有得 [花悲壮]
+ 花火の怪奇日記 +
04.怪談と駅と釣り
【黒い手】どこだここは?【駅】
1 ななしの迷子
山ん中の合宿にて。
夜に肝試しをしていたら、突然着信音が鳴り響き、黒い手みたいなのにひっぱられた。
気付いたら知らない駅にいた。夕焼けとか意味わからん。
今、しらない駅にいる。誘拐犯まじ轢く、埋める。
そのためにもまず帰ろうと思う。
帰りの路線教えろ。
2 ななしの迷子
2ゲット!
3 ななしの迷子
3ゲット!(。+・`ω・´)bドヤァ
(「゜Д゜)「{フハハハ!! だれが2など狙うか!
4 ななしの迷子
あ、ああ、うん。
2と3おめー
5 ななしの迷子
うん。言葉も出ないよ。とりあえずおめでとう
6 ななしの迷子
なんだと!?プギャーm9(^Д^)9ができないだとぉ!!
やるなこの2と3!!!
おめ!
7 ななしの迷子
みんなおめでとー!ヽ(^。^)ノ
8 ななしの迷子
おいこら、祝ってんじゃネェよ!
俺らのこと放置とかふざけんな。パイナップるなげんぞ!!
ここの駅はどこだって聞いてんだよ!!
何線だこれ?
つ【きさらぎ駅とかかれた駅の看板】
9 ななしの迷子
ん?
10 ななしの迷子
お。なんかきたなーってか8は1か!?
スペよこせ!!
あとコテつけろー。わかりづらいわ
きさらぎ駅・・・だとぉ!!!!!
11 ななしの迷子
きさらぎ駅。マジか!?
12 ななしの迷子
ああ、わかった!これ、釣りか。
よくできた駅の写真だけど、やめろよなー。そんな駅ないなんてわかってんだからな!
解析班よんどけよwwwww
13 ななしの迷子
え?ごめん。何が映ってるの?
14 ななしの迷子
真っ黒い写真じゃん。
なにこれ加工?釣りかえれやー
15 ななしの迷子
・・・・・・
16 ななしの迷子
・・・なんか12と13・14の会話、かみ合わなくね?
17 ななしの迷子
あれ?
18 ななしの迷子
え?
19 ななしの迷子
ってことは、まさかこれまじなのか?
見えてないやつと見えてるやつがいんの?
20 ななしの迷子
なにそれこわい。
21 ななしの迷子
とりあえず見てると思うやつは、アップされた写真の内容をこの場で言え!
22 ななしの迷子
「きさらぎ駅」と書かれた看板に、赤い空、古びた田舎の駅の写真じゃ・・・
23 ななしの迷子
え。うそ。なんにも見えないよ(汗)
24 ななしの迷子
22の言ってるものが見え・・・ない奴挙手!
25 ななしの迷子
ノ
26 ななし迷子
ノシ
27 ななしの迷子
ノ
28 ななしの迷子
ノ
29 ななしの迷子
ノ
30 ななしの迷子
ノ
31 ななしの迷子
ノ
32 ななしの迷子
こんなに!?
33 ななしの迷子
そいつら零感だ!?
34 ななしの迷子
わたしには22が言っていた光景が見えるんだけど・・どういうこと!?
35 ななしの迷子
みえるってことはじぶんには、霊感あったのね・・・
なんかしりたくなかった
36 ななしの解析班
さっきの写真、加工とかしてないみたいだな。
ちなみに俺は真っ黒にしか見てない。
どれだけフィルタ処理を消しても22が言っていたみたいな光景は出てこないんだが。
37 ななしの迷子
・・・
38 ななしの迷子
まじか
39 ななしの迷子
うそぉん
ねぇ、おれどうしたらいい?見える人はとりあえず塩装備すべき?
40 みゃー兄
会話の流れを切るようで悪い。
コテはこれで。
よくこれで弟の学校の奴らにそう呼ばれてるから、メンドクセーこれで。
えーっとスペってのは自己紹介みたいなのを書けばいいんだよな?
みゃー兄…DK3、口が悪い。弟がびっくり箱みたいな存在なので、そんじょそこらのことじゃゆらがねぇと自分では思ってる。
みゃー弟…高校2年、みゃー兄の弟分。普通じゃみえないものが“視える”。非常識。ずれた思考回路のびっくり人間。怪異に巻き込まれるのではなく、本人が怪異っぽい。
八百屋息子…DK3、同じ部活の仲間。八百屋の息子。一緒に巻き込まれた。いまこいつにクロチャンの使い方教えてもらってる
おは朝野郎…DK1、同じ部活の長身。たぶん一緒にこの怪奇現象に巻き込まれてる。おは朝をよく見て占いを信じているので、塩ぐらいもっていそう
笑袋…DK1、同じ部活。たぶんこの怪奇(以下略)。おは朝野郎の相方。笑い上戸
41 ななしの迷子
ぅお!?コテ!ようやくきたか!!
42 ななしの迷子
ミャーズブラーザズか。うん。なんか良い響きだ
43 ななしの迷子
和むわ〜
44 ななしの迷子
弟さん呼べ。
見えるってことは本職だろ?
そうじゃなくても対処してくれそうじゃん
45 みゃー兄
よく読め。
非常識なんだよあいつ。
そもそもあいつじたいがびっくり箱み
46 ななしの迷子
ん?どうした?
47 ななしの迷子
みゃー兄?
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
【 side 花 宮 成り代わり主 】
現在オレこと花 宮字と、黒子テツヤ、●● ●●●は、古びた木造の校舎の中をひたすら歩き続けている。
会話をするうちに、互いに共通点は「着信」であると知った。
黒子は、緑間真太郎から。
オレは、宮地清志から。
●●●は・・・
彼女は、うん、まぁ、あれだ。
残念ながら「着信」のなかった彼女は、ただの巻き込まれだ。
「着信」を受けていない女もこの世界にいるのは、黒子がひきずり込まれるときに●●●が火神にだきついていたためらしい。
もともと黒子が、異世界に連れ込まれようとしていた。
そこへ黒子を助けようと火神が手を伸ばした。
●●●はその火神の腕をつかんでいた。
そのことから、黒子(ターゲット)の肌にも触れていると、連結電池のようにターゲット以外の対象も引きずり込まれるらしい。
結局のところ、●●●は怖がるふりをして火神にだきつき、そのせいでこの世界に彼女まできてしまったということのようだ。
ここですべての切っ掛けが「着信」であることが判明した。
話を聞いていて、オレはなんとなく「着信」の仕組みを理解した。
あの電話は、怪異にターゲットとされた者を示す。
そしてターゲットが口に出した名前の相手が、次のターゲットとなる。
そして「着信」は現世に道をつなげる手段。受信ボタンをターゲットが押すことで、異界との入口が開く。
たぶんそういった仕組みなのだろう。
誠凛組は、●●●がターゲットではない。
聞いた状況から判断するに、ひらかれた異界から延びた手がまずとらえたのは黒子だったというから、たぶんターゲットは黒子だったに違いない。
●●●と火神は、取り込まれる対象者に触れていたがために、ターゲットでないにもかかわらずこの世界に取り込まれた。
そう考えると、すべてつじつまがあう。
オレでいうなら、古橋。
黒子でいうなら(ここに●●●がいるからには)火神も該当しているだろう。
そうして、オレらは、“なにか”に引きずられ、この世界に来てしまったというわけのようだ。
しかしどうやって帰るのか。
ようやくこの世界に来た理由が分かったところで、かといって帰る方法はさっぱりのままだった。
* * * * *
そういえば。
誠凛二人はともかく、オレの自己紹介はまだだったな。
そういうことで、改めて自己紹介をした。
花 宮字(ハナミヤアザナ)。
霧崎第一高校の二年、バスケ部主将。
だがしかし。どうも黒子にも騒がしい女にもオレの声は届いていないようだ。
このメンバー唯一の紅一点、彼女の名は●● ●●●というらしい。
影が薄い(らしい)水色少年は、その彼女の同校の一個下の後輩である。
オレとしては、彼女の名を今回初めて知ったが、相手は俺のことを知っているようだ。
そして彼女はやたらと、オレを敵視し、あげく《花 宮
真》と名をフルネームで連呼してくる。これは水色少年もしかり。
が、しかし。
何度も言っている気がするが、オレは《真》という名前ではない。
現に、繰り返して名前に訂正を入れるものの、黒子もこの女もまったく聞きゃぁしない。
むしろなんらかの事象が働き、名前がきちんと彼らの耳に届いていないといった方が、納得できるかもしれない。
●● ●●●。
誠凛高校二年生。
バスケ部マネージャー。
金色だか黄色だか表現しがたい長い髪はお団子を重ねたような盛りに盛ったようなツインテールが特徴だ。
ひたすら周囲をメロメロにする惚れられ体質。
正確ににはこれ、こいつの能力である"魅了"が働いている気がする。おかげで幽霊や怪異の類までこの女についてきやがる。
教えてやる義理も何もないので言わないが。
あとたまにこいつの言動がおかしくなる。神様がどうの、または自分こそが神だとも言い出すしまつ…これは自分の魅了を鏡で見たあげく、その魅了にかかってしまってとちくるったパターンなきがするので、ため息しか出ない。
自業自得もほどほどにしてほしい。
その団子を重ね合わせたようなツインテールをバッサバッサゆらす女は、目の前の物体を見て、超音波のごとき甲高い奇声を上げた。
夢「イ、ヤァァァァァー!!!!!!!」
花『うるせぇ、だまれ』
黒「ああ、なんてこと。またアレが増えてますよ」
●● ●●●は、別世界からきたトリッパーらしく、この世界に来る前に神様とやらに“誰にでも好かれますように”と願ったらしい。
ここでいうこの女の考えは、ぞくにいう原作キャラクター全員をしめしていたらしいが、
神様というのはどこの世界も変わりなくおおざっぱなものらしく、本当に“誰にでも”好かれるようになったのだ。
おかげでこいつの側にいると、どんどんこいつのことが好きでたまらなくなり、しまいにはこいつの言うことは絶対であり、彼女の言に間違いはないと思い込むようになる。
ここまできたら、それはもう好かれる体質などではなく、ただの洗脳である。
いまとなっては誠凛(-火神)が、彼女の虜になっているのが現状だ。
目の前にいる黒子も●● ●●●の虜になっていたひとりで、
オレと出会った当初は、それはもう●●●の言葉をうのみにして、
オレを悪童と言い続け、今まで一度も会ったことがなかったはずなのにオレは黒子の中で悪役にされていた。
っで、その●●●だが。黒子たちをつれこんだ怪異現象に巻き込まれ、この異世界にやってきたわけだが、
彼女の「火神君抱いて」という寝言を黒子がたまたま聞いてしまい、以降若干黒子が●●●を避けるようになった。
黒子の場合はどうやら自分の相棒の身を心配するあまり、彼女の洗脳が弱まったようだ。
その珍事の前までは、黒子もやたらと●● ●●●をかばう言動をしていたのだが、今となってはそれは昔の話。
はためにはわかりにくいが、時間経過とともに
黒子は●● ●●●を突き放す言動をするようになってきいた。
――そして、この異空間の中でわかったことだが、●●●の“誰にでも好かれる”という体質は、なにも人間だけが対象でないと判明。
なんとその対象が、本当に“誰でも”であったのだ。
ここは人型やら影のようなものがうごめく異世界。
だが、●● ●●●がいると、その怪異たちが寄ってくるのだ。
ちなみに●●●の声にさえ怪異たちは反応する。
たとえば●●●の存在に気付いていなかった怪異も、彼女の声が届けば、誘われてやってくるとか・・・。
そして、このメンバーで困ったことがさらに発生した。
オレの転生仲間にして魂の同郷である火神大我もといレイの相棒である黒子テツヤは、非情に存在感が薄いらしい。
オレは基本的に物に流れるオーラや気配、生来の勘のよさで、物事を確認していることの方が多く、この目はときに普通では見えないものも認識してしまうため、
目で物事を判断する割合が低く、ひとがいう「影が薄い」というのがいまいちよくわからないが、それは事実のようだ。
あまりに影が薄いせいで、黒子は怪異にさえも気づかれずスルーされていた。
かくいうオレは、転生を繰り返してきた分魂の積み重ねた年季がハンパナイらしく、殺気を向けるだけで怪異はひるんで逃げだしていく。
怪異のなかに取り込まれたにしては、明らかにおかしいメンツがそろってしまった。
怪異を呼び寄せる女。
怪異にさえ気付かれない男。
怪異にさえ逃げられるオレ。
個性豊かなのがまた三人まとまったようで。
このすさまじいメンツでどうしろというのだろう?
せいぜい囲まれて怪異に取り込まれそうなのは、●●●ぐらいであろう。
ただこの世界の怪異は、触れるとダメなようだ。マイナスの感情や記憶を引き出され、心を乱されるので危険だ。
そのまま心神喪失していると、影に取り込まれてしまう。
これはオレと黒子が実体験しているので言えることだ。
まぁ、黒子は影たちに気付かれることさえないし、オレも気合を入れればよけることは可能。
やばいのは能力一つなく怪異をホイホイするこの女ぐらいだが。
そこはそれ。
オレが転生して者一緒にいてくれるロジャーさんが、●●●にはりついてなんとか怪異からの影響をおさえてくれているのが救いだろう。
* * * * *
この異様な世界に来てからオレは、まず黒子と合流した。
その途中で、意識がないままにぶったおれていたこの●● ●●●という女を拾ったのだ。
この女は俗にいうトリッパーというやつで、しょせん夢女というイレギュラーである。
そんなわけでこの三人で今は行動しているが、確実に他にもこの世界に“巻き込まれた人間”はいる。
オレの尋常でない正解率の高い勘が告げるのだから間違いない。
オレたちは、とりあえずその他の奴らと合流しようということになった。
しかし世の中層上手くいくものではなく、携帯をいじってみてもメールもLINEもネットも電話もつながらない。
連絡手段に関しては、あきらめた。
そうしてこの世界の唯一らしい建物の中に向かったのだ。
建物の中に入れば即、怪異とひともんちゃく
(嫌な過去のトラウマを見せてきたので、八つ当たりに怪異を殴って、燃やして、
惨殺したわけだが。
生き物?を滅したという物的証拠はないから、これはきっと犯罪ではない)
あった。
そのあと、オレたち三人は、他の仲間を探して校舎を散策した。
影とのおいかっけこ。そのとちゅう、「のどが渇きました」とぐったりして歩みを止めた黒子に、
たまたま手にしていた(なぜ無事だったのかは不明。たぶん顧問の執着のなせる業ではないかと思う)バニラシェイクを手渡し、
自分はコーヒーを飲む。
そのせいか黒子が少しなついた。
オレへの態度がほんのわずかばかり優しくなった。
現金なガキだ。
ちなみに●●●の分の飲み物はない。
オレの手は二つしかないのだから、手にしていた飲み物が二つしかないのは当然だ。
ここは怪異が作り出した異世界。
ならポイ捨てしても現実には影響ないよなということで、オレは飲み干すと缶を――
花『どっりゃぁ!!!!』
黒「おーさすが“五将”!みごとな的中率ですね!!」
人型を取ってにじり寄る怪異に投げつけてやった。
現実では、ゴミのポイ捨てはいけません。
ガッ!!という激しくなにかが衝突する音と、「きゃー!」という悲鳴じみたノイズのようなものが聞こえたがしるか。
●●●が目を覚ます頃には、オレの手に缶コーヒーはなく、黒子が手にしていたバニラシェイクしかなかった。
運がないことに、黒子が飲み終わる前に、●●●が目を覚ました。
そして黒子のシェイクをみると、彼女はけしょうでベッタリした睫毛をザサザサゆらし、目をうるませ、上目づかいで――「自分も喉が渇いた」と、●●●は黒子のバニラシェイクを羨ましそうに見ていた。
ボソリと「黒子君と間接キス」なんてつぶやきが聞こえた。
そうして甘えるようなしぐさで黒子にバニラシェイクをねだったのだが、
黒「これ、ここらに落ちていた奴ですよ?
なにが入っているかわからないので毒見をしていたんです!
●●●先輩を危険にさらすわけにはいきませんから!!」
っと黒子はドキッパリ言って、ズゴゴゴーとバニラシェイクを吸っていた。
●●●はそれに青い顔をして、「こんな場所にあるものを口に入れるなんて正気じゃない!」と甲高い声を上げ、
黒子に「そういうことなら身代わりになってくれてありがとう」とちょっとひきぎみにバニラシェイクをみながら礼をのべていた。
身代わりって。そのお前の発言もどうかと思うが。
それより黒子よ、お前・・・。
いや、オレは何も言うまい。オレは今、空気である。
二人の誠凛コンビのそのコントを真横で見ていたオレは始終無言を貫いた。
知らないって素敵だなと思った。
そしてそのときオレは、黒子のバニラシェイクへのすさまじい執念をかいまみた。
花『飲まなくて正解だろ。
そんなあまったるいもん飲んだら余計に喉が渇く。
ここから逃げるためにも体力は温存しておいた方がいいからな』
黒「そうですよ●●●先輩!だってこれすごく苦いんです!!
これはバニラシェイクの容器に入った梅干しのような!!!
ああ、やはりこれは毒か!?
安心して下さい!
僕には耐性があります!!
ああ、本当に●●●先輩が飲まなくてよかった。
僕、●●●先輩が無事でうれしいです!!・・・・・なのでこれは僕が全力で責任もって処分させていただきます(ズゴゴゴー)」
夢「ど、どく!?」
花『苦いのに・・・梅干し?』
どんな味だ。
梅干しはスッパイだろうが、そう突っ込んだオレに、黒子は古橋並みの無表情のままに、こっちまっすぐ見つめてくると、言った。
黒「そうですね。どんなといわれれば・・・」
そのあとは梅干しにどれだけ塩分を入れて何年放置するとどれだけ苦くなるかを切実に黒子は語り、
オレは200年たった梅干しは果肉が風化して種だけになって味も何もしないんだと言ってやった(実話)。
黒い影に追われて、逃げながらどこか避難できる場所はないかと校舎内を彷徨う。
外から見たときは、この建物は二階建ての木造校舎でしかなかった。
なのに、歩いても歩いても先が見えないのはなぜだろか。まぁ、そりゃぁここが怪異の腹のなかだからってのはわかる。わかるが原理が気になっただけだ。
無限に続きそうな廊下。
たまに工作室やら音楽室やらの特別教室を目撃したため、ここはそういった実習棟なのだと判断する。
だがその教室の一個一個の距離が半端なく遠い。明らかに100m以上は走った後に、ようやく次の教室が見える。
その間に一度も普通の黒板やら机のある教室はなかったことから、ここは実習棟というのは確定した。
その証拠に、窓から見える外、空は相変わらず真っ赤だが、そのガラスの向こうに、もう一つ木造の建物が視界にとまった。
奥には体育館もあるようだ。
まずはと、影をまくべく三人で、一番手近の扉を開けた。
ガララ!勢いよく開けた扉の上を見れば、すれきった消えかけた文字で、《工作室》の文字。
そこにあったのは・・・
「「『・・・・・・』」」
宙を飛び交うのこぎり、金づち、釘、木の板、エトセトラ。
工具たちは、腐った死体を切り刻んでいる。
その切り刻んだ物体を釘でつなげたりしている。
きるなら木の板だろうと思うが、木の板が工具を動かしているように見える。
木材の逆襲か?人間が逆にやられてるぞ。
きられているのは、死体、もといゾンビだ。
死体は自分の身を痛めつけていく工具に悲鳴を上げながらも、笑いながら血をふりまいている。
ピシャン。
花『なぁ、黒子。うちのサボテンに花が二つ咲いたんだよ。ポ○ケモンのマラカッチみたくね?』
黒「サボテンに花って珍しいんじゃ?よく咲きましたねー」
ドサリ。
青い顔をして気絶して廊下に倒れた●●●をよっこらせと俵田抱きし、オレと黒子は勢いよくその場を駆け出した。
え?なにか見たかって?
ははは。なんのことかしらないな。
しばらく廊下を黒子と無言で走っていれば、なにやら背後からゴトンゴトン。トタトタと“二つ”の足音がついてくる。
一つは石が動いているような重さの持った音で、もう一つは妙に軽い。
その頃には●●●も目が覚めていた。
影に逃げられスルーされ近寄られを繰り返しながら、木製の廊下を移動してしばらくして、●●●が悲鳴を上げるのに疲れてきた頃。
夢「逃げなさい花 宮」
花『そろそろお前、自力で歩かね?』
●●●の命令が上から下った。
オレはお前のための馬車でも人力車でもないわけで。
とはいいつつもこいつひとりでいると“向こう側”に連れてかれるのは明白。
溜息ひとつついて、背後から迫りくる物体からダッシュで逃げる。
今度は二宮金次郎の石像が、見事な陸上フォームで「うぉぉぉ!」と迫って来ています。
顔の形相がメッチャ怖い。
そして彼の口から吐かれる呪詛がさらに怖い。
二「おのれぇおのれぇ最近の現代っこはこれだから。
ボタン、ピですべてが叶うからって。
なにがピピッとコン○だ。
ス○ーブだ!!
暖房?冷房?薪を買え!!!!
本を読めぇ!!!
なにがスマフォだ。
そんなものこの世界で使えるわけないだろ。
労せず教科書ももらえて勉強もできて本だってすぐに手に入る時代の癖に。
本もめくらないとは!!!!これもあれもすべてスマフォのせいだろ!
ほろべぇぇぇ!!
おまえらの携帯よこせ!
こわしてやるこわしてやるこわしてやるこわしてやるこわしてやるこわしてやるこわして・・・」
現代っ子への嫉妬にあふれた二宮金次郎さんでした。
花『思うにホラーなら、なんでも同じ世界に存在できるものなのか?』
黒「あれは・・・学校の七不思議?」
花『二宮金次郎な。そのうしろからつけてくるのは人体模型な』
黒「ああ、たしかそういう名前でしたね。今どき分、どちらもないですからねぇ」
二「!?おのれぇ現代っ子ぉ!!言葉をやたらと略して使うからまっとうな言葉をつかえなくなるんだ!!
だからひとのこと覚えなくなるんだ!!!
もうおれの像がない学校は仕方ないにしても名前さえ忘れられるとは!!無念だぁぁ!!!!」
黒「あ、きれすぎて一人称おかしくなってますよ〜」
夢「うっさいのよ妖怪に成り下がった像が!!そもそもあんたのうしろにいる人体模型と二宮像じたい存在する時代がおかしいじゃないのよ!」
人「!?」
二「なんでお前らそんなによゆうなんだよぉ〜!!これだから現代っ子は!!!」
花『現代っ子って関係あんのか?ってか、半分だけ建物の影に隠れても残り半分がみえてるぞ人体模型くん』
人「!?」
――っで。
人体模型がorzってやってるあいだに、二宮金次郎をまく。
急激にわき道にそれたら、二宮金次郎はとまれずそのまま柱にぶつかって、部分的にかけていた。
二宮金次郎って、こどもの見本になるようにってたてられたはずなのになぁ。怪異にまで堕ちちゃってかわいそうに。
でもひびが入っても執念深く追ってこようとするのはやめてほしい。
ってか、下半身置き忘れてるよ!?
その動きが校舎の外にいた貞子モドキたちに似ているから怖い。
通称G・・・のような、動き。
曲がり角を曲がったら、今度は美術室があった。
先程の木工室のようなものをみたくないため、扉を開ける前に窓からのぞいて中を確認する。
中では、絵画たちが好き勝手やっている。
像やらマネキンやら絵具。とにかく彼らは芸術家肌らしく、集中しすぎてオレたちが横の廊下を通っても全く気付かなかった。
よし。ここもスルーだ。
そこからさらに全力で15分ぐらい歩いた先にようやく三つ目の部屋を見つけた。
今度は技術準備室。
のこぎりやらトンカチ、ネジや釘、その他色んな工具がとんできたが、勢いよく黒子が扉を閉めたら、扉に突き刺さって抜けなくなっていたので放置した。
そもそも釘くん、お前はダメだ。
血っぽいものでコーティングされて錆びてた。
もうつかえねぇよ。かわいそうだが、その錆びではもうつかえない。一回トンカチでうたれれば風化しそうだった。オレたちを殺そうとするのはあきらめろ。
さらに奥に進めば、今度は音楽室。
定番の七不思議のように、ピアノの音が聞こえてくるが、わざわざ扉を開けてかまってやる必要はないだろう。
過ぎ去った扉の向こう側から、防音設備はないのかと思わせるカナキリ声が聞こえたが、
彼らは自ら扉を開けることができないようで「一緒に音楽を奏でようじゃないか!!!」「悲鳴と絶望のコラボをしようではないか!」と合唱していた。
黒子がさめた目で「僕の相棒は火神君だけです!コラボなんてテメェでやってください」と、切り捨てていた。
なんか音楽室から「そんな〜」「そんな〜」「そんな〜」「そんな〜」と物悲しげな合唱が響いた。カノンか?
被服室では、どこぞのネズミィー映画のヒロインが歌った時の様に、布が音楽にあわせるように宙を舞っていて、糸とミシンらがみずからドレスをしあげていく。
それをみた●●●が、こんなときだというのに「きれー」「私に似合いそう」とフラフラ入っていこうとしたときはあわてて首根っこをつかまえて抑えたものだ。
ちょうどそこで追いついてきた二宮金次郎(の上半身)をつかまえて、暴れる●●●の代わりに被服室の中に放り投げれば、
あれよあれよというまに、布に巻き付かれ、梱包されていた。
そしてリボンできつく首元を・・・。
ゴキッ!と石が砕ける音がした。
夢「・・・一応礼を言っておくわ悪童」
花『一応うけとっておくわ』
黒「ふぅー。お二人ともすなおじゃないんですねぇ」
花『黒子クン。お前はだまろうねぇ(ニッコリ)』
黒「僕はなにもしゃべってませんよ」
花『ああ、そうかい』
被服室と言えば、そういえば入り口からすぐの場所に、調理室もあったと思い出す。
とはいえ、一番危険な包丁やら火がせまってきたら困るので、そこは騒ぐ●●●をかついでとおりすすぎた。
ここはどうやらとんでも学校らしい。
昔、戦場だっとか、墓地だったとか言われた方が、スッキリしそうなほど混沌としていた。
そうしていろんな部屋を過ぎ去った後、開け放たれた扉を見つけた。
そちらをみれば、渡り廊下があり、向こう側に別の建物がある。
廊下から見えていた教室棟と体育館だろう。
この入り口は、オレたちが入った入り口とはまた違うらしく、二宮の割れてしまって分離した下半身もない。
上半身も追いかけてこない。
まぁ、二宮はしばらく被服室から出てこれないかもしれないから当然と言えば当然だろう。
花『どうする?』
夢「こんなところに長居なんてしたくないわ!先に進めるなら行きましょう!」
黒「まぁ、たしかに。こちらが実習棟なら、むこうはただの教室です。なら向こうにいったほうがまだ安全でしょうし。飛んできてもせいぜいボールとかチョークでしょう」
花『でも学校の怪談って、教室とか体育館にも付随する話けっこうあるよな』
黒夢「「・・・」」
っということで。物理的に攻撃を食らいやすいこの実習棟にいるのと、他の怪異と遭遇するのどちらがいい?という問答となりまして。
多数決であっさりこの実習棟を出ることとなった。
渡り廊下を見つけてそちらに向かおうとしたら、裏庭のような場所に古い井戸があった。
井戸の脇で着物の女性が「一枚、二枚」とか皿を数えていた。
それは調理室から盗ってきたのかと突っ込みたかったが、「見つかる前に逃げろ」と黒子と●●●に怒られたので、さくっとこれもスルーした。
背後から「なんでよ!?声ぐらいかけてくれてもいいじゃない!」と女の声が聞こえた。
やはり声はかけてやるべきだったのだと少し罪悪感。
渡り廊下を渡り終わる前に、また影が襲いかかってきた。
どうやら皿数え女が、仲間となる怪異を呼び寄せたようだ。
慌てて渡り廊下の扉を開けてなかに飛び込むようにして、三人で入り込んだ。
廊下を渡り終え、開け放った扉に駆け込む。
案の定。扉の先は、普通の教室が並んでいた。
―――だったらよかったのに。
ガタンゴトンと震動と共に音が鳴る。
思わず振り返ってみても、すでにあけたはずの扉は壁になっていて、驚きのあまりドサリと手の中の荷物を落としてしまったオレはきっと悪くない。
夢「きゃぁ!ちょっと花 宮!なにすんのよ!!この悪童っ!!」
花『・・・怪異って繋がってるのか?』
黒「でん、しゃ・・・ですね」
オレたちは気付いたらどっかの電車の中にいました。
たぶん電車だ。
地下鉄だろうか?
一面が窓なのに、窓の外は真っ暗で何も見えない。けれどがたごとと揺れているのだから間違いはない。
オレたち以外は無人。だれもいない。
花『乗り物なら、猫バスがよかった。・・・・・そうだ黒子』
黒「なんですか?」
花『230円くれ』
黒「ああ、なるほど。20円持ってます?」
花『ん』
ちなみに値段だけ言ったものの、別にこの列車内で駅弁を売っているわけではない。
これはバニラシェイクMの代金だ。
そして値段だけでわかるって、お前どんだけバニラシェイク好きなんだよと突っ込みたい。
がたごとがたごと。
電車はどこにむかっているのか、放送もない。
黒子から250円をうけとり、ポケットにいれてたサイフから20円をとりだし手渡す。
ぶっちゃけて言うと、その段階では列車内は無人だった。
はじめは騒いでいた●●●もやがて知らない駅名、みえないホームにつまらなくなったのか、
なにか疲れたようにため息をついた後、黒子の横に腰を降ろしてウツラウツラと舟をこぎはじめた。
けれど銀河ステーションというのをこえたあたりから、電車が止まる頻度が増した。
どこかの駅に着くたびに、ザワリと空気が揺れ気配が増えていく。
あちこちからたくさんの気配がしだした段階で、オレと黒子は口を閉ざした。●●●はうつらうつらしていたのが、今では完全に熟睡中だ。
駅にとまるたびに、色んな声が混ざったよう重音が周囲から聞こえてきた。
見えない何かが、電車に乗ってきたのを黒子も肌で魂で感じているようだ。あんまりいいものじゃないのはわかっていた。
けれど姿がない。
通常運転で見えちゃいけなものが見えるオレでさえ見えないということは、下手するとこの列車そのものがなんらかの怪異で、声はこの列車からするのかもしれない。
その場合オレたちはすでに妖の腹の中にいるわけだけど。
電車に揺られて、どれくらい時間がたったか。
「つぎは〜白鳥座。プリオシン海岸にいくかたは白鳥座でおおりください」
さっきは北十字前だとか言ってたよな!?、白鳥座!?劇場か?
いや、どこだよそれ!?
そんなツッコミが、何駅目かになった。
「わぁきれい。ほしいな。ほしいよ」
「あかるい灯。ほしいな。ほしいね」
オレと黒子は、思わず身体をこわばらせ、息をひそめるように固まる。
「ねぇ、そのいのち(あかり)ちょうだいよ」
花『・・・・・・』
黒「・・・・・・」
夢「すぅー・・すぅー」
いつの間にか●●●は寝てしまったようだ。
彼女、度胸あんなぁ。
だって。
――オレの目の前に、男の子がいるんだけど。
子供が姿を見せたのだ。
これだけならおかしいとは思わないかもしれないが、いままで一度でさえ姿を見せなかった“存在”が、姿を見せた。
そのことが重要だ。
「どこまでいくの?」
いや。それはこっちの台詞です。
「きっぷはもってるの?」
ICカードならあるけどそれでOK?
むしろ金払えばおろしてくれるのだろうか。
むしろ切符買う場所どこにあった!?
「どこへいくの?」
いや、だからさ、それはこっちの台詞って・・・むしろ場所を行ったらそこまで送ってくれるのだろうか。
聞こえてくる声をまるっと無視して(だって誰にどう答えればいいかわからなかったから)、
オレと黒子は電車の長椅子に腰を降ろしたまま。
目の前には、白いこども。
能面のような・・・顔の造形などがどうしても理解できない光の塊のようなこども。
これに気付かず寝れるってマジスゲェ。
黒子だって、さっきからずーっと視線が合ったままで顔引き締めて、緊張したように固まってんのに。
ちなみに代金受け取りの後いままでオレたちが口を利かなかったのは、この子が理由である。
けっして暇だったとか、眠かったためではない。
なぜなら、目の前にいるのは、白っぽい光でできた男の子。だけどその目はくぼんでいて、口だけがニィっと三日月の様に曲げられている。
そして「そこにいるよね?」「だぁれ?」「いるなら返事してよぉ」「ねぇどこにいるの?」と聞いてくる。
内容からしてわかる恐怖。
これはしゃべったり、視線を逸らした瞬間に命の危機になるんじゃないかという気がして、オレたちは動けない。
っが、しかし。
世の中にはタイミングが悪い奴とは本当にいるようで。
夢「ふぁ〜う〜おはよ。火神君大好きよ」
●●●があくびをしながら寝ぼけ眼のまま起き上がった。
瞬間、目の前にいた子供が「みぃーつけた」と楽しそうな声をだしてキャラキャラと笑い、ニィーっとありえないほど口端持ち上げると、その手をのばしてきた。
花『いくぞ!!』
黒「はい!」
夢「え?どういう・・きゃぁー!!!!なによぉこいつ!!!」
●●●もようやく気付いたらしい。
そして彼女の悲鳴のせいでい、こどもが
増えていた。
思わず激しく舌打ちをしてしまった。黒子が。
そのあとは恐怖に腰を抜かし、こどもに今にもふれられそうになっていた●●●をオレがまたかつぎ、ちょうど列車が止まり扉が開いたので、これ幸いと外に転がり出る。
あれは触れられたら絶対やばい。
あとあいつらの問いに答えるのもたぶんやばい。
列車に飲み込まれた奴らの魂だろうか?
その割にはホームまであいつらついてきてる。
どうやら今度はどこぞやの地下鉄のホームのようだ。
やはりいままで暗い場所を通ってきたのは、トンネルを走っていたせいらしい。
白いやつらが列車をおりてゾンビのように手を伸ばし、追ってくる。けれど改札付近になると、白いやつらの動きが鈍くなった。
前を見れば、改札の外にたくさんの人型をした白い塊が群れを成していた。
改札の外にいる奴らはなにかの歌を歌いながら、ホームの連中とは違って幸せそうにまったりしたオーラを出しているため、動きが鈍い。
あれがつまっているせいで、改札から流れがゆるやかになっているらしい。
オレたちは追ってくるやつをまくために、その時間が遅くなったような場所をめざし、ここがどことか考えもせず自動改札機をくぐろうとした。
しかしこんな怪奇空間でさえ、改札はキップが必要らしく、みんなsuicaらしいICカードをかざして改札をくぐっていく。
オレたちも無意識に、ポケットにいれたままだった定期をかざし、改札口をぬけた。
いくらとられたのかはわからないが、もんだいなくくぐりぬけられた。
正確にはぬけようとして――
黒「ぐぉっ!?」
夢「黒子くん!?」
花『え?』
改札は●●●を担ぐオレやオレの定期券には反応したのに、黒子にはまったく反応しなかった。
定期自体はピという音を立てて反応するのに、黒子が通ろうとすると扉がしまる。
花『まさか』
黒「たすけてください花 宮さん!改札口が反応しません!!」
そのまさかのようだ。
改札は人はもういないと判断してしまるようで、黒子がひっかかって出れないでいる。
お前そこまで影が薄いとかどうなんだよぉ!!!
オレが●●●をかついだまま、黒子へ必死に手を伸ばすが、改札は微動だにせず。
そしてあの死霊たちが黒子のすぐ背後まで迫っていた。
夢「黒子クン後ろっ!!」
黒「うわぁ!」
花『あー・・・さすが日本人』
黒「ぇ?」
黒「あ、あれ?」
死霊たちは、行儀よく列をなして、改札にキップらしきものを通して、黒子のいる改札をよけて他の改札から出ていく。
黒子の手をつかんでいたオレまでスルー。むしろ黒子が挟まっている改札じたいがスルーされている。
花『幽霊になっても並ぶとか、さすが日本人』
黒「そんなこと言ってる場合じゃないですよ!」
そこからはなんと言い難い状況が続いた。
死霊とおもわれる白い人型たちは、何かを目的にしているように、
列車を出てしまえばひたすら無言で、オレたちにさえ興味を見せることなくボォーっと同じ方向へ歩き去ってしまう。
改札口の外はいったい何があるのか。
聞こえてくる音に、足を止める。
花『ハレルヤかこれ?』
黒「讃美歌…ですね。ん?なんだかこういう展開聞いたことがありますね」
花『黒子、改札にはばまれる。って、展開が?』
黒「いえ、そっちではなく、讃美歌が流れる駅というのに覚えが・・・」
そんな御大層な駅あってたまるかと、駅名をみれば「サザンクロス」と書いてある。
そんなロマンス的な駅名あるかよ。ツッコミたくなった。
しかしそこで黒子が何かに気付いたようにハッと表情を引き締めると「宮沢賢治の銀河鉄道の夜ですよ!」と、とっさに声をあげてきたことで、
本の内容を即座に思い出したオレも一瞬で血の気が引いた。
ここで改札口を降りる方が、危険なのだと気づく。
ICカードでワンタッチができる時点でずいぶんハイテクナ死者の駅だが、死後の世界もまた時代の流れに沿っているのかもしれない。
そもそも黒子が改札を出ることができなかったので、乗り越えろと促したところ、
駅員らしき黒い影が現れ「キップがないなら心臓と臓器と血をおいていけ」と言われたので、
これはヤバイとオレがまた改札をくぐって中に入った。
あのまま勢いに任せ、焦って駅を飛び出ていたら、オレたちもあの死霊とともに・・・なんてこともあったかもしれないわけだ。
へたすると死なずに転生とかさせられていた可能性もあったわけだから、ギリギリセーフといったところだろう。
駅員の影は、戻るならヨシとそれで満足したように、またどこかへ戻って行ってしまった。
それからホームでどうしようかと悩んでいる間も時計は4:44をさしたまま止まっていて役に立たない。
携帯も・・・これは二宮金次郎の愚痴通り通じない。
しかしホームにいても反対方向の列車はなく、ただひたすらに一定の間隔を置いて、一方通行の列車が、
白い死霊たちを吐き出して去っていくというのを繰り返しているだけ。
死霊たちもこの駅に着くと大人しくなるようで、ホームのすみでベンチに座っているオレたちを見向きもしない。
危害もくわえられることも視線が合うこともなく、逃げる必要性はなくなったが、そこにいてもどうしようもないと決断せざるを得なかった。
しかたないので、もう一度電車に乗り、違う駅に行ってみようということになった。
むしろそれ以外の選択肢がなかったともいえる。
ここまでくるとさすがの●●●もだまっていた。
次の駅は「石炭袋、空の穴を通過します」と放送が流れた。
花『いつ、降りる?』
夢「石炭袋?燃料補給するのかしら?そこはどうなの?」
黒「違います●●●先輩。石炭袋は駅ではありません」
夢「じゃぁ、なんなの?」
黒「燃料は補強できないんですよ。あくまで名称でしょうか。
物語の中では、カンパネルラとジョパンニが窓の外に映った石炭袋を見て恐怖をおぼえたシーンですね。
諸説ありますが、石炭袋は暗黒星雲のことだといわれています。
天文分野の専門書では暗黒星雲というのは、「空の穴」といわれています。銀河鉄道の夜では暗黒星雲を異次元への出入り口と考えているらしいです」
先のサザンクロスの駅はイコール天上。つまりあそこでほとんどの死者たちは降りてしまう。
ここから先にいけるのは、生者のみ。
銀河鉄道ではそういう話だったはず。
そのためか、あの駅以降、列車内はものけのから。
オレたち以外に人の気配さえない。
さきほどまでの嫌な感じさえしないのだから、天上というのはすごいのだろう。
・・・本物の天の世界もあの世も行ったことあるし、神々と会ったことがある身としては、神など全員クソなのだが。
まぁ、あの天上とやらにいけた魂たちが安らかな時を迎えられればいいとだけは、祈っておこう。
そのまま窓の外の真っ暗闇をたまにキラキらと光が流れていくのをみつめながら、オレたちはしばらく電車に揺られていった。
しばらくすると、暗闇から解放され、車内に光が入りだす。
どうやら銀河鉄道の世界は越えたらしい。
外は赤いものの、空もあり大地もあった。
そうこうしているうちに、またちょびちょびと駅が現れ始めた。
今度は町のような場所を過ぎていく。
「つぎはぁ〜やみ駅〜。やみ駅〜。そのつぎはきさらぎ駅となります」
ようやくまともそうな駅に着いたが、列車の中から見えた駅の改札が自動だったのをみて、黒子が首を横に振る。
そうしてついた何駅目かは改札が自動でなく、どことなく田舎町にありそうなさびれた無人駅だ。
降りた場所から見上げた空は、一瞬夕焼け空かと思ったが、あの木造校舎の外と同じ血のような空だった。
列車をおりて、扉がしまったのを見送ったあと、オレたちはようやく息を吐きだし、緊張でこりかたまった体をほぐすように精一杯のびをする。
花『っだー!!つかれた!視線にさらされるのめっちゃきつい。笑いをこらえるのまじ必死だったわ』
地上に戻ってきた列車は、ふたたび乗客を乗せ始めていて、何度か異形の者に声をかけられた。
話しかけられたら、つい返事したくなるよな〜と笑って言えば、どこかぐったりした感じの黒子が、「酔いました」と口元を抑えている。
横で黒子の背をさすりながら、●●●がソワソワと不安そうに周囲を見渡している。
今度はいくら待っても電車は一定間隔どころかまったく来ることはなかった。
黒子の酔いがおちついたところで、せまられている選択肢を確認する。
まずひとつは改札口を出ること。
二番目はいつくるかわからない列車を待つこと。
三番目は――
なぜか
オレの目の前にたれている釣り針糸と針をつかむこと。
オレとしてはさっきから、それが気になってしょうがないのだ。
どうやらその糸は、誠凛コンビには見えていないようだ。
なんとはなしにその垂れている先をたどるも糸は空中から垂れていてどこにもつながっていない。
わかります。これって芸人さんがクイズに間違ったりするとよくある罰ゲームで。ひっぱると下に穴がいて、水にドボンとかそういうトラップですよね。
あるいは「蜘蛛の糸」か。
しかしこれをひかないという手段以外、先に進む手立てはないように思う。
改札を抜けてもいいけど、ホームから見える景色は見事な田園風景。向こうがわに人影はないことから、救助を求めるために人影を探すのも困難そうである。
なら、この謎のひもをつかむべきだと思うんだ。
なにせこの駅にはなにもなく、周りを見渡すもこのベンチ一つない。
あるのは意味深にたれさがるこの釣り糸だけで。
これは次の展開に行くためには、この釣り糸になんらかのリアクションをしなければダメな気がする。
とりあえず離れ離れになるのは、面倒だ。また探さなければいけないので、それを回避すべく黒子と●●●の腕をひっぱってしっかりつかむ。
そうして二人がキョトンとした顔をしている間に、空中からたれさがる糸をひっぱり――
落ちるのを覚悟していたら、予想外にも瞬間グィ!となにかに引っ張られるような感覚がして、●●●と黒子の悲鳴が聞こえた。
一瞬の浮遊感。
その後おとずれる、ドサリと地面に落とされる感覚。
地面にしりもちをついたところで、オレは糸から手を離してしまう。
しかし特に問題はなかったようで、糸はシュルシュルと空のかなたへ遠巻きに戻っていく。
そしてオレたちはまた違う場所にいた。
黒子と●●●はどうしただろうとみやれば、しりもちをついている●●●に黒子が踏みつぶされていて、何が原因かは不明だが気絶していた。
●●●はいまだ黒子に気付いていないようで、どこが痛いとか突然何をするんだとか文句をつぶやいていて。
ふいに耳をそばだてるようなしぐさをしたかと思えば。
いわく――
夢「なんか鈴の音、いえお囃子っぽいの聞こえない?」
いや。オレにはむしろ・・・
宮「アザナ!?お前なんでここにいるんだよ」
愛しの幼馴染みのお兄様の声が聞こえます。
あれ?
これもしかしてちょっとヤバイ?
オレ、さびしさのあまり幻覚か何かみえちゃってる?
ならば答えはひとつ!
花『うちの兄を語るなんて不届き千万!極刑に値する!!
滅びろカスが!!!』
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
・
・
・
64 ななしの迷子
あれからけっこう時間立つけど・・・コテ主こないね
65 ななしの迷子
やっぱりなにかあったのかな
66 ななしの迷子
もしかして改札口出ちゃったとか!?たしかきさらず駅って、お囃子の音が聞こえてきて。振り返っちゃいけないとかトンネルがどうとかあったよな!?それで失敗して・・・とか!?
67 ななしの迷子
ふざけんな51〜52!不安にさせないでよ!!
68 ななしの迷子
・・・知ってるか?そういうのフラグって言うんだぜ
69 ななしの迷子
・・・・・・
70 ななしの迷子
71 ななしの迷子
72 ななしの迷子
gkbr
73 ななしの迷子
こわいこというんじゃねーよ(´;ω;)
74 ななしの迷子
うー・・・そう言われると心配になってきた。
二人とも大丈夫だといいな
75 ななしの迷子
みゃー兄と八百屋息子は無事だろうか?
76 ななしの迷子
おーいコテ主!でてこいよぉ!!!
77 ななしの迷子
大丈夫かな?
78 ななしの迷子
呼んでくるならこんなとこにスレたててないか
79 ななしの迷子
心配だよぉ
80 みゃー兄
おーわるい。またせたな。
腹減ったから、そこらの棒で釣竿作って池にたらしてた。
そのあと「あいつ(弟の名前)無事かな〜」「俺らが行方不明になったの“みゃー弟”に連絡行ってかな」ってなにげなくつぶやいたら、竿が勝手に動いて・・・なにかひっかかった。
竿をひっぱったら、池の中からなんと弟(とその一行)が飛び出てきて、ビビッて誤送信しちまったわ。
やっぱりあいつこそ怪異というかびっくり箱だわwww
81 ななしの迷子
みゃーーーー兄ーだ!!!!おかえりー!!
キタ━( ´∀`)´_ゝ`)`Д´)´Д`) ̄- ̄)_)・∀・)´・ω・)=゜ω゜) ゜Д゜)゜∀゜)━!
82 ななしの迷子
ぶじでなによりみゃー兄!!
83 ななしの迷子
ってか釣竿とかどういうこと!?
84 ななしの迷子
それじゃぁまるで釣り・・・え?このスレって釣りだった?
85 ななしの迷子
池ってなに?
86 ななしの迷子
まさか改札の外に出ちゃったんじゃ・・・
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339 ななしの迷子
っで、野菜でいうならセロリはやばいだろ
340 みゃー弟
ああ、たしかに。セロリはにおうな。
341 ななしの迷子
うん。あれは好き嫌い激しくわかれるねぇ。
342 ななしの笑袋
ちょwwwww先輩たち、なんのスレ立ててるんですかwwww野菜ネタで200近くスレうまってるとかwwwww
あ、そういえば、先輩たちwwww今wwwどこにいるんですか?www
343 みゃー兄
お。笑袋じゃん。無事だったか。
344 ななしの迷子
あ!新しいのきたー!!!
345 ななしの迷子
ミャーズブラザーの考え通り、やっぱり笑袋たちも巻き込まれてたか!
346 ななしの笑袋
えっへへwwwお騒がせしてスイマセンwwwww
347 みゃー弟
無事でなにより
348 笑袋
それより俺、みゃー弟さんと黒と姫みましたよwwww気付かず通りすぎられちゃいましたげどwwwwwwぶっふぉ
349 ななしの迷子
なにがあった笑袋!?
350 ななしの迷子
こいつ、笑い死にかけてね?
351 ななしの迷子
さすが笑袋の名を持つだけある
352 笑袋
wwwひえwwwwす、すいませwwwwww
353 ななしの迷子
おちつけ
354 ななしの迷子
餅つけー( ゜∀゜)/⌒□
355 笑袋
いえ、あの(*´艸`)www思い出しww笑いでwwwwwwwwwwwwwwwwww
オバケに気付かれないわwww逃げられるわwwwww寄ってくるわwwwwぶっふぁ!!!!wwww
あ、俺、そのとき調理室に、火・緑・古さんとたてこもってましたwww塩装備でwwwww
356 ななしの迷子
読みづら!
357 みゃー兄
だまれ、草刈れ!
うるせぇ轢くぞ
358 ななしの迷子
調理室?
みゃー兄弟たちがいるの駅だろ?
359 ななしの迷子
改札口出ちゃったけどな(-_-;)
360 ブラック
あ。僕たち、電車に乗る前、古びた学校っぽいところにいましたよ
361 ななしの迷子
それだ!
362 みゃー弟
一つ一つ扉を開けてたら、木工室で攻撃しかけられたから、一番やばそうな調理室は避けてたんだ
まさか、お前らがそこにいるとは
363 笑袋
弟さんたちのwwww逃げっぷりがwwwwwwww笑えました
364 ななしの迷子
どんなだよ(汗)
365 ななしの迷子
どんなだよ(笑)
367 ななしの迷子
364-365オマイラケッコーン(・∀・)人(・∀・)/
368 ななしの迷子
それで?これからどうすんだよ?
369 ななしの迷子
そっちに飛ばされた奴のだいたいの人数絞れたな。
370 笑袋
それじゃぁ・・・
・
・
・
382 みゃー兄
おー。わかった。
いまからそっちのスレうつるわ。
って、わけだから。残りのスレは好きに使ってくれ
384 ななしの迷子
了解!(o≧▽゜)>
385 ななしの迷子
いってら〜゜v゜)っ
386 ななしの迷子
ノシ
387 ななしの迷子
自分もあっちにうつります!!
388 ななしの迷子
おーイッテラ。じゃぁ、残りは野菜ネタにもどろうか
389 ななしの迷子
野菜?あ、そっか。みゃー兄と一緒にいたひとがたしか八百屋の息子だっけ
390 ななしの迷子
そう。それで野菜で一番おいしいには何かって話で
・
・
・
440 ななしの迷子
ついに四百ごえとかwww
441 ななしの迷子
野菜ネタでスレ無駄に使いすぎじゃねwwwwwwwwwww
442 ななしの迷子
アレルギーとかの話にも発展したからじゃね?
443 ななしの迷子
そうそうアレルギーってきっついんだよなぁ。
いっぱいアレルギー持ってる俺はくえるもんにきをつかわなくちゃいけなくてまじ、つらいし。
444
××××は×3×××ノ×鏡×××ス××××ェ××××テ××××
445 ななしの迷子
エビとかはよくみるけどね
446 ななしの迷子
お。今度は海鮮ネタきたか!?
447 ななしの迷子
小麦粉だろここはさ!
448 ななしの迷子
粉系の食べものの名称あげればいいの?
449 ななしの迷子
なぁ、444のスレおかしくね?
450 ななしの迷子
粉と言ったらタコやき!
451 ななしの迷子
こないだ露店でこぶし大のたこやき売ってたぜwww
452 ななしの迷子
さらっと流れかけちゃったけど
>>444 え?
453 ななしの迷子
なにこれ?444
454 ななしの迷子
イカ焼きにイカが全くはいっていない件について・・・ってぇ、444ぇ?
455 ななしの迷子
え?なにこれ!?
なんで444のID存在してないの!?
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