花 宮≠花字B |
: 原 作 世 界 【 side 原作よりの原 】 試合終了後すぐに花宮を近くの病院に担ぎ込んだ瞬間、タイミングよくパチリと目を覚ました花 宮は、 『ただの貧血です』とそれはもうとんでもなくきれいな笑顔(ただし背後に恐るべき負のオーラ漂う般若を背負っていた)で医者を言いくるめていた。 その無言の威圧にも耐えきった医者は何度も検査入院をすすめたが、花 宮はそれをもっともらしい嘘でもって丸め込んでいた。 『二週間前に別の病院で健康診断をして何もありませんでした』『実は昨日夜更かししてしまって。朝ごはんも抜いてしまったので、寝不足と貧血です』と、俺たちからしたら嘘だとわかる言い訳をかました。 それでもまだまだ言いつのる医者に、花 宮はその巧みな頭脳と言葉の切り返しでもって、医者を納得させ、その日のうちにあっさり帰宅してきた。 そんなに帰りたかったのかなぁ。 俺たちは試合会場での花 宮の様子から、もしかして記憶障害を起こしているんじゃないかと疑っていた。 だから俺たちは、できれば花 宮に検査を受けてほしかった。 それにまたあんなふうに突然倒れるんじゃないかって、不安があったんだけど。 そんな俺たちの頭を花 宮はペシリとたたいてきた。 『原因はわかってんだよ。だから心配するな』 花 宮の後をついて歩く俺たちをみるなり顔をしかめた花 宮は、困ったように笑って『すまないな』と言った。 なんとなく。本当になんとなくだけど、花 宮はそんな謝り方をしただろうかと、思ってしまった。 横を見れば花 宮大好きな古橋が、眉をしかめて険しい顔をしている。 瀬戸は――なにを考えているのかわかりづらい。 「花 宮・・・」 『なんだ?』 瀬戸が何かを確かめるように、名前を呼ぶ。 それに戸惑いもなく即返事が返る。 その流れに不自然さはない。 もしかして花 宮ではないのでは? でも。いまのは花 宮に違いない返答の仕方で。 どっちが正しいのかわからなくなって困惑する。 “違うかも”。そう思わせる雰囲気の違いがあったのは、瀬戸も含めた霧崎のレギュラーみんなが感じていたこと。 だから花 宮が寝ている間に、瀬戸が会話の途中途中で確認の意図を込めたひっかけをするという話になっていた。俺たちはそれにあわせるだけ。 だけど怖いと思う瞬間がたびたびある。 目が覚めた花 宮は、俺たちのしっている花 宮じゃない気がして。 怖かったんだ。 『バァーカ。お前ら、なにそんなしょぼくれた顔してんだよ。“お前らの花 宮”は無事だ。 ためさなくとも聞けばいい。オレは答える。なんでもな』 「「「!?」」」 「しって、いたのか」 不安だった。 そんな俺たちの心境さえ分かっていたようで、花 宮は困った子供をあやすように、苦笑を浮かべ、俺たち全員の頭を優しくなでていく。 だけどそれこそが"答え"のような気がした。 俺たちが知っている花宮なら、俺たちの頭をなでるなんて、そんなことしない。 『家についてから全べて説明する』 その言葉につい頷いて、俺達はただただ花 宮についていくだけだった。 その際に、自分の家が分からないというミラクルが起きて、やはり記憶喪失を疑ったけど。 というか、花 宮についてくのではなく、花 宮を家まで案内する羽目になった。 いやいやいや!逆だろふつうは!! ついてこいと言った本人が案内されてちゃわけないよ! それから花 宮は、自分が一人暮らしだと知り、目を丸くしていた。 がっ、しかし。その理由が一人暮らしだったからというものではなく、自分が知っている家と真逆で霧崎から若干遠いことが原因だとか。 驚く場所ちょっと違くないか? 『 "オレ" ってすげぇ忍耐あったんだな』 「え?」 『一人暮らしなのに、学校から遠くから通うってすごいな。よくこんな効率が悪くて、めんどうなことできるなと思っただけだ』 あれぇ?花 宮ってこんなズレた思考してたっけ。 思わず首をかしげた。 っで。それから家にはいり、ちゃっかりもののの位置は覚えていたらしく、自然な感じでカップやらお茶やらを手際よく用意してくれた花 宮に促されリビングのソファーに好き勝手に腰を落ち着けたところで。 『記憶喪失じゃないからな』 先にくぎを刺された。 「ああ。それは「さっき、家の中を自由に動き回っていたことでわかっている」かぶせんな!」 『ん?判断基準はそこなのか?なら、悪いがそれはアテにはならない。 コップがどこにあるかとか、何があるかとか。すべて勘だからな』 「は?」 「どういうことだ花 宮」 古橋が真剣な目をして聞き返せば、花 宮はニッコリと幼いようにも見える無邪気な表情で笑った。 らしくない。 いつもの花 宮じゃないよ!! 『オレ、平行世界の花 宮ですから』 「「「「はぁ!?」」」」 説明をしていけば、自分たちの花 宮がいなくなったという事実に驚いて言動挙動がおかしくなっているあいつらを招きよせ、花 宮は全部ひっくるめてあやすように抱きしめてくる。 「本当に、ちがうんだな」 『ああ。どうやら“オレ”と“お前らの花 宮”とではかなり違いがあるらしいな。 はじめに性格が違うのは、周囲の状況から把握済みだ。お察しの通り、オレは“花 宮であってお前らの知る花 宮”ではない』 だましていたわけじゃないが、状況を把握する時間がほしかったのだ。 そう告げる花 宮に、オレたちは徐々に理解する。 手を離され、今度はしっかり正面に立つ花 宮をみる。 観察していればわかる。 口調とか癖とか、同じ部分が結構あるのに、みせる表情が違う。 それに――ああ、違うんだなって。みんなが自然と納得させられた。 「なるほど。花 宮の中身が誰かと入れかわったようだな」 『“だれか”じゃないぜ。オレだって“花 宮”だ』 目の前の花 宮は、やはり花 宮じゃないのだ。 花 宮が言っていることは、本当は瀬戸以外はたぶんいまいちよくわかってない。言葉遊びをするように、彼らしく相変わらず難しい。 でも自分の知る花 宮とは違うんだなっていうのは理解できた。 「じゃぁ、記憶の混濁は・・・」 『そもそもそんなものじゃない。安心しろ。お前らのことを“忘れた”んじゃない。オレは“花 宮であっても違う”から、はじめから“この世界のことは知らない”んだ。 オレのいた世界では、オレはもう三年でな。こことあちらは時間軸が違うんだろう。そのせいで記憶喪失だと勘違いさせてしまったみたいだな』 「どうやっていれかわったんだ」 『さぁ?突然視界が暗くなって目が覚めたらああだった。たぶん何かが頭にぶつかった』 「あのさ。花 宮が花 宮じゃないってどういうこと?」 「なんにせよ!びっくりしたんだからな!!突然倒れるんだから」 『ああ。驚かせたか。 あれもまた、こうなった原因は同じだからな。大したことじゃない』 それから聞かされたのは、向こうの世界とこちらの世界の差異。 向こうの世界の花 宮ってちいさいんだって。これはすっごい気にしてるみたいだからだまってようね。 あと、名前が「アザナ」っていうらしい。 っで、幼馴染みが、あの秀徳の宮地さんで、親友が誠凛の火神らしい。 なんか想像もできない組み合わせだよね。 しかも向こうの世界の誠凛には、この世界にはいない頭のおかしいマネージャーが誠凛のバスケ部を洗脳していて困ってるんだって。 なにそれ。 向こうの世界愉快すぎる。 それから二時間ぐらい、花 宮真と花 宮字の違いについて語り合い、お互い別人だとなっとくしたところで、すっかり意気投合してしまった。 っで。 今なにしているかというと、 「アザナさんアザナさん!次は俺で!!」 『あーはいはい。ほら、古橋お前どけ』 「離れたくない」 「ふるはしぃーく〜ん。そこ譲れ!かわれ!まじかってください!!」 「zzz」 『おい瀬戸。寄りかかるなって。重いだろ。寝るなら布団で寝ろよ。体痛くなるだろ。あとお前ら喧嘩するな。両方から頭のせるな!足しびれるだろうが』 外見はまんま花 宮で口調はもっときつめなのに、なぜかふんわりしてみえるアザナさんのひざまくらの権利めぐって、ただいまポーカー勝負を終えたところである。 ちなみに結果はアザナさんが生来の勘の良さを駆使し一番に上がり、花 宮厨であった古橋が物凄い執念を見せて呪いでもカードにかけたのか二番に上がった。 なんかあっちの花 宮、ちょっとまじ可愛いんだけど。 可愛いっていうか優しい!! やたらとあの特徴的な眉を動かして眉間にしわを寄せて暴言吐くのに、ゲス顔しないの。 ゲス顔は、イタズラを仕掛けたように笑うときにアザナさんもなっていたから、普通にできるみたい。できないわけではないようなので、外ではゲスと優等生を演じてもらうことになってはいる。アザナさんちょっとずれてるから、演技ちゃんとできるのかとか、ボロがでないかとか心配だけど。むしろオープンタイプで何かばれても気にしなそう。 ちなみにアザナさんは、向こうの世界の花 宮真でありながら、優等生の演技もなければゲスゲスさえしていないらしい。そのまま素で通っていたらしい。ただ周囲が勝手にゲスと彼を言い、勝手に悪童とののしっているだけのようだ。 ちょっと、うちの花 宮と違いすぎるよね。 ただし座右の銘が「あげておとす」「他人の不幸は蜜の味」というから、たぶん中身はゲスだ。 でもこれだけはいえるよ。 たぶんあちらの霧崎第一の生徒たちは、間違いなくアザナさんの虜に違いない。あ、間違った。虜じゃなくて、味方な。 いや。だってこのひと、マジで抱擁力が半端ないんだもんよ。 懐に飛び込んで来いと腕を広げて立たれたら、そのまま飛びつきたくなる感じ。 おかーさん!と言って甘えたい。 ってか、無意識に俺たちの頭なでるのやめて。 もう古橋がそろそろ鼻血出してもおかしくない気がする。 そういえば・・・。 向こうの世界にいっている可能性のあるっていう俺らの花 宮は大丈夫かなぁ? :《成り代わり主のいる》 世 界 【 side 原作よりの花 宮 】 「だいじょうばない」 気が付いたらそこは病院の病室で。 どうやら三日ほど寝込んでいたらしい。 原因は、部活中の事故。 飛んできたボールを背後も見ずに勘でよけたオレは、そのまま壁に当たって跳ね返ってきたボールに、見事な顔面強打され気絶。 その直後に頭部から倒れたため頭を強く打ってたんこぶをこさえ病院に運ばれた――らしい。 おかしいだろ。 リバウンドしたボールが奇跡のように跳ね返って再度同じ場所に戻ってくるなんてことは、数千分の一の確率ぐらいであってもおかしくはないから、ここでは除外しておく。 おかしいのはそこじゃない。 まぁ、たしかに避けたはずのボールがリバウンドしたあげく自分のもとに戻ってくるとか、ボールに意思があって狙ってない限り有り得ないけどな! なにがおかしいって。オレは、意識が途切れる寸前まで、誠凛との試合をしていたはずなんだ。 それで木吉のやろうに負けたのが腹立だしくて、意趣返しとばかりに嫌味を言ってやろうとしていたその最中だったはずなのだ。 ウィンターカップにいくのはオレたちだとおもってたのに。 ウィンターカップ。わかるか?つまり11月だったはずなんだよ!!それがなんで窓の外では蝉が鳴いてんだよ?! ミンミンミンうるさいわ! なぁ。いろいろとおかしいだろ!! おかしいと言ってくれよ。 だってオレはもう二年も終わりかけの冬を堪能していたんだ。あと二か月もあればオレは晴れて誕生日を迎えるだろうぐらいには寒い日だった。なのに目を覚ましたらカレンダーの年月日がおかしい。数か月時間がとんでいるとか!外で蝉が鳴いてるとか!!!!!! しかもまだオレが目を覚まして三時間もたってないのに、病室にとっかえひっかえに現れる見舞い客もみんな変だ。 訪問者のその半分が、意味不明な奴らだった。 とりあえず知らない顔ということは、表の顔でいるべきだろうと思い、見舞いに来ていたやつらには優等生の猫をかぶり、困ったような笑顔でわからないふりをして交わした。 盛大に頭のこぶを心配され、あげくオレは記憶喪失というレッテルを張られた。 ッチィ!ふざけんなよ。だれだよ。そんなこっぱずかしい事実を言い触らしやがったの。 あとで潰す。 だが、まぁ、それもしかたないのかもしれない。 だってなぁ―― 今、現在進行形で、いままでの見舞客以上に、なんか物凄くハイテンションな奴ら四人に取り囲まれている。 思わず自分の今までの常識を疑うその光景に呆然としてしまったオレは、きっと頭を打ったという衝撃で頭がどこかおかしくなったに違いない。 知っているはずなのに。目の前の人間が誰かわからなくなる。 むしろ目の前で今何が起きてるかおれには理解できなかった。 それは見舞客たちのことも同じ。 お前ら誰だよ。 今、目の前にいるのは、顔立ちからしてオレの両親のはずである。 しかし物凄く見覚えのある顔立ちの両親という名の二人に、それにはげしくツッコミをくりひろげている黄色系頭の男女までいるとかどういう状況なんだ。 「ああ、騒がしくて悪いな」 子供以上に騒がしい四人をさらっとスルーしてオレが横になっているベッドの枕元に丸椅子をおいて、何事もななかったようにスルスルとリンゴの皮をむいているのは、たしかやたらと物騒な発言ばかりしていた秀徳の・・・8番だ。名前はたしか宮地清志。そいつに違いない。 こいつ、こんな静かな奴だったろうか。もっと、こう、あのキセキのシューターとかと騒がしくやっているイメージがあったんだが。 本当に何もかもが違和感だらけだ。 その筆頭が、オレの目の前で繰り広げられる四人の大人たちによるコントじみた会話であるが。 宮地清志は視線を固定したまま外すことができず唖然としたままのオレの視線をたどると、無言で頷き、ひとりで勝手に納得すると、それから視線を外して、大人たちの奇行を見なかったことにしたかったのか、奴の視線がリンゴに集中し始める。 「・・・お前、記憶喪失なんだってな。残念だけど。あれ、とりあえずお前の両親だから」 「み、みおぼえはあるけど。こんなのオレの知ってるふたりじゃない」 そこにいたのは――あまりオレに関心を向けなかった両親の姿をした――ハイテンション愉快犯な母親がオーッホッホホと言わんばかりに笑っている。その横では、楽しげにカメラを回して「僕の息子がこんな儚げな表情してるとか珍しいな〜」っと、“また”メモリーカードを入れ替えている父親の姿。 そんなオレの両親をハリセンで殴り飛ばす明るい髪の女性。 そんな突飛な三人に、深いため息をついている宮地清志によく似た男。はっきりいってあの男の苦労がうかがえる。 だんじて違うと宣言できるが、オレが知っている両親の知り合いにあんなツッコミが素晴らしい女性はいないはずだし、両親もあんなハイテンションすぎるノリのいいやつではなかったはずだ。 オレが覚えているかぎり、オレのうちは、父親がまずいなかった。母は仕事仕事仕事と忙しく、育児よりも仕事中心の日々を送っており、家族というには縁が薄い冷めた家庭環境だったと思う。まったくもってここまで家族家族した仲良し家族とは真逆で、家庭という温かみのなかった家だったはずだ。 まぁ、金はきちんとくれるし、のぞめば世間体を考えたあげく、“家族ごっこ”ぐらいはしてくれたが。 それがどうだ。 なに。この愉快な奴ら。 ヒャッハー!!と梨汁をとばす騒がしい非認定妖精をほうふつとささせる。 あまりのテンションについていけそうもない。 三日間も寝ていたせいか、ちょっと体が重く感じる。 なんだか頭痛までしてきた。 これは頭を床に撃った名残だろうか。それとも目の前の現実についていけないだけか。 ああ、くそ。なんだか気分も悪くなってきた。 よし。オレは何も見てない。 オレは現実逃避する道を選び、トイレにいくとベッドからおりた。 そこでオレは視界に若干の違和感を感じていたが、その違和感に意識を向けてる余裕もなく、しばらく動かしていなかったせいか体格に違和感を感じよろめいてたおれかける。 しかしそんなオレをとっさに側にいた宮地清志が支えてくれて―― 「え」 「大丈夫か “アザナ” 」 宮地清志との間にあるありすぎる身長差に顔が引きつる。宮地清志が巨人に見えるとかなんなんだこれ。 いや、違う。オレが、縮んだ? しかもとっさに呼ばれた名前にさらに驚く。 オレじゃない。オレとは違う名前。 ああ、嫌な予感がする。 その後―― 恐怖に駆られながら鏡を見たオレの精神の過負荷が限界値をスパーン!と超えた。 「・・・なん△○×?!+◇×o×**っ!!!!」 そんなオレの言葉にならない絶叫が部屋に響いた。 鏡の中のオレは、いままでみていたより幼い顔立ちで身長も低く―――さらには、リ○ックマのパジャマを着ているとか。 そもそも数か月分の未来の世界にいったとしても身長が"縮む"なんてことはありえない。のびるならまだしも。なにせまだ高校生だ。更年にははやすぎる。 それにオレは中学三年の時にはもう170cmをこえていたのだから、163cmってどういうことだって思う。 うわぁ。 マジでありえねぇ。 誠凛に負けて。恨み言を吐いていたら、意識が途切れた。 次に目を覚ました時には、未来の暦。 てっきり数か月寝ていたのかと思うがそうでもないようで、自分が知っているようで全く知らない世界に迷い込んでいのを確信した。 マジでだれか助けろ。 ―――なんて言うかよバァァァァァァァァァカ!!!!!! うそです。だれか助けてください。 切実に・・・ U←BackUTOPUNext→U |