花 宮≠花字E |
: 原 作 世 界 【 side 原作よりの原 】 花 宮…だと二人いてややこしいから、俺達の世界の花 宮を“真”って呼ぶよ。 あっちの世界の花 宮は“字さん”ね。 字さんは笑って『大丈夫だ』っていうけど、真が無事か心配で仕方ない。 その真と字さんが入れ替わって一週間。 なのに二人がもどる兆しはまだない。 その間、俺たちは字さんにつきっきりだった。 だってあのひとは警戒心の塊のような真と違って、オレたちが目を離したすきに消えてるんだ。 しかもかなりの頻度でからまれているか、いろんなことにちょっかいをだしている。 そりゃぁ、目を離すのも怖くなるって。 ――ほら。 また。 いまだってちょっと飲み物を買ってくると席を外しただけなのに、元の場所にいない。 嫌な予感がして周囲を見渡せば、水色と赤色の二人が歩いているのが見えた。 その背後に駆け寄っていく黒い姿。 原「古橋!字さんいた!!」 古「捕捉した!」 一緒に探していた古橋が走り始める。 別の方から字さんを探していた瀬戸と山崎も字さんを見つけたようだ。 どうか字さんが何かをしでかす前に捕まえられますように。 字『“友”!!元気だったか!』 俺達が全力で走っても間に合わなかった。 字さんは真じゃぁ絶対しなそうな嬉しそうな表情をして、そのままあの影の薄いので定評のある黒子に抱きついていた。 俺達があちゃーっと思ったときには、『あれ?“友”がオレより低い?』っと目をパチクリして字さんは黒子から離れた。 どうやら字さんの世界では黒子を“友”と呼んで、挨拶がてらに抱きつくぐらいの仲良しのようだ。 話には聞いていたけど、向こうの世界の花 宮は身長の低さから黒子と同盟を組んでいたというのは本当のようだ。 っが、しかし。 忘れてはいけない。 ここは花 宮字の存在しない世界。 そして花 宮真と誠凛は死ぬほど仲が悪い世界である。 そう。いま、字さんの身体はこっちの世界の花 宮真のもので、ここが自分の世界でないのを忘れて黒子に飛びついた字さんは、うちらと誠凛の関係も身長差もわかってなくて――。 火「“悪童”!?なんでこんなところに。あ、黒子を離せ!」 黒「だれが・・・」 字『やべ。まちがっ』 黒「低いだ!!!!!」 はじめは字さんの顔を見て驚いていた黒子だったが、相手が誰かわかると、顔をうつむけプルプルと肩を揺らし―― ドゴッ!! 顔を上げたときには、容赦なくあの試合で使っていた恐怖の掌底を字さんに打ち込んでいた。 世界そのものが違うのだとようやく思い出したらしい字さんが焦った表情で、黒子の肩から手を離していたが、弁解は間に合うことはなかった。 いい音がしてえぐれるように見事なイグナイトとやらが字さんの腹にきまり、字さんがぶったおれる。 ああ・・・真の体なのに。 止めに入ろうとしていた古橋なんか悲鳴を上げている。 瀬戸は呆れたように字さんを見て、ため息をつくと乱れた髪をかきあげて、倒れた字さんを回収に向かった。 ザキは「字さん!?」と彼の名を連呼している。 本当にね。もうかんべんしてよ。 字さん、それ、真の体だよ? 古「字さんが、字さんが・・・!!ごめん真!俺は、俺は・・・!!花 宮を!二人とも守れなかった!」 山「ちょ!?掌底ぐらいであの字さんがたおれるとか!?どんだけだよ黒子!ちょっとしっかりしてくださいよ字さん!おーい!字さんってば!!あんたが倒れて真に怒られるの俺だっての!」 瀬「はぁー・・・。真が帰ってきたときが怖いな。怒り狂う真が目に見えるようだ」 原「だよねー」 本当に怖いよ。痣とかできてたら、きっと真、怒るよね。 とりあえず俺たちは意識のない字さんを瀬戸の背中にのせて、さっさと帰る準備をする。 本当に字さんやらかしてくれるんだから。 一昨日はたしか優等生演技を放棄してすっごい笑顔で体育の授業のドッチボールやってたし。授業中に逆に先生の言ってることが分からないと何語かわからない言語で質問してたし。 もうほんと、かんべんしてほしい。 わけがわからず呆然とする誠凛のイイコちゃんたちからさっさとにげるべく、視線を向ければ、相変わらずの無表情の黒子と視線が合う。 黒「あの」 原「あ、ごめんね誠凛の君たち。 花 宮のやつ“トモチャン”と黒子を見間違えちゃったみたいだから! わるいんだけど、できればこのまま許してやってくれないかな。あと俺たちも見逃してくれるとありがたいんだけど」 山「じゃ!そういうことで!」 古「今回はこちらがわるかった。すまない」 俺たちはこの場をさっさとやりすごそうと字さんをおんぶした瀬戸に視線でせかされ、あわただしくその場を去ろうとした。 んだけどねぇ。 黒「ちょっとまってください!」 なぜか黒子クンにつかまったよ。 俺の服の裾をつかんで、その水色の目が意識のない字さんの様子をさぐるようにみる。 うっわー。 これ、もしかしてよくわかんないけどヤバイパターン? 火「黒子?」 黒「おかしくないですか?」 火「?」 原「え、えーっとなにが?」 黒「あなたたちの会話だと、まるで花 宮が二人いるみたいに聞こえるんですが」 あちゃー。 ばれちゃったみたい。 どうしよっかとみんなをみやれば、それぞれがしまったとばかりの表情を浮かべてた。 原「やっちゃったねぇ〜?」 山「俺たち、けっこう焦ってたんだな。字さんのこと普通に名前で呼んでたわ」 瀬「・・・すっかり忘れていたな。彼を字さんと呼ぶのに慣れすぎていた」 俺と瀬戸とザキで盛大にため息をついて、どうやって隠ぺいしようかと考えていたら、ふいに古橋が真面目くさった顔でキリっと表情をあらため―― 古「そうだ。真と字さんは別人だ」 イイコちゃんたちにむけて、胸を張って宣言してくれた。 なに言っちゃってんのお前! 今、その別人ってことをどうやってごまかそうかって(視線でだけど)相談してたところだろ。 相手は誠凛のイイコちゃんだよ。真と勘違いしてしかけてくる相手とは違うんだよ! 先週あんな試合したばっかの相手だよ! 山「おまっ!言うなってあれほど!」 古「こうなってはいまさらだろ」 山「てめぇ!ひらきなおりやがったな」 原「しょうがないよ。字さん、めっちゃ順応性高いから。こっちも引きづられちゃうし」 ザキィ〜俺たちの代わりに古橋殴っといてよ。 そんでもって。 これはもうしょうがないね。 瀬「はー」 原「ドンマイ。まっ、もういいよ。ばらしちゃおう」 瀬「聞いての通りだ」 黒「僕はもしかして別人を殴ってしまったんですか」 火「どういうことだ?」 焦ったような表情の黒子に、わけがわからにとばかりにハテナマークを浮かべてこちらを見てくる火神。 うん。きっと真がいたら、「年上には敬語だろ?」とか嫌味っぽく訂正するんだろうなぁ。 そんなん俺達からしたらどうでもいいけどね。 原「このひと、“真”じゃないってこと」 火「マコト?誰だそれ?」 黒「花 宮真ですよ火神君。つまり。彼は悪童のただのそっくりさんです」 古「字さんはたまたま上京してきたところを真と勘違いされてからまれていたからな」 山「居合わせた俺たちがそれ以降そばにはりついてるんだよ」 原「字さん、真と違って目を離すとすぐどっかいっちゃうからね」 山「二人、そっくりだからさ。ラフプレーの報復されかけたりするんだよ」 瀬「俺達はそれも含めて“こっち”にきていた字さんの面倒を“花 宮”にまかせられているだけだ」 原「っで。街を案内ついでに一緒にいたってわけ」 黒「二重人格とか・・・じゃ、ないんですか」 古「なぜそう思う?」 黒「親戚が来たのにそれを迎えるはずの花 宮さんだけがいないのはおかしいって思って。・・・あとは、僕の知り合いがそういうのに近い症状があって」 瀬「まだ多重人格の方が楽だったな」 山「だな」 古「“本当の花 宮”は、いまはいない。“字さんの家”に行ってるんだ」 黒「え?」 原「真があっちに行って、かわりに字さんがこっちにきている。だから字さんはいま真の家に住んでる。交換留学生みたいな状況っていえばわかる?」 よかった。字さんと初日に打ち合わせしといて。 嘘があんまり得意じゃないザキもスムーズに言えたしね。 誠凛の影が薄い子は、趣味が人間観察といわんばかりの観察眼があるようだから、いろいろ心配だったけど。 どうやら俺達の渾身のごまかしを信じてくれたようだ。 とはいえ、嘘は言ってないよ。 ちゃんとした正解も言ってはいないけど。 でもああいえば、必然的に相手は、真と字さんを親戚かなにかと勘違いするだろう――っていう字さんの作戦は、大当たりだったみたい。 さすが別の世界とはいえ“花 宮真”だね。 本当はもっと細かい設定とかなんやらあったけど、今の俺たちにしてはよくできた方だと思う。 色んな事がいっぺんにあったからかなり焦ってたしね。 まぁ、あの【相手に勝手に勘違いしてもらおう作戦】をまさか誠凛のイイコちゃんに使うとは思わなかったけど。 そもそも会うことじたい想定外だったけどね。 その後、黒子はなにか考え込むようなしぐさの後、意識がないとわかっていても字さんに「僕も間違ってしまってすみません」と謝罪していた。 ああ、うん。 黒子クンって、真が嫌いそうな根っからのイイコちゃんだね。 黒「ところで先週の試合は・・・どちらが?」 原「ああ!あれね。あれは真の方だよ」 たぶんあのとき真が突然倒れたのは、向こうの世界で字さんがドンミスして影響が真にも出た感じ? だって向こうの世界での字さんの生活を聞いたら、とんでもない不幸体質みたいで。 ほかにあの状況で入れ替わる原因なんて思いつかないよ。 だからきっと試合後に真が倒れたのは、“そういうこと”なんだと思う。 びっくりさせちゃったよねあの時は。 瀬「・・・黒子。お前が心配しているのは、字さんと真が入れ替わっていたかということだろう?」 黒「あ、ああ、はい」 瀬「安心しろ。字さんと真が入れ替わったのは今回が初めてだ。お前が恨む相手は真だけだ」 黒「それならよかったです」 瀬戸ぉ。いいこと言うけど、真が帰ってきたときが怖いよ?いいの? 前髪のせいで見えているとは思えないけど、視線を向ければ、かまわないとばかりに頷かれた。 まぁ、俺達だって報復があるかもしれないってわかっていてラフプレーしてるもんなぁ。 誠凛の奴らに恨まれるのなんて今更だったね。 でも字さんはラフプレーなんかしてないって言ってた。 だから 山「黒子、字さんは俺「関係ないからな」…かぶせんな!!」 黒「本当に?」 古「ない」 原「そうだよ〜ん。字さんはラフプレーなんかしない。俺達とは関係ないから。俺たちや真が嫌いでもいいけど、字さんのことは違うんだってわかってあげて」 字さん、かわいそうな人なんだから。 ラフプレーしてないのにしたって言われて、一緒に試合とかしてたまたま怪我とかしちゃったやつらが字さんに全部の責任なすりつけてくるんだって。 でもこっちの世界では不幸体質発動してなくて。 それでなにも起きない普通の生活に、感動したり幸せ感じちゃうぐらいの不幸体質なんだから! バスケも楽しいって! だからこれ以上字さんを苦しめちゃだめだ! 俺たちはわかってい てラフプレーをしている。 だけど字さんは違うんだ。 せめてそれを目の前のこいつらだけでもいいからわかってもらいたかった。 字さんはただの不幸体質なんだ!! ってことをさ! 本当は、あっちの世界のみんなにわかってもらいたいけど。世の中って本当にうまくいかないよね。 + + + + + + 花 宮は最近挙動がおかしい。 何かを探すように、ふいによく空を見上げる。 どこで買ったのか、大きなもふっとしたぬいぐるみが気付けば花 宮の部屋にあった。 ロッカーの中にも小さいけれどぬいぐるみがおいてある。 瀬「真、落ちつけ。大丈夫だから」 山「マコぉ大丈夫か?なんなら今日はお前の好きなもんつくってやるぞ?」 古「・・・真」 原「あーあ。すっかり真ってば、トラウマになっちゃって」 風船ガムをプゥーっとふくらませながら、俺は思わず笑ってしまう。 部室でモフモフな人形を抱きしめて、ガタガタ震えている真はまごうことなく、俺たちの花 宮真だ。 なんとあの誠凛のあの影の薄いやつが字さんにくらわした強烈な掌底、あれで、入れ替わっていた二人が元に戻った。 おかげで目を覚ました真は、腹の痛みにのたうちまわっていたけどね。 っで。 問題はそのあと。 どうやら向こうの世界では一か月の時間がたっていたようで、字さんの不幸体質をそのまま体験しちゃったらしい俺達の真は、些細なことにも怯えを見せるようになった。 いわく、建物のそばを通るときは必ず鉢植えが降ってくるので、頭上を見上げるのだとか。 交差点では飛び出しそうになる人間に巻き込まれる。 巻き込まれて花 宮がプチ不幸を味わっていると、どこかでラッキーフラグがたつらしい。 たとえば、花 宮がつまずいて道路の手前でこける。その花 宮の前を歩いていた人間は見事に巻き込まれ、吹っ飛ぶようにして転がるようにして転倒。 花 宮はそのまま顔面を地面にぶつけ怪我をおうが、花 宮に後ろから背を押された人は―― なんと突然曲がり角を曲がってきた秀徳の高尾とやらがひいていた自転車をつけたリヤカー(チャリアカーというらしい)に轢かれるのをまぬがれたそうだ。 つまり衝突事故を免れたらしいということ。 聞いていた以上に、字さんの不幸体質はすさまじかった。 俺達が「花 宮」と呼んだら怯えられ、「真でいい」と訂正された。 どうも向こうの俺達は性格が違いすぎるらしく、花 宮と呼ばれるとまだ向こうの世界にいるような気分になってしまって怖くてしょうがないようだ。 俺達からしたらたかが一週間だったけど字さんとの濃い生活のおかげで、すっかり俺たちの花 宮を「真」と呼ぶのに慣れてしまっていたから、それはそれでちょうどよかった。 そんなこんなであっちの俺達と区別をつけるため、入れ替わりが終わった後も名前で呼んでいる。 原「それにしても字さんの体質に慣れてない真がよくあっちで無事だったよねぇ」 山「だな」 花「ろ、ろじゃーさんと、キョー兄が助けてくれた」 じゃなきゃ、オレは死んでいた。 そう、青い顔で語る真は、はっきりいって完璧に精神的にまいってるみたい。 たしか“キョーニイ”ってのは、たしか秀徳の宮地清志のことだったけ。 字さんの幼馴染みっていってたなぁ。 真の話を聞くとロジャーさんっていうのは賢いペットみたいななにかってのはわかるけど、その話は字さんからは聞いてないなぁ。 今度聞いてみよう。 真はあっちの世界からかえってきてから様子がおかしいんだ。 モフモフな癒し的な何かがないと、最近は碌に平常心を保ってられないほど。 あまりの憔悴具合にみていられなくて、思わず古橋が真のためにと人形を買って部室においておいたぐらい。 あるときなんか道で誠凛の奴らにあったとたん泣きそうな顔で黒子に抱きついていた。 あんなに毛嫌いしていたイイコちゃんに抱きつくなんて!?思わずこっちが驚いたよ。 黒子は驚いた顔をしていたが、抱きつかれたことでまた字さんだと思ったようだ。 現に真も「友!」と叫んでいたらから、まちがったのもしょうがないのかもしれない。 火「えーっと、もしかして“アザナサン”の方か?」 黒「すいませんアザナさん。僕はトモサンではないのですが」 花「あ…あ、アザナ。アザナ怖い。アザナ怖いアザナ怖いアザナ怖いアザナ怖いアザナ怖いアザナ怖いアザナ怖いアザナ怖い。トモ、レイ助けて」 黒「え?もしかして“花 宮さん”ですか?」 火「帰ってたのかあんた。ってか、まじで本人か?」 怒りも真の様子にしぼんでしまったらしく、罵声を浴びせ手来る前に意味が分からないときょとんとしていた誠凛のやつら。 俺たちは周囲をおびえた目で見まわす真を黒子たちから引き離すと、顔をゆがめて青い顔をしている真にぬいぐるみを持たせてなんとかおちつけさせる。 山「ほら真。くまさんやるから落ち着けって」 花「壺…壺が降って……電車、ひかれかけて死ぬかと…チャリアカー痛かった…キョー兄がドル、ドルオタで…みゆみゆがオレの、 オレの机にあって…部室に……顧問が甘党で…クローゼットたおれてきて…‥くじ引き全部横の奴が当たった… アザナと母さんの服のセンスヤバイ…オ、オレ、あっちはまだ死にたくないのに《報復上等》って服着せられた…妖怪がいつのまにか部屋に侵入して……キョー兄ぃ…。 ・・・フハッ!あー・・・やべぇわこれ。オレ死んだわ」 ああ、こりゃぁだめだ。 そうとう怖い目にあったらしく、字さんをほうふつとさせるものを聞くと、真の意識が回想モードに入ってしまう。 真ってば、視線が遠い過去の情景を見るようになにもない場所をみている。 そのまま字さんへの罵倒が念仏のごとく流れるのに、俺達はもう苦笑を禁じ得ないわけで。 誠凛の奴らまで、思わず心配げにこちらに視線をむけてくるほどだ。 相「なんだかよくわかんないけどそうとうひどい目にあったのかしら?」 日「日頃の行いのせいだろうよ。木吉の足を壊したんだ自業自得だろ!」 降「悪童にくまさんって…ちょっと、ちょっとかわいいかも」 木「どうした花 宮?」 日「お前はなんであんなやつ心配してんだよ!」 金「“黒子と火神はなにかしってるのか?”だって。水戸部が」 火「えーっと、えーっと・・・っすね。あ!こっちが“花 宮真”だ。です!」 誠凛「「「「「「それでわかるかー!!!!」」」」」」」 黒「ぶっ!悪童ざまぁ。です。 アザナさんと入れ替わるからですよ」 花「誰があんなやつと変わりたくて変わるかよ!!!」 お前もあいつの身代わりになればわかる。ラフプレーの報復の方がましだ。 青い顔をさらに白くして語る真は、その腕にモコモコのくまさんをだいたまま、もう怒鳴る気力もないのかふらふらと誠凛の奴らを無視して歩いていってしまった。 花 宮は二人いる。そんな事情を知っている黒子と火神にあとをまかせることにして、俺達はあわてて後を追いかけた。 きっと黒子たちはこっちに都合のいいように語ってくれるだろうだから、気にすることはないだろう。 真は向こうでの一か月は夢だったと無理やり意識を切り替えたり、自己暗示までかけていたようだが、あまり効果はないようだった。 なにせみゆみゆのイベントに無意識に行こうとしている時点でアウトだ。 お前はすでに洗脳されている! そりゃぁね、さすがにあわてて俺達がひきとめたよ。 オタクなそんな花 宮なんか観たくない。 俺達がとめたことで真はハッと我に返ったけど、自分が無意識にオタクのようなダサイ恰好をしていて、 さらにアイドルのイベントにいこうとしていたのに気付き、ワナワナと震えて絶望していた。 これが“影響力”かと。 俺たち全員が、向こうの世界の恐ろしさを身に染みて感じた瞬間だった。 それから真が完全に落ち着きを完全に取り戻したのは、真がもどってきてから一か月以上たった後のことだった。 不幸が訪れないこっちの日常に慣れるまでに、それだけの時間がかかってしまったのだ。 それまでは周囲のすべての現象が信じられないようで、真はしばらくはどんなことにも慎重だった。 あと、向こうで植え付けられた変な概念を拭い去るのが大変だった。 主にみゆみゆがどれだけすばらしいとか。そのへんだけどね。 U←BackUTOPUNext→U |