外伝 ・ も し も 話
[花悲壮] → ツキウタ



【お題】 壁ドン王選手権

<霜月シュン>
・本名「零」
・魔法のない世界の、隼成り代わり主
・【ものの怪】の薬売りの弟子→【P4】主人公成り代わり→一つ前の世界は【黒バヌ】の火神成り代わり
・前世の影響で大食い
・口調がまんま火神な外見隼
・魔法?なにそれって感じで使えない
・犬嫌い
・人外ホイホイ
・怪奇現象を呼びやすい体質のため、イメージすると異世界へのゲート(inTV)をつなげ、そこからナニカを呼び出してしまう
・“あちら側”では【P4】の技を発動できる

<弥生字>
・本名《字》、芸名「春」
・だれも本名を呼べないので、むかしは《花》と呼ばれていた
・魔法のある世界の春成り代わり主
・前世【復活】より超直感引継ぎ
・一つ前の世界は【黒バヌ】の花宮成り代わり
・生まれつき魔力0
・始の魔力で生かされてる
・裸眼だと見えてはいけないものが視える
・転生しすぎで記憶容量に限界がきている
・本来は常識があったのだが、愉快犯な始によって洗脳を受けているうちに常識が欠落していった
・中身は天然なぼけぎみの爺さん









【壁ドンについて】
 〜 side「太極伝奇・零」の春 〜



涙「7番が皆に壁ドンして?」

こてんと首を傾げ割り箸に書かれた王様――ルイは、そう命じた。


前世に獄族であったり、それの契約者であったそんな記憶持ちが数人紛れ込む、世界にて。
恐怖の王様ゲームが行われようとしていた。


事の発端は、ルイが王様ゲームをやってみたいと言い出したことだ。
そこにコイが頷き、瞬く間にグラビ・プロセラ全員でゲームをするの雰囲気になった。

恋「王様ゲームと侮る事なかれ。
アイドルである以上!急な無茶振りがないとも限りません!こと、バラエティ番組やコンサートにおいては!! 俺らは如何なる無茶振りもこなすにしろ躱すにしろ反射神経が必要なんですっ。それにこのゲームは最適!」
駆「そうです!指示出しされたお題に、素早く選択し行動に移す。時には自分の持ち味を生かしオリジナリティで返す必要さも!だから、皆さんやりましょうっ」
涙「おおー!パチパチ」

というコイとカケルの熱いテーマのもと、ただの王様ゲームが意味合いの強いものと化した。
用意された割られた割り箸12本には1〜11までの数字と一本だけ赤い字で書かれた《王様》

「王様だーれだ」の合図の元、王様になったその場その場のメンバーは

《12番が黒田を乗せた状態で腕立て伏せ50回》
→ハジメ、早々にクリア

《8番と1番が皆にコーヒー淹れてくる》
→ヨルとコイが単にコーヒー淹れてきた!るだけでなくラテアート施してきた

《9番が女神様の歌をなりきりで歌う》
→ヨウがスカート(どこからでてきたのか)を履き、踊りも完璧にこなし熱唱。周りから賛辞と爆笑が起る

《5番が2回のゲーム終わるまで語尾にニャーをつけること》
→シュンに当たり、ひたすらニャーと語尾を付けていた。一部の人間が暴走した

《2番がジェスチャーゲームをし、3番が正解するまで喋れません》
→アオイとイクに当たる。中々にシュールな光景だった

と、ほんわかからハードな内容のものと、様々な命令で盛り上がりを見せた。


そんな中で、王様ルイによる「壁ドン」の命令。

7番はハルだった。

それに一部がどよめく。
カベドン王と呼ばれる人物による、カベドン。

しかもハジメの次に色気の権化と最近は囁かれているハルである。

戸惑い「ひー!」と悲鳴をあげ逃げようとするように視線をあちこちにそらしていたアオイの顔をくいっともちげて、名前を呼びながら壁にトンと手をついたり。
「さぁ、こい!」と挑むようにした仁王立ちのアラタの場合は、壁に手をついてから、アラタの額にキスするように名前をささやいたり。
顔をひきつらせたコイは、その動きを封じるように顔の両脇に両手を置かれ、「にがさないよ」と耳元でささやかれ「ヒョェ」っと顔を真っ赤にして耳を抑えて座り込むしまつ。
顔色を青や赤に百面相していたカケルは、ガクガクと震えているのをみられ、ハルがふっと微笑み、その身体を片腕でぎゅっとだきしめられ、トンと壁に手を置かれ「大丈夫?」と頭を撫でられた。
ルイは「ワクワク」と言ったそのすぐあとに、トンと軽く肩をおされ、壁にせをつけたとたん、ハルが肘までぺたりと壁に手をつき、それはもうとんでもない至近距離でニッコリと「るーい」と甘い声で呼んだ。「あ、僕もギブ」とルイが言ったのは仕方がなかっただろう。
イクは腰砕けになった年少組の惨事に苦笑をしている間に、クイっと袖を引かれハルと視線を向かい合わされ、壁におさえつけられ「いっくんはイケメンだねぇ」と普通に撫でられた。
ヨウは「やってやる!」と、アラタ同様に挑み調子だったが、「ふふ」っとあごに手をやりながらその勇ましさに流し目で微笑まれ――一気に壁においやられ、普通の壁ドンをされながら「まだまだだねぇ」とウィンクをされた。
ヨルは「か、か、かんべんしてください!うひゃぁーーーーーーー!!」っと絶叫をあげながら、目を閉じ顔をブンブンと横に振っていたら、カベドンされたあげく口を指で押さえられ「しー。だよ」と・・・・・・・・・・・・なんともいえないような柔らかい笑顔を向けられ、ボフンと顔を真っ赤にして目を回した。

案の定色気に充てられ撃沈していく年下組達。
自分は大丈夫だと思っていたシュンもとい零だったが、彼もまた自分が壁ドンされる番となると少し顔を赤くしていた。
前世では親(育ての)であった相手だが、これが他のメンバーとは違って、慈愛に満ちた目で見てくるのだから、たまったものじゃない。そのまま零も顔を赤らめた。

例外だったのは黒の王様ことハジメただ一人。
何故かハジメとハルは至近距離でニコニコと笑顔で無言で牽制しあっていた。むしろ壁ドンの「ドン」の威力もそこそこ強く、荒々しい。あげくハジメとハルが額をくっつけて、笑顔で互いに殺気立ちはじめるしまつ。
もはや、周囲の子供たちの顔色は赤ではなく青い。
その空気からは、黒年長が売りの色気は一切霧散していた。色気権化組といわれていた黒年長なのにだ。
胸キュンな壁ドンじゃない。心臓がキュゥ〜だ。二人が放つ殺気のせいで、心臓を別の意味でしめつけられるような、そんな恐怖をその場にいた善意が味わうはめとなったのだった。
笑顔の殴り合いのようであったと、その場にいた全員は胃をおさえながら、その場の殺伐した空気をのちにそう語る。

そして、ラストを飾るのはカイだった。

海「どうせなら俺がお前にやりたかったんだけどなぁ」
春「残念。王様が選んだのはオレだよ」
海「だなwwま、よろしく」

もはやハルに関して安定なセクハラぐあいである。
そのままカイは、ハルをエスコートするように壁へと向かう。

壁に背をつき、くるりとむきなおり、互いに向かい合う。
ハルはカイにニコッと微笑むと――

壁に手を


ドゴッッッ!!!!!


突いた。


「「「「ギャァーーーー!!!!」」」」

響き渡る悲鳴。思わずそれぞれが相方を抱きしめ合っていた…防衛本能によるものだろう。
そして壁ドン当事者のカイは顔を引きつらせて、壁を貫いているハルの腕と、ハルの顔を見つめている。

海「は、はぁるぅ。これ壁ドンだよな?な、なんで俺の顔面横にハルの手が壁にめり込んでるんだろうな?」
春「壁ドンでしょ?(^^)」
海「いやいや、皆にやった時はちゃんとした壁ドンだったぞー」
春「勢い余っただけだよ☆それともカイだし、特別に床ドンとかのが良かったかな?」
海「魅力的な言葉だけど、床にヒビ入るのは勘弁だなー」


始「あれ、事が終わった後だと壁ドンではなく正拳突きを躱した様子にしか見えないぞ」
零「なるほど。壁ドンってか壁ゴッてやつ?あ………壁、手の所だけ穴開いてる(遠い目)」





【お ま け】

アラタが王様を引当てた。

「俺はハルさん以外での壁ドンを所望する。俺の月である4番が、俺以外のみんなにドンで!」

当たったのは零だった。

普段のシュンをみていれば、だれもが「これなら安心」「平気だ〜」っと、ほっと方から力を抜く。
カラッとした朗らかな雰囲気だろと安心していたのだ。
だが、しかし。
油断していた年下組(カケルを除く)は、やる気になった零の予想以上のイケメンボイスの囁き&容姿フル活用での至近距離コンボにあえなく赤面しながら撃沈した。
そして年長組絡んだ壁ドンは、もはや見てはいけないなにかだったと、それほどの妖艶な光景だった。
度重なる色気の刺激で、アオイとヨルはとうとうソファで召されてしまった。
年長組による色気はハンパナイ。

その騒動の様子をアラタはひたすら、パシャパシャと絶えず写メりまくった。
被害者にならない王様の余裕だ。

駆「ああああ、学習して身構えていてよかった……!」(※短編:色気とはAの後)
新「シュンさんも色気属性だったんだなー」
陽「おかげでカオスになったけどなっ」


涙「ところでこの手形の壁穴はどうする?」

-----------------------













【壁ドンについて】
 〜 side「太極伝奇・字」の春 〜



駆『始さんのかわりなんて務まるかわかりませんがよろしくお願いします!』
恋『ううう…始さん一人の穴抜けに、俺たちは2人。いえ!この如月恋!全身全霊でもって〈はる〉さんのサポートにつかせていただきます!』
春「う、うん・・・よろしくね」

字と精神だけ入れ替わっていた〈獄族のはる〉は、コメディアンたちが集う番組の収録に、黒年少組二人と参加することとなっていた。



司会『眼鏡をしていない弥生さんなんて新鮮ですね!』
春「そうですか?最近、ちょっとだけ趣向を変えてみようかなって、コンタクトをしてるんですよ。たぶんそのうち元に戻すと思いますよ」
司『えーもったないよ!』

〈はる〉は司会者やレギュラーメンバーたちにさえ弥生春本人であると違和感を持たせず、スムーズに会話を成功させていた。
本人はいったいどういうものかよくわかっていなかったが、コンタクトというものをしていると眼鏡をかけていいなくても問題ないとも教わっていたので、それを言い訳にもさせてもらうぐらいには、〈はる〉の思考の回転の速さは異常はなかった。

年少組のサポートなど必要ないのではないかと思うほど、〈はる〉は『弥生春』そのものにみえた。
“その難題”が出される寸前までは。


司『・・〜っというわけで、じゃぁ、この流れで。せっかくだから弥生さんにやってもらいましょう!』
春「え」

〈はる〉は司会者のその言葉にひどく困惑していた。
誰もが《花》になりきろうとしなくていい。ありのままでいいのだと言っていた。
それで問題がないと、グループのみんなが言っていたし、なにより今の今まで問題ないなく会話もできていたからわざわざ“弥生春”という人物を演じなくてもいいのだと納得さえしていたのだ。

だが、しかし。
ここにきて“しらないこと”をやってくれと言われてしまい、どうしたらいいのかと視線を年少組へ向けては司会者を見る。
だが年少組は、〈はる〉が“しらない”という事実に思い当らないようで、「やっちゃってくださいはるさん!」と応援してくる始末。

〈はる〉は考える。
恋たちが“やれ”ということは、なにか行動を起こさなくていけない内容なのだろう、と。

〈はる〉は“それ”のさらなるヒントを求めて司会者の方をちらっとうかがい見る。
司会者は手の動きで、右手をあげさげ?して、さいごには両手でなにかを抱きしめるように一連の動作をしている。

今回のお題は、女性の憧れ。
という話からなぜ、こうなった?

人間とかかわりが全くなかった〈はる〉には、司会者の動作も言葉もよくわからなかった。

司会『さぁ!ドン!とやっちゃてください弥生さん!残念ながら今回のゲストに女性がいないんで、如月君あたりに、ドーンと壁ドンやってください!』
恋『えええ!?俺ぇ!?』
司『ば!?なにいってんの如月君!わたしだっていやだよぅ!だってあの色気筆頭と名高いグラビの年長組だよ!?他のおっさん相手にさせるには弥生君に申し訳ないし!わたしは司会やらないと!っということで、ここはあの色気に慣れてそうな同じくグラビの子が犠牲じゃなくてメロメロにさせられるべき!さぁーGO-!!!』

背を押さられて、〈はる〉の前にカチンコチンの状態ででてきた恋に、「骨はひろってあげるよ!」と自分たちから距離を置きはじめた駆が謎のエールをおくっている。
やはりよくわからない。

獄族の〈はる〉には、人の文化の一つである「壁ドン」は、まったく想像もつかなければ、まったくもってしらないものだった。

この世界の特有の文化であるそれを、ただでさえ人間の生活疎い〈はる〉がしるはずもない。
〈はる〉はなんとか「かべどん」の正体を突き止めようと、周囲を見回す。
なぜ恋は自分の前で震えているのだろう?
司会者の方を見れば、両腕を腹の前につきだし、人をだきしめるように円を描いて見せる。そのまま親指をたててウィンクまでされてしまう。どうやら「やれ」ということらしい。

やはり、イメージがわかない。
手を上下した後、腕でまるを描く?
まるいもの。腕でだく。

ああ、なるほど、と最後の動作でようやく納得する。

ならそれにあてはまるのはなにか。今の時期の旬を考えれば。
悩みに悩んだ〈はる〉が辿り着いたのは――

春「えーっとなんのどんぶりを作ればいいのかな?
あ、かんぶり?名前が似てるもんね〜。なまってカベドンになったのかな?でもオレ、ごめん不器用で・・・できても、ご飯をよそうぐらいならできるんだけど・・・」

寒ブリ美味しいよね。できれば漬け丼とかいいなぁ〜。と〈はる〉が告げれば、会場が一瞬静まり返る。
「どうかしたの?」とキョトンと首をかしげる〈はる〉に、次の瞬間はどっと笑いが起こる。
会場の人間たちは、〈はる〉の言葉をジョークとしてうけとったようだった。

自称〈はる〉のサポーターである恋と駆をのぞいて。

恋『ふぁぁーーーーーーーー!?し、しまった。春さん違いだ。むしろこの純粋な〈はる〉さんは壁ドンをしらなかったのか!!だが、うけてるしこれはこれで・・・いいのか?」
駆『というか、だれかカンブリドンにつっこんで!!!』

その後、〈はる〉はニコニコしながら、食べてみたい料理についてほわほわと語りだし、壁ドンの話は流れて料理の方へ会話はうつっていた。


結論。
寒ブリ丼はめちゃくちゃおいしそうだよね。
っと、いうので会場の意見は一致した。
駆のよだれがすごかったとも、明記しておく。



駆『じゅる・・・葵さんか、夜さんにたのもう』

-----------------------













【壁ドンについて】
 〜 side「春字」の春 〜



司会『さぁ!ドン!と壁ドンをやっちゃてください弥生さん!』

字『壁ドン・・・ねぇ』
始『こっちをみるな。うまくやってくれよ“壁ドン王”www』

字『え〜・・・っというか、そもそもどこから俺が壁ドン王って名前になったのさー』
始『どこ?俺たちのSNSだったか。一番壁ドンが上手そうなのはだれだって話になったのが始まりだろ。ずいぶん前だなwww』
字『ああ。あれか』

字は笑いだそうとした始の腹をつねってから立ち上がり、用意された壁の方へむかう。
「壁ドンねぇ」と考えるように難しい顔しつつ、生贄にと壁の前にたたされている今かわいいと話題のモデルのゲストの傍に近寄る。
ゲストの少女はすでに顔を真っ赤にして、身を固くしている。

字『あのときって、結局。ドンってしてないんだよね〜。なんか一番雰囲気あるのはオレだって言われただけで。
うーん。実際は、どれだけの強さで壁をたたけばドンと鳴るんだろう?
いや、でも・・・ドンって耳元で音が響いたら怖いよね?』

設置された壁にそっと肘をつき、ゲストの耳元で「怖いのやだよね?」なんてささやいている時点で、耳元に息はかかるし、流し目はどことなく艶があるし。 そんな《弥生春》をすぐ近くで直視してしまった少女の顔は、真っ赤だ。目なんか合わせられないとばかりにぎゅっと目を閉じ「うぅぅ〜」と、口がふるえてる。 もう自分で何を言ってるかわからないような状態なのだろう。
字はふるふると震える彼女に不思議そうに首をかしげると、ちょっとズレた方向へ勘違いしたらしく、 体を離し「えっと、ごめんね?こわくないよ?」と今度は少女をぎゅっと抱きしめ、頭をよしよしと撫でる。
それにスタジオにいた観客たちから黄色い歓声があがる。

始『春、まじめにやれ』
字『まじめだよぉ、失礼な』

ぷぅっと頬膨らませながらチャチャをいれてくる始を睨んだ春は、「さてと」と少女を指定の位置にもう一度立たせ、字の指が相手をいたわるように、ほのかに赤く染まった少女の頬をそっとなで ――「今度は怖いことしないからね」と柔らかく微笑みかける。
ぼふんとゲストの少女がさらに顔を真っ赤にし、首を縦に振る人形と化す。

始『・・・天然たらし』

見ていられないとばかりに始は、呆れたようにため息をつく。
そんなこと気づいていない中身人外じみた仙人のような、それでいてどこかで常識が抜け落ちている字は、ふと壁と己の手を見やり、考え込んでしまう。

字『・・・・・ん?あれ?壁ドンってどうやるんだっけ?こうだっけ?』

改めて言われると、はてどうやってやるのだろうと字は首を傾げた。

壁ドンというものの知識はある。
少女コミックの定番で、女の子は壁を背にして、男が女の子の顔の真横の壁をドンとたたく。

たたく?
それはまずいのでは?
そう思って、知識にある通り、壁に張り付いてもらってる少女を正面からみやり、その顔の横の壁を―――コン。かるくたたいた。

女『へ?』
始『ぶっwww』

司『ちがーう!!!!それは壁コン!!ノックはしません!!!』

字『んんん?じゃぁ・・・えーっとこう?』

司会者芸能人からの激しいツッコミに、困ったように眉をよせたあと、ひらめいた!と顔を明るくした字は、キョトンとしていた少女の頭の後ろに腕をまわし胸元まで引き寄せ、両耳をふさいだあと、空いている右手で拳を作り壁をゴン!となぐった。
本人としては正解を選んだつもりだったのだろう。
ドヤ顔で、振り返る。腕に涙目で顔を真っ赤にした少女を抱え込んだまま・・・

一瞬静寂が会場を支配し、「あれ?」と字は首をかしげる。
少女はまだ腕の中、字の胸板にかおがくっつくほどで・・・声も出ない。誰が見てもわかるほどに、ゆでタコのごとく顔を真っ赤にした彼女の意識がまだあるのかどうかもはや怪しい。

司『いやー!!!それ違う!!抱き締めるじゃなくて顔の横にドンって手をおくんですよ!』

字『いやいやいやいや!!だめでしょ!!耳のソバで大きな音出すのはまずいでしょ!こわがらせちゃうよ!さっきなんだかこわがらせちゃったばっかなのにそんなのだめだって!』
司『せめてコンでもコンコンでもゴンでもなく、ドンってならしましょう、ね!たのみますよ弥生さん!もうこの際、彼女そのままでいいから!!“ドン”になるようにいきましょうよ!』
字『ええ〜』
始『はぁーる。はりてだ。壁ドンは、はりてでやれ。それならできるだろ』
字『あ。お相撲さんの張り手みたいに?・・・では!どーん!』

字のてのひらがゆっくり壁に――


ぺた


字『・・・・はじめぇ・・・ドンってならないよ(涙)』

ぺたぺたぺた。
なんだか悲しくなってきたようで、壁を触る字の方が泣きそうである。




――その様子を収録後、TV放送日。
仲間たちが集まっているグラビ共有ルームにて。

駆『いけー!そこだ!』
恋『春さん!もっとつよくですよ!』
新『壁ドンじゃないけど。なんだか絶対違うところであの女子はキュンときていそうな、なにかが違う壁ドンwワロタ』
陽『うわー斬新www壁ドンでなく、壁コンコンとかwwww』
隼『おやおや。壁ドン王の異名は返上かな?』
郁『さすが春さんですね。相手のことを思ってやるなんて』
葵『いや、あんなかばうように抱き込まれたまま壁ドンされたら、それはもう・・・・・春さんこそ壁ドン王でしょう(真顔)』
海『ははwwwいや、でもうちの隼でも壁ドンできるぞ。いいのかあれ・・・なんかパニックおこした春が泣いてるぞ』
陽『泣きたいのはたぶん女の子のゲストさんじゃね?』
涙『あのこ腰砕けたのかな?』
新『春さん、めっちゃ声がいろっぽいし』
駆『だよねだよね。俺は絶対耳元でささやいてほしくないです。あれはゾワワってするんですよー。春さんに限らず黒年長やばい』

始『ふぅー。か・け・る』

駆『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!』
字『もうなにしてるの始。耳に息ふきこんだらくすぐったいじゃない。故意にあんましやっちゃだめだよ。駆の耳が悪くなったらどうするの』
新『やっぱり春さんなんかちげぇー』

春『あれ?この間の。放送されるの今日だったんだね。
あの女の子大丈夫かな?途中で具合悪くなっちゃったみたいで、熱がでてね〜』

『『『・・・・・・だからなんか違う!!!!』』』

春『え?』
始『wwwwwwwwwwwwww』

-----------------------










← BACK  [TOP]  NEXT →