと・・・ハプニング?はちょっとあったけど、そろそろそちらの〈ハジメ〉の自己紹介をお願いできるかな?」 ハジ『ふっ。Six Gravityリーダーで1月担当の睦月ハジメだ。 趣味兼特技は古武術、好きなものもとい大切なやつはシュンだ』 零『ちょっと待て?!ハジメっお前そんな言い方した事ないだろうが?!!』 ハジ『そうだった。こういうときにアレは使うんだったな。すまない追加事項だ。 ついさっきから“シュンクラスタ”になっ睦月ハジメだ。よろしくな』 零『よろしくしたくねぇよそれ!?』 行動もだが言い放ったパワーワードに空気が凍る。 耳がおかしくなったか?え、向こうの始はなんて仰った?はぁ?隼くら、すた? 寄組「「「「はぁぁぁぁぁ?!」」」」 こちらは一見なにもかわりがない〈ハジメ〉――と、思いきや。 さっそく、先程の宣言を実行した。 こちらの世界の始と相違ないと思ったのも束の間、キラキラした笑みで〈シュン〉を引き寄せる〈ハジメ〉。 はっきり言おう。 “始クラスタ隼”といえど、そこまでの過剰な接触はしていない。むしろさせてもらえていない。 なんだこいつら・・・・陽が死んだような顔をして、別の世界のリーダーズをみていたのを、そっと春がその背を撫でた。 零『その紹介のしかたやめろよーひくわー』 ハジ『俺がどんな自己紹介をしようと勝手だろ。それに今は仕事じゃないんだ。こいつらに俺達の違いを見せるために言う程度なら、“この主張”は譲れないな』 零『かっこよくみせてもそれアウトだからな・・・・はぁ〜先が思いやられるわー・・』 隼「いいっ!!!」 ふいに歓喜極まった大きな声が響く。 視線を向ければいつの間にか隼が鼻血を流しながら、ハンディカムで〈シュン〉と〈ハジメ〉の様子を撮影していた。 どこからだした?むしろいつか撮っていた?と、全体的に唖然としているなか、なるほどそこまですればクラスタと名乗っていいんだな。と〈ハジメ〉がつぶやき〈シュン〉にペシリとたたかれる。 隼「始が!いや違うハジメだってのはわかってるんだけど!でも!!・・・ああ、なんていい声なんだい!始の声で「しゅんが大好き」とか!!!これは永久保存決定だね!音声だけ抽出して永遠に繰り返そう! いまのを動画に収めた僕グッジョブ!!!もうなんてご褒美なんだ!!!!」 陽「いつの間に!?」 隼「他世界の僕達(とくにハジメ)の自己紹介なんて貴重だから撮っておこうと思ってね。ああ、もう!!思わぬ収穫!!! 神よ!僕は今この瞬間を死ぬほど感謝するよ!! えーっと焼き増ししなきゃね!これは擦り切れるまで観賞する用!あと永久保存用!そうそう、万が一の保存用と音声媒体までダビングしとかないとね!そのあとスマホの着信音にしよう!いやアラームに!ああ!楽しみでいっぱいだね!!」 陽「・・・うちの魔王様が怖い。あ、いつものことか(遠い目)」 海「つか、うちの魔王が、なんかごめんな」 〈ハジメ〉にひき寄せられ目をハートにしてシッポがあったらブンブン降っていそうな魔王様を別世界の〈シュン〉が、「これが別の世界の俺だとぉ!?」と目を丸くしてガン見し、そのままあまりのクラスタぶりに若干ひきぎみである。 逆に、こちらの世界からすれば、〈シュン〉もまた違和感の塊なのだが・・・。 それはさておき、かくいう〈ハジメ〉はというと、 自分の世界の〈シュン〉を一瞥した後、何を納得したのか一人満足げに頷くと、隼に笑顔を向けて手を伸ばす。 「こい」とばかりのそれに、隼の目が輝く。 ハジ『そういう反応は新鮮だな。そこまで喜ぶなら、もっと言ってやろうか?(笑)』 隼「是非とも!喜んで!もっと言って!ビデオ!!ビデオ!!!あ、ちょっと待って!ボイスレコーダーはどこだったかな!?」 伸ばされた手をキュンキュンとしながらうけとりつつ、隼がバタバタと部屋の中を駆け回り、レコーダーやカメラやビデオやらを取り出す。 ちゃっかり呆然としてるこちらの世界の参謀ズの手にそれらの機械のいくつかを持たせている時点で抜かりはない。 “始クラスタ隼”に隙はないのだ。 ハジ『ふっ。ずいぶんゆかいな〈シュン〉だな。 俺の世界では、いかに俺がこいつのことを大切におもっているか語ると、最近のグラビメンバーはスルーするか逃げるんだよな』 隼「そんな!なんてもったいない!かわりにここで存分に愛を語ってくれてもいいんだよ?」 ハジ『そうか。なら・・・』 始零「『ヤメロッ!!』」 春「それはさておき(苦笑)“隼と真逆の性格で始さんクラスタではない、俺達の世界とほぼ同じのアイドル隼さん”っていう陽の要望、叶ったね。どうする陽?」 陽「この場合俺はどれだけブロマイドを買いに行かなきゃいけないんだよ!!!てか、まさか始さんが隼クラスタ(?)な世界があるとか・・・」 (頭クラっ) 倒れた陽を春と同じように苦笑を浮かべていた海が支える。 確かに召喚された〈シュン〉は、陽が言った条件はすべてクリアしていた。 いや、それ以上の驚きをこの場に提供していたといいったほうが正しいほどに。 つまりこのままでは陽はとんでもない数の睦月始のブロマイドのために、これからブロマイド(ランダム)を買いに行かなければいけないことになる。 その額や想像を超える。 始「?そういえば、そっちの〈シュン〉はチョーカーしないんだな」 子犬のようにまとわりつく隼と嬉しそうに会話している〈ハジメ〉をみやりながら、倒れた陽を心配げに見ている〈シュン〉を観察していた始が、ふいに声をかける。 彼が指摘した、気になった点。 霜月隼のチョーカーだ。 そのチョーカーは、いつぞやに魔力コントロールしてるものだと話していたこともあるもので、それが真実かどうかはさて置き、隼はいつもそれをしていた。 しかし別世界の彼は真っ白な首を晒したままだった。 隼「おや。そういえばそうだね?」 陽「いやいやいや!むしろこの場合、そこって気付くとこか?よく気付いたな始さん」 始「特徴とも言えるチョーカーをしていないからみてればわかる」 零『あー代わりにネックレスしてるからな。ネックレスの時はチョーカーを外してるんだ』 そう言ってチャリッと首からひっぱりだしたのは、シルバーのチェーン。 こう見ると首元の黒衣チョーカーがないことも、その胸元で銀色に輝く光があるのも新鮮だ。だが、意外に“霜月隼”という姿に、銀はよく似合っている。 なるほど、ネックレスも悪くないスタイルだ。 その場の全員が納得しかけるが、しかし――その動きもまたとまってしまう。 陽「なんでだろうな。なんか地雷原を目の前にしてる気分なんだけど。そこんとこどうよ?」 海「さぁ?なんでだろうな〜(視線そらし)」 横に居る別世界の〈ハジメ〉がこの話題になった途端ドヤ顔をし、頬を緩めたのだ。 思わず事情を知らない者たちの動きが止まる。 安易に何かをつっこんで聞いてはいけない気がしたのだ。 春「こ、こう見るとほんと全然違う二人なんだね」 始「そうだな。おい、春。ちょうどいい本体外せ」 春「なんでアイアンクローの構え?!なにがちょうどいいの!?」 始「あっちの俺のニヤケ面むかついたから」 春「理不尽?!八つ当たりはやめてよー!」 そのまま真顔で春の頭をしめにかかる始。 なみだ目で逃げようとする春。 陽たちにとってそれは何てことはない、いつもの光景だったが、このやり取り見た〈ハジメ〉が驚いた様子で目を見開いていた。 ハジ『ハル?それがあのハルと同じだと!?・・・なんだこれは。錯覚か?泣きそうなハルとか・・・シュン、俺の目は何か幻覚を見ているようなんだが』 零『ああ、うん。違和感半端ないなー。ハジメから逃げ惑うハルって、俺始めてみるわー』 春「え?…向こうの俺どうなってんの?!」 零『どうって、〈ハル〉っていったら、なんにでも吹き飛ばしてでも突き進み、ハジメには基本的に喧嘩腰で挑みにいく――あ、強気なタイプ?』 「「「誰だそれ?」」」 春「俺、猪みたいなそんなことしないよぉ!」 始「おちつけ春」 隼「ふふ♪どうやらそちらの世界では“僕たち”だけじゃなく、〈ハル〉まで性格が真逆のようだね」 ハジ『ああ、うちのハルはもっと狂暴でな。 怒らせると風は轟くは、人を投げ飛ばすわ、拗ねれば天井に張り付くわ。あと、俺に対する物理攻撃が酷いな』 陽「どんな春さんだよ!?つか、それ本当に春さんか!?」 春「天井に張り付くって、ねぇ?それほんとに俺?!せみ?蝉なの?!!」 ハジ『蝉wwぶふっwwww』 焦る春のツッコミに何を想像したのか、〈ハジメ〉のツボに来たらしく、あの睦月始らしからずことに外聞もなく笑い出している。 零『お前が悪意ある言い方するから…うちのハルの風評被害がひどいぞ』 ハジ『ぶっは……悪意ではなく、事実を述べたまでだ』 零『まぁ、嘘は言っちゃぁいないんだけどなぁ・・・・蝉は、ないわー』 ハジ『ちなみに。実際に天井にはりついてミンミンないてるわけじゃない。この世界は同じ造りだから…あぁ、あの梁だ。あの梁に腰掛けてむくれるんだ』 春「・・・・・なんて事無いように言うけど、待ってほしい」 〈ハジメ〉が指し示した場所は、天井に近い一本の梁。ぶっちゃけ年末大掃除の時でも近寄れない高さの梁だ。 春「蝉って勢いで言っただけで、本当に張り付いてるとか思ってな・・・!?いま、なんて?え?あの梁の上?あそこって・・・」 始「あそこは・・・脚立が届かない位置だぞ。あんなところにそっちの〈ハル〉が登るのか?」 春「え…………(固まる)」 春が続いて示された梁を見て、ガチンっと固まる。 陽「つぅーことは、梁の上が本当かジョーダンかはともかく、そっちの〈ハル〉さんは高所恐怖症じゃないのか?」 ハジ『いや、ある条件下であれば高いところも平気らしいんだが、基本的には高所恐怖症でまちがいない。まぁ20cm以上の高ささえ怖がるところはめんどくさいがな』 陽と海と春が再び天井の梁をみあげる。 どうみてもあの高さは、高所恐怖症の春が進んで登れるとは思えない高さだった。 案の定、春はブンブン横に首を振ってる。 春「無理無理無理((((;゚Д゚))))」 始「さっきから気になってるんだが、あれをどう登るんだ?」 ハジ『どうってーーー』 零ハジ『『空飛ぶんだよ』』 息ぴったりな返答がコンマ数秒で返ってくる。 内容は理解しがたいものではあったが・・・。 しかしそこで始がそれはまじめな顔で頷いた。 始「なるほど。春は人間辞めて蝉になったんだな」 酷い自己解釈である。 春「俺のフォローはっっ?!」 始「それなら飛べるという理由も、あの高さに到着する理由もわかる。なるほど、春は蝉か」 春「始さんは蝉に興味深々だ!始さんはスルー覚えた!やったね!――ってぇ!!ちがーう!!たしかにいまは夏だけど!夏だけど!!! でも、今回はスルー困るんだけど?! っていうか、なんかニュアンスからして“向こうの俺”じゃなくてここにいる俺のこと蝉って言ってるよね始!?」 陽「完全に始さん蝉春発言、気にいったみたいっすね〜」 春「俺はとべなぁーい!!」 隼「ん?どうしてみんなそんなに驚いてるんだい?」 『『「「「え」」」』』 隼「普通にケセラセラ〜で皆飛べるよね?」 陽「とべるか!!」 零『無理だろ?!あんな芸当(獄族内でも)ハルだけだから!!』 海「隼、俺達に無茶振りすんな」 ハジ『あんな奴は二人もいなくていい。ハルだけで十分だ』 陽「隼さんとシュンさんが真逆のことを」 隼「おや?そっちの〈ハル〉はとべて、そっちの“僕”は飛べないのかい?」 零『いくら俺達でもなー。飛べるのはハルだけ。あと規格外っていう意味だとカイぐらいだな。飛べないけど」 海「そっちは“俺”も特殊なのかー。ちょっときになるなwww」 ハジ『まぁ、さすがのカイも俺も普通の人間だし。一般人の枠は一度だってとびでてないから、ハルよりはましだろ』 零陽『「・・・え」』 陽「"俺達でも"とか"規格外"とか。"普通"って・・・普通の人間は"普通の人間"て言わなくね?なにその意味深な言葉の数々・・・」 零『ハジメが普通で、一般人枠?』 春「あ、突っ込むタイミングは同じだったけど、気にしてるところはそこなんだね二人・・・」 隼「ねぇ、“僕”。君はなにか面白いことはできないのかい? そうだねぇ、たとえば僕が魔王って呼ばれるのと同じように・・なにかを召喚したり?龍とか。あとはおまじないをかけてあげたりとか」 隼の爆弾発言に、陽始春海がギョッとした顔で彼を振り返る。 だがそこへさらなる爆弾が投下される。 零『あ、龍の召喚?できるできるwww』 それは見事な肯定だった。 そして 零『まぁ、条件があって。テレビの世界に入ったり、異世界でないと俺は召喚できないんだよなぁ。 おまじないは無理だが、運をあげる札なら作ってやれないこともない。 ちなみに俺は、テレビをちょぉ〜とばかしダンジョンに繋げちまう能力だな。"あちら側の世界"なら、魔法も普通に使えるぜ。 現実世界では・・・恥ずかしいことに、氷を出すのが精いっぱいだな』 ハジ『俺は術が使える』 〈シュン〉だけではなく、なんと〈ハジメ〉からも"使える"宣言がきたのだった。 陽「魔法と術の差ってナニ?!!てか、テレビってなんだ?!」 海「うーん。なぁ、氷って出せるだけですごくないか?なんで恥ずかしいことなんだ?つか、それ今の季節最高だな〜」 零『ハルとかカイが規格外すぎて、俺、自分の能力がしょぼい気がするんだよ。 あ、うちの“ヨウ”はすげぇー器用なんだぜ!(ドヤ)あと“ヨウ”の能力はめちゃくちゃ便利だ』 陽「そっちの世界は何なんだよ!?つか“俺”の能力なに!? その意味深な感じでやめるのをやめろー!!!気になるだろうが!聞きたくないけど!!」 海「ははww陽のツッコミが今日もさえわたってんなー」 春「なんだかかわいそうなほど必死につっこんでるね」 ハジ『うちの“ヨウ”はもう少しおとなしいかな』 始「あまり、陽をからかわないでやってくれ」 隼「ねぇねぇ!そのテレビをダンジョンにってどういうことだい!?」(キラキラ) 零『見せたほうが早いな』 隼がキラキラとした眼差しでそれはもうワクワクと、〈シュン〉をみる。 〈シュン〉は笑顔で頷くと、共有ルームのテレビに―――片腕をツッコんだ。 「「「!?」」」 隼「わぁー!すごい!すごい!!僕もやりたーい!」 零『いや、そこは無理だろ。これは俺だけの能力だしな』 隼「ん〜残念。しかたないからあきらめてあげるよ」 マジックだろう?と疑うことはできなかった。 それを誰かが言うよりも前に、〈シュン〉の腕がどんどん底なし沼のように入っていくのだ。 もはや全員が、現実だと嫌でも理解した。 春「わー・・・人間ってなんでもできるんだね(遠い目)」 始「普通はできないのが人間だ」 春「そういえば・・・・・・ねぇ、向こうの〈ハジメ〉が術とか言っていたけど、それって隼が使うのと何か違うの?」 陽「あ、話そらした」 隼「ふっふっふ!説明しよーう! 僕が使う魔法やおまじないは、魔力を媒体にしてるけど、彼らの術は陰陽にもとづいた自然エネルギーのようだよ!」 陽「陰陽?陰陽師が使うあれか?」 ハジ『それに近いが、俺の場合――現代でいうならば[道教]が一番近いな」 海「どーきょー?読経か?」 春「それ、たぶん違うともうよ海。術って言うからには・・・・[キョンシー]と[術者]とかでつかうやつじゃないかな?そういえば海も理解しやすいんじゃないかな?」 海「あ、なるほど!読経じゃなく道教か!流石、春ペディア!!」 隼「ちなみに先ほど、もう一人の“僕”が見せたテレビに関した体質は僕と同じ魔法の部類だね」 陽「ほー。向こうの〈シュン〉もハイスペックチートか。なんだ、どこの隼も魔王か。・・・理解したわ」 春「陽、目が死んでるよ」 陽「そういう春さんもやばいって」 春陽「・・・・ですよねー(遠い目)」」 春と陽の声がみごとにはもる。 これ以上のことはきっともうないだろう。そう思いたい。いや、ない。 ――しかし、そんな二人の願望は〈シュン〉の次の言葉であっさりひっくり返される。 零『ハイスペックチート魔王って、ひでぇな。そういうのは〈ハル〉の専売特許だろ。 力があったときでも俺はせいぜい岩とか壁割る程度だけど、カイやハルならいまでも余裕で地面にクレーター作れるしな』 春「岩を」 陽「クレーター」 始「さすがに蝉は岩を割りもしなければ地面に穴もあけないな」 海「ははwwでも蝉の幼虫は地面を掘って穴を開けて外に出るんだぜ?」 始「なんだ。やっぱり“向こうのハル”は蝉か」 隼「ねぇ、海!僕、君が作るクレーターがみてみたいな!」 その楽し気な言葉に思わず全員が海を見やるが、先ほどの春に同じく首を横にブンブン振っている。 海「無理無理無理((((;゚Д゚))))」 ハジ『そうだな。やはり年の功というやつか。あちらのカイだからこそできる業だろう。奴の年齢は20なんて遠に超えている』 春「え。長く生きればクレーターってつくれるの?」 海「無理だから」 陽「つか、そっちの俺らいくつなんだよ」 零『あ、今はちゃんと人間だぜ俺たちも。ちょっとばかり能力が残っただけで。だから肉体的には20歳前後だな』 〈シュン〉が焦ったようにカバーするが、陽達から言わせればあまりフォローになっていない。 むしろツッコミどころだけが満載だった。 そうなれば次に来るのは決まっている。 ビシリ!と鋭く手を動かした陽から、勢いのよいツッコミがはいる。 陽「ちょっと以前の問題!“今は”ってなんだよ?!“今は”って! それに“肉体的には”だとぉ? なんなんだよあんたら・・・・・能力とかさー、なんだよもう。 そもそもこっちに能力うんぬんはねぇよー!うちの隼以外!!!」 隼「テヘペロ☆」 ハジ『お前もだ〈シュン〉。陽の言うようにちょっとどころじゃない。 俺は以前言ったよな。お前は自分のこと棚に上げるな。と。ハルのこともそうだがお前だって、いろんな意味で特殊なんだからな。気をつけろよ。変なものを呼ぶ的な意味で」 海「やっぱりどこの世界いっても隼は隼だなってことはよーくわかったな♪」 陽「なんかもはやあちらさん、人ですらない気がするんですが」 始「一件落着か?」 そんなやりとりの最中。 ふいに ぐぐぅぅぅ〜・・・・ それはそれは分かりやすいほど盛大に、腹の音が響いた。 零『はら、へった』 元気のないつぶやきと共に、〈シュン〉に抑えられた腹が再び盛大な音を立てる。 腹の音は〈シュン〉のものだったらしい。 春「いまの...シュンなの?」 陽「あぁ、そういえばエプロンだったなシュンは」 始「食いっぱぐれたんだったか」 零『夕飯出来上がった直後だったのに………!!』 ハジ『俺だってお前のご飯お預けなんだが』 隼「お前のご飯!?始がそう言ってくれるなら!ねぇ海、僕は料理を学ぼうと思うんだけど!夜にお願いしたらいいかな!?そうしたらいつか始が僕の手料理を食べながら「お前の飯が食べたい」みたいな!?いい!早速、夜に相談だ!!」 海「お前はやめておけ」 陽「夜のところにいこうとすんな!!!」 始「しかたない。何か作るか。 おい、隼。この部屋の冷蔵庫って中身はいってるか?」 始が騒がしい仲間たちを見てため息をつきながら、重い腰を持ち上げ、袖をめくり始める。 このメンバーで料理ができるのは始と陽である。 その始に「始の手作り!」と目をが輝かせる隼。 陽が手伝うと席をたとうとしたところで 零『あ………それなんだが』 待った。が、かかった。 ハジ『支払うから・・・といってもこの世界の通貨が同じか怪しいが。 出前表はあるか?ちょっと俺達というか、こいつがよく食べる方なんでな。出前来るまで、良ければその間に入れるものあれば貰えると嬉しい』 春「できるまでのつまみてきな?え、でも出前ってことはちゃんとした食事!?しかもそれに加えて始の昼飯まで食べる気なの!?」 陽「・・・・あー葵ちゃんと夜がマドレーヌをかなり作ってた、あれがまだ残ってたと思うから、ちょっと待ってろ」 陽が呆れたような顔をして部屋を出ていたあと、その間に色んな出前表のなかから一つ取ると、〈ハジメ〉は手慣れた操作でダイヤルし〈シュン〉に何も聞かずオーダーを言う。 それはもはや魔法か何かの呪文のような・・・・ ハジ『それぞれ2人前で。シーフードサラダ唐揚げマルゲリータピザ鯖味噌和膳定食ダブルチーズハンバーグプレート出汁巻き卵フライドポ テト大盛り季節のビックフルーツパフェと定食はどちらもライス大盛りで』 奇怪な光景であった。 滑らかに発せられた言葉はどこの魔法だろうか? それとも呪詛か。はたまた彼らが先程言っていた[道教]とやらの一種だろうか。 「はらへった〜」「まだかな♪」とニコニコして〈ハジメ〉の電話が終わるのを待っている〈シュン〉。 「いまのはどこの国の魔法かな?」と本当にわからないと言ったように首をかしげる隼。 「「「…………………………」」」 ハジ『シュン…追加は?』 零『いや、問題ない。たぶん」 ハジ『そうか。―――では、以上でお願いします』 始「おい、まて。これがちょっとのオーダーなのか?!2人前ってことはお前らが全部食べるのか?!」 ハジ『まぁな。俺も食べるほうだが大半はシュンだな』 明らかな注文過多だ。 誰もがそう思った瞬間だった。 しかし。数十分後………ある意味(誕生会などで)見慣れた光景―――だが、2人で食べるという意味では見たことない量の料理がテーブルに並んだ。最早、山盛り、満漢全席。 それが驚くべき速さで、瞬く間に空になっていくのだ。 優雅に食べつつもハイスピードで。 ………マドレーヌなんて腹の膨れるものをかなり食べた後にも関わらずだ。 あのマドレーヌの山を平らげてなお、足りないと言っただけはある。 隼「うーん、これはさすがに予想外かな(苦笑)む、向こうの僕は…その…よく食べるんだね」 海「すごいぞ。うちの魔王様が真顔で引くなんて」 陽「料理を作れる時点でも真逆だし。食べ量も真逆だな。どこまでその〈シュン〉はうちの隼と真逆なんだ」 隼は青い顔して紅茶を流し込んでいた。 ただし胸やけを舌らしく、紅茶を一口飲んでテーブルに戻してしまっている。 まぁ、分からなくもない光景である。 陽「そういえば、真逆のリーダーズは料理中にこっちよばれたんだよな?・・・向こう、火事とかになってないか?」 海「言われてみると。なぁ、そのへんどうなんだ?大丈夫か?」 零『珍しく俺達だけ寮にいたからなぁ。 他の皆は外で食べてくるって言うし…俺が夕飯作ってたんだよ。とはいえ、ちょうど作り終わって包丁を洗おうって段階だったからいいけど。 向こう帰ったら飯冷めてそう。もったいねぇ。 ………って!やば!?ハルたち帰ってきても俺達いねぇんだったっ』 ハジ『それは、まずいな』 春「たしかに。出来立ての料理…点けっぱなしの電気、忽然と消えたリーダーズ。これだけだとサスペンスドラマみたいだね」 海「確かに」 陽「それ、めちゃくちゃ向こうの仲間が心配してる落ちじゃ・・・」 隼「ノープログレムさ!」 隼「そんなこともあろうかと!抜かりなく置き手紙してきたから大丈夫だよ。こちらの都合で連れてきちゃったからね、お詫びの気持ちも込めてね(^^)」 しかし、向こう側の“リーダーズ”の表情はすぐれない。 『そうじゃないんだ』というつぶやきまで聞こえる。 零『だれが俺らを誘拐したとか、連れ出したとか。そういう問題じゃないんだって』 ハジ『"つれだした"時点で、怒り狂うやつが俺たちの世界にはいるんだ』 隼「えーでもそうそう異世界にはこれないからだいじょ」 『シューーーーーン!!!』 零『大丈夫じゃないからな』 隼「そ、そのようだね?僕、もしかしてまずいことしちゃった?(汗)」 零『隼がやったことなら、きっと大丈夫じゃね?始が原因だとどうなってたかわかんねーけど。まがりなりにも別世界とはいえ“俺”だし』 ハジ『来たか』 バリバリバリィ!!!ッと、激しく何かが割れる音とともに、空間にひびが入り、 その裂け目からゴゥ!とばかりに目を開けていることさえできない風が吹き込む。 そして亀裂をつかむ手がニューっとのび、そのまま力技でこじ開け――現れたのは、向こう側の〈ハル〉だった。 その〈ハル〉は裂けめをのりこえてくると・・・・・・・・・・その身に風をまとわりつかせて、宙に浮いていた。 「「「「宙に浮いてる?!!!」」」 零『ハルは風の能力者だ。普通に飛ぶわな』 春「( ゚д゚)・・・」 始「・・・ん?浮いてるのにあれで高所恐怖症なのか」 ハジ『それはおいおいな』 元気な姿の〈シュン〉をみるや、〈ハル〉は涙をためて『俺のシューン!ぶじでよかったよぉ!』と抱き着いた。 その際、〈ハジメ〉が完全に無視されているが、これがあちらの世界では通常運転だ。 それから〈シュン〉たちがこちらの世界にきてしまったのが、『平行世界の隼が一人で留守番しているときに、寂しく思っていた時に、よんでしまった』と〈シュン〉が言い訳けしたところ、 怒り般若のようだった〈ハル〉から一気に怒気が抜け『なんだ〜そうだったのか』とほんわりとした笑顔を見せた。 〈ハジメ〉いわく、〈ハル〉は〈シュン〉を我が子のようにかわいがってるとのこと。 これもまた世界の違いだろう。 その後、すこし話をした後――〈カイ〉の補助で開いたままの次元の亀裂をくぐって、〈シュン〉と〈ハジメ〉が帰ることとなった。 ハジ『ところで、“俺”』 さあ、帰ろうか。次元の裂け目にまさに手をかけたそのき、ふいに〈ハジメ〉が何かを思い出したように振り返る。 始「?」 少し待っていろと仲間たちに告げて、ひとり戻ってきた〈ハジメ〉の手の中に、いつのまにか扇子が握られている。 シャラリ飾りがついたそれが涼やかな音を奏で、〈ハジメ〉の手が優雅な仕草で持ち上がる。 そのまま取り出した扇で始の肩をサッと払う。 パンッパパンッ! 始「!」 何かが弾ける音が複数し、始も目を見開く。 ハジ『妬み嫉み・・・この類は自分が気をつけてても、無意識な誰かから勝手に送られてくることが多い。 気をつけておけ』 音と共に肩が軽くなったのに気づき、始は驚いたように自分の肩と〈ハジメ〉の扇子を交互に見やる。 始と目を合わせた〈ハジメ〉は、遠い光景を思い出すように、どこか寂し気な風に苦笑を浮かべていた。 ハジ『“こっちの俺”の芯は強いな』 始「どういうことだ?」 ハジ『俺は一度、その"負の感情"にまけたことがある』 零ハル『『・・・』』 ハジ『同じ“俺”であるお前には、"ああいう想い"をしてほしくなかった。が、・・・・いや、よけいなことだったな。 〈以前の俺〉とは違って、お前には"仲間がいる"から。守りたいものがあり、大切な仲間がいる――そんなお前なら、こんな陰の気にも負けはしないだろう。 おまえなら、大丈夫だろう―――念のために、これをやる」 そう笑うと〈ハジメ〉は、始の手に何か握り込ます。 そのまま用はすんだとばかりに彼は、〈シュン〉と〈ハル〉の元へ足を向けた。 なお肩を並べた時点で、渋い顔をした〈ハル〉が〈ハジメ〉の頭を軽くたたいていたが、それはそれ。 ――手渡されたのは、1枚の札だった。 隼「おや、いいものをもらったね始。それは護符だね」 ヒョッコリとその掌の中にあるものを覗いた隼が笑みを深める。 始「護符・・・」 隼「君の心が折れないように。そう沢山の人から祈りが込められた、とっておきのお守りだよ。それは常にもっているといいよ始」 始「そうか」 祈り――その感情が伝わってくるかのように、紙ぺらでしかないはずの護符が一瞬あたたかいと思えた。 始はそのあたたかさに、胸のなかがほっかりとあたたかくなるのを感じ、思わず笑みをこぼした。 別世界の彼らを送り返し、次元の穴がきっちり閉じたのを確認したところで。 ようやく全員から肩の荷が下り、ほっと息をつく。 陽「ふー・・・嵐にのようだったな」 海「まさに"プロセラルム"ってか?(苦笑)」 始「少し、つかれた」 春「予想外すぎたよあの〈シュン〉は」 隼「そうだね。じゃぁ」 隼「さっそく"次の始たち"をよんでみようか!(*´▽`*)」 「「「は!?」」」 意気揚々と告げる隼に、全員がポカーンとするものの、慌てて我に返った仲間たちが必死で止めようとする。 が、それは間に合わず―― 隼「けせらせら〜っと♪」 「まて!」「やめて隼!!!」そんな仲間たちの叫びもむなしく、隼によって新たな召喚陣が――――発動した。 〜その後の向こう側の世界にて〜 ハジ『安心してくれシュン!』 シュン『何を安心しろと?』 ハジ『俺はシュンクラスタだからな!』 コイ『誰だ!(俺らにとって)余計なこと吹き込んだの!』 アラ『うちのリーダーがますます自由奔放に…ああ!そのままシュンさんのグッズ通販ボタン押さないで!免罪符にしないで!』 アオ『よぉーしハルさんに連絡しちゃおう!ぽちとな』 ----------------------- |