外伝 ・ も し も 話
[花悲壮] → ツキウタ



【お題】 運動会

※魔法の国(春成り代わり字の世界)…『漢字名称』

【弥生字】
・真名は《字》
・芸名「春」
・私生活では「花」
・魔法のある世界の春成り代わり主
・二つ前の前世は【復活】XANXAS成り代わり
・一つ前の世界は【黒バヌ】の花宮成り代わり
・前世から変わらず、見えてはいけないものが視える
・転生しすぎで魂が徳をつみすぎたせいで生き物に逃げられる。なぜか猫にはすりよられる
・ロジャー(蝶)は魂の片割れで、夢主の端末のような存在
・転生得点:自分が不幸になるとすぐそばのだれかにラッキーが訪れる体質
・とある世界で呪いがかけられたため、自分に向けられた術・ウィルス・毒などを無効化してしまう
・“超直感”があり、異常に勘がいい
・長く生きすぎてネジが吹っ飛んんだ精神年齢仙人な天然ボケ
・生命力が0のため、始の魔力で生かされている
・Growthとは恥ずかしい時に遭遇率が高いという謎の関係
・志季、朏とはランチ仲間

【睦月始】
・夢主とは小学生の時出会う
・双方の家族親戚公認の夢主生存装置
・どでかい魔力を持ち合わせているのに、さらにどこからか魔力は湧き出つづける
・夢主と出会ったことで極度の笑い上戸に進化した残念なイケメン
・おもしろいことに全力投球しちゃう愉快犯

【霜月隼】
・夢主とは始経由で小学生の頃からの知り合い、実際に会ったのは中学半ば
・家の関係で始とは既知の仲
・始クラスタ
・愉快犯と面白いことに挑む確信犯
・魔力量はそれほどなく、周囲の自然から魔力をとりこんで自分の力として使っている魔王
・夢主のことがとっても大事

【ロジャー】
・夢主と魂を同じくする、守護霊
・顕現すると蝶の姿
・基本的には“力”の操作などはロジャーの得意分野









隼『いちおうこれは上からの正式な決定でね。僕を恨まないでおくれよ春』
海『まぁ、しかたないよな。だって――』

海『長縄跳びとか種目であったら、お前身長高くてひっかかりやすいって理由でどうせ回す方にいくだろ。しかも選手にあわせた絶妙なかげんで回すにきまってる。
玉入れすれば、さすが現役バスケ部とばかりにお前百発百中でいれんだろ。 ボーリングも同じく。
クイズをやれば、問題が出る前にすべて勘でとき。
おもしろい仕込みのはいった借り物競争をやれば、一番無難なのを勘で選んで、一番最初にゴールするだろうし。
パンくい競争とかあったら、身長高いから誰よりも簡単にヒョイパクしそうだし。
荷物運び競争とか、リレーとか、お前始がいたら疲れ知らずだろ。
もうお前の独走光景しか浮かばねーもん。そりゃぁ、参加拒否されるわ』

黒『というわけで、弥生春!お前は当日は俺たちマネズと待機だ!』





【ツキプロ運動会】
 〜 春字 世界 〜






運動場をかしきっての、ツキノ芸能プロダクション所属アイドル対抗大運動会が開催されることとなった。
これはすでに今年で七回目であり、いままでは都合のつくアイドルを個別に呼んでいたのだが、今回はグループ対抗というかたちになっていた。

黒月と月城が、集まった12人にその大まかな流れの書かれた書類を配る。

始『なるほど。今回の運動会はこういうプログラム、ですか』

字『わー運動会かぁ。楽しみだね〜。去年まではグラビっていつも都合がつかなくていけなかったからワクワクしちゃう』
始『お前は、一部ダメだぞ春』
字『えー、なにそれ。どういうこと?』
始『まず第一に、現役バスケ部のお前が玉入れしたらズルだろ』
字『あ、うん。そうだね。・・・ちょっと待って第一?それって第二があるの?』
始『あるな。この前のクイズ、司会者が説明をすべてする前に、勘で答えてたよなお前』
字『うん。だってなんとなくこれかな〜っておもえて』
始『それで全問正解したあげく、クイズ番組に出禁くらっただろ』
字『そうだね〜』
始『曲あてクイズがある』
字『あ、それは・・・オレが参加しちゃぁまずいねぇ』
始『お前が一人勝ちする映像しか浮かばない運動会なりそうだ』

隼『ふむふむ。今の話を聞いたら、よけい玉入れと音あてクイズに春はださないでほしいものだねぇ』
恋『ええ!?こういうときこそ春さんの出番でしょ!』

黒『そのとおり!今の話をみんなも聞いただろ。春が玉入れとかずるいだろうが』

涙『春のティアドロッブ綺麗だよね。僕と同じ名前のシュート』
黒『そこだ!!そもそも春は、現役のバスケ部員だぞ。それがボールに触れる球技をやるんなんて却下だろ。あと春のことだ。リズムの音がかかった瞬間、勘であててくるだろ。そんなずるはさせん!』

字『ティアドロップも努力のたまものなんだけどなぁ。あとSOARAの宗くん、元バスケ部だよ?彼はずるにははいらないのかな?』

郁『たしかSOARAの方は、Solidsの大さんと同じく、肩を壊してしまって部活をやめたとか・・・』
海『部活、といえば、うちの郁も現役陸上部だったな』
郁『そうですね』

黒『春とうちのこを一緒にしてはいけない!』
隼『まぁ、たしかにwww春の“超直感”はとんでもないからねぇ』

『『『ああ、“超直感”』』』

黒『春のそのすさまじい勘はもはやチートだ。運動会でチートはなしだ!春は肉体を使う競技しか参加は認めん!』
恋『それ、隼さんの超常現象てきなチートはありなの?(真顔)』
隼『僕がチートだって!?おかしなことをいうね恋。僕の力なんて春の勘にくらべたらチートどころか、ミジンコのごとく!!それはもう些細と言っていいレベルだよ!』
字『いや、だからオレはチートじゃないんだけどなぁ。逆にオレ、隼みたいに祓うとか戦うとか何もできないよ。うん。春さんって普通だよね?』
陽『どこかだ!なんか視えてるじてんで普通じゃない!しかも隼が謙遜するレベルの勘ってなんだ!?』
駆『そうそう!その勘だけでも十分チートです!』
恋『テストを8割勘でといちゃって、1割は勘であてた山のおかげとか!その勉強に役立つ部分で勘の良さが俺にもほしい!』
始『切実だな恋。
そういえばテストといい、わからないルールのゲームとか・・・すべて勘でさばいていたな春のやつ』
海『まぁ、春の勘ってまじすごいからな』
新『もはや未来予知』
隼『さすがの僕も未来予知は無理だなぁ』
陽『隼をうわまわる能力とか!?こわっ』

『『『やっぱり春さんチートですよ』』』

黒『たとえばリレーだと、現役陸上部な郁が有利だろう。そんな感じで、現役でその競技内容を常にやっている者は、基本その競技から外すように指示が出てはいるんだ。
だが、春はな。ほら、勘も含めると、もうすべての競技に有利だろう。そこが問題でな』
城『すみません春君。実は他のチームからもかなり春君をとめてくれという嘆願書がきてまして。社長も納得してて』

字『・・・そっか。しょうがないね。オレは大人しく君たちの雄姿を応援席から撮影でもしているよ』
始『さっそく戦力が減ったか』
黒『安心しろ!なにもグラビとプロセラだけで競い合うわけじゃない。赤組にはSolidsもSOARAもいるからな!』
字『そっかぁ〜Growthは白なんだね。いやぁ〜よかったよかった。オレ、あの子たちのまえでいろいろしでかしてるから・・・・同じチームだと考えたら・・・傍によれないよね。いや〜逃げるよ。うん、そのときはw』
葵『春さんのそのGrowth逃避は相変わらずなんですね』

始『Growth・・・まだ和解()してなかったのか』
字『始さん、いまなんとなく含みのある“和解”だったような気が』
始『きのせいだ。それで。お前は最近は何をしでかしたんだ?』
字『う・・なんで最近ってわかるんだ』
始『で?』
字『そ・・・・そのとおりです。最近だよぉ!!えっと道端で、その・・しでかしまして。それをまた目撃されてまして。もうめんとむかって顔が合わせられないぐらい、オレ恥ずかしいよ』

恋『あののほほん春さんをここまで羞恥させるようなできごと・・・なにがあったんだ』
涙『春、なにかあったの?』

字『・・・・・・・・・・・マンホールのふたがあいていて』
駆『わかった!おっこちた!』
字『あぶないなとおもってよけたらよそ様のうちの塀に思いっきり激突しました(*ノωノ)・・・顔面から(遠い目)』


よっ。ってマンホールをよけたとたん、目の前に壁があって。
ガツンっとべしゃと、正面からぶつかって。

字春『う、いたい・・・ああああ本体がぁ、あ、まちがった眼鏡が!』

ちょっと、てんぱってたんだよ。
それで、フレーム歪んだ眼鏡をもってわたわたしているところを


海『――みられていたと』
字『そう。しかも四人全員に』

恋『それってそういうタイミグで現れるGrowthの運がいいの?春さんの運がなんともいえないことをつっこめばいいの?』
駆『春さんが俺と地味に不幸度合いで競い合っている件について』
郁『どうしてGrowthと春さんって遭遇率高いんだろう?』
涙『波長、とか?』


黒『まぁ、なににせよ。春は補欠というか、不参加ってことだな』
城『ごめんね春くん。かわりに春くんには特別席ちゃんと用意するから』

字『おねが・・・ハッ!?へ、変なところを見られたのは関係ないよ!それが嫌で参加しないんじゃないからね!!!むしろ本当は全力で参加したかったぐらいだからね!ずるじゃないんだからね!!』
恋『わーお。春さん必死』
涙『うけるww』
駆『わかってます!わかります春さん!不幸ってつらいですよね!(手を握ってギュ)』
字『かけるぅ(キラキラ)』

始『ふっ、ちゃばんか』
陽『そうなにげにクールな発言をしつつ、そのムービーバッチリ撮ってるのやめてやれよ!!』
隼『大丈夫だよ始!春の愉快な会話も駆とのやりとりもバッチリ撮ってるから!海が!』
海『とらされてまーす』
陽『って、お前も撮ってんかい!!』

字『ま、まさか』

海『わるい春。最初から最後までバッチリ撮れてしまったwww』
始『よくやったカイ!ちなみに俺の方でもお前が眼鏡が本体だとついに認めた決定的瞬間――ーきっちりとれてるぞ、はぁるwwww』
字『眼鏡は本体じゃなーい!!!』
始『これでいつでもお前の笑える話を再生可能だ(キリッ)』

新『どこまで笑いに全力だしてんだあのひと』
葵『ふふ。始さんも隼さんも本当に春さんいじりがすきだよね』
夜『え?いまのってそういう話?』
陽『ちがう。絶対違う。始さんのあれは、ただ笑えることが大好きなだけだ』

始『ふ。いい画が撮れたことだし。眼鏡とか眼鏡とか眼鏡とか』

涙『わー眼鏡がいっぱい』
陽『このひともうやだ・・・眼鏡好きすぎるorz』
海『始のやつ眼鏡のことしか言ってないな』
字『それじゃぁ、まるで眼鏡だけをとってたみたいじゃない!なんなのその始の眼鏡にたいする異常な執着心は!?』
郁『え?眼鏡だけを映した動画って何ですかそれ』
夜『そういう意味じゃぁないとは思うけど・・・(苦笑)』
字『消して!!!オレの本体は眼鏡じゃない!あれは気が動転してて!!!』

わたわたする春の肩をポンといい笑顔で始がたたく。

始『春は参加できなくても大丈夫だ。なにせお前の本体はコレだろう。なら運動会もばっちしだな!こいつはチート君じゃないからなwww
ほら、お前の代わりの大切な選手だ。眼鏡サンの手入れはちゃんとしてやれよ』

字『それはオレじゃなーーーーーーーーーーーーーい!!!』

葵『本当にみんな好きだよね眼鏡ネタ(クス)』
駆『もうやめてあげて!!!春さんのSAN値はゼロよ!』


隼『ふふ、おもしろいことになっているねぇ』
始『頑張れ本体!お前こそ立派な赤組の代表選手だ!!』
隼『じゃぁ当日は僕がおまじないをかけてあげようかな。きっと眼鏡くんも素晴らしい足の速さを』

字『やめて!!!なんかいろいろやめてぇ!!!!アァァァァ!オレの眼鏡がぁ!!!』



始『選手の座は本体君にちゃんと返さなきゃだめだぞ春』
字『もういから!もうそのネタはいいから!!』
始『それにお』
隼『はっじめー!!!プログラムみた!?みたぁ!?リレーでアンカーをやろう!ああ、風をきって走る始の姿(じゅるり)!ご褒美です!!とりは僕らだね、始!おや、リレー参加選手に春の眼鏡の名前が』
海『あるか!まだだれがどれにやるか決まってないだろうが!バラエティー要素が高くて真面目じゃない笑える運動会を視聴者に求められてるとしても!春の眼鏡がリレーとか無理だからな!いい加減返してやれって二人とも!』
字『眼鏡・・・(涙)』
隼『そうだね。わるかったよ春』
字『そ、それじゃぁ!眼鏡かえしてくれるの!?(パァ)』

隼『さぁいこうか春!!』

隼『春も一緒に!僕とあつく。あつくっ!!! リレーについて、いや!!ユニフォームの隙間からチラ見する始の素肌!とかいてエロス!!!始が美しく疾走する!それはもう風の様に!いや!これはもはや芸術だ!! そんなみんなを魅了してやまない始について全力で語ろうじゃないか!』
字『ユニフォーム?え、あ、ちょ!?隼!?』
隼『それじゃぁ僕の可愛い仲間たち、春と始はかりていくよ!!』

海『おいこらまてぃ!!隼それ春じゃない!春の眼鏡だろ!!!』

始『春、縮んだな』
字『眼鏡だけもってかないで!オレが春だから!それは本体じゃないから!!!待って!眼鏡に語り掛けないで!連れてかないで!まってよ!!』
隼『さぁ春!僕と始の愛の語らいのために紅茶を!君の煎れた紅茶を僕は要求する(キラッ)』
字『眼鏡君は煎れられないよ!!!!』

ハッハッハ〜と高らかな隼の笑い声が廊下から響いてくる。
その背後をバタバタバタと大きな足音を立てて、春の「めがねー!!!」という雄たけびが続く。


海『あちゃーいっちまったな』
恋『あー・・・春さん(の本体)がさらわれたな』
葵『さらわれたね〜』
陽『むしろ眼鏡を餌に春さんが釣れたのまちがいじゃ』



『いやぁぁあぁぁぁ!!!あ、足がぁぁぁぁぁぁぁぁ!オレの眼鏡に足がはえた!!!誰の足だよ!なにこれ!!!きもいよっ!!やめてよ隼!!!!』



『『『・・・・・・・』』』

恋『足がはえた眼鏡とか!?きもっ!!』
駆『ですです!』
涙『なにそれきになる』
新『あーたしかに』
郁『誰の足って・・・どんな足が生えたんでしょうね』
陽『さすがにないわー。どんな足にしろ、足って・・・ぐろいのしか浮かばん』

夜『あとで、お茶請けを持って行ってあげましょう(苦笑)』
海『お、いいなそれ!』
陽『さすがに眼鏡に足とか、やりすぎだろ隼のやつ』
葵『嬉しそうに、というか楽し気にノリよく始さんもいっちゃいましたね』
陽『あの二人、愉快犯だからなぁ』

駆『・・・あの三人で、ツッコミってだれですか?(真顔)』


『『『『あ・・・・』』』』


海『しょうがねぇーなぁ(苦笑)
俺、ちょっと隼をとめてくるわwwwあとたのむな!』

『『『いってらっしゃ〜い』』』


上から聞こえてくる始のたのしげな笑い声と、さわやかな隼の声と、春の悲鳴に、いつものことだと、マネズと仲間たちは、生暖かい目で海を見送ったのだった。
春の「近づけないで!動きが!動きがいやぁ〜!!」という悲鳴に続き、海のさらなる「うわ!きもっ!!」という悲鳴と制しの声が加わるのすぐのこと。





* * * * *
 




字『ああ、オレの眼鏡ちゃんよくぞ無事で!』

春こと字の眼鏡ににゅるっと足がはえた。それも人間の足だった。
まだガラス面を上にして、フレームのつるの部分が足の代わりとなって動きだした方がましであった。
そう思える足のはえかたであった。

あらわれたのは、切断された(とはいえ切断面はつるっとしていた)だれかの生々しい膝から下の部分。その足の上部にあたる切断面にポンと眼鏡をおいたような――そんな状態で足がはえてきたのだ。
ガラス部分を正面にして顔にかけているのと同じたいせいで、まさか生身の足が生えてくるとは誰も思うまい。
あのフレームのどこから質量も幅もなにもかもオーバーした“足”がはえるなんて。

眼鏡は持ち主のもとに戻りたがっているのか字にせまりよる。
しかし隼におまじないをかけられた眼鏡が動き出した瞬間の字は、はっきりいって本気で泣いていた。
楽しいことと面白いことと愉快なことが好物の始は、嬉しそうに目を輝かせたていたが、逃げ惑う字をみて腹を抱えて笑い転げはじめた。なにかがツボにはまったらしい。

そのまま足は眼鏡を頭部とし、部屋中を走り回った。
字は悲鳴を上げて逃げる。それを眼鏡が追う。
始の甲高い笑い声が永遠と響く中、隼はやり遂げた感のあるいい笑みを浮かべていた。

海がきて、眼鏡が捕獲されるまで、その無限ループは続いていたのだった。

海『うぉ!?きもっ』
字『たすけて海!眼鏡が!眼鏡が!!』
始『めがねがwwwwファーーーーーーーwwwwwwwwwめwwwwwwwwwwwwwwがwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』
海『始は少し黙れ!おい隼!これはどういうとだ!!』
隼『うんうん。じつはね眼鏡君が、春にいつもの感謝を伝えたいと言うから協力してあげたのさ♪ 僕ってなんて優しいんだろうね』

なんてやりとりのあと、眼鏡はようやく捕獲されたのだった。


もとの眼鏡に戻してもらったあと、字はそれはそれはおそるおそるという風に眼鏡を見つめていた。
念入りにチェックしてもうなにも仕掛けがないとわかると、字はほっと息をつき眼鏡をかけなおす。

あれに足が生えるとか・・・想像もつかない。というか、もう見たくはない光景だったと海と字は同時に大きなため息をついたのだった。

思わずまともな状態の、普通の眼鏡になったそれに、字が頬ずりをしてしまったのもしかたがないことだろう。

字『うん。しっくりくるね』

それにしても。先程のはやりすぎである。

字『なにも、オレたちに話があるとはいえ・・・・・・本当にオレの眼鏡におまじないをかけなくてもいいじゃないか、ひどい目にあった』
隼『おや、ばれていたかい』
海『なんとなくそうだろうなーとは思ったが。やっぱり俺たち年長をあいつらか引き離すためか』
隼『だって、始があまりにも。言ってはいけないことを言いそうだったからつい』
始『なるほどな。それで俺の言葉をさえぎってのアレか。まぁ、俺達は隠していたわけではないから別にいいかと思ったんだが』
字『というか、当日はユニフォームじゃないよ。Tシャツとジャージだねぇ』
隼『そうなのかい。それは残念』
海『そこの色素薄いコンビ、話がずれてるぞ』

海『それで、俺たちを集めた理由は?』

聞きたいが、きいていいのかわからないという表情で、海が。
自分は口を開く気がないと、優雅に紅茶を飲んでいる隼。
そこで始の視線が字にむき、字は思い出したようにポンと掌をたたく。

字『海に聞かせるためだね?』
隼『そう。この際、“花”のことをちゃんと聞いてもらうべきじゃないかなって。
そうじゃなきゃ、上、もとい社長から君が運動会出場停止の指示がきたりはしないだろうしね』
始『気が緩んだころが一番危ないというしな。そろそろ協力者を増やすのはいいころ合いだろう』

海『まて。なんだか聞いてると、聞いちゃいけない悪だくみ、いや・・・・あーそれって聞いていいことなのか?なんか隼の空気が重いんだけど』
字『ん。たいしたことじゃないよ〜』

隼『いやいや十分、大したことだからね、はぁーな』
字『そう?あれがあたりまえだったから、感慨がわかないなぁ』

隼『僕らからすると、あの頃はいつも気が気じゃなかったよ。大切な君がいなくなってしまうんではないかと、僕も睦月家もいつも心配していたんだよ』
始『俺は行く先々で倒れてる花をどうしてくれようかと・・・いっそ傍にいればいいのかと思ったな』
字『お世話になりました〜』

海『・・・・どこから何をつっこめばいい?』

字『ん〜っと?オレ、子供のころはほとんど学校いけなかった・・・っていうのは以前話したよね?』
海『あ、ああ。ちょこっとな。ちょこっとだけ隼に聞いた。だが、ちょこっとだけだからな!』
始『なら、もうわかるだろう。そういうことだ』
海『いやいやいや。自己完結はよそう。な』

海『つか、ちょっと待って。話が。話がめちゃくちゃ重くないか?え?これ、本当に俺が聞いてよかったのか?』

隼『花と始が、あと社長がいいっていうから、いいんじゃないかな。僕としては海にはきいておいてもらいたいかも。いざというとき、できれば花をたすけてほしい』
海『いや、俺はお前らのような不思議なことできないぞ!?(汗』
始『とくに必要はない。事情を知っていてくれれば十分な助けになる』

始と隼の言葉に、海は冷や汗を流す。
チラリと字を見れば、自分のことで周囲を悩ませてるという感覚が薄いのか、なにかを思い出すように別の場所を見てウンウンうなっている。
始に名を呼ばれ顔をあげた字は、ニコリとよい笑顔だ。

字『そういえば、みんなに迷惑かけたくないから、社長とマネズとリーダズ以外には結構ぼかして詳細語ってなかったね。ごめんごめん』
海『いや、それわらいごとじゃない気がする!』
字『つまり、魔力がないから死にやすくて。その影響で、この世界でオレは一度も運動会ってでたことがないですってことだね。激しい運動をすると魔力の消費が激しくてねぇ〜』
海『まじか』
字『うん。体育の授業もほとんどでちゃだめって言われてて、今は運動部に入っているけど長時間はだめなんだよね。 試合とか長時間出場はしたことないよ?あっても始が傍にいるときだけだね。
あ、バンジーとかは平気だよ?心臓病とかじゃないから心臓がびっくりするぐらいでは魔力は減らないしね。むしろ体力へらないぶん、ダンスよりバンジーの方が安全って許可が出るね』
海『え、バンジー・・・はともかく!!き、聞いてないぞ?・・・なぁ、それ、今は』
春『いちおう今は始が傍にいるから大丈夫ではあるんだけど。
ほら、いざなにかあったら事情を知らない人はびっくりしちゃうでしょ。それで海にはきいておいてもらいたかったって話だね』
隼『運動会。高校前までは大変だった。・・・あの頃は、まだ対策もできてなくて、友達の生死がかかってるんだ。 そりゃぁ、激しい運動なんかさせられないよね』
字『だからさっき始が言おうとしたのは“そういうこと”だよね?』

――それにお前は、運動会が終わるまで、もつのか?

字『隼にふせがれて始が言えなかったのは、だいたいこういうことだよね?』
始『そうだな。間違ってない』
字『うーん・・・』

始『不満そうだな』

字『本当は、一度くらい・・・』
隼『たのむからやめえてくれるかい花?』
海『・・・はぁ〜。本当にな。まじでやめてくれ春』
始『お前は自殺志願者か』
字『うん。わかってる。わかってるよ・・・・ただオレもせっかくこの世界で生きてるんだ。 一度くらい運動会ってものに参加してみたかっただけで・・・えっと、やっぱりダメかな?』

そこまで字が告げたところで全員から、やめてくれとツッコミがはいる。

字『二人三脚とかなら!ほら、それなら始とずっとそばにいれるよ!』
始『ロジャーがずっと俺の傍にいれるかも、俺が傍に入れる保証もない』
海『却下ー!こわいからやめい!もうやめて。春のことが気になりすぎて俺の心臓の方が持たないから(ぐったり)』

隼が紅茶のティーカップをソーサラーへもどし、「ひとまず落ち着こうか」と3人に呼び掛ける。
ちょうど飲み物もなくなったことだし、と言えば、海がため息をつきながら立ち上がる。

字『あ、オレが』
海『いい。とりあえず俺に少し時間をくれ、頭を冷やして今の話整理してくっから。
おまえらは少し話をまとめろ。あと、おもったことをしまいこむな。もうちょい会話しよう、な』

これだから頭がいいやつらは〜・・・などとブツブツつぶやきながら海は空のカップたちをさらうと、頭を押さえつつキッチンへと向かっていく。

海を見送った三人は、どうしたものかと顔を突き合わせる。
始が右へ、字が左へと、まったく同じタイミングで首をかしげる。しかし隣同士で席についていたため、ごつんと良い音がして頭がぶつかり合う。
それにシンクロした動きで「痛い」とぶつけた個所をおさえつつ、首をたてなおす。
その様子を微笑ましいとばかりに隼が穏やかな笑顔でみつめている。

隼『ロジャーが離れた場合が、怖いんだよ僕たちは。
ライブみたいに、接触がある。あるいは常に君たちの距離が近い――始の魔力供給範囲内に花がいるような状況下なら、いくら激しい運動をしても気にいはしないんだよ? 僕らだって鬼じゃない。やりたいことは、できるだけやらせてあげたいのも事実だ』
字『ふふ、始のたれながされた魔力の範囲って5mくらいだったかな?結構距離あるよね』
隼『逆にいうと、それだけしかないともいえるよ』

始『離れられたら困る』

字『始のそれは、心配かな?それとも迷惑だなと思ってのことかな?』
始『いちおう、心配の部類だな』
字『大丈夫だと思うんだけどなぁ〜、オレとしては』
始『そうは言うがな。俺がずっとそばにいるわけにはいかないし、運動会は長時間だ。途中でお前に倒れられて視聴者をびびらすのはあれだしな』
字『うーん。でもダンスとかライブのほうが激しい動きしてるよ?』
始『だから今までの場合は、見える範囲に俺がいただろ』
字『そいえば視界のなかにはいたねぇ』
始『今更気づいたのかお前』
字『今だねぇ、気づいたの』
始『徹夜とかして、また意識が戻らないほど“おちる”のも見ていていい気はしない』
隼『むしろ肝が冷えたねぇ』
字『あのときはご迷惑をおかけしました。“ひきあげて”くれてありがとう』

隼『花の気持ちもわかるんだけど。ライブだと君たちはデュエットもあるし、舞台裏にもいくことがある。ちょくちょく接触は可能なんだよね。それができない運動会はできればさけてほしい』

始『わかってると思うが、あまりにエネルギー消費はげしいと魔力の供給量がついていかないこともある。 お前に渡せる魔力、お前が受け取れる魔力、ためておける時間には制限があるからな。
・・・まぁいい。俺がすぐに駆けつけてやれない場所で、無茶な動きは控えてくれれば問題はない』
字『公共の場って、それに当てはまるよね〜。
もう。燃費ほんと悪いなオレ。
うん。しょうがないね。せっかくの運動会だけど、大人しく見てることにするよ。応援してるから頑張ってね』



隼『っで、本題だけど。どこまで海に話すんだい?』

字『全部で、いいよ』
始『なら、海には悪いが、常に“錠剤”は持っていてもらうとするか』
隼『魔力補助剤かぁ。さて春。隠している錠剤を出してもらおうか。いざってときのためのやつだよ?まさか捨てたとか言わないよね』
字『う・・・・す、すててはいない。けど』
始『けどじゃない。いいから持ってこい』
字『・・しょ』
始『消費期限がきれてるとかバカな言い訳はやめろよ』
隼『あれに期限はなかったはずだよね。花がとってくるあいだに僕らがあらかた海につげておくから』

字『う・・・い、いってきます。あ、あの、さ!お願いだから下の子には秘密にしてよ。言わなくていいことで、誰かの重荷になりたくないし。心配されるのも・・・好きじゃない』

始『はいはい』
隼『いってらっしゃい』



字『あの・・・』
隼『おやおや、早いお帰りで。というかまだ部屋を一歩しか出てないようだけど?』
字『お願いがもう一つあって・・できれば眼鏡にいたずらをするなら、予備のやつでお願いします。むしろしないでほしいけど。するなら、オレが日常で使ってるのはやめてね。それと』
始『まだあるのか!?というかいいからさっさといけ!!今かけてる眼鏡をマジックで黒く塗りつぶすぞ』
字『眼鏡にいたずらだけはかんべん!!!』

隼『ふふ。花は薬があまり好きじゃないようだねぇ』
始『あれは前からだ』
隼『まぁ、しかたないけどね。“薬で命をつなぐ”というのが自分であることが、許せない・・・というか嫌みたいだね』

隼『この場合ばかりは、あの子の好き嫌いは大事じゃないからね。
そうそう始』
始『なんだ?』
隼『運動会だけど――』

隼『運動会の時、春がかける眼鏡におまじないをするというのは絶対だ。今日は怒られてしまったけど、僕はあきらめるつもりはないよ』
始『なんだそれは(笑)』

隼『眼鏡の“彼”も春の代わりに頑張りたいと言っているようだし』
始『そうみたいだな。隼、水性のマジックはいるか?』
隼『いや、ガラスを黒く塗りつぶしてしまったら、“彼”も前が見えなくなってしまうじゃないかwww』
始『なるほどwww』
隼『楽しみだねぇ、運動会(ニヤリ)』
始『ああ、そうだな(ニヤ)』


海『茶をもってきた・・・・って、いい笑顔だな二人とも(顔ヒクリ)』

隼『ああ、いま“彼”について語っていたところだよ。“彼”も選手としてでたいそうだ』
海『そっかー。それはよかったな・・って?、“彼”って誰だよ!?』
始『だれって、さっき海も“見た”だろう?』
隼『春の眼鏡に憑依してくれた足の“彼”だよ』
海『あーあの足ってやっぱ男の・・・』


海『春・・・の、眼鏡よ!!当日は無事であることを祈ってる!!切実に!!!』





* * * * *
 




運動会当日。

司会担当であるマネズの3人のあいさつの後、赤と白のジャージに身を包んだ選手たちが入場してくる。
そのなかで一人だけ、異色なジャージの人物がいる。

黄緑のラインのはいった黒いジャージを着こんだ字(春)に、何人かが不思議そうな顔をしている。
また別の何人かとファンの席からは、「あれは無人島撮影時の!」と黄色い声が上がっている。
もちろんその誰もが、なぜ彼だけ別のジャージなのか疑問を感じているのは間違いない。

しかしいまは手順どうりにと、誰もそこには突っ込まず開会式が進んでいく。

公式サポーターであるSOARAによる選手宣誓がおこなわれる。
準備運動として、ツキウサ体操が終わる。

さぁ、競技の始まりだ――その段階になり、ようやくその場にいた全員を代表するように、誰かが疑問を口にした。

『・・・なんで春さんだけジャージの色が違うんですか?』

それに「あれ?事情きいてない?」と、字に逆に疑問を返される始末。
その様子を見て苦笑を浮かべたマネズが、「春さんの説明はまだしてないんです〜」と手を振る。
マネズに手を振り返しつつ、納得したように字が簡易的な説明をはじめる。

字『ああ、これね。オレがでると、勝ちを独占しそうだからって、これとこれはでるなーって言われて・・・・気づいたら全部ダメじゃんってつっこまれたので。オレはみんなの応援係だよ〜。白にも赤にも属さないってことで、ジャージの色を変えてくるように言われてね』

駆『でもでもでも!春さんはグラビの仲間です!赤組を応援してくださいね!』
字『もちろん!ついでにみんなの雄姿、バッチリ撮影しておくからね!』
恋『ホームビデオ!!やった!TV撮影とはちがった癒し!!俺、春さんの分も全力でがんばるんで!その姿をあとで愛にもみせたいです!』
字『まかせて!ちゃんと撮るよ』

涙『春。白組も、応援してほしいな』
郁『そうだね。白組も負けませんよ!!春さんに応援してもらえると、きっと追い風が吹きます!
それに応援の声って、もっと頑張ろう!ってすごいやるきをださせてくれるんですよね。それが春さんならなおさらです!俺に元気をください春さん!』
恋『くっ!!郁の、郁のイケメンオーラがまぶしい・・・』
涙『同じく・・・(バタリ)』
駆『もう無理(バタリ)』

字『ふふ、うちのこたちはみんな本当にかわいいなぁ〜(*´▽`*)』


流『あれが、噂の・・ツキウタ名物!・・・天然、イケメン、魂抜け・・・俺無理!全部こわい!(ガクブル)』
星『あの睦月始のあふれ出る色気も、神無月郁のイケメンフラッシュも凄いのに、それがきかないのも凄い』
英『たまにProcellarum使用後のスタジオの廊下でね。神無月くんのイケメン具合が眩しすぎるのか、浄化されてるひとを何人か見るよ。幽霊じゃなくてスタッフさんが、ね』
柊『ツキウタ。メンバーはけっこうみんな天然具合がひどいぞ』
流星『『たしかに』』

柊『まぁ、むこうはむこうだな。なにせツキウタ。メンバーは、グループではなく個性が売りだからなぁ』
流星『『個性・・・』』
英『俺たちは個性じゃないよ!!うちは二人がいないとだめだからね!みんなでQUELLなんだから!!!(ぎゅー!)』
流星『『エーチ!!(ウルウル)』』
柊『うちはうちで、勝ちを目指そうな(*´ω`)』


翼『ありゃwww春さん、やっぱり応援枠かぁ。さっすがチートオブチート!』
里『春のかわりに俺たちもしっかり頑張らないとね』
志『この試合、赤組が勝つ!なにせ赤は俺たちの色だ。ここで勝たなくてどうする』
大『ちょっとずれてます』


宗『さすがにクイズとか百発百中やられてもこまるから、まぁ、だとうっちゃだとうなのか』
望『毎回春さんのぶっちぎり1位ばっかり実況しないで済むのはありがたい・・・かも?』
廉『今回は俺たちが進行を任されることもあるわけで・・・うー、緊張する』
守『あ、春さん、応援だけじゃぁつまらないんじゃ・・・あとで何か持って行ってあげよう』
空『でた。さすが気づかいできる男ランキグbPのモリ!』


剣『天然ってどこにでもいるんだなー(遠い目)』
涼『ツキプロには、もはや天然と呼ばれる人種とイケメンって呼ばれる人種しかいないのかってぐらい、前の事務所ではみたことないようなホワホワのひとが多い気がする』
昂『個性が強いというか・・・』
涼『衛みたいのもあっちにはいなかったよね』
衛『え、なにそれちょいひどくない?いや、たしかに少し前までニートだったけども!!』
剣『犬っぽいのはいなかったってことで』
衛『それもひどい!』


詳しい話は歩きながらでもと、赤組の応援席に一緒に戻ろうとした字の肩を、ふいにガシリと始がつかんでひきとめる。

字『ん?』

そのまま始は意味深な笑顔で、それは恭しくまるで騎士の様に手を差し伸べれば、字がキョトンとした顔を返す。
字が手を取り返さないことは想定済みなのだろう、始はかまわず自分から字の手をつかんだ。
まるで逃がさないとばかりに、その手にじわりじわりと力がこもっていく。

騎士の礼をとったままゆっくりと顔をあげた始が、ニヤリと口端を持ち上げている。
すいっと視線が、彼の空いている手が、マネズの方を示す。

始『お前はあっち』
字『・・・・・え?』
始『お前の席はあれだ』
字『え!?』

始に示されたのは、いつのまに用意されていたのか、さっきまではなかった椅子。
マネズの間にドドーンとおかれているのは、玉座のようなきらびやかな装飾のされた椅子だった。

始『お前専用の特等席を用意した』

みごとなドヤ顔にさすがの字も呆然とし、「さぁ、春君はこちらへ〜」なんて素敵な笑顔のマネズにも顔が引きつる。
なんですか。そのキラキラとした効果が目に見えるような笑顔は。

字『見学ってのは了承したけどきいてないよ!!!!やだ!なにあれ!なんで玉座!?オレ、赤組の席で・・・』
始『赤組らしく、赤いクッションの椅子だろう(ニヤニヤ)』

あばれる字の手を逃すまいと先に握り込んだ始はその怪力でもって無理やりひきずっていく。段差で一時止まるかと思いきや、ヒョイとばかりに字を肩に担ぎ上げてしまう。そのまま台座をあっさり上りきり、ボスンと椅子の上に字をおろした。
そのあと嬉しそうなマネズが《本日の主役!》とかかれたタスキを今にも逃げ出そうとした字にかけ、上から黄緑色のマントをかぶらせ、さらには王冠をのせる。

始『ふっ。本日の主役だな。おーさま?www』
字『…………始、笑いこらえてんの隠せてないからね?』

笑いをこらえながら台座から降りて去っていく始に呆れてためいきをつきつつ、これはいったいどういう状況なのかと、定番の司会者になりつつあるマネズの3人をみやる。
字のじっとりした視線にマネズは笑顔で頷き、マイクを手に、観客にも聞こえるように状況の説明を始める。

城『おまたせいたしましたー!みなさま随分春君の格好に違和感を覚えたかと思いますが!今回彼は、この玉座が指定席となります』

その解説に、一気に周囲がざわつく。

黒『まぁ、しょうがねぇよな。いい例が【ライバルファイト】ってクイズ番組だな。あれでうちの年長組と、黒年長が対決したのはしってるか?あんな感じで、クイズだと全部の回答を春がうばっちまう可能性があるわけだ。
クイズをだせば問題を言い始める前にはすべて勘で当てられ。他にも春をだせば、玉投げやボール系はすべて1位をかっさわれ。借り物競争では絶対はずれを引かず!!!そんなチートな選手おもしろくないだろ!』

黒月の言葉に、噂の一人勝ちしてしまった番組を見ていた観客から「ああ、なるほど」と納得の声が上がり、そりゃぁそうだと。頷きがあがる。

灰『そんなわけで。今回、彼は選手ではなく景品として参加してもらうことになりました』
字『!?け、景品!?なんで?応援じゃ』
黒『ちっちっち!ただの応援なんか面白くないだろ!そこでだっ!!』

城『さぁ!今回の景品は運動会にでるとすべての1位をかっさらてしまいそうなチートゆえに、選手として参加することができなかった春くんです!』

黒『優勝者には、春にお願いを一つ叶えてもらう権限が与えられるぜ!!』
灰『おねだり、お願いなんでもOK!とのこと』
城『ただし、金銭は極力無理をいわないであげてくださいね。彼の自腹になりますので(苦笑)』

字『え!?Σ(゚Д゚)』


昂『春さんが!?よし。衛、みんな、勝とう!』
剣『お、それはいいな〜。そろそろ春さんに逃げられるのは飽きてきたところだったし♪』
涼『面と向かってお礼ぐらい言わせてくれてもいいよね(ニッコリ)』
衛『春さんゲットしたいね〜』

新『グラビの母さんが狙われてる!だとぉ・・・よしいけピンク!』
恋『もちろん!!ってどこにだ!』
葵『春さんからのご褒美(うっとり)。新!!春さんに特性ケーキつくってもらおう!』
新『はっ!?その手があったか!!いちごー!!!!』
駆『春さんの手料理(ごくり)』

陽『お願いを一個だとぉ!?おいProcellarum!勝つぞ!!春さんの私服の改革だ!!まっとうでおしゃれな洋服を着せてみせる!!』
夜『は!?それが可能に!!勝たなきゃね陽!!』
陽『おう!!いくぞやろうども!!』
『『『『おー!』』』』
海『あーそっちか。お前らの春へのお願いって(苦笑)』
隼『おやおや。燃えているねぇwww』

志『春をゲットするぞ里津花』
里『?』
志『新たな蕎麦巡りに!いや、あわよくば蕎麦を作ってもらおう!あいつの飯はうまい』
里『志季・・・(苦笑)』

空『うわーすごい盛り上がり』
廉『大人気ですね』
宗『おねだり可か・・・この間の塩だけしか使わないのに、とんでもなく味がでていた丸ごと玉ねぎを使ったスープのレシピがほしいな』
守『あらら。ここにも食いついたひとがいるみたいだよ』
望『あ、でも・・・あれはもう一度食べたい味・・・思い出してたら涎が!!!よぉーし!春さんゲットだ!!!』

星『俺たちは、喜ぶべき?』
流『こういうときどうするの柊羽?』
柊『んー権利をもらっておくとあとでいいことがあるんじゃないか?春といると面白いことは結構あるよ♪』
英『へー・・・っていうか柊羽って、春君と交流あったんだ』
柊『ああ、彼はなかなかに面白いね(クスクス)。会いたいのなら、猫を追いかけるといい』
『『『は?』』』


景品とお願いごとの説明をきいて、一番最初に目を輝かせたのは、Growthだった。
そのままGrowthの四人がアップを始め、おのおののグループが景品を目指して闘志を燃やし始めた。

それに赤組の席まで戻っていた始が周囲の仲間たちを盾にしながら、必死に笑いをこらえていたりした。

不満そうなのは、玉座の上の景品と呼ばれてしまった当事者のみ。


字『しかたないなぁ』

それでもみんなが楽しそうなら、まぁいっか。と、おもってしまうのが彼だった。


・・・ふふ。


ふいに、クスリと鈴を転がしたような笑い声が響く。
それに一瞬で会場が静まり返る。


字『なら、みんな――』


声のもとをたどれば、そこには先程とはうってかわって、堂々たる様で玉座に座る字の姿が目に留まる。




字『オレのために、頑張ってね』




全員を見渡せるひとつ上の舞台。その玉座に足を組みながら優雅に座りつつ、字がにっこりと微笑んでエールを送る。

とろけるような甘く、優しい声。
そして、あまりの慈愛にあふれた笑顔に――

一気に女性客から甲高い悲鳴が聞こえ、観客が何人か赤いものを出してたおれ、免疫のないQUELLの双子と英知、SOARAが顔を真っ赤にして、視線をそらす。
灰月や黒月、ツキウタ。の年中と年少までやられているのだから、その笑顔の威力ははかりしれない。
なおQUELLの柊羽は、「春らしいなぁ〜」とにこにこだ。
彼には、噂のSIX GRAVITY黒年長の色気による攻撃は効果はないようだ。





波乱万丈(色気に充てられた一部にとっては)な始まりから、ツキプロ大運動会は進んでいく。

最初の競技は大縄跳び。
問題なく進んエいたはずだったが、それを司会にしてSolidsのマネージャーたる灰月みずからが志季をあおり、失敗に導いてしまう。

そこでガラガラと布でおおわれた大きめなものが、字のいる玉座の近くにもってこれる。
それに「ん?」と首をかしげつつも、本日限定王様は、ホームビデオをとるのにいそがしい。

手のひらサイズの紅白の玉を高さのある籠に入れる競技では、字はニコニコと「でたかったな〜」とつぶやき、そのつぶやきをひろったマイクの声を聴き、周囲から「一人勝ち反対!」のツッコミがはいる。

宅配リレーでは、好きな段ボールを三つ選んで運ぶリレーである。
この段ボールの中身はそれぞれちがっていて、何が入っているかは秘密だが、重さが違うらしい。
なんて鬼畜なんだ!とは、選手たちの悲鳴から。
マネズからは「運もアイドルには必要です」と笑顔が返ってきたのだった。
そのダンボールのなかに、ひっそりとオレンジ色段ボールが混ざり込んでいるがそれを取ることはない。

そうして白組Procellarumからは涙が出場したのだが、そこで何を考えたか涙がダンボールを一つ選んだあと、くるりと向きを変える。

城『おや。ここで涙選手向きを変えた!そっちはゴールじゃないですよ?どうしたんでしょうか』

涙が向かった先は、マネズが司会をしているのとは別の方――

涙『荷物運び・・・きっといっぱい運べた方がいいよね、うん』

タンタンタンと軽やかに階段を駆け上ると、涙は“玉座”にいた字に手を伸ばした。

涙『春、きて!』
字『おりょ?!え?あ、わ!!』

キョトンとしている字の膝の上に、ポンと手にしていた段ボールを一つ置き、涙が座っていた彼をそのまま抱き上げる。
お姫様抱っこである。
突然のことに驚きつつもしっかり膝の上の段ボールを片手でかかえ、バランスをくずすまいと字は涙の首に片手を回す。
そのまま軽々と涙は字と段ボールをかかえて、リーレーコースへ戻る。

黒『おおおおおお!!!!!なんと!荷物と一緒に我らが景品春をもかかえて涙選手はしったー!!』

涙『大漁。どや』
字『自分でドヤって言っちゃうんだ』

その後、ダントツ一位でかけぬけたのは、オレンジの箱、ディアボロであった。
しかしそれは順位にはならず、その後、ディアボロ捕獲作戦がカメラの外で繰り広げられることとなる。

ここで気になるのは涙の結果だが―――

『あっれぇ?この演目って重さを競うものでしたっけ?』
『ちょーっとちがいますね(苦笑)』
『っというわけで、涙君残念!』

涙『がーん』

当然と言えば当然の結果である。
だが、それだけで終わらないのが、ツキノ芸能事務所。
3種目を終えたということで、キリがいいので。と、顔を見合わせたるは、マネズトリオ。
そのまま月城がマイクをとり、嫌な予感に顔を引きつらせている玉座の上の字を指し示す。

城『ここで運営からのお知らせです!では、みなさん、特設ステージの方をごらんください!』
黒『我らが“本日の主役”の横に白い布で覆われたブース。こちらにはなんと本日のメイン、弥生春のためにたくさんのものが用意されています』

字『いや、だから聞いてない!なにするき!?』

城『ジャーン。ここにありますは見ての通りただのくじ引きです!』
黒『だがこれからはこのくじは大きな役目を持つ!これより3種目終わった後に、その段階で勝ち組の色より、一人にこのくじをひく権利を与える!!』
城『これをひくとぉー!』

瞬間、だれかの合図によって、特設ステージを覆っていた布がバサリと景気よくはがされる。
そこには鏡から、メイク用具、メイクさんご本人(笑顔で手を振っている)。
そして―――色とりどり種類も様々な大量の衣装が完備されていた。

城『3種目ごとにくじをひき、その都度春君がお色直ししてくれます!その格好で負けたチームを次の演目応援してくれますよ!』

その言葉に、観客席から大歓声が響く。
当の本人は、すかさず逃げようともがいていたが、すでに脇に待機していたスタッフによって両腕をとられ、捕らわれの宇宙人のようにして、特設控室(笑)へとはこばれていった。

灰『いや〜元からどうやって春君を巻き込もうかとおもっていたけど、涙君はいい仕事をしてくれました。これはいいね』
城『せっかくたくさん春君が着れるサイズの衣装を集めてきたので、5種目ごとではなく3種目ごとにしてよかったです!かわいいうちの子がいっぱい見れますね』

黒『っと、いうわけで!さぁ、春をこの運動会にどんどん巻き込んでくれ!!
春はルール上運動会に参加できないことになっているので、彼を選手として扱うことは禁止だ!春を動かさず、いかに巻き込むか!!! 春の衣装チェンジ権は、なにも勝者だけではない!そのとき一番うまく春を演目に巻き込めたかも審査の判定だ!!』

涙の奇抜な発想は、そのまま採用され運動会は「いかに弥生春を運動会に巻き込むか!」という名目に変わっていく。
マネズももともと用意していたものをいつお披露目して使うか悩んでいたようで、「弥生春を巻き込め!」という課題を選手たちに与えることで、 見学の字でも運動会を楽しめるようにしようという気づかいは見事成功した。

一回目のくじ引きの権利を得たのは、運動会の流れを変えさせた涙である。

そして彼がひいたのは――

黒『おおーっと!大物キター!!!“グラビの猛獣使い”春だー!』

“月夜のサーカス”というイベントのときの、黄緑のベストに白のシャツ。なにより頭にはふさふさの獣耳。おしりにはこれまたふっさりと長い尻尾がついた衣装である。

ひいたカードをみて、黒月がどのときの衣装かを告げれば、グラビが苦笑を浮かべている。
動物耳とシッポにうっとりしている女子たちも多い。

字が悲鳴を上げている間にも、ブースではシャーっと一部にカーテンがおろされ、着々ときつけられていく。
カーテンが開かれれば、のちにブロマイドで発売されたそのままの衣装のアザナが苦笑を浮かべている。
スタッフがそのてにハートの先端がついた動物を調教するための短い鞭のような棒を手渡し完成である。

間近で自分の担当するグループの衣装姿を見れたのに満足したのか、月城の目がとても輝いている。
そのまま手を差し伸べ、諦めの表情のアザナを再び玉座へとエスコートする。

黒月は調子に乗り、マイク片手に、字に「一言どうぞ猛獣使い様!」とノリノリだ。

周囲を見渡せば期待のまなざし。
それにしょうがないなぁと抵抗を断念すると字は、手にしていた棒をピシリとふるい――

字『負けたら承知しないよ。さぁ、オレを・・・・・・・・・・・・





 









 









 









 




・・・・・・・・・チカラツキタ _(:3」∠)_




書く気力がなかったから、運動会編はここまで。
正直すまんかった。


いちおうプロットはあるので、ざっくり最期まで説明する。
今後の展開としては、

字『オレ、ちょっといま体重を増やそうかと真剣に考えたよ』
始『無駄だろ』
隼『ふふ。春のはそういうことじゃないと思うよ?』

っという会話がどこかにあるはずだった。



■ 字春のお色直しについて。
このあと何度か字春さんがおいろなおしをして、女装のときは色気がすごくて、観客の悲鳴とかすごすぎるという展開も考えてはいた。



■ 借り物競争。
さらにいうと、この借り物競争でまたもや字春が運ばれる予定だった。
公式では春がでていたシーンを始が替わりにでて、「メガネ」というお題をひく。っと、いったかんじで。

始『なるほど春か』

始、チラっと守人さんをみる。
だが、やっぱりこっちだな。と始だけは謎の納得をして、景品席に座っている字春を俵田気でさらってもっていく。

字『始に眼鏡差し出したのに俵田機で連行された』

メガネだけ借りればいいのにに、人物ごと持ってくるツキプロ借り物競争www

字『またか!!!』
という感じ。



■ で、リレーのとき。
“春の眼鏡”が本当に走る予定だったwww
「一番手、春の眼鏡〜」と選手のアナウンスがはいり、みんな「ん゛んん?!」となる。そこからの――

隼『ケセラセラっとね♪』
『あしぃぃぃぃ!?!?!?!』
『きもっ!!!!』
字『ノーーーーーーーーーーー!オレのめがねぇえええええ!!!!!』

眼鏡のフレームに足が生えます。
「眼鏡が走る」でみんなが普通に想像するような、フレームが足の形になって走る――それではなく、まじで足が生えます。

それで観客、選手、司会が顔を引きつらせ、字春の絶叫が響き渡る。
選手は逃げるwwww

ちなみにこの瞬間に、SOARAの守人さんにも視線が集中しますが「眼鏡は本体ではないです」ニッコリと笑顔で牽制。だれもツッコミをしなかった。むしろ視線をそらしたのだった(笑)
なお春の眼鏡に足が生えた瞬間に、秒速の速さでマネズは眼鏡をはずして隠していますwww



■ 衣装替えのなかには、十二単をひいたひともいて。
字春が十二単をきる。もちろん長めのふんわりした同じ色のカツラつき。
玉座には衣装が入りきらず無理なので、床の方に座っていた。
すわりかたは、平安時代のお姫様がするように肘おきによりかかるそれ。
遊女のような色気ではなく、清楚なお姫様のような可憐さをそなえたでも色気あふれるもうそれはもう御伽噺のお姫様のようwww
だがしかし、しばらくしたら字春さんの顔色が悪くなってくる。だんだんうつむいて、苦し気な感じがまた儚い。
そしてついにその場に倒れてしまう!?
字春の魔力事情を知る白黒マネズと、年長組が大慌て!
かけつければ「たすけて」と弱弱しい声で・・・・
「しっかりしりろ春!」と手をのばそうとしたら、「触らないで!」とおおきくはじかれ・・・始さんがガクゼン。
ここでみんなが超ドシリアスモードに入ろうとした。その瞬間!
『いったったた!!!!いまのしんどうきたー!!!も、もうだめ』
と字春がプルプルして泣きそう。
かーらーの――

『足がしびれた!!!この服重い!!動けない!たすけて!あ!さわらないでいたたたたたったたた!!!!』

という。ただあしがしびれたけど、十二単が重すぎて動けない。けど衣装が足に触れてよけいいたい。だれかたすけてー!っていう展開。




―――そんな展開を考えていた。

だが、しかし。
マジで結局収拾がつかなくなったので、うちきちり。
でもここまでかいたからもったいない。そんなわけで、途中までだけどアップしたわけです。

ここまで読んでくれてありがとうございます!
閲覧感謝!!



おそまつさまでした〜。
(-_-;)


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