有り得ない偶然 SideW
-クロバヌ 外伝-




04: 花が咲くとき
※捏造設定

【花宮 真咲 (ハナミヤ マサキ)】
・花宮母
・名家のお嬢様のような優雅な仕草
・背が高いきつめの美人
・黒髪がさらさらロングストレート
・愉快犯
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ずっとずっと待ち望んでいた子。
女の子でも男のでもいいように。
でも私の名前と旦那様から一文字ずつ取って――「真琴(まこと)」そう名付けようと思っていたの。

でもね。

その子を見た途端、「どえらいものを生んでしまった」と思ったものよ。
なぜそう思ったのかは今でもわからないのだけれどね。


「はじめまして、“アザナ”」


生まれたばかりのその子を抱き上げた瞬間、脳裏をよぎったのは、一つの文字。

“字(アザナ)”。

名前を呼べば、自我もないはずのその子は見えない目をうっすらと開けて笑った。
ああ、やっぱりこの子は “字” なんだって、そのとき強く思ったの。

本当は「まこと」という名前にするつもりだったのよ。
でもその子をみたときに、この子は“字”以外有り得ないと思ってしまったの。
それは旦那様も同じだったようで、誰の異論もなく生まれた子供は“花宮 字”となった。





++ side花宮母 ++





『おっかぁ、しゃ』

あの子が生まれて、ことばを覚え始めた。
うちのこ可愛い!
私そっくりの黒い髪とかツヤツヤで。
くるっとした丸い大きな目がもうキラキラしていてすごいかわいい。
すっごいかわいい!
何度だって言うわ!すっごいかわいい!!
ああんもう!この子が女の子だったらもっと可愛いに違いないのに!でも男の子でもいい!可愛いからいいのよ!
深琴(みこと)さんに似た麿眉がかわいい!!

ちょっと深琴さん!深琴さんはやくカメラ!!

『ぁしゃ!』
「はいよくできました。アザナさん、いい?「おかあさん」ではなく「おかあさま」と呼んで頂戴ね」
『う?おかっしゃ?』

くびかしげてるうちの子カワイー!!
そうしてお母様とお父様って呼んでもらうの。なにその幸せすぎる展開。
よし!もっと。もっと私を呼んでちょうだいアザナ!!

イケメンに育ってね。可愛く育ってね。頭がイイコになってくれるといいわね。
いつか私に恩を返してね。
大きな一軒家を買って、犬も飼うの。
老後は一緒に住んでね。
ここからはじまる理想の息子計画よ!これぞまさに紫の君育成計画?
こどもってイタズラとかいっぱいするって聞いていたけどどんなことをしでかしてくれるのかしら。
存分に自由気ままに生きなさい息子よ!
どうか私をたのしませてね。 ついでに反抗期とか早めにお願いね!
ああ、いまから先が楽しみだわ。

っと、その前に!
一番にこの子に名を呼ばれるのは私よね?!


「アザナさん、もっと呼んで!!お母さまよ!」


「このまっくろさきがぁ!!!

スパーン!!

いたいわ。
なにするのよもう。


雄たけびが聞こえて、そのまま頭に強烈な一発を食らった。

やだもう痛い。この痛みは、清子さんのハリセンね。
もう頭をたたいたりするから、せっかくの編みこみがみだれたじゃないの。
ひどいわ。

だからとっておきの笑顔で振り返る。

「あらなぁに。清子さん。今日もいいお天気ですわね」
「今日は朝からずっと曇りよ!!
嫌な予感がしたから来てよかったわ。なにこどもにおかしな洗脳してんのよあんた!」

ッチ。
ばれたか。

まったくせっかくの家族水入らずになんて邪魔を。

「あらまぁ、なんのことですの?」
「この猫かぶりが!!」

片腕にしっかり清志君を抱きかかえながら、その反対の手にはハリセンとか、宮地清子。やるわね。

「あ。みゃーじのお嫁さんこんにちは〜。みてみてウチの子、 “おかあさん” って言えるようになったんだよ」

「いや、待てミコっちゃん! “ママ” とか “はっぱ” とかふっとばして “お母さん” ってどんだけハイレベルよ!? うちの清志だってそんな流暢になるまで結構かかったんだからね!!生まれて二週間ってどうなの!?お前んちのは洗脳っぽいから!やめよう!マジで奥さんとめろよ深琴ぉ!!」

「あらぁ広樹さん。余計なこと言わないでいただけるかしら?わたしが毎日毎日毎日どれだけアザナさんに話しかけていたと思っているんですの」

「やっぱり洗脳か!このまっくろさき!!」
「みことぉ!!!あっちゃんが危ない!アザナちゃんがあぶないから!!」

騒がしくだかだかと勝手に家に入ってきたのは、近所の宮地夫妻だった。

髪を染めて明るく見せている奥さんが、 宮地清子(みやじせいこ) さん。
それにしても 宮地清子 は、 “セイコ” なんて可愛くて可憐そうであざとそうな名前のくせに、元ヤンでもなければまっとう純情イイコちゃんなんだから驚きよね。

地毛自体が色の明るい髪を持つ方が、旦那さんで、 宮地広樹(みやじひろき) さん。
彼は私の旦那様が高校からの友人らしいわ。

宮地夫妻と会ったのは、私が花宮深琴、つまり旦那様と結婚してからのおつきあい。
宮地さんの旦那と私の旦那様が同級生だったことが縁で、こうして仲良くしてもらっているの。

ふたりともとてもいいひとよ。
清志くん、かわいいし。

でもたまにこうして私の崇高なる育成計画の邪魔をするのはいただけないわね。

そうそう。わたし?サキって名前じゃないわよ。
花宮真咲(はなみやまさき)。
花宮家にとついできたものだから、苗字と名前が一体化してちょっとおかしな感じでしょう。
かわいらしいからいいと思うと言ってくれたのは、深琴さん。
だから私の家の苗字ではなく、深琴さんの苗字を名乗ることにしたのよ。

ちなみに皆様誤解なさっているようね。
私、別に華族や旧家の家の人間なんかじゃないわ。

髪は染めるのが面倒だし痛んだら嫌だから染めてないだけで、大和撫子を目指してストレートなんかじゃなく、ただ癖がないだけだもの。
言葉遣いは・・・こっちの方が面白いかと思ってやりはじめたのがきっかけね。
幼いころからこういう口調だったものだから、いまとなってはただの癖ね。
この口調で、ニッコリ笑ってやれば、大概ことが思い通りに動いたから。

でもなぜかしら。
この旦那様の友人だという “宮地広樹(みやじひろき)” の妻である “清子(せいこ)” だけは、はじめから私の猫かぶりに気付いていやがったの。
おっと、口がわるくなってしまったわ。
だから彼女は腹黒いとかけて、わたしを “まっくろさき” と呼ぶわね。
言い得て妙だけど、その通りだと思うから否定したことはないわ。
そもそも大概は、その意味などわからない者ばかり。だから周囲にその名を振られても気にする様相もないのだけど。
そして彼女は、私は、私の頭が人より頑丈だということを存分に理解したわ。
私がなにかしようとするたびにハリセンでパカパカなぐるんだもの。

いやねぇ。
まったくセイコさんったら。
ツッコミが得意すぎて。
漫才師がお似合いよ。
・・・なぁ〜んて言うわけないけど。

でもあまりにいいタイミングでわりこまれてばかりだと困るのよね。
私の紫の君計画がおじゃんじゃないの。
いいえ、まだよ。
まだあきらめるには早いわ。
そうよね。なんたってまだアザナは生まれて二週間だもの。

まだこれからよ!



まぁ清志くんはセイコさんに似なくてよかったわねぇ。かわいい。
ちょっと髪の色がずいぶん垢抜けてるけど。
しかたなわいよね。広樹さんってば、元が金色に近い淡い色の髪だものね。清志くんはどんな子に育つのかしら。
たのしみねぇ。
きっと将来は、ジャニーズ系になりそうよね。
うちの子と並ぶとけっこういいかんじに花があってよさそうよね。

「やだ悪寒が!・・・まっくろさき、あんた今なにをかんがえたの?」
「心を読まないでちょうだいよセ・イ・コ・さ・ん」

私が彼女をヨミガナっぽいほうの名前で呼ぶのが嫌味だと理解していて顔をしかめるセイコさん。
ええ、そうね。私のおなかの中はきっと真っ黒よ。
それがどうかなさって?





「相変わらずお前の嫁さんこえぇよ。美人な分、余計怖いわ」
「え〜そう?俺の奥さんが腹黒いのはいつものことでしょう」
「・・・訂正。理解してなお、怖くないと言い張るお前がやっぱり一番こえぇわ」








:: オマケ ::

数年後。

咲「アザナ、彼らはだぁれ?
さぁ、こういうときはなんて言うのか教えたわよね。できるかしら?」
字『はぁーいできぅ!みゃーパパ。みゃーママ、です!』

広セ「「ぶはっ!!!!」」

咲「どうかしらウチの子」

セ「ぐぅっ!!まっくろさきの子がかわいい、なんて・・!!」
広「麿眉でまろっとしててぽにっとふにゃっと・・・ちょ!まじカワイイんですけど!!!よくやったミコっちゃん!!」
咲「深琴さんよりアザナさんをほめなさい!うちの子、頭いいのよ!」

咲「ふふ。これでわかっていただけたかしら。
わたしが念密に立てた《幼いころからの息子育成計画》の素晴らしさを」
セ「あんた、本当にどんな育て方する気よ?いや、かわいいけど。可愛いけど!!!」
深「みゃーじたちを取り込むために、かわいらしい言い方を教えるなんて。うん、アザナ、すっごくあざといねぇ。
でもそんなウチの子かわいいなぁ」
広「ミコっちゃん、お前ぇ・・・」





字『きょーにぃあそぼぉ!(うちの家族って騒がしいなぁ。親ってこんなもんなのかなぁ?)』
清「おう!俺たちはあっちいってような(……俺がしっかりしないと!大人は信じちゃだめだ!!)」











↓以下 捏造設定

【花宮 字 (はなみや あざな)】
・転生を繰り返す 夢主1
・転生しすぎで、思考回路がおかしい

<呼び方>
母→母さん
父→父さん
清志→きょー兄、きよし
宮母→きょーママ、せいこさん
宮父→きょーパパ、ひろきさん





【花宮 真咲 (はなみや まさき)】
・長身のすらっとした美人
・ストレートの長い黒髪
・優雅なふるまいに常に丁寧な口調
・みかけはどこぞやのお嬢様
・したたかで、腹黒い
・中身は愉快犯にして確信犯
・いつもにこにこ笑顔を絶やさないポーカーフェイスがうまい
・本当は子供が生まれたら「真琴/マコト」という名前にしようとしていた

<呼び方>
字→アザナ、アザナさん
夫→旦那様、深琴さん
清志→清志くん
宮母→セイコさん
宮父→広樹さん





【花宮 深琴 (はなみや みこと)】
・長身、細見
・ほぉわ〜っとしている
・マロン系の髪色。たぶんほわんとしている
・奥さんが腹黒いのもすべて理解していいる
・つっこむこともなければノリにのることもない。ひたすら自分を貫くマイペース
・宮地家をひっくるめて「みゃーじ」と呼ぶ
・宮地父の学友
・でも愉快犯その2

<呼び方>
字→アザナ、アっちゃん
妻→奥さん、マサキさん
清志→キヨくん
宮母→セイコちゃん
宮父→みゃーじ、ヒロ君





【宮地 清志 (みやじ きよし)】
・字より一年早く生まれた宮地家長男
・将来ジャニーズ系イケメンになれと真咲に念を向けられている
・真咲の手から逃げろ清志!!
・幼いころから両親たちのコントを見てきたせいでスルースキルが半端ない

<呼び方>
母→お袋
父→親父
字→アザナ
花母→おばさん、真咲さん
花父→おじさん





【宮地 清子 (みやじ せいこ)】
・同じ年ごろの子供がいたことで仲良くなったママ友
・真咲というお嬢の中身が真っ黒なのに、辟易している
・なぜ家が近くなのかずっと後悔している
・家族と花宮間であれば、殴り合いぐらい敷いてもいいと思っている
・かなり強気でまっすぐなひと

<呼び方>
清志→清志
夫→広樹
字→アザナ君
花母→まっくろさき、真咲
花父→花宮君、深琴君





【宮地 広樹 (みやじ ひろき)】
・花宮父と高校の同級生
・むかしからの苦労性だが、いたって平凡でふつうなひと
・ちょっと強気というか明るい性格
・髪は明るめの茶色でほとんど金茶色。短髪

<呼び方>
清志→清志
妻→清子
字→あっちゃん
花母→マサちゃん
花父→ミコっちゃん、深琴





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