13:最上級の秘密 |
誠凛VS霧崎第一 WC予選試合 終了後 直後。 ---------------------------- 「先輩って―― 」 それは試合終了後のこと。 火神に指摘された言葉。 それを言われたとたんオレはその場から逃げ出していた。 呼び止める声が聞こえたけど・・・振り返れなかった。 ああ、ああ・・・。 みんなにしられてしまった。 知られてしまった。 この世界が原作のある世界だと知っていたから、よけいに知られたくなかったのに。 いずれ言わなければいけないとはわかっていたけど。 それでもオレは知られたくなかったんだ。 ――それはオレの最大の秘密。 ++ sideside 花宮成り代わり ++ しってるか? しってるだろうか? オレの秘密。 オレは転生者で。 いろんな世界を何十と生まれては死んできた。 オレの秘密。 ――成長が遅いこと。 これはなんとなくだけど、たぶん心のどこかで「死」をひきずっているから。 だからオレは大人になれないのだろう。 いつもどこかで肉体が成長を止めてしまう。 それはきっと、「先」を考えるのが怖いから。 オレの秘密。 ――前世の力が少し残っていること。 オレの記憶が続く限りなら、性別も変わる。 勘もよくなった。 オレの秘密。 ――転生特典点(?)が、不幸体質なこと。 自分が不幸だと思うと、なぜか周囲にラッキーフラグがたつという、自分に利益がない物。 ちなみに周囲が不幸になってもオレにはラッキーがくるわけではない。 あと、オレの不幸体質は転生を繰り返すごとにひどくなっているようで、最近ではオレの側にいるやつもオレの不幸に巻き込まれて被害をくらっている。 まぁ、簡単に言うなら、周囲を巻き込むほどの不幸体質である。っと、いうこと。 オレの秘密。 ――守護霊が蝶の姿をして憑いている。 蝶の姿をとる《ロジャー》は、オレなんかのために守護霊として側にいてくれる。 本当はオレがあのひとの来世という可能性を奪ったのに。 あのひとは、壊れたオレを守るために、いまだにオレに憑いてきてくれてきてくれてるんだ。 だから。 きっとロジャーが死んだらオレも死ぬのだろう。これはきっと本当の意味の「死」で。次の来世は存在しない。消滅を意味する。運命共同体だ。 それほどまでに今となっては、オレはロジャーに依存している。 ああ。そんなことみんなもう知ってるか。 そんな秘密大したことじゃぁないな。 そう。 誰にも言わなかったけど。 オレには最大の秘密がある。 『オレ・・オレ・・・本当は・・』 ********** 「ちょ!せ、先輩。それはないでふ・・・ブフォッ!!」 「や、やめなさい火神くん!しつれいでしょ!」 「おー花宮。相変わらずだなぁ」 「なにあれ。いつも試合後ってああなるのか?」 「かわいいなんて僕は思ってませんよ!ええ!あんな試合をした相手に僕は僕は・・・」 「普段からの“アレ”ってそのためだったんですね」 「あああああ!なんてことだ!花宮が!!!ロジャーさん!ロジャーさーん!!!!!」 「落ち着け古橋。ロジャーさんよりさきにタオルぐらい渡してやれよ」 「はい。お花。いまはタオルで我慢してねー」 ウィンターカップをかけての WC都予選決勝リーグ。 誠凛との試合後。 悔しいことにオレたち霧崎は誠凛に負けた。 普段なら、楽しんでやろう〜。負けちゃってごめんね。次はもっと強くなってみかえそう。とか。 その程度だけど、今回ばかりは相手が火神であったため、燃えに燃えた。 互いに互いがどういう存在で、どういった性格か理解してるからこそ、素でいきましたねぇ。 え。なに?オレの顔がゲスかった?気にすんな。 あっちもこっちも“本気”でやれるんだから、まさに誠凛とは真剣勝負だったからしかたない。 汗だくになって試合を終え、一番最初に体力が尽きたらしい黒子が床とお友達になっていた。 黒子程でないにしろ、オレもそれほど体力があるわけではないので、オレは声も出ないぐらい疲労困憊となった。 ゼハーゼハーと肩で息をついている状態で、膝に手をやることでようやく立っている状態だった。 ああ、なんだよチクショウ。オレもすっかり体に精神ひきづられてるな。若者相手に向きになるなんて。 なのに負けたんだよなぁ。 ああ、WCいきたかったなぁ。 ああ、もう泣きそう。 そんな状態で、とにかく試合終了の挨拶してとっとと会場を出ようというとき、こちらにかけよってきた体力馬鹿もとい前世仲間火神が―― ひとの顔をみたとたん爆笑してきた。 あいつにつられてこちらを振り返ってきた他の誠凛の奴まで笑いやがる。 霧崎の仲間まで視線を向けられ――生暖かい目で見つめられたあと、顔を隠すようにタオルを頭にかぶせられ、原にポンポンと頭を撫でられた。 原因はわかってる。 なんかもう気のせいなんかじゃなくて、本気で目から涙でてたし。 あまりに恥ずかしくなって脱兎のごとく逃げ出した。 火神や霧崎の仲間たちがオレを呼び止めるが、それに振り返りもせず走って走った。 ********** 試合直後に走ってきたせいでまた肩で息をすることになった。はくたびに、外気に触れた息が白くなる。 オレはそのまま外にあった水道をみつけ、ジャグチをひねると飛び出してきた水に頭をつっこんだ。 別に頭を冷やすという目的のためじゃない。 だっていまはこうしないと―― 「先輩!」 『・・んだよ。なんで追いかけてくるんだよ』 「なにやってんですか!」 水をだしてそれをあたまからかぶっていたオレをひっぱり自ら話した火神が、蒼い顔で「凍死する気ですか」と怒鳴り、そのままオレは怒られた。 季節は11月。 ノースリーブのユニフォームでは肌寒いこと間違いなしの中、そのまま外に出してしまったオレを心配して友達代表で火神が後を追いかけてきたらしい。 水道のジャグチをひねって止められ、そのままあわてたようにタオルでワシワシ頭をふかれる。 うつむいてされるがままになっていたオレの頭からふわりと布がかぶせられる。 あったかいとそれをみれば、霧崎のやつらから預かったのか、黒と深緑の霧崎第一のジャージがみえた。 「なにもあれくらいで会場からにげだしたあげく水をかぶらなくてもいいでしょうに。あんたじゃなかったら心臓まひ起こして死んでますよ!」 モソモソとジャージを着込み、ジッパーを首元まであげると、まだしけってるからと髪の毛をふたたびタオルで拭かれる。 それに無言でいたら、頭上から呆れるようなため息が聞こえた。 『凍死じゃない。水の、重さがほしかったんだ』 「いやぁ〜それはわかりますがね。まさかあの後泣くとは思わなくて・・ぶっ!!」 『笑うな!』 そうさ。そうともさ。 オレの悩みなんて、きっと人にとってはそんなもんなんだ。 『そうだよ!!どうせオレはハネッ毛だッ!!!!』 試合終了後―― 「先輩。試合中とか、運動とかすると、アチコチハネてぴょこぴょこしているのかわいいですね」 と、指摘されて、思わずその場所から逃げ出した。 笑われて、そのあと涙が出た。 決して試合に負けて悔しかったからの涙じゃない。 だけどそんなオレを追いかけてきた奴がいて。 前世仲間の火神だった。 火神は前世からの友達だから、あいつだけにはオレの最大の秘密をこうして語ったのだ。 今回の世界では、一本一本の髪が細いため、サラサラだ。 なのに。 なのに。 はねるのだ。 どんなに頑張ってもはねる。 どれほど髪質が良くても、はねる。 恥ずかしい。 これは前世の影響のようで、どの世界に行ってもハネる。 それで思わず頭を押さえてその場から逃げだしたんだ。 「いや、先輩の毛がどの世界でもはねてることぐらいはしってましたよ。だけどまさか“花宮真”でもはねるとは・・・ブフォッ!!!ぶっくくくく・・・ご、ごめ!」 『だからいつもロジャーに髪の毛まとめてもらってんだろうが!!それを!てめぇがばらしたんだろ!!』 原作の“花宮真”は見事なストレートヘアーだったらしい。 それをきかされてから、オレはいままで以上に朝は気合と時間をかけて頑張った。 同じ“花宮真”なら、オレもストレートになるんじゃなかって・・・。 期待したオレがばかだったさ!! このハネ癖は、きっと魂にでも刻まれてるんだろうよ! 例え花宮家がサラサラヘアーの遺伝子で構成されてていてもあらがってはねるんだ!! チクショウ! チクショウ!! 「ぐふっ!ブフゥ!クハッ!!せ、先輩って、本当におかしな感じで原作破壊してくれますよね」 『うるせー』 「原作破壊って、普通はシナリオがガラッと原作がくずれる気がするんですけけど ・・・くっくっ・・な、なんで・・ぶふ・・・か、かみ、髪の毛の癖?!アホ毛とか!そんな微妙な原作破壊、っぶ!くっ!・・い、いらな・・・あははっはははは!!!!!」 オレだっていらねーよ!! でもさ。でもさ。 母親なんかきれいなストレートヘアーだぞ。 こうやって何十回も生まれ変わってんだからさ、たまにはさ、たまにでいいから別の自分とか憧れるじゃないか。 それが長年の夢で何が悪い。 そんなこんなで腹を抱えて笑い始め、あげく地面にのたうちまわってヒーヒー言いながら笑い続ける火神を足蹴にしていたら、誠凛の黒子や日向やらがきた。 お前ら本当にタイミングいいよな。 オレが思わず意識を遠くやったら、足の下から震えが来た。「勘違いとか・・・ぶっ!!!どんなフラグ建築士だ!」なんて火神の震えた声が聞こえたから、こいつ絶対笑ってる。 ねぇ、たのむから。オレの夢を笑わないでくれる?これでもオレは真剣なんだよ。 それとさ、むしろオレの些細なはずだった不幸体質が、最近さらなる進化を遂げてる気がするんですが・・・。 いろいろとさ。 だれかたすけろー。 「(わらいすぎて)腹、いた」 火神の笑いのツボのせいで。 ほら。また一個フラグが立った気がする。 ヒーとくぐもった微かな笑い声が聞こえた。 っが、ぶっちゃけ、寒空の下。オレたち以外には人はいないわけで、その声はオレだけではなく、誠凛の皆様にも届いてしまって―― ああ・・・もう、いやだな。 そんなことを思っていたら、「うちの火神になにしてくれとんじゃー!!」っと日向にとび蹴りをくらい、 「泣かせてしまったので気になったのですが・・・心配して損しました」と黒子にイイグナイトをもらった。 ふっとんだオレはぞのまましばらく地面に転がっていた。 火神はずっと笑いを懸命にこらえながらいまだ地面にうつぶせになっていたが、伊月とかに手を貸されて起こされていた。 おい、誠凛。 頼むからオレにも優しくしろよ。 だれか手を貸してくれてもいいんじゃないですか? そもそもそいつ笑ってるだけだろ。 「せ、せんぱ・・・ぶふっ・・・だ、だいじょ・・ブッッ!」 『・・・・・・大丈夫だと思うなら眼医者行けよ』 U←BackUTOPUNext→U |