有り得ない偶然 SideW
-クロバヌ 外伝-




12:本気で勝ちに行く



秀徳VS霧崎第一
WC予選試合に、夢花たちが参加できなかったその――裏事情。
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宮「どうしてそうなった!!」

花『まさにみごとなピタゴラスイッチだった。全霧崎部員が泣いたよ』
宮「いい顔して何言ってんだお前。…はぁ〜。つか、そりゃぁ泣くだろ」
花『ぐす…』
その日宮地清志は幼馴染の不運の威力を再実感しつつ、病室にて見舞いのリンゴの皮をむいていた。
リンゴウサギまでしてやる気はない。





++ sideside 霧崎第一 ++





顧問「念には念を入れておいてよかったですね。
練習はしてたから・・・2軍とはいえまぁ、他校の子たちよりも動けるとは自負していますが」

隅っこの方でどうしようもない状態の人物をチラっとみつめて、霧崎第一の顧問はハァ〜と深いため息をつき、もう一度控室の中にいる部員たちを見つめる。

視線を感じる。
みなくても相手が誰かわかってしまう。

そこには魂が抜けたようにぼぜんとしたままじべたに転がっている花宮。それを囲むようにうずくまっている霧崎第一のバスケ部レギュラーメンバーがいる。
ここは霧崎第一用の控室だった。
その真ん中で花宮は魂が抜けているから除外するとして、恨めしげな視線を向けてくるのはレギュラー陣だろう。

原「こもんぜんせぇ・・・」
顧「ダメったらダメです」


顧「はぁ。まさかこんなドタンバで花宮君が“しでかす”とはおもいませんでしたよ」


花『兄ぃと・・・試合、したかった・・・』

顧「だめです。あなた方は見学も何も許しません!そのまま病院へ直行しなさい!とくに花宮君。君その血だらけの顔、洗ってきなさい」
山「あー・・・顧問先生・・・顔洗うも何も花宮、意識ないっす」
原「動けねぇ・・・まじいたい。本気で痛い。まじでいたい。誰か助けて・・」
山「まじか。なんだよもう。頭だけじゃなくて、足もやられたの?」
古「ちなみにそれは俺だ」
原「俺だって無理だよ。もうまじ腕痛い」
瀬「俺、わき腹うった」

顧問と控室の外で震えている部員たちの目の前には散々な状況が広がっている。
なにをどうしたらそうなるのか。

彼らの前にはきれいにならんっでいたはずのロッカーがみごとな奥義を描いて横だおしになっている。
まるでドミノ倒しでも行ったかのようだ。
その縦長のロッカーの隙間には、霧崎第一バスケ部のレギュラーたちがうめいている。
なかでもひどいのが、花宮である。
彼以外に血を流している者はいないが、どこかしらをおさえているので、そこを痛めたのだろう。

なんだか見覚えのあるような光景(ただし予想外の展開だ)に、顧問は再び溜息をついて、マネに大会の実行委員会を呼んでもらい、もっていた携帯ですぐに救急車を呼びだす。

入り口の外では、大きな音にあわてた1軍以下のバスケ部員たちが集まってきている。
控室の現状を見て、顔をひきつらせたのは2軍のメンバーたちである。

顧「しかたありません。みなさん、でれますか?」
2「そ、そりゃぁ。1軍に混ざっていざって時のために練習させられましたけど」
2「さすがに花宮主将がいないのにうまく動けるか」
2「全力でやります!でもキセキに勝てるかどうかは保証できませんよ」
山「ごめん。保障できなくてもいいから・・・かわって」
2「山崎先輩!!」
2「おい、古橋!しっかりしろ!!いつもり目が死んでんぞ!!先生救急車はまだですか!」

瀬「だれも花宮の心配をしないところが、もう慣れだな」

そうしてその日。秀徳との試合には、霧崎側は急遽2軍をだすこととなったのだった。





マ「ただいまぁ・・・とりあえず救急車の手配と2軍を出す件については、協会側に話しつけてきました」
顧「ああ、おかえりマネ君」

マ「・・・思うんだけど。なんで試合寸前って時にロッカーが倒れてくるの?どんだけ花宮君ってフラグがたつのよ。しかもロッカーの上にあった段ボール、全部花宮君に直撃してるし。
よかったわね。あんたたちにアレがあたったら、花宮くんみたいに目を回すなんてレベルじゃすまなかったわよ」

マネは床に散乱するものをみて思った。
花宮字の不幸体質、おそるべし。





ことの経緯はこうだ。


この控室は、ほとんど天井につきそうな高いロッカーが並ぶ。
そこへ遊びで投げていたタオルがロッカーの扉にひっかかって、花宮が手を伸ばそうとしてもそれは届かなかった。
それに笑った原がロッカーにぶつかった。
しかしその衝撃が、原とは反対の位置にいた花宮のロッカーに届き、その上のダンボール箱が降ってきた。
なぜ反対の端のロッカーをつかっていた花宮のロッカーがゆれたのかというと、ここでおきたのは、いわゆる《運動量保存の法則(ニュートンのゆりかご)》の原理である。
そうして、その衝撃で揺れたロッカーから降ってきたダンボール箱は、古くなっていたためもろく、落下の最中に中身が散乱。
その直撃を花宮がくらって倒れた。
さらに倒れた花宮を支えようとして、花宮の横のロッカーをつかっていた古橋が目を回している倒れてきた花宮の肘を見事にくらいさらにたおれこみ、その横でのんんきに着替えていた瀬戸を巻き込んで転倒。
そうしてどんどん横へ横へと倒れた彼らは、団子状になって控室の隅の方に転がりおちた。
結果として、花宮の不幸体質に霧崎レギュラーズ全員が巻き込まれたかたちで、自滅へとつながったわけだ。
その直後、騒動に気付いた顧問が扉を開けた。
今度はその振動で、さきほどからぐらついていたロッカーがたおれ、レギュラー陣がさきほどまって立っていた場所に向けロッカーはいっせいに倒れはじめた。
もしもあのまま花宮が倒れてこず、全員がそのまま立っていたのなら、倒れてきたロッカーの下敷きに全員がなっていたことだろう。
転倒に巻き込まれささいな怪我で済んだことを喜べばいいのか、それともロッカーが倒れてきたことを嘆けばいいのか。誰にも判断はできなかった。


マ「どうしてそこで《ニュートンのゆりかご》が発動するの?そのまま原君だけに被害がいってもいいじゃない。なんで花宮くんに衝撃が行くのよ」
霧レギュ「「「「俺たちにきくな!」」」」










++ sideside 秀徳 ++



原「あ、秀徳じゃん!」

秀徳のオレンジカラーを目にとめると、霧崎レギュラーのひとりが目を輝かせた。



――控室でドミノ倒し事件が起きる少し前のこと。



本日試合で当たる秀徳と霧崎のメンバーたちが、みごとに廊下ではちあわせてしまった。

すでに準備を終えて控室から出てきたところだった秀徳側は、霧崎のいい噂を聞かないために顔をしかめ、嫌悪感もあらわに警戒を見せる。
さすがに噂は耳にはさんでいるようで、監督も眉をしかめて霧崎第一の選手たちを見つめている。

秀「霧崎第一」
秀「あのラフプレイの」
秀「悪童の・・・」

警戒する秀徳をよそに、霧崎第一はというと、相手の視線なんか見向きもしてないとばかりに嬉しそうに逆に近づいてきた。

原「こんにちわ!」
山「こら、原。ああ、どーも、秀徳の皆さん」
マ「こんにちわ秀徳の皆さん。
ねぇ、ちょっと山崎!どうしよう!?秀徳ってオレンジカラーのせいかすごく爽やかで明るいキラキラした人の集団に見えるわ。 緑ジャージな私たちって、ニンジンの葉っぱ!?やだ!恥ずかしくない?地味じゃない!?」
古「落ち着けってマネ。大丈夫だ。うちにはキラキラはしてないが花はある!(ドヤァ)・・・・・(ペコリ)今日はよろしく」
山「・・・古橋ぃ〜。その花宮厨やめろよ。秀徳の人ひいてんじゃん。あと花のつく花宮はいても俺達に“華”はないからな」
原「あははは!そうだよね。ザキとかフツメンだもんね〜」
マ「そうね。山崎は普通ね。そう言うあんたはまず顔さえ見えないわ」
原「!!だって、これは俺のアイデ・・・」

瀬「お前たちうるさい。
 すまない。こいつらが騒がしくして」


子犬のように駆け寄ってきた霧崎レギュラーとマネは、黒い噂をひきたてる暗めの色合いのジャジーやその死んだ魚の目や無表情とは裏腹に、 礼儀正しく、はじめに挨拶をしてから、それぞれが嬉しそうに歓声を上げている。 はしゃぐ様子はまさに、どこにでもいる高校生そのものだ。

霧崎の悪質な噂と目の前の光景のあまりのギャップについていけず呆然としていた秀徳勢だったが、 そのオレンジのしげみをかきわけて蜂蜜色の青年が前へと出てきた。

宮「お。全員そろってんなぁ。よぉ!」

霧崎のメンバーをみて納得するように笑うと、歓迎するようにさらに近づくひとりの秀徳生。
声をかけられた霧崎の生徒たちは、聞き覚えのある声に視線を向け、顔を輝かした。

霧レギュズ「「「「「宮地さん!」」」」」

ニコニコ笑顔で仲間をかきわけ近づいてきた宮地に、前髪の少年とマネを筆頭に嬉しそう笑顔を見せ飛びついていく。

宮「今日はよろしくな!」

山「あー…えっと、宮地さん。今日は手加減なしでお願いします」
マ「みゃーじ先輩!今日も素敵にスルースキルが発動していますね!はい、ぜひ!今日はよろしくお願いします!」
原「あ、マネずるい!というか試合するのは俺らで、マネじゃないだろ」
マ「いいじゃない。ただの葉っぱだってときには主役を張りたくなるのよ!」
山「まだそのネタひきずってんのかよマネ!っていうかニンジンやダイコンの葉っぱもちゃんと食えるぞ?場所によっては主役になれるって・・・たぶん」
原「そうそう。俺たちが主役!それのためにすっげー頑張ったし」
山「そういえばあれはひどかった。花宮のしごきにたえた俺たち頑張ったな〜。失敗するとケーキが飛んでくるとか・・・なんか、間違ってる」
古「全力でやるので、手をぬかないでください宮地先輩。俺達が勝ったら、そのときは。そのときは!!花宮の小さい時のアルバ」
山「だまれ古橋!」

宮「はは。相変わらずだな古橋。アルバムぐらい本人に言えよ」


秀徳のメンバーたちからすると、宮地にまとわりつく霧崎たちは、それはもうしっぽをふってなつく犬のようにじゃれついているようにしか見えなかった。
嬉しそうに満面の笑顔で、あいさつをし、宮地に頭を撫でられては会話をもちかける霧崎レギュラーズ。
みな190cmある宮地より若干とはいえ背が低いため、さらに子犬がじゃれ付いているようにみえる。
その光景を見てしまうと、これがあの噂のラフプレイヤー選手たちなのだろうかと、自分の目を疑ってしまう。

花宮経由で霧崎と宮地の仲がいいのを知らない秀徳勢は、ただただぽかーんとしたまま開いた口が閉じれないという状況に陥った。


秀「あれ?なんか噂と違う」
秀「青春謳歌してますとばかりに試合が楽しみで仕方ないとニコニコ満面の笑みで挨拶してきたり、宮地をしたってまとわりつく霧崎が可愛く見える」
秀「え?こんなんがラフプレーしてくんの?」
秀「俺の目おかしくなったかな?みゃーじさんとなく大型犬が群がっているように見える」



大「宮地」

宮「大坪か」
大「そろそろ」
宮「ああ、そうだな」


宮「こら、そろそろ離せ、おまえら。轢くぞ」

じゃれつく子供たちの扱いには慣れたものとばかりに、まとわりつく霧崎の子たちを引きはがしていく宮地。
しかしその「轢くぞ」という物騒なセリフが、なぜかいつもとちがってトゲがなく、それさえもあまったるく聞こえる。

宮「あとは試合でな」

宮地はそう言うとわしゃわしゃと霧崎のメンバーの頭を一人一人撫で、爽やかな笑顔をみせる。戯れはおしまいだ。
霧崎のメンバーたちは、ひとなでされるとと満足したらしく、しつけの行き届いた犬の様に宮地の側から離れていく。

山「ああ、すいませんつい」
原「はーい」
マ「ありがとうございますみゃーじ先輩!」
原「ほら、古橋はやく!」
古「脳内の中の花宮の可愛さに思わず現実逃避してたわ。ああ、いまいく」

瀬「おまえら、花宮が呼んでる」

マ「いまいくわ。はぅわ〜。やっぱりみゃーじ先輩のナデポはすばらしかったわ。花宮くんなんか目じゃないわね」
古「マネ、もう行くよ」
マ「はーい。

それじゃぁ、みゃーじさん、秀徳の皆さん」


霧レギュズ「「「「「今日はよろしくお願いします!」」」」」


宮地から離れると、ひとりひとりが一礼してから彼から離れ、 霧崎の子たちは少し離れた場所で仲間たちを待っていた小柄な少年と顧問らしき男のもとにかけていく。

そんな彼らの後を追うように、季節外れの黒い蝶がパタパタと飛んでいく。
そのまま蝶がふわりと黒髪の少年の側にまでたどりつくころには、霧崎のレギュラーやマネは花宮のもとに集まっている。


あれがラフプレイヤーの

無冠の五将――“悪童”花宮。



花『清志っ!』


キラキラと輝く印象的な深い色をした瞳が、宮地をとらえる。

雑誌に載っているのとも噂とも違う。どこか子供っぽい容姿とはことなり、ふわりと静かに笑う花宮の笑みはずいぶん大人びて見える。
そんな花宮につられるように、振り返った霧崎勢もまた、楽しみで楽しみでしょうがないとばかりにニコニコ笑っている。
それは顧問やマネージャーも同じらしく、みな同じような表情で秀徳を見ている。
これがラフプレーをするチームかと思うほど、霧崎の仲の良さがうかがえる。
彼らが笑うだけで、そこにあたたかい空気が流れるようだ。

ひとめみて、信頼しあったチームなんだとわかる。


花『今日の日のためにこいつらを鍛えた。オレたちも本気でいくから!手ぇぬくなよ!』
宮「お前と本気でやれるの楽しみにしてたぜ」
花『はっ。言ってろー』

オレたちが勝つ!

そんな花宮の宣言に、宮地は嬉しそうに拳をつき返して頷く。

花宮はそれに目を細めると、状況の理解に追いつけずいまだ身動きできない秀徳勢に視線をむけて、優雅に一礼し「コートで」と告げると背を向けて歩き出す。
それに続いて、霧崎レギューラたちが丁寧にお辞儀をしてついていく。

花『いくぞ』



秀「はぁ〜・・・なに、あの後ろ姿。ああいうのカリスマ性っていうのかね。なんかちっこいのにめちゃくちゃかっこよかった」
秀「まさに王者の貫録?“無冠”なんて呼ばれるの勿体ないな」
秀「宮地がみゃーじとか。呼び方可愛い」
秀「霧崎第一・・・あんな礼儀のなった可愛い後輩がほしかった」


にぎやかな霧崎のメンバーたちをみおくるしかできなかった秀徳勢は、小さくなっていくその後ろ姿に、ほぉうと感心したように息を漏らす。



原「あ!待ってよ花宮ぁ!」
古「今日は絶対勝とうな!」
マ「ねぇ、知ってる?勝たないと、わたしたち。土曜日にみんなで芋ほりにいかされて翌日はかぼちゃの収穫祭よ。あとまた追試の平均が上がるという・・・」
原「まってマネ!いまはそれ言わない約束!」
顧「ほらほら。他の人に迷惑にならないようにしてくださいね」
花『・・・顧問先生。いま、口に何入れました?』
顧「ああ、ほら緊張するとね。甘いもの食べたくなるからね」
花『あんたが出るんじゃないだろうが!!ってか、いまの今日で飴何個目ですか!!』
顧「はっはっは。まぁまぁいいじゃないの花宮君」
花『だめです!顧問先生いますぐはきだしてください。カロリーオーバーです』





秀「「「「・・・・・・」」」」

秀「・・・あ、ああ。そっか。霧崎も普通の高校生だったんだなぁ」
秀「なんかおかんがいましたね〜なごむわ」
秀「なんで芋ほり?」
宮「ま。テストの点さえ落とさなければ、あの学校基本はお祭り好きな奴らの集合体らしいからな。 なんてーの?生徒の自主性をもとめてる?そんな感じらしくてさ。 だからボランティアとかイベントとかことあるごとにやりまくっているらしい。 先週はチャリティークッキング対決とかいうので、バスケ部のやつらはドーナツを売りさばいていたな」
秀「ど、ドーナツ!?」
秀「なんか…噂の霧崎のイメージとかけはなれてますね」
秀「宮地、お前やけにくわしいな」
宮「本人たちに聞いた」
秀「ってか、なんで宮地だけあんなに仲良しなんだ?うらやましい」

宮「ああ、だって花宮っておれの――」



さて。彼らと宮地の関係ってなんだろうかと、理性が戻ってきた奴らが聞き出そうとしたところで。

ずいぶん千沙くなっていく集団の中でもひときわ小さな影が足を止め振り返った。
そして――


花『みーてーろーよ緑間ぁ!!一般人の底時から見せてやるからな!!!縮めカス!!』



秀「うわっ。ここからでもあのそこいじにわるいとんでもない笑顔がよく見えるし」
秀「美人が台無し」
秀「まさに悪童!いや、でもあくどいけどきれいに笑うよなぁ。なんというか大人の微笑み?」
秀「笑い方が静かなんだな」
秀「それにくらべてこっちは・・・」
高「ブフォォッ!!ちぢめってwwwwwwあっはっははははっははははwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
秀「笑い袋」

宮「おい緑間。お前、気を抜くなよ。あいつ本気でかかってくるぞ」
緑「宮地先輩・・・」

遠くから聞こえてきた宣戦布告に、予想外に個人名まで上げられた緑間がずるりとすべる。
それに宮地は笑い、困ったように高尾が笑い袋の本領を発揮してケタケタお菓子僧院笑いながらすべった緑間を助け起こしている。

緑「・・・・・」
高「あっははは!あの子やるね!ウチのエース様に宣戦布告とか!あっははははは!ち、ぢめって!うける!!!ぶっひゃーし、真ちゃん。めがねずれてるよ!!」






それから霧崎第一の控室で物凄い轟音が響き、救急車が到着するまで、あと―――





 


:: オマケ ::

火「あれ?」

火(原作だと、秀徳の試合の時、霧崎レギュラーって誠凛の試合を見にきてたよな?)

日「どうした火神?」
火「あ、いや。なんでもない。っす」

火(俺がさがせないだけだよな?なんで嫌な予感するんだろう)

火神大我、彼が知っている原作知識では、たしかに霧崎第一は秀徳との戦いにおいてだけ2軍をあてがった。
花宮字に原作補正などきくとはおもえないが、逆に前世からの友人である花宮字であれば原作に逆らっている可能性があると、考え直す。
字と秀徳の宮地清志は幼馴染だ。
あれほど互いに戦うことを楽しみにしていた二人だから、字は原作には従わずきっと試合をしているのだろうと思い直した。
それはさぞいい試合が見れるだろう。あとで誰かに秀徳と霧崎の録画を見せてもらうとそこまで考えてたところで・・・

黒「あのぉ、ちょっといいですか?」
伊「ん?黒子?」

そこで黒子が何かに気付いたように、窓の外へと視線を向けた。

黒「えっと、なんか救急車のサイレン、近くないですか?」

伊「言われてみれば」
日「なんかうるせぇと思ったらそれか」

言われて耳を傾ければ、たしかに聞こえる。
いうなればその音はだんだんと大きくなっているようにも思う。
それが勘違いでない証拠の様に、会場役員たちが立ち上がって、扉の外へと駆けていく。
審判やベンチの中の部員が、不安げに視線をそちらに向けている。

降「というよりむしろ」
河「近づいてくる?」
黒「これはもう近いというより、会場の外から聞こえているようにも思えますね」

そこで火神に“まさか”という思いがよぎる。
火神はふと思い出したのだ。自分がしる花宮字と言う人物の欠点を。

花宮字は不幸体質である。
自分が不幸だと思うと、その周囲から死亡フラグやらが引っこ抜け周囲でラッキーなことがおこるという。 なんとも本人だけが不幸な体質だ。
ちなみにその体質は、しばし余波として彼の周囲にも届くので、近づきすぎては危険である。

つまり何らかの不幸が重なり、現状が原作そのもの(秀徳に二軍を充てる行為。ただし客席で霧崎レギュラーが誠凛の分析をする展開はなし)に進んだのではという可能性だ。

火「はは、まさかな」

思わず火神からは、ひきつった乾いた笑いがこぼれた。


しかし、実際は、その“まさか”だったりする。

実際、誠凛は気付いていないが、その横で行われていたコートの試合はあきらかにおかしかった。
霧崎第一は秀徳に対し、二軍をあてていた。
二軍選手らの物凄い必死さは伝わってくるが、霧崎第一にはレギュラーがいない。ベンチにも客席にもだ。
それにキセキの世代の緑のシュター様は始終ご機嫌斜めだった。



その翌日。
黒子と火神は、霧崎レギュラーメンバーに試合経過について聞こうと試みたのだが、霧崎第一のだれひとりとりとして、連絡が取れることはなかった。





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