有得 [花悲壮]
〜 W花とその後の後×名探偵コナソ 〜
07.改善はみこめず
※『』…成り代わりがいる世界側のセリフ
※「」…原作より世界側のセリフ
嫌な予感がする。
あいつと精神と肉体が入れ替わったあの時から、やたらとこういった勘があたるようになった。
だからこそ――
【 side 原作よりの花 宮 】
今「心配ないでぇ花 宮。こんなこともあろうかとお前らにそれ渡したんやしな」
ドンと胸をはって自慢げに宣言する今吉さん。
その横では、うんうんと笑顔で頷く宮地さんの姿。宮地さんとはいえ、髪を黒く染め眼鏡まで掛け見事な変装をしている。しょせん"向こうの世界"の宮地さんである。
どうやら二人は、なにかしらの共犯者のようだが。
いや。うん・・・だめだと思う。
あいつにかなうやつなんているわけない。
事の発端は、買い物にきたらたまたまタイムセールでそこが瞬時に戦場と化したことだろう。
それによりほんの少し前まで側にあった存在がいなくなってしまったのだ。
“平行世界のオレ”こと、 花 宮字 の姿が、今は視界のどこにもない。
どうやら先刻の激しい戦場に集った灼熱地獄さえも網羅しうる勢いを持った兵士――オバ様軍団の流れに逆らえず、そのままいずこかへ持って行かれてしまったようだ。
あ゛ぁ?なんだよ。例えが分かりづらいって?
んなもんニュアンスで感じ取れ。
わかれよ。バァーカ。
花「っで?」
今「おん?なんや?」
花「なにじゃありません今吉先輩。アザナの奴、どこにいったかわかるんですか?あいつもキョー兄の携帯もGPSどころかメールも電話機能も使えないんですよ。どうやって追いかける気ですか?ああ、こうしているあいだにもあいつまたなにかしでかしてるんじゃ・・・先輩!キョー兄!早やくあいつを探しに」
清『まぁまぁおちつけってマコ。そのためのそのアイテムだ』
花「アイテム?」
今「せやで!向こうの道具がこっちでは一切役にたたんのやったら、ならこっちの世界の道具だけで作れば大丈夫なんちゃうか?ってなことになってなぁ。あいつのブレスに仕掛けをしてん」
清『うちのバカのしでかしたことが全部マコのせいになるのは、さすがに申し訳ないって常々思ってたからな』
今「最近二人とも行き来が頻繁やしな。前々から ちぃーみや の体質に対抗する方法についてキョークンと相談してたん。
なんだかんだいっても花 宮は ちぃーみや とどこかでつながってんのやろな。ちぃーみや がいつものプチ不幸で、迷子になってもジブンなら、だいたいの居場所がわかるやろ?」
花「あいつの行動パターンから推測してるだけです」
今「ええねんそれでもみつかれば。勝てば官軍。結果よければすべてよし。と、似たようなもんや。けどいつも花 宮の手を煩わせるのもどうかと思ってん。考えてもみい。もし花 宮がいないときに、 ちぃーみや を探すとなったら?無理やろ絶対。
そこでひらめいたのが、その“プレゼント”や!」
花「プレゼントって・・・これですか?さっきから言うてますけどこれになにが?」
向こうの世界の宮地清志こと キョー兄 。彼と今吉さんがあの破天荒な迷子捜索に自信があるのは、どうやら今日渡された品のせいらしい。
彼らが示した先、オレの腕に揺れているのは、買い物の最中にわけのわからない理由で祝われもらった緑のレザーブレス。
勘が異常にいいアザナは、もらったときに『なにかありそう』とばかりに一瞬眉をしかめていたが。
まさか本当に“仕込んで”いたとは。
清『マコのは本物のただのブレスな。アザナの方には発信機がついてるんだ』
今「花 宮にも渡したのは、 ちぃーみや にだけ渡すと“なにかある”と疑って受け取ってもらえへん思うてなぁ。いやぁ〜大成功や。まぁ、まさかこんなはようこれを使う羽目になるとは思いもせぇへんかったわ。なぁ、キョークン」
清『ああ。そうだな』
今「でもおかげで花 宮のいい感じなツンデレ具合いせてもろぉたし、ちぃーみや からも毒なしの笑顔見せてもろぉて。プレゼントあげたときの二人かわいかったわぁ〜」
花「きもっ!キョー兄、ここに変態がいるんですけど」
清『マーコ。そんな底辺以下の物体を見るような目をしてんじゃねぇよ。これでも今吉はお前の先輩だろ。先輩には敬語だ。それにな、今吉だってなぁお前のためを思ってのことだぞ。なんたって相手はあの字だ。そりゃぁ最後のは、死ねよ今吉轢くぞこのやろうとは思ったがな。それよりも迷子の位置をなんとしてでも把握できるようにしておかないと、毎度毎度やってられねぇだろ』
花「・・・そうですね。アザナですし。
とりあえず今吉さん。いますぐキョー兄に軽トラで轢かれてください」
今「!?ふたりともひどないっ!!!!ワシ変態とちゃうわ!」
清『それは自分の発言をかえりみてから発言しなおせ。なんなら言葉通り本当に轢いてやろうか?』
花「ソーダソーダイイゾーモットヤレ!さすがキョー兄!」
キョー兄の背後にさっと隠れれば、彼はさらっと普通にオレを背後に隠してくれる。
そのまま今にも喧嘩しますとばかりに童顔を凶悪にゆがめ、ゴキリと拳をならす。
そんなキョー兄に今度は今吉さんが小さく悲鳴を上げている。
さすがです宮地さん!
すっかり慣れた物騒な発言と、その仕草でもって脅す様子をみるに、
向こうの今吉さんもこっちの今吉さんと同じような感じなのだろうか。
妖怪サトリがふたりとか・・・ナニソレコワイ。
いやすぎるな。
今「花 宮ぁ。ジブン、今わしのこと妖怪思わなかった?傷つくで」
花「ひっ!?・・・・・・」
清『今吉、お前のせいでマコの息が止まっちまったじゃねぇかよ。どうすんだよこれ』
今「失礼やなぁ。そないにわし変なこと言うてへんよ」
清『いや、言ってる。人の感情に気付けるってのはいいことだが、それをああいうタイミングであのうさんくさい笑顔で言うからダメなんだろ。こえぇよお前。なんであれくらいのことで開眼してんだよ』
今「え?ひらいとった?」
清『おお。バッチシな』
この二人、意外と気が合うよな。
オレはそんな会話に加わりたくないけど。
そんなわけで。
今「コッチや!お。また移動しとん。どこいくきや ちぃーみや のやつ?」
清『にしてもちゃんと反応してよかったぜ。字のやつなんかよからぬ電波でも発してんのかとずっと心配で』
今「おーおーさすがミャーズブラーザー。キョークン、いい具合にブラコンやなぁ」
アザナのブレスレットについた発信機をたどって追跡をしているのだが、オレはなぜか不安の方が大きくてだんまりだ。そのままじーっと今吉先輩の携帯の上で点滅する星印を見つめていた。
なんでこんなに不安になるんだ?
のんきに話す先輩コンビはさておき、オレはとまったり動いたりしているその動きをおえばおうほど、むねのうちがモヤモヤした。
――案の定。
今「なんでや!?」
信号が同じ場所でとまり、アザナを逃がすまいともうダッシュしたオレたちがたどり着いたのは―――
パトカーがわんさかいる・・・殺人現場でした。