有得 [花悲壮]
++ 二人の花 宮と・その後 ++



05.今日だけはすべてに目をつぶれ
※『』…成り代わりがいる世界側のセリフ
※「」…原作より世界側のセリフ




『いいか、真。これは誰にも言ってはならない!どうせならこっちの世界の――』


本当は嫌だ。
だけどはっきりいうと霧崎のチームメートより短い付き合いしかないけれど、あのひとが言うのだから逆らえない。
だってあのひとを怒らすと怖い。
というどうこうより、その"オマケ"からの報復が怖い。
世界とか余裕で飛び越えて、俺の大切なものを破壊するなんて片手間でできそうなやつだ。

だから。

これは謝罪ではない。
感謝でもない。

“しかたなく”だ。


----- [ 花 宮真の日記より 抜粋 ]








【 side 原作より高尾 】





高「ん?」
緑「どうしたのだよ高尾」

たぶんそれに一番初めに気付いたのは自分。
部活が終わった秀徳バスケ部たちがワイワイとでていくなか、目のいい自分だからこそ、校門の陰に隠れるようにいた人影に気付いた。

校門近くまで来て、人影の姿がくっきり見えるあたりで足を止める。
俺の異変に一番に気づいたのは、やっぱり自他ともに認める相棒のシンちゃんだった。
緑間の足も、俺に合わせるようにとまる。
緑間のカバンには、ポスターがクルリと丸められて差し込まれている。今日のラッキーアイテムで、それをきいた宮地さんが古いみゆみゆのポスターを数枚くれたのだ。
ダブリだとか、古いからといってくれるほどみゆみゆのポスターを持ってる宮地さん、さすがだ。

高「校門にいるのってさ、あれって」
緑「あれは・・・・・・“悪童”」
高「あ、やっぱり?」

俺がみつけたのは、五つの人影。
制服姿であったため、はじめは見覚えがあるような?といった程度だけど、緑間との言葉で確信を得る。

そこにいたのは、公式の試合の時にさんざんこちとら秀徳をコケにして2群をあててきた――無冠の五将“悪童”花 宮真。
彼を筆頭に霧崎第一のレギュラーたちがそろっていた。


花 宮は誰かに電話しているようだったが、一度物凄い渋い顔をした後、歯軋りしつつもおとなしく頷いている。

花「――ぉにぃ、本当にこの時間だよな?もう一時間近く待ってんだけど。寒い、凍える。死ぬ」

微かに聞こえた話し声は花 宮さんのもので、カタカタと音がしそうなほどの震え声で、この真冬の中かなりここで、なにかをまっていたのだとわかる。
知り合いが秀徳にいるのだろうか。
それともまたバスケ部になにか・・・たとえば嫌味でも言いに来たのか。

うたがってかかるにこしたことはない。
それはシンちゃんも同じだったようで、俺らのあとからやってきた宮地さんたち先輩をジェスチャーだけで静かにさせて足を止めさせる。

どうした?と問う先輩たちに、校門を示せば、みながいっせいに顔をしかめる。


霧崎の人たちはまだこちらにきづいてないようで、電話をしながらくしゃみをしている花 宮さんに、心配そうに死んだような目をしたひとが自分がしていたマフラーやらをつけている。

花「さみぃ・・・」
古「こないだアザナさんとおそろいでマフラー買っただろマコト。だからあれをつけろとあれほど・・・」
原「マコぉー、それでキョウさんなんだって?」
花「ちょっとまて一哉」

再び電話越しらしい声が聞こえる。
相手は「キョウさん」?
聞いたことないなぁ。
霧崎の先輩かもしれない。

花「・・・あ゛ぁ?キョー兄、いまどこにいんの?ハァ?!浮き輪が流された?プール?レイとアザナが友に沈められた?何言って・・・友がそんなことするわけねぇだろ。いや、そこは信頼の差というか・・・・・・・って、まてまてまて。キョー兄、それどうでもいいから!そもそもその日程時間だとそれ夏だろ!だからこっちはいまは冬だって何度言えば!! おい、ちょ‥えーうっかりって・・・笑えねぇし。・・・・・・・凍え死ぬ」

山「あー・・・たよりのつなの、キョウさんまでアザナさんのうっかりがうつったか」
瀬「今、寝たら、凍死するかな」
古「笑えない冗談だな」
原「ねぇーまだー。もう一時間立つよ」

花「うるせぇ一哉。だからキョー兄が日程をまちがってないかきいて・・・あ?んだよアザナ、なんでお前がでてくんだよ?キョー兄と・・・いいからさっさとかわれ!・・・・・あと、お前さ、あんまりロジャーさんに迷惑かけんなよ。・・・・・はぁ!?何言って・・・バァーカ!バァーカ!!レイに沈められてしまえ!あ?泳ぎが得意だから沈まない?しるかっ! お前なんか建物の角に小指をぶつけて痛がればいい!え?振ってきたタライにならよく当たる?何でそこでお前、そんなもんにあたるんだよぉ !このご時世タライを装備している家の方が珍しいだろうが。・・・あ゛?笑うんじゃねぇーよ!もういい!いいからキョー兄にかわれ」

花「あ、キョー兄・・・・・・・・・・・うん。話は、してみる。・・・・・・・っげ。・・・・だ。会いたくない。・・・チッ。わかったよ!」

たぶん電話の向こうの相手がコロコロ変わっているのだろう。
彼らが何かを待っているのは、その会話でよくわかる。

花「あ。きれた。最後水に落とした音が聞こえたんだけど」
原「あちゃーやっちゃったね」
瀬「っていうことは、来年の夏ごろ?真も携帯落とさないようにきをつけなよ。アザナさんの行動は基本的に反面教師って思った方がいい」
花「いや、でもこれたぶんキョー兄ぃの携帯…いや、アザナのだな。気を付ける」
「「「「そうしな」」」」
山「相変わらず不幸体質だなアザナさん」
古「ならアザナさんではなく、キョウさんに直接電話をかければ、こんなに一時間も待たないですんだんじゃないか?たしか花 宮、キョウさんにも電話かけられたよな」
瀬「俺達はしらないよ」
花「しらねぇー。っていうか、常識に考えてプールにまで携帯持ってかねぇだろう。それにキョー兄の電話番号、へたするとこっちのキョー兄に繋がるんだよ。同じだから」
原「あ、なるほど」

なにを待ってるのだろう?
とりあえず俺たちは彼らをスルーすればいいのだろうか?
それとも声をかけるべきか。
そろそろ寒いので動こうかと先輩たちに目配せをしたところで、ホクロのひとと視線があった。

瀬「あ」
山「どうした健太郎ー・・・あ」
原「ひろしー?・・・あ」
古「マコト」
花「なんだよ?」
古「秀徳のバスケ部だ」
花「はぁ?!そういうのもっと早く言えよ!!」

高「えっと、いや、でも俺たちも今きたとこですよ?」

ようやくこちらに気付いた霧崎のひとたちが振り返る。
思わず弁解をしてしまったのは、花 宮さんの顔が寒さでか真っ赤になっているからだ。
ああ、なんか鼻がかわいそうなぐらい赤い。
花 宮さんにだけ三枚ぐらいマフラーがまかれている。かわりにホクロの…瀬戸さん?以外の方は、マフラーがない。
奪ったのか。それともかけられたのか。

どちらにせよ。
この段階で、ちょっとだけ霧崎第一のイメージが変わった。

噂のように、誠凛での試合の様に・・・あんなあからさまなヒールではないようだし、なんというか、チームの仲がいいなぁって――花 宮さんの首に幾重にも巻き付いている数本のマフラーや、チーム全員が名前呼びなのをみて思わず笑ってしまう。

原「やっときたー!もう一時間も待ってたんだよ!」
山「バスケ部の終了時間きいてきたのに、それが夏の予定時刻とか・・・ありえねぇ。さむかったです」
瀬「眠りそうなところ何度弘に平手打ちされたか・・・」
古「この寒空の下、寝ないようにお前のマフラーだけは残したままだが」
瀬「いや、それでもね、眠くなるんだって寒さで奪われていく体温を維持するために人間はね…」
山「あーもういい!健太郎はだまれ」
瀬「かぶせないでもらえるか?あと、俺のあいでぃんてぃ・・・」
原「ブッフッフー。弘と健太郎、立場が逆転してるぅー。
あ、マコト。ほら、はーやーくー」
山「言うってきめたのマコトだろ」
瀬「リーダーはお前だ」

古「ほら、マコト」

こちらが「なんでお前たちがいる?」そう誰かが声を上げる暇はなく、コントのような楽しいテンポで霧崎の人たちの話は進み、 俺は思わずいつものように笑い転げそうになったんだけど、背後のシンちゃんや先輩たちのこともあって、必死にそれをこらえていた。
そうしているうちに向こうで一通り話がまとまったようで、前髪のひとと、目の鋭いひとが花 宮さんの背をパシリとたたき、ホクロの人がそっと花 宮さんの肩をたたく。最後に気合付とばかりに表情筋が俺の真逆をいっているひとが花 宮さんを俺達秀徳バスケ部の前へと押し出す。
その背後を穏やかな表情、ああ、でも途中からとても真剣な表情で、霧崎のレギュラーさんたちがついてくる。

花 宮さんは、ひとり前面に立たされ、しばらく戸惑ったような表情を浮かべていたが、ひとつ深呼吸をすると――



花「すみませんでした」

霧「「「「すみませんでした!」」」」



秀「「「「「は?」」」」」

花「試合の時に二軍を当てて申し訳ありませんでした!」

キッチリと腰を曲げて、花 宮さん、そしてその背後にいたレギュラーたちが、俺たちに、あの試合のことで謝罪をしてきた。

予想外の展開に思わず俺もシンちゃんも先輩たちもポカーンとしてしまった。

本気で・・・たぶん、きっと・・・気持ちを込めて謝っているのだろう。
彼らはこちらの動揺に微動だにせず、嘲笑することもなく、ただひたすらに腰を折ったままだった。

他校の生徒(知る人ぞしる有名進学校の制服を着た)長身の男とたちが頭をさげている様は、場所が場所なだけにすごくめだち、下校途中の生徒たちから何事だとばかりに視線が向けられる。
なんだかこのままだと、こちらが悪者のようではないかと思えてきた頃、ようやく先輩が「顔を上げてくれ」と告げた。
彼らはこちらがそれを言うまで、まったく微動だにしなかった。

反省しているのかとか、ラフプレーはやめろとか、なんで二軍を当てたとか・・・先輩たちは聞かなかった。
俺としてはどの質問もすっごい気になった。たぶんそれはみんなも同じだったと思う。

ラフプレーをしていたひとたち。

悪童だから。ラフプレイヤーだから。スポーツマンシップにかける。不誠実だから。二軍をあてられた。
言いたいことは本当にたくさんある。
けれどその件に関しては、三年の先輩が今にもかみつこうとしていた緑間や他の部員たちをおさえ、「やめろと言ってやめるようなら初めからしてないだろう」と先輩たちは苦笑して肩をすくめていた。
俺達(例え先輩であろうと)が彼ら霧崎のプレーをどうこできるものではないのだと言われた気分だった。
きっと、俺達が謝罪をのむ条件としてラフプレーの禁止を告げても霧崎側は受け入れはしないだろう。彼らはきっと許されようとは思ってないと、条件をのまずに言葉を返してくる気がする。

向こうは誠意をみせたというのに。
こちらがすぐにカッカして彼らを追い払ったり、喧嘩を吹っかけては意味がない。

誠意――そこに意味があるのだと思う。

だから先輩たちは、言いたいことだっていっぱいあっただろうにそれを飲み込み、何も言わず霧崎の人たちの顔を上げさせた。



俺はその間、先輩が言った少ない言葉の中にあったものについてちょっと思うところがあって、いつもの笑いを引っ込めて思考をすべてそれにだけ向ける。目は  花 宮さんたちの一挙一動を無意識に追いかけ、彼らの内を探ろうとめまぐるしく脳が計算をはじき出す。
そうしているうちに、自分はなんてバカなことをしているんだろうと思った。
何も考えず思うがままに言葉を発し、彼らの望むがままの態度をとればよかった。

言葉の意味を考えた。
そして彼らの動きから内心を探ろうとして、いきついたのは、どうしようもない答えだった。

なんて言えばいいのかな。
言葉にするのはすごく難しい。

なんとなく・・・許されたい。と、霧崎の彼らはそう思ってない気がした。

彼らは俺たちに“話をする”ためだけに、ここにいる。
謝罪は、きっと相手に話を聞いてもらうための手段。

だから話を聞いてくれるまではと、彼らは寒空の中一時間待とうが、周囲の人の視線が自分たちをどう見ようが構わなかったのではないだろうか。

たしかにラフプレーはよくない。
俺のそれはきっと噂通りの霧崎の奴らなら、それは偽善でイイコちゃんとやらの考え方なのだろう。
怪我をさせてまで勝ちたい。怪我をさせるなんてダメ。それはおなじように子供でもわかること。頭のいい彼らなら、俺なんかよりもはるかによく理解してるはずだ。そんなこと百も承知で、それでもなおラフプレーを行っていた霧崎のバスケのありかた。

本当にラフプレーなんかに、意味があるのかはわからない。
けれど、なにか意味がなければ、ラフプレーをする意味がないとさえ思ってしまった。

意味があるのなら。
彼ら以外にはわからない、何かがそこにあるのなら・・・。
それはラフプレーをしかけられたチームも、なにもされてない俺達も・・・だれも口を出していいことではないはず。
彼らにはラフプレーをするだけのなにかしら信念があるのだろうと思う。報復だっていとわないそのプレーは、すべてを理解している彼ら自身以外にとめられるものはないのだろうと、なんとなく思えてしまった。
これで先輩たちが肩をすくめたのもなんとなくわかった気がした。

本当のところはさ。
ラフプレーはさすがにどうかと思うよ。俺としては同じPGだし花 宮さんの本気のバスケはけっこう好きだからもったいないと思う。
霧崎のチームプレイって、火神や黒子や伊月のような特出した能力がある奴がいるわけじゃないのに、誠凛に並ぶぐらい見事なものだった。
あとで試合を録画したものをみせてもらったとき、蜘蛛の巣とよばれたその策略にゾクリとするほど、興奮した。
PGとして本当にすごいと思った。



だからね、シンちゃん。
まぁ、ちょっと落ち着こうよ。

警戒するだけばからしい。

俺たちも普段通りでいようよ。
ほら笑って笑って。

ラフプレーとか、ゲスい性格とか、二軍を充てられたとか。無冠だとか。
そういうのはいまだけは抜きにしようよ。
今はせっかくきてくれたお客さんのお話を聞こうじゃないのさ。





花「きょー兄が、き、宮地さんにこれ渡せって!!」

ふいに宮地先輩となにか話していた花 宮さんが、戸惑うように、しぶるように、鞄をあさると白い一枚の封筒を突きつけた。

花「フハッ。オレは顔も見たくなかったがな!!用は済んだからオレは帰る!」
原「マコォッ!?いまツンデレはいらないよぉ!?」
山「マコト、それ、謝ってないからな」
原「そうだよ!照れ隠しなのはわかるけど、そんなこと言っちゃ、さっきの謝罪が意味なくなっちゃうよ!?」
古「キョウさんは渡せば少しは許してくれるだろうと言っていたが、それを渡せと言ったのは」
山「おい康次郎!?おまえもややこしくなるからだまれよ!!なんであのひとのこと言っちゃうんだよ!」

宮地先輩にペシリとたたきつけられた封筒。
それにさらに呆然とする俺たち。
不思議そうなのと、不機嫌そうな顔をする先輩たち。

霧崎の人はというと、俺達がくるまでにやっていた漫才のような会話がはじまりかけたが、そのまま逃亡しようとこちらに背を向けた花 宮さんを原さんが必死にしがみついてひき止め、古橋さんがなにかしゃべろとしたのを山崎さんがはたいてとめ、呆れたようにためいきをついた瀬戸さんが、花 宮さんの頭をつかむとむりやり俺達の方へ引き寄せそのままお辞儀をさせるように押さえつけていた。

瀬「あー・・・えっと勘違いしないでほしいんだが、こいつはただ恥ずかしがってるだけで。天邪鬼?で。
これでもうちのやつら本気で謝ってるんで。本当にすみません。
キョウさんに言われたのは、宮地さんのご趣味を教えていただいただけなので情報漏はもってのほか、その封筒に変な仕掛けも他意も一切ありません。これは貢物ではなく、その謝罪の一環として受け取ってもらえれば・・・いや、本当に申し訳ないと思っているので、そこだけは理解してやってください」

しゃ、ざい・・・その2だろうか。

瀬戸さんの大きな手で頭を押さえられ再度謝罪をのべた花 宮さんは、怒りにか羞恥にしか、寒さで赤らんだ顔をさらに真っ赤にしていた。
プルプル震えながら「いい加減手を離せ健太郎」と低い声を出した花 宮さんを見て――

原「まるで愛の告白ダネ☆〜ぶふっ」

原さんが宮地さんと宮地先輩の持つ白い封筒と、真っ赤な花 宮さんを交互に見て、おちょくりだした。
その言葉に俺もそれらをもう一度見直し――

高「ブッファ!!!!」

思わず噴き出した。

高「やっべwwwなにそれwwwwシンちゃんきいた?www花 宮さんから、宮地さんへラブレターだってwwwプwwwwww」
緑「ラブレター」
宮「らぶ!?いらねぇよそんなもん!」

原さんと俺の笑い声と緑間のつぶやきに、宮地先輩がカッ!と怒りに顔を赤くすると、手にしていた封筒を地面にたたきつける。
それに花 宮さんが非難を声を上げるが、ごめんwwwwww

花「ち、ちが!?オレが、ぜ、全員の好きなものとかしらなくて。き、宮地さんのしかわかんなかったからっ宮地さんにだけになっただけで!!」
宮「俺だけって…ハッ!?ストーカーかてめぇ!」
花「違うっての!!なんでそうなるんですかぁ!!」

俺、笑いすぎてお腹が痛くて、その場でしゃがみこんで笑ってた。
シンちゃんは必要以上にソワソワとしだし、そのままずれてもいない眼鏡をカチャカチャなおしはじめた。
ちなみに秀徳バスケ部のみなさんは宮地さんと花 宮さんが言い合いを始めたその背後で、口を押えていたり肩を震わしたりして笑いを懸命にこらえている。

やっだ〜ツンデレと物騒wwwなひとのやりとりって、物騒な会話の投げ合いになるくせになんでこんなに、いちゃついてるようにみえるんだろう。
ああ、あれですね。喧嘩するほど仲がいい。

大「宮地、ここはおめでとうといっておこう・・・ブフッ」

宮花「「祝うなー!!!!」」

木「・・・なるほど。喧嘩するほど仲がいいとはよくいったものだ」
高「ぶっふぁぁ!!!!!せ、せんぱいたち、それひどいwwww俺も思ったけどwwwwwwwひー!!!!お腹痛いwwww」
原「www謝罪会見がいつのまにか婚約会見に変わった感じwwwww」
高「あ、原、先輩wwwww腹筋が痛いよしみでアドレスこうかんしましょ♪」
原「いいよwwww」
緑「笑いすぎなのだよ!!!」

花「もういい加減にしろっ!!ちげーって言ってんだろうが!!いいからさっさとうけとれよ!バァーカ!!」

ベシリと再びなげわたされたそれを嫌そうに宮地さんはキャッチしたが、すぐに木村さんにおしつけようとした。
あげくには笑いながら突き返された段階で、もうイライラの限界だったのか「男からなんていらねぇ!」と白い封筒を正面にかかげやぶろうとした。

しかしそれを山崎さんがストップをかける。

山「本当にラブレターでもなんでもないから。頼むからあけてくれないか?」

いままで常識的に原さんと花 宮さんにツッコミをくりひろげていた山崎さんが、ちょっと疲れたような困ったような顔で、真剣な顔だったため、宮地先輩はやぶるのをとめた。
それにホッと肩をおろした山崎さんに続き、古橋さんが発言をする。

古「俺達は、それをあなたに渡すまでは、帰れないんだ。あっちのみ…キョウさんにあとで怒られてしまう」
原「謝罪と、それを渡すのが、目的だったの」

霧崎のメンバーに隠れる位置にいつの間にか移動していた花 宮さんは、そっぽをむいて興味はないとばかりだったが、彼もまたどこかほっとしたように息を吐いていたのを俺はしっかりみてしまった。
封筒の中はそれほど重要なものなのだろうか?

真剣な霧崎の様子に、俺達の視線が宮地さんの手にする封筒に向けられる。


渡されたのはなんのへんてつもない真っ白な薄い封筒。
瀬戸さんの言葉を信じるなら仕掛けは何もないのだろう。
ラブレターでないにしろ謝罪だとしたら、まさか小切手?
たしか霧崎っておぼっちゃまたちのいくような進学校って聞いたから、金でどうこうしようってことだろうか?

ひとりであけたときになにかあっては困ると、その場で封筒を開封する。

封はノリづけなんかもなく、入り口に刃物がしこまれていることもなく、本当にあっさりあいた。
中にはURLと、いくつかの不思議な単語がかかれたメモがでてきた。

原「それね、“冬季限定!謎解きイベント!!六つの謎を解いて○○○○さんにあいにいこう!”の解答とURLね☆」
宮「まるまるさんってだれだよ?」
古「公開されてない。わかっているのはとあるアイドルグループということだけ。そこは謎を解くまでわからない仕組みだったんだが」
山「みゆみゆだ」
宮「なっ!?」
原「あーもう弘ってばなにさっさとネタ暴露してんのぉー」
古「キョウさんから情報を聞いたマコトが一生懸命解いたものだ。心して受け取れ宮地清志」

宮地さんが口を開けたまま固まっていた。
微かに「これは噂の・・・実在したのか!?」と目を見張っている。
感動に打ち震えている様子からして、とんでもないゲキレアの招待券へのヒントだったのだろう。
花 宮さんはそんな宮地先輩の様子に満足したのか、霧崎の人たちを連れて去っていこうとする。

「あの・・・」

とっさに、その手をつかんで、思わずひきとめていた。

たぶん無意識。
ん?俺?違う違うってwwww
花 宮さんを引き留めたのは、俺じゃないよ。
え?だれって―――シンちゃんだよ。

花「なんだよまだなんかあんのかよ。もう謝罪はしねぇしお前らに用は」
緑「ちがうのだよ!今度、俺と、いえ、俺達とバスケをしてほしいのだよ。あなたのしているプレーは嫌いだが、あなたのバスケは嫌いではないのだよ」

高「デレキターーーーーーーー⊂⌒~⊃。Д。)」

花 宮さんはすぐに断るかと思った。
現に、緑間の手を振り払おうとして――

ん?

緑「花 宮さん?」
花「・・・・・・やっても、いい」

霧「「「「まことぉ!?」」」」


振り返った花 宮さんの視線がなにかをとらえると、驚愕に目を見開き、そのままなにかにくぎずけになったまま動かなくなる。
唖然としたような顔のまま、しばらくして零れ落ちるようにおちた小さなつぶやきに、今度は霧崎の人たちが驚きに目を見張る。
花 宮さんが何かをたくらんでいると一瞬あやしんだが、その呆然とした表情からは、なにかしかけようにも、まずなにかを考えている顔ではなかった。
あぜんとしているというべきか、ほおけているというべきか・・・なんか宮地さんがたまにあんな顔をしてる気がする。
目の前で手を振っても、反応がない。
緑間が握ったままの手に力を入れてもピクリともしない。
原さんが背後から花 宮さんにだきついてもまったく反応がない。

なにをみてるんだろう。

なにげなく花 宮さんの視線をたどれば、そこには花 宮さんはくいいるように緑間の鞄を見つめていた。
そこで目の良さをいかし、もっと花 宮さんの動向を探っていれば、鞄ではなく、そこからのぞく古びたすこしばかり痛んだポスターの筒がみえている。

シンちゃんも花 宮さんが何を見てるか気付いたみたいで、不思議そうに首をかしげていた。
花 宮さんの背後から、同じように視線の先を探していた原さんは、ふいに何かに気付いたように「ゲッ」と声をあげた。
それに反応してヒョッコリと花 宮さんのわきから顔をのぞかせた山崎さんが、二人がみているものを目にして原さんと同じように顔をひきつらせた。
つづいて山崎さんは呆れたようにもあきらめたようにもみえる表情をみせた。錯覚だろうか。
そんな山崎さんの背を古橋さんが、いままでよりもさらに死んだようなうろんな目をして慰めている。

いったいぜんたい花 宮さんはなにに気付いたのか。

緑間の、何度か自分の鞄と花 宮さん、そして宮地さんをみやるように往復した視線がさまよったあと、なにか納得したようにシンちゃんは一人頷くと、これですねと花 宮さんにソレを手渡した。

緑「どうぞ」
花「え」
緑「おは朝によれば、欲しい人にあげるべきだということだったのだよ。宮地さんもあげていいといっていたし。いいのだよ」

シンちゃんがおは朝のラッキアイテムをあげただと!?
花 宮さんに手渡したのは、みゆみゆの数年前のポスター。

いまではもう手に入らないらしいが、いぜんはお菓子かなにかのおまけについていたもので、宮地さんはまだ予備を山のように持っているらしい。
もちろんだからこそ、譲渡しても問題ないものだ。

花 宮さんはミユミユのポスターをガラスかなにかのように受け取ると、「こんなすごい物本当にもらっていいのか?」とじゃっかん目に不安の色を浮かべ、けれどそれを手にしたときには目を歓喜に輝かせていた。

緑「すごい?かは、わからないが、それが貴方にとって大切なもので、ただで受け取れないというのなら・・・かわりにいつか試合をしてほしい、のだよ」
花「え。そんなことでいいのか?フハッ。なら、いつかな」

緑間からうけとったポスターを花 宮さんはそれはそれは大切そうに抱きしめ、病的なまでに白い頬をうっすらと赤く染め、心底うれしそうに花 宮さんは笑った。
陰湿さのかけらもないその笑顔に、思わずひかれてしまうようなものだった。
こっちの胸の仲間でほっくりするようなそれに、同じ趣味を持つと知った宮地さんが無言で近寄り、ニコニコ笑顔で頭を撫でている。
花 宮さんは、なでられていることさえ気にせず、「手に入らないと思ってた!」とポスターをさらに抱きしめくすぐったそうに笑っている。

なんだこういう顔もできるんじゃんって思った。

周囲に花を飛ばしそうな勢いで笑っていた花 宮さんの背後で、その様子をバッチリカメラにおさめている古橋さんがいた。
山崎さんと原さんが、「せっかくの脱オタク強化合宿が一瞬で無駄に!」「花 宮がまたアイドルに走った!!これもすべてキョウさんが宮地さんの趣味を教えたのが悪い!」と頭を抱えて叫んでいた。
そんな二人を眠そうな瀬戸さんが頭をなでている。





―――花 宮真はアイドルオタクだった!


花「ありがとう緑間!お礼はかならずするから・・・・・なんていうわけねぇーだろ!お前らの笑顔なんかいらねぇんだよ!しかめた顔の方がオレには最高のご褒美だ!これでも食って顔をゆがめてろ!バーカ!」

ふんわりと可憐に微笑んだ。
かと、思いきや、花 宮さんはシンちゃんにむかって、銀色の包みをポイっとほうると、脱兎のごとく駆け出してしまう。
走っているせいで彼の髪の隙間から見える耳やら首までとても真っ赤で、手には相変わらず大切そうに慎重に優しくポスターをもっていることからして、照れ隠しなのは一目瞭然だ。

ツンデレ仲間だからか、シンちゃんもそれがわかるのか、なげられた板のようなものを手に、ダダダダとばかりに駆け去っていく花 宮さんに苦笑を浮かべているだけ。

霧崎の人たちは、花 宮さんがオタク道に再度足を突っ込んだのをある程度黙認することにしたらしい。

原「ほんと、こまった主将でごめんね」
木「いや、まぁ、いろいろい言いたいことはわかった。お前らも大変だな。ガンバレよ」

苦笑しつつもそれでも原さんも山崎さんも「ラフプレーとか関係なくて」「友だちだからほおっておけないんだよ」と、花 宮さんについていくのは変える気がないようだ。

やっぱり霧崎って仲がいいなぁ。

彼らは今追いかけてもツンデレは逃げるだけだからと、ゆっくり花 宮さんの後をおいかけることにしたらしい。


高「ところでシンちゃん。なにもらったの?」

俺は花 宮さんが最後にお礼として緑間に渡したものが気になり、ヒョイっとその手の中にあったものを覗き込む。

宮「なんだこれ?」
大「ん?チョコ、レート?みたことないパッケージだな」
高「ちょwwみて、もうこれwwwwカカオww100%wwwwwたしかにwwwこれはwwwwぶっふぉwwwwこれはみんな顔が歪むだろうけどwwwwもうww食べ物じゃないwwww」
緑「どんな嫌味なのだよ?」

なんとカカコ100%のチョコレート。
前、面白半分で95%を食べたけど、あれはもう本当に泥用だった。味なんかしなかった。
これはやはりお礼ではなく、言葉の通り他人の不幸は蜜の味を体現してほしかったのだろうか。
さすがにこれはないわーっと思っていたら、霧崎の人たちが驚いた顔でせまってきて、緑間の手の上のチョコレートをみて目を丸くしていた。

古「えカカオ100%だと!?それは!?」
原「まじか!?」
山「マコトが好物を人にやるなんて!?」
瀬「それわかりずらいけど、嫌味じゃないから。好意だ」

花 宮さんからいただいたものは、やはりお礼として渡されたらしいと知った。



原「マコトがデレたーーー!!!!」

叫んだ原さんが突然倒れる。膝ガックンだとぉ!!!??

原「うわっ!?ちょ、なにす・・・あ、マコ、お帰り〜。今日はいつにもましていいデレっぷりだったね」
花「ちげーよ!!デレとか意味わかんねぇーし!あれが俺以外食えないってのは知ってんだよ!それで顔でもしかめてればいいって・・・そういう話だっての!!デレてねぇよ!
あ、お時間が空き次第連絡ください。そちらのPGとうちの原が連絡先交換してたんで、そいつらに行ってもらえば、こちらで都合をつけますから」

原さんが大歓声を上げたとき、俺の視界に黒い物がよぎったととおもったら、走り去ってしまったはずの花 宮さんが肩で息をつきながらそこにいた。
そのまま原さんを背後から蹴り上げひざがっくんすると、相変わらず大切そうにポスターをかかえたまま、花 宮さんは、デレを全否定し、その後真面目な顔をすると秀徳バスケ部の三年の先輩たちに向けて一息で再選の約束を取り付けた。

花 宮さんは笑っている原さんを引っ張り、申し訳なさそうに頭をペコリとさげる山崎さんをひきつれ、古橋さんが(ついに寝た)瀬戸さんをかついで・・・
霧崎のみなさんは帰って行った。



まるで嵐が通り過ぎたような気分だった。





後日、宮地先輩は、都市伝説に近いイベントへの招待券をゲットし、会場で花 宮さんと意気投合したとか。
物々交換の約束までしたらしい。

そして秀徳と霧崎第一との関係はといえば、緑間の望みどおり再試合を行うことができた。
もちろんラフプレーはしていない。
あれ以降、秀徳バスケ部内では、霧崎に対して警戒心どころか歓迎ムード一色だ。 ことの原因はもちろん花 宮さんで、霧崎は遊びに来るたびに、その完成度の高い戦略とチームワークをみせつけてきた。 それに加え、花 宮さんの監督しての手腕の素晴らしいこと。気付けばライバルとか他校とか関係なく部員たちを指導している花 宮さんの姿が目に留まるようになった。

同じPGとしても花 宮さんの会話はきいていて面白い。
合同で行われる練習試合は、自分が成長してるのがよくわかると部員たちの間でももっぱら評判だ。

結局、みんな仲良しだってさ。
いいことだね。


一番仲良くなったのは・・・



花「宮地さーん!はやくはやく!!こないだのガッツリビデオ撮りました!早く家帰って観ましょう!」
宮「まじか!?あ、これ、ミユミユがデヴュー当時のイベントビデオな」
花「わー!!ありがとうございます!さすが宮地さん!」

――いうまでもないけどね。





 









:: オマケ ::

<本日のラッキーアイテム☆>

蟹座のあなたは――
アイドルの古いポスターを複数もっていくといいでしょう♪
古いアイドルじゃだめよ。ポスターが古い方がより運勢は上がるはず!
ほしがっている子にあげると、あなたの運勢は今日からどんどん上昇傾向☆


山羊座のあなたは
今日は勇気を出して!さぁ一歩を踏みだそう!!
ラッキーアイテムはラブレター!
今日はきっといい日になりそう!頑張ってね!



――翌日

「蟹座のラッキーアイテムは、カカオ100%のチョコレート!
これであなたの運勢もばっちし!」



高「シンちゃん・・・」
緑「ああ・・・」
高「おは朝マジぱねぇーwwww」
緑「なのだよ」








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