外伝 ・ も し も 話
[花悲壮] → ツキウタ



【お題】 きさらぎ駅

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※魔法の国(字の世界)…『漢字名称』
※魔法のない国(零の世界)…「カタカナ名」

<霜月シュン>
・本名「零」
・魔法のない世界の、隼成り代わり主
・【ものの怪】の薬売りの弟子→【P4】主人公成り代わり→一つ前の世界は【黒バヌ】の火神成り代わり
・前世の影響で大食い
・口調がまんま「火神」な外見隼
・魔法?なにそれって感じで使えない
・犬嫌い
・怪奇現象を呼びやすい体質のため、イメージすると異世界へのゲート(inTV)を呼び出してしまう
・“あちら側”では【P4】の技を発動できる

<弥生字>
・本名《字》
・魔法のある世界の春成り代わり主
・二つ前の前世は【復活】超直感引継ぎ
・一つ前の世界は【黒バヌ】の花宮成り代わり
・魔力豊富な世界で、生まれつき魔力0体質
・だれも本名を呼べないので、むかしは《花》と呼ばれていた
・芸名「春」
・前世から変わらず、見えてはいけないものが視える
・世界に嫌われてるのでよく死にかける
・始の魔力で生かされてる
・始は充電器か空気という認識









【きさらぎ駅につきまして】
 〜 シュンな零 世界 〜



シュンな零がいる世界には、魔法はない。
しかし零自身がホイホイであり、TVと相性が良すぎるため、最近ではTVを通して怪異を呼び寄せては、TVの中がダンジョンになったりしていた。
魔法ではないが、まぁ、怪奇現象が起きやすいのは間違いがないだろう。

零「今日は俺じゃねーぞ」

腕を組んで仁王立ちをするシュンな零は、眉間にしわを寄せてふくれっつらだ。
その横にいたハジメが同乗のまなざしで零を見て、白い頭をくしゃりとなでた。

零「俺じゃないからな」
春「うん。そうだね」
海「あーダンジョンの方が楽だった(遠い目)」
始「ヨウがなぜここにいないんだ」

そんな不思議な現象の良く起こる世界で、SIX GRAVITYとProcellarumのリーダーズと参謀ズが、だれもいない駅に立っていた。
外は見事な夕焼け。
少し行ったところにある改札口は、今時珍しい無人。

駅の名前は「きさらぎ」。

四人はつい先ほどまで、同じ仕事をしていてその帰りにマネージャーにワゴン車でまとめて送迎されていた。
寮の前に到着して、マネズに礼を言って車の扉を開けた途端。四人はなぜかみしらぬ駅にいたのだ。
背後には寮も車もない。

チラリといっせいに視線が零をみつめたことで、冒頭のセリフというわけだ。

しかし今回は誰のせいでもないのだろう。
なにせホイホイとはいえ、零は今回だれも“よびよせる”ようなことを考えた覚えはない。

始「っで、どうするんだ?」
春「きさらぎ駅って、あれだよね?アリそうでない。実在しない駅」
海「へー、ないのかー。ありそうだけどな」

零「うん。よし。つかえるな・・・っと」

海「ここってどうやって帰るとか。ルールはないのか?怪談として広まってるならなにかあるだろ」
春「うーんそうだね。まず、こういう場合もらったものは食べない。帰れなくなるからね。
たしか、“きさらぎ駅の怪”は、改札口を出ちゃいけないんだ。
おはやしが聞こえても振り返っちゃダメ。
あとは改札口を出て、トンネルをくぐると帰れるんだよ。 トンネルの前には男の人?がいて彼についていってはいけない。 あとうまくトンネルをくぐれても・・・十年ぐらい時間がずれているらしい」
始「矛盾してるな。改札口を出てはいけないのに。出口は改札口の外のトンネルとはな」
春「たぶん改札口を出ずになんとかして列車に乗れれば、元の時間軸の元の世界に戻れるんだよ。
ただし、出てしまった場合は、出口はトンネルしかないってことじゃないかな?」
始「ほぉ。それは面白い解釈だな」
海「つぅーかさ」


零「ペルソナぁぁ!!!!!」


海「・・・なぁ、ハル」
春「なぁに?」
海「改札口をくぐってはいないが、改札口が吹っ飛んでる場合と、 和太鼓や縦笛もったちまい妖怪みたいなのが氷漬けにされてる場合と、 炎で頭の毛を燃やされてるおっさんが悲鳴を上げてる場合はどうしたらいいんだ?」

どこからともなく眼鏡をとりだしそれを装着した零が叫べば、キラキラ輝くカードが彼の手の上に現れ、 それがパキンと音を立てて割れるたびに、なにか謎の生き物が技を放って怪異を攻撃していく。

零「氷漬け?それとも火達磨?落雷?かまいたちで全身切り刻まれるか?」

春「ハジメ、解説」
始「ペルソナでブフダイン、アギダイン、ジオダイン、ガルダインのどれがいいかをわかりやすくした例だな」
海「で、後ろにはえげつない顔したペルソナがスタンバイしてる訳だな」
春「えげつない。本当にえげつないね」
海「だな。この後に物理攻撃が待ってるとか……ご愁傷様です」

ハルとカイがみまもるなか、さらにこちらもどこからかだしたのか日本刀で、零もまた襲い来る妖怪に攻撃を仕掛けている。
本当にどこから?と、いつだしたのだ?と二人は問いたかったが、獰猛な野獣のような顔つきで敵を切り伏せる白い青年をみて、口をつぐんだ。

そんな生き生きとした零を羨ましそうに見ていたハジメは、零に「俺にもやらせろ」と不満げに言う。

何が始まるのかとみていれば、零はハジメの存在を思い出したようにポンとてをたたくと、ニッカと笑った。
そして傍にあった長めの枝をひろうと「いつもの悪霊払いの札つけとくな」と嬉しそうに言いながら、懐から取り出したお札を枝にはりつけ、 それをハジメに手渡した。

そうして始まったのは、容赦ない連撃である。
さすがは長年居合やら古武術やらともに切磋琢磨してきただけはある。
ハジメと零はお互いに軽口をたたきながら、背中合わせに怪異を切り伏せていく。

それをただただ茫然とみつめていたカイとハルは、本日も無事に帰れそうだなと深いため息をついたのだった。


春「たまにね。本当にたまにだけどね。あの二人の無双ぶりをみていると、つい・・・やられてる妖怪たちの方がかわいそうにみえてくることがあるんだ」
海「奇遇だな。俺もそう思ってたところだ」

――その後、ハジメがそこらの妖怪に強烈なアイアンクローをかまし、零がペルソナでおどし・・・と。 まぁ、無理やり帰還方法を聞き出し、“現世行き”の電車を呼び出すことに成功し、四人は無事に元の世界に変えることができたのだった。

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【きさらぎ駅につきまして】
 〜 春字 世界 〜



新『どこだここ?』
葵『さ、さぁ?』
夜『さっきまで俺たちみんなで共有ルームで神経衰弱してたよね?ねえ、陽?って陽Σ(゚Д゚ )!?』
陽『うううう・・・夕焼けが・・・さっきまで部屋にいたのに。ありえない。ありえないありえない・・・』
涙『陽が頭を抱えてる・・・つんつん。陽ー出番だよー。僕、早く帰ってココアのみたい』
陽『だから俺は寺の息子でもみえるか!!!』
郁『え?でも夕焼けが見えてれば十分じゃ』
夜『ねぇ、陽。あそこの駅名なんてかいてあるかわかる?』
陽『真っ黒い板なんか読めるわけないだろ!ああ、もう!早く帰りたい!!!非常識は隼だけでいい!!』

涙『まっくろ・・・』
郁『たしかに少しくすんではいるけど』
新『おどろいた』
葵『これは・・・』

夜『“きさらぎ”ってかいてあるんだけど』

恋『同じ読み方でも俺は関係ありませんからね!!!』
駆『恋・・・必至だね』

始『〈きさらぎ駅の怪〉か、なるほどな』
隼『おやおや。せっかく僕が春の次に勝ち抜けようというときにひどいなぁ。・・・さぁて、ここはどこかな』
始『お前のブラックカードでも来れない場所だな』
字『無人の改札駅なんてSuicaも使えないから、ブラックカードじゃなくても無理かなぁ』

恋『なんで冷静なんだそこはぁ!!』
新『うむ。相変わらず春さんの発言が、微妙に、ずれてるな』

駆『あ、あそこに重そうな荷物もったおばあさんが!』
陽『いねぇよ!!』
夜『え。いるよ?』
恋『いや〜!!ココハドコぉ〜!!\(゜ロ\)モウカエリタイ(/ロ゜)/!こわいよー!』

駆『重そうですねもちますよ!・・・・・・・・・ ええ、これをお礼に!?ありがとうございます!では遠慮なく、いっただきまー』

葵『ま、まって駆!!!おばあさんに親切にするのはいいことだけど!こういう場所でもらった食べ物食べちゃダメ!!!』
新『さすが欠食児童』

始『なぁ、いっちゃだめか?』
夜『始さんがとてもたのしそうで、そこが怖い』
隼『だめだよ始。さすがにこんな知らない場所で離れちゃ危ないからね』
始『だが隼。改札口を出てみたくないか?むしろかすかに聞こえてるお囃子の正体をぜひとも捕まえてみたい』
郁『はは・・・“捕まえたい”なんだ(苦笑)』
字『すごい目がかがやいてるけど、やめといたほうがいいよ始(苦笑)』

涙『ねぇ、海は?』

夜『陽がorzになってる・・・えっと、大丈夫陽?』
陽『こえぇ!!!!なにがいんの!?だれがいんの!?まっくらじゃん!!!助けて春さん!』
字『わーい呼ばれて飛び出てジャーン!春さんだよ〜。っていっても、最初からいたけどね〜。
あと、陽。目をつぶってたら、そりゃぁ、まっくらだよ。ほら、こんなに夕日がきれい』

恋『たすけてください春さん!こういの専門家でしょ!もうこわいのいやだー!!!』
葵『あ!こういうときの春ペディアじゃ!』
涙『春、対処法は?あと、海がいない』
郁『そうだ!視える春さんがいた!隼さんなら祓えそうだし!』

隼『え、僕かい?祓えないけど?』
字『オレは視えるだけだよ〜』

『『『『!?』』』』

陽『まじ?』
恋『嘘だと言って!!』
字『うーん。でもマジだねぇ。オレも隼も祓えないし、攻略法も知らない。あ、でも昔の知り合いにお祓いが得意な子いたなぁ〜』
駆『今、この場にいないと意味がないですよぉ!』

字『んーっと〈きさらぎ駅の怪〉ね。たしか存在しない駅で、お囃子の音に振り返っちゃダメで、改札も出てはいけない。トンネルをくぐれば十年後の世界に戻れる・・・だったかな?あんまり詳しくなくてごめんね』
陽『それ帰り方じゃない!!!アウトだ!』

隼『とはいえ、春のそばから半径3メートルはなぜか悪いものが近づかないよ。だから身の安全は守られてるわけだから、これで一安心かな』
字『良いものも近づいてくれないけどね』
始『祓えないがな』

夜『えーっと。それって』

字『近くにいてくれたら身の安全の保障はできるよーってことかな』
隼『ま、でも。この怪異の攻略方法は知らないかなー』
始『しっていたら速攻ためしていた』

駆『うそ・・・じゃぁ、帰えれないってことですか?!』
葵『祓えないって・・・このまま妖怪の餌にされちゃうってこと?』
恋陽『『そんな〜(*_*;)』』


『おーい、おまえら〜飯だぞー。ったく神経衰弱してたくせに、あいつらどこいったんだ?』


隼『あ、海の声だー』
字『そっかぁ、海には強い加護があるからこっちにひきづられなかったんだね。海も心配してるし・・・しゅーん。右のその柱がちょうどよさそうだよ〜』
始『なんだ。もう帰るのか?』
恋『え?』
陽『かえ、れる?』
字『ん。そりゃぁ帰るでしょ?ここ、けっこう危なそうだからね。長居しないにこしたことはないよ。それともなぁに、みんなまだここにいたいの?』
葵『え!?帰れるんですか?!だってさっき無理みたいなこと言って・・』

字『そりゃぁ怪異の倒し方も攻略の仕方も知らないけど、帰れないとは一言も言ってないけど?』

夜『え』
新『まじか』
葵『どういうこと?え?かえ、れるの?』
字『うん。帰るのは簡単だよね?祓えないけど』
始『隼が言ったのは“正規の帰還方法”はしらないって話だ。
春が指示した場所が一番“力の流れ”がたまってるんだろうから、そこに隼が次元の穴をあけさえすれば、こんな場所はあっさり出れる』
隼『よっこいっしょ。うん、さすが僕。完璧な穴だよね』

字『ほら帰るよー』

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【きさらぎ駅につきまして】
 〜side もしも「太極伝奇」の記憶持ちのシュン成り代わり世界なら〜



零(シュン)、ハジメ、カイ、ハルは、〈きさらぎ〉とかかれた無人の駅にいた。
どんよりと空間を覆うは、なんとも寒気を誘う空恐ろしいものがある冷たい空気。
空は赤い夕焼けだが、お互いの顔が何とか見れるほどしか明るくはなく、人影もないのにかかわらず影のなかに“なにか”の気配を感じる。
自分たち以外は、なにもみえないが誰かが小さな声で耳の奥に恐怖をささやく。
陽が沈んだわけではないのに、より一層景色が暗くなる。
それとともにどこからかお囃子の音が聞こえてくる。

そんな普通の人間であれば、背筋が凍るような悪寒が走り、恐怖に肩を震わせるような場所に、四人はいた。
その顔は全員が、不思議そうであるが、恐怖を感じている者はいない。

零「なんかいつもと違う?」
海「うーん。なんかこの空気どこかで…??」

春「そうだねぇ。いつものダンジョンと違って、たかが無人駅だけど、こう力がみなぎってくるというか・・・」
零「つか、この世界でちょっと前世の力を使ってみろよハル。おもしろいぞココ」
春「えー。まったくもう。俺はシュンと違って、まだ力がこの体に安定してないのに――ってアレ?いつもよりスムーズに力が入れられるや」
海「わぁ、人型もどきがハルの平手で吹っ飛んだwww」

始「力が、みなぎる・・・あ、あれだ。前世の夜時間に似てるんだな」
海「なるほどな。言われてみると、ここまで“陰”の気で満ちた空間はそうあるものではないだろうしな」
零「アレかぁ!どおりで俺もこうムクムクと元気が出てくるような気がしたわけだ」
春「とはいえ、ざんね〜ん。“元の姿”に戻るまでは力がたらない、か」
海「力がわくのは二人が獄族だからか?俺はここの空気に懐かしさを感じてたな」
始「ああ、そうだな。俺たち陽の力を持つものからしたら、ここはそれほどいい感じではない。
だが、そうか。前世は常にこういった空気のなかにいたのかと思うと・・たしかにこれは懐かしい感覚だ」

春「二人ともさがって。“陰”は俺たちの時間だ」
零「だな!まかせろ!!」

海「ああ、頼んだ」
始「頼む」

元獄族の零とハルが、ハジメとカイを守るように前に出る。
その表情はいつになく好戦的で、零はニヤリと口端を持ち上げていて、ハルはいつもよりさわやかな笑顔だ。 ただし、その二人の背後には、目に見えるレベルでおどろおどろしい負のオーラがゆらめいている。

海「シュンに習って、札を常に持ち歩くようにしていてよかったぜ」
始「前世の記憶が戻ってからはかかさず持っていたのが功を奏したな。
おいシュン、ハル!好きに暴れろ。いくらでも後援支援してやる」

背後からの声援をうけ、手をふるだけで答えながら、ハルと零は気配が濃い場所に向かってかけていく。
瞬間、いままで微動だにしなかったものが動きだす。
それはいままで風景としてそこに存在していたものたち。
空間が歪み、そこらじゅうの影たちがざわめき、グワッと口を開くように巨大化して襲ってくる。
影はハルたちを同類とみているのか、彼らを無視して、その背後にいるカイとハジメにむかう。

しかしそれを許す彼らではない。

春「はぁっ!!」
零「どりゃぁ!!!」

零とハルが、人間離れした動きと体術を利用して、いびつな姿の者たちを力技で薙ぎ払う。
その隙をついて、ハジメとカイに迫る影もあったが、彼らがその牙をのばすよりも前に、パリッ!と何かがはじけるような音がする。

海「俺の方に来たか。いやー獄族を相手にするよりは楽勝だな!」

札を正面に掲げたカイがニマリと笑う。

海「でかいの行くからな!《轟天招波》!!」

瞬間、バリバリッ!!と激しい音を立てて、空気が揺れる。
カッ!とまばゆいばかりに周囲が輝き、津波のように襲い掛かってきた影が雷にうたれ、影だったものは痛みと恨みの声を残して塵となる。

海「へっ!楽勝♪」

影はあっさりとやられていくが、あちらは数が多く、この空間自体が怪異そのものなのだろう。しりぞくもすぐに津波のようにまた勢いを増して戻ってくる。
前衛を担う獄族二人の肉体戦術と、カイの術。それを静かな水面のごとき紫水晶の瞳がみつめている。
影たちはまったく手をだしてこない人間に狙いを定めた。
獣の咆哮のようなものが空間を揺らがす。
そこでシャンと澄んだ風のような音がし、いつのまにかハジメの手には美しい扇が握られている。
開かれた扇を一振り二振りするたびにシャンシャンと飾りが音を奏で、反対の手にはカイが持っているのに似た札。

始「俺をなめてくれるなよ―――《不動紫結》」

バサリ
扇が翻り、正面の敵を斬るように扇が縦にふりおろされる。

まるで鈴が鳴るような音を奏で、紫の光が正面の敵の足元に円陣を描く。
きらめくそれが光の強さを増すと、サークルにとらわれた影たちから苦痛の声が上がる。
そこへハジメは反対の手に持っていた札を持ち直し投げつける。

始「《玄空清界》」

凛とした声が空間に染みわたると同時に、光の陣の中に白い光があふれていく。
光にとらわれ動きを鈍くさせていた者たちが、絶叫を上げて消えていく。

海「ははwwさすがハジメ♪二つの術を同時に使うとは、最高の術者といわれるだけあるなぁ〜。いやー俺もハルの手前、負けてられねぇわ」
春「やだもーカイかっこいいー(棒読み)」
海「お。そうか!というか、相変わらずハルからメチャクチャ冷たい視線が」
零「獄族な俺らはけっこう割り切ってんだよ前世のことは。そりゃぁ冷たい視線ぐらい向けられ・・・ってぇ!!こんなところで三文芝居はいいから!アホなデレはいらねぇ!!!」
海「いや、俺はけっこう本気で」
春「デレてない(真顔)冗談だし。だってカイがかっこいいとか思ったことないし」
海「そんな!?」
始「ちっ!!いいからとっとと脱出する方法を探せ!キリがない」
零「俺とハルは長居すればその分力が増すけどなぁwwwあ、ハル!そっち大物がいったぜ。そいつ“話せる”」
春「りょーかい!まかせてよ」

零は正面にいた大きくいびつな形をした鬼のようなものが「よこせ」「いのちほし」「ちからが」とつぶやいているをみると、 相手のその勢いを利用してハルの方に蹴りつける。
それをうまくうけとったハルが、暴れる鬼を片手で押さえつけると、いい笑顔を向けた。

海「あ、シュン、よけろよ!《雷華蹂躙》!!」

零「なぁ!?ちょ!?あぶねーな!!」

零がハルの様子を見ていたほんの一瞬で、新な術を発動させたカイがのんびりと声をかけた――その直後、パチパチとねずみ花火のような小さな雷の塊が数個現れ、零の周囲の小物を―狙ってははじけていく。
ねずみ花火雷バージョンの散弾銃かとつっこんだのは、カイが発生させた雷の流星から逃れてきた零だ。


そこで耳をふさぎたくなるような悲鳴が聞こえ、何事かと振り返れば――

春「ねぇ、俺の大事な契約者まで巻き込んで、何してくれてんのかな?ん?」

とてもいい笑顔のハルが、大鬼のその太い首を片手でつかみながらもちあげ、さらに反対の手は高速に動き、何発ものビンタをくらわしていた。
一撃一撃がもう壊滅的なまでにいろんな意味の力がこめられた平手打ちが、恐ろしいことに往復でされている。
バシバシとたたく音がするたびに大鬼から地獄の底からの悲鳴のような声が聞こえ、そのからだがえぐれていく。
元とはいえ、さすが“陰”の種族最高の獄族――の高位存在である。

零「もういっそ"俺の大事なカイ"ぐらい言ってやれよハル」
春「やだよ。はずかしい(絶対零度のまなざし)」
海「ハルがでれた!」
春「うるさいカイ。あれはただの事実を言っただけだし。何度も言うけど、元契約者だからって人間みたいに深い感情はわかないよ(真顔)」
海「これがツンデレか!!あーやっぱ俺のハル最高!」
春「ひとの話聞いてた?」
海「あいかわらずつれない。そういうクールで冷たいところがいいんだよなー」
始「む!俺の相棒の方が最高だ!」
零「はぁー・・いい加減ハジメはさー張り合うのやめね?」


零「・・・・・・なんでもいいけど。なにこれ?」


気が付けば、人間二人が空間のほぼ半分を掌握していた。
そしてハルはというと・・・・

零「つか、待てハル!!待って!!!マジで待て!!それ以上やったらしゃべれなくなるから!!!!!」

爪が長くなくとも最強をそのままに、素敵な笑顔のハルは、平手往復ビンタでもって他の妖をもつかまえてはギッタンギッタンにしていた。
一番目の被害者である大鬼は、なんだか瀕死だが、ハルの細い右腕が鬼の首をつかんだまま離さないのでひきづられたまま。
いわく、駅の怪異は、人のうわさ話から生まれたちっぽけな存在だったらしいが、その内にいろんなものをひきよせているうちに、駅の怪異は巨大化し、 いまでは異世界のようなものになり果てたらしい。つまり噂の通り電車に乗ってもトンネルにくぐってもなにをしても出れないのだという。
そこまで聞き出したハルが笑顔で固まった。
その後、だれがどうあばれたのは・・・・




零は、無双する3人をみて、ただただ視線を遠くへ向けた。

零「3人の無茶ぶりに空間が耐えられなくなってきたか」

彼の視線の先には、この世界には存在いていなかったキラキラとした太陽の光。
そこかしこに光の亀裂が入っているのを見て零は、呆れたように、どこか疲れたようにため息を一つ吐き出す。
そうして背後に聞こえる激しい爆音や悪口や悲鳴などをすべてまるっと無視して、傍にあった空間の亀裂をちょいとめくり、そこを潜り抜け帰宅した。

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