07:悪 童 |
悪童の意味について悩む人。 悪童の意味を受け入れた人。 そんなふたりの、価値観の違いについて。 シリアス?シリアルにかえて食っちまったよ、アザナさんが(笑)――っと、いうおはなしです。 ※関西弁わからん(-"-;) ※字は基本、周りのすべてが子供に見えています。 ---------------------------- ++ side今吉 ++ 『は?“悪童”についてどう思うかって? 突然どうかしましたか?頭に虫でもわきましたか今吉さん?』 本(ちなみに英語でもない違う国の言語のものだ)を読んでいた花 宮に興味で尋ねた今吉は、怪訝げにしかめられた顔をみて若干顔をひきつらせた。 そんなどうでもいいことより、邪魔するなとばかりの強い視線に耐えられなかったのだ。 「ひ、ひどいわぁ。せっかく可愛い後輩を慰めてやろうっていう先輩のやさしさがわか」 『だまれカス。そもそもその名を呼ばれるようになったのは今吉さんが「いたずらっこみたいでかわええやろ」なんてほざいたからでしょうに』 「相変わらず口がわるいわぁ」 『オレより年齢が上にみえる方には、きっちり礼節はわきまえてるつもりです。敬語と丁寧語でもって応対してるじゃないですか?それのどこが口がわるいっていうんですか』 「花 宮。普通な、カスとか暴言がふくんだらそれはもう敬語ちゃうで。 あからさまに“こいつまじうっとうしいなぁ”みたいな、あきれ果てたような視線を向けられたら「礼節ってなん?」って叫びたくなるしなぁ。 心許した相手だからって、だまれってのはないでぇ花 宮。それはもう「礼節をわきまえてる」とはいわん。その段階でもう「礼儀がなってない」って一般的には言うんやで」 『そうですか。 それでなんの用です?』 あっさりしてるなぁ。と思うのはいつものことだ。 花 宮の口からこぼれ落ちる単語はきついものだが、当の本人は本当に読書の邪魔をされたことを軽くとがめただけだ。 それがわかっているから今吉も苦笑でもって言葉を返す。 会話が継続されたことで、花 宮は仕方なさそうに本を閉じると、今度は向かい合ってきっちり視線を向けて話を聞く体制になる。 そんな花 宮に、今吉はさらにこまったような表情を浮かべる。 「せやから・・その・・・花 宮は、“悪童”についてどう思おてんのかなぁって」 無冠の五将 “悪童”―――そう呼ばれるようになった頃のこと。 あの頃の花 宮は、ひどくあれていたから。 しだいにその“レッテル”に周囲の思考が呑み込まれて、花 宮を完全悪のごとき中傷する言葉が世間にあふれ始めた。 いつしか花 宮自身もそれを否定するのを諦めてしまったから。 怪我なんかさせていないのだと。違うのだと――その言葉は、悪意に飲み込まれ握りつぶされた。 かわりに彼らは口をそろえてこう言った。 「“悪童”ならやりかねない」その言葉に今吉は言い返えす言葉を失った。 同時に本人自身が“悪童”としてふるまうようになったから・・・。 「・・・後悔してん。わしのせいやって。 こんな風になるとはおもってへんかったから」 いたずらっこが可愛い。 そういう意味でなにげなくつぶやいた言葉が、ひとりの人間のその後の人生を変えてしまうほど影響力を及ぼすとは、思ってもいなかったから。 『当然でしょう』 返ってきた声は、予想外の言葉。 今吉が己の感じるがままにその言葉の意図を探ろうとするが、まっすぐに向けられた深い色の瞳に、嫌悪感やいらだちのようなものはうかがえない。 そこにあるのはただただ目の前の現実を見つめる凪いだ瞳。 『人間とはそういうものですよ今吉さん』 「はな、みや?」 『人間には未来を見通す力などない。周囲に妖怪サトリと言われようと、それはあなたがちょっとばかり人の感情に敏感なだけ。あなたは今吉翔一というただの人間です。 ただの人間であれば、ありのままの未来を見ることは不可能。後悔だってする。 そういうもんです』 「花 宮は、わしのこと許してくれるん?」 『?許すも何も何を言いたいのかが分かりかねます』 「だから“悪童”って呼び名のことや。 ・・・キセキとの試合で絶望したお前をわしはみた。そこからプレイスタイルがかわったんも」 『ああ。あれですか。 いや、そうよばれたときはさすがにびっくりしましたがね。自分の身長が低いから“こどもみたい”って意味で“童”ってついたのかって。 そりゃぁないだろうと、全人類を恨みましたねあのときは。オレより身長が低い奴らだっているのに、オレだけ「お子様」なんて言われ続けなければいけないのはなんて理不尽なんだろうと。 さすがのオレもね、あれにはイラッとしました。 へたしたら憤怒の炎がでるんじゃないかってぐらいブチッっときれました。 しかもタイミングよく身長が平均値をオーバーしてる集団“キセキの世代”なんてものが目の前に現れたもんですから、オレより身長の高いあいつらがにくたらしくて。 身長が高いからバスケには有利?下の者が負ける?馬鹿げてる。 ちびといわれるたびに、逆に彼らが得意なものでもってコテンパンにして、逆にあざわらってやりましたが。 それを荒れていたとか、プレイスタイルが変わったと評されるのは腹立たしいですね。たかが一時の逆襲にすぎません』 「ぎゃ、逆襲って・・・てか。え?まさか花 宮おまえ、ちびって意味で“悪童”って言われてると思とったん?」 『違うんですか? オレ、すぐに顔をしかめるらしいし、そういうときってかなり悪そうな顔をしてる自覚あります。どうせ前世からの悪人面です。だからの“悪”でしょう? “童”とは“わらし”。元来、この日のもとにおいて幼いこどもをさします。 オレはてっきりそういう意味だとばかり』 身長差について語る時だけ瞳にギラリと暗い輝きがよぎる。だが、それ以外に花 宮の態度はいたって変化はない。 “悪童”について語るときもなんでもないことのように言葉を紡ぐ。 そこに感情の揺らぎがない。 つまりこれは、真実そうであると思っている者の顔だ。 これは予想外の展開だ。 今吉は突如覚えた眩暈をこらえるように、頭を押さえた。 「まじか」 『ほかに何の意味があるんですか』 「・・・ジブン、“キセキの世代”ってなんでキセキって呼ばれてると、思うとるん?」 『なぜって。身長が日本人にはあり得ないやつらがせいぞろいしたから“キセキの世代”なんでしょう? そんなこと、ちいさなこどもだって知ってますよ。 平均が日本人の通常身長をオーバーしてますからね彼ら。ええ、とんでもない化け物達です』 不思議そうに。ただ純粋にそれ以上は考え付かないとばかりにキョトンとした顔を向けられ、今度こそ今吉は驚きに普段は線のような糸目を見開いた。 「有り得ん。ほんま待って。わし、頭がうまく働かんのやけど。いやまてまてまて。わしがきっと耳おかしくなったん。おかしないおかしゅうない。 花 宮ぁ。いまちょい、耳がおかしなってしまってな。ほなすまんのやけど、もう一度言うてくれん? 自分、なんで“悪童”ってよばれてるんやったっけ?」 『だから“身長が低くてこどもみたい”だからでしょ』 「!!!!!!」 『どうかしましたか先輩』 「ちょいまちぃ!!じゃぁ、試合に負けた後の悔しそうな顔とか!」 『試合に負けて悔しいとか思ったことありませんが?』 「は?え?キセキの世代との戦いの後のあれは?」 『今吉さんが言う、あれがなにをさすかはわかりませんが、身長が高いのがうらやましかったことはあってもバスケの試合の勝ち負け程度で、どうこう思ったことはありませんよ』 花 宮から徐々に紡がれる言葉と、優しげな表情に、今吉は思い出す。 「プレイスタイルが大きく変わったんは、なんなん?」 花 宮字という存在は―― 『子供はいずれ親の背を追い抜いていくもの。けれどそれまでは、親は子の見本でなければなりません。親というものは子供の成長に必要な壁です。 ですが、オレはキセキの世代に負けました。 試合で負けたということは、かわいい後輩たちが、オレという壁を超える成長をしたということ。 なら、オレは新しい壁となるべく、さらに強くならなければいけない。 子供の成長を喜ばない親はいないでしょう?それと同じです。幼い子供たちが、オレを超える成長を見せてくる。それに喜びこそすれ、ねたんだり悔んだりするのはお門違いです。 悔やむことがあるのなら、オレの努力が足りないままに試合をし、こどもたちに低い壁を苦労もせず超えさせえてしまったときですかね。 プレイスタイルを変えたのは、まだ親の背を追う子供たちが、より成長するための壁であるためです』 アカン。 こいつ、 ずれとったんや。 今吉の頭痛がピークに達した瞬間だった。 『ああ、でも。そうそうオレという壁を抜かさせはしません。かわりにオレを超えることができたら、いまよりもっと大きく成長していくこどもたちがみれる。それってすごい嬉しいことですよね』 それはもう地母神か何かのごとく慈愛に満ちた笑みを向けてくる花 宮字に、今吉が頭痛を感じてきつく目を閉じた。 突然頭を押さえて呻きだした今吉に、心配そうな表情をする花 宮に、今吉はガバリと顔を上げると、その細い肩をガシッとつかんだ。 そうして今吉は“悪童”の意味を懇切丁寧に教え、あげく普通の学生がどういう心理をしているとか、 いままでのお前のゲス顔はどこにいったんだと思考を飛ばしたり、先輩が後輩を育てるということの具体例をといたりしたのだった。 っが、しかし。 その、一般常識の数々をを語って聞かせたのだが、それが 功を奏することはなく。 『ひとはひとだろ?オレはオレの価値観があって』 「いや!だから常識というものは、暗黙のルールでなぁ。なぁ、花 宮。たのむからジブン、わしの言葉にも耳を傾けてぇな」 『ちゃんときいてるだろ?』 「もうこいつやだ。わし、泣きそう」 雑誌に“悪童”ってかきかたされて、それで花 宮がどこぞの生徒との間で起こした事故がきっかけで、“悪童花 宮”がパッシングされて。 花 宮のプレースタイルが変わって。 わし、めちゃくちゃ後悔してたんよ。 花 宮にわるいことしたなぁって。 なぁ。たのむ。 だれか、このずれた話を軌道修正したって。 いや、むしろ、わしの純情な心返して。 『ところで今吉先輩。そのめ「もうアカン!まじかんべんや。もういやや!!それ以上はなさんといて!」・・・よくわかりませんがわかりました。ところで今吉先輩ひとつだけいいですか』 「な、なん?」 おてやわらかに頼むで。と引きつった顔の奥、声には出さないがその心の底からの叫びだった。 次は何を言われるのだろうと警戒していた今吉に落とされた言葉は―― 『もう本読んでもいいですか?』 今吉にとってあまりに無情すぎたその言葉に、今吉の理性が限界に達した。 「助けて宮地くん!!!!」 こいつマイペースすぎだろ!! パニックになった今吉が、花 宮字の保護者である同い年の蜂蜜色の青年の名を叫んだのは、仕方がないことだったかもしれない。 :: オマケ :: いつから"それ"がそこにいたとかどうでもいい。 むしろ最初からいたようでそうでないことぐらい今吉は理解していた。 今吉は思った。 「・・・!? わし。わし・・・きっと頭おかしくなったんやな」 『どうしました今吉さん』 "それ"がさも不思議そうに小首をかしげる。それは今吉の後輩と同じ瞳の色をした白い狐だった。 ふわりとひろがるのは一本では飽き足らず数本あるしっぽ。 目の前の可憐な生き物を前に、今吉は肩をぶるぶるふるわせた。 それが怒りか悲しみか絶望かは定かではない。 「ジブン、なんなん!?」 『花 宮字ですよ』 「“花 宮字”は人間や!!」 『ああ、中学の時にもう気付いてるかと思ってました。自分、姿を変えられるようなんです』 「んなわけあるかいぃ!!!どんな生き物も生まれた時からそれ以外の生き物に指ぱっちんひとつで変わるなんてありえへん!!ああ、このご時世にまさかの狐憑きっちゅーやつか?それとも化け狐が化けているとか?」 『失礼な。人間ですよ普通の。ただちょっと幻術が使える程度で。ほら』 パチン 花 宮のスナップひとつで、先程まで話していた麿眉が特徴的な小柄な少年が現れる。 「・・・・・・のぉ、花 宮。 まさかと思うけど、ジブン、そんなミラクル体質?いや、術を使えるからって。あーいや、もうこのさいお前が悪魔憑きとか化け狐だろうがなんでもえええねんけど・・・いや、ないとは思うんよ。けどなぁ、ちょっときくけど、人間と狐の差ぁわかるよなぁ?その狐の姿で出歩いたりしてへんよな?」 『あ゛?今日の今吉さん頭本当に大丈夫ですか?ってか今吉さん相手なら、礼儀作法とかもうどうでもいいですよね。 普通に親も清志も学校も知ってますが何か?』 「あかーん!こいつあかんわ!!!」 『周知の事実だから問題ないだろ?』 「大ありや!!! このご時世白いきつねだからと拝まれたりはせぇへんのや!野生の狐は病原菌がウンタラいいう理由でみかけたらすぐ通報せなあかんのやで。山で狩猟狩りにうっかり撃たれたらどないすんねん!人間と動物の差と、野生動物に対する法律をなびなおし花 宮!!」 本当にまじでアカン。 狐以外もかわれるのはわかったから!本当にもう十分よぉーわかったから! 指パッチンやめぇぇぇ!!! 紫色の霧だか炎だかが、キラキラ光って、ふわってひかってさ!どっかの魔法少女みたいな、変化のしかたなのに。 なんで服ごとかわらんの!? 変化のしかたはいかにも魔法なのに、服ごとじゃなくてお前の身体だけなんや!! そこに気付けやアホ宮ぁ。 あと本当に保健所とか狩猟とかに気を付けたってな。 って、めっちゃ話ズレとるやん。 「ジブン、頭ええやん!!霧崎にいくぐらい頭ええんやろ!!なんでいろいろボケてんの!!」 急募!!だれかこの脳みそ花畑で埋め尽くしてそうなズレた後輩の頭治したって!!!! わしには無理や! 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