花 宮≠花字A |
: 原 作 世 界 【 side 原作よりの瀬戸 】 ウィンターカップ出場をかけた誠凛との試合。 俺たち霧崎側は、木吉を狙ってラフプレーをしかけた。 指揮を落とす。思考を乱れさせる。それが目的だった。 もちろんこちらの思惑どおり憤るあいつらは、すぐに蜘蛛の巣にはまっていった。 それに日向のシュートがはずれる。 花 宮がスティールを成功させる。 が、何をきっかけにしたのか、木吉が選手交代した前後から、風向きがが変わってきた。 今度は日向のなかでなにかが変わったようで、ゴールが入るようになったのだ。 ああ、でもきっとすべての原因は、あの11番のせいだ。 すべてあの11番のせい。 こいつらほんとウゼぇ。 仲間、仲間。仲間・・・仲間を思うからこそ心が折れない。とか。 花 宮が一番嫌いそうなやつらだ。 それから花 宮は11番に手を出そうとしたけど、あいつはすんでのところでよけた。 そこからはボールのとってとられてを繰り返しだ。 花 宮のレイアップにみせかけたティアドロップがきまった。 それでもあいつらは折れない。 時間は40秒とあと少し。 だけど。 最後の最後で、あの11番が、コートの端から端までをぶっちぎるとんでもないパスでボールを火神へと回し、誠凛の奴らはゴールまで一気にいってしまう。 だけどまだあいつらはあきらめなくて。 残り30秒をきってからもゴールにボールをいれまくる。 終わりのゴールが鳴る。 結果は、76対70で俺たち霧崎の負け。 喜ぶ誠凛に、あの花 宮が落ち込んでいるようにうつむいていた。 「・・・負けたよ誠凛。あと木吉、いままですまなかった」 あの花 宮が謝っただと!? と、思いきや。 顔を上げた花 宮はとんでもない憎しみこもった目で誠凛の奴らを睨みつけていて、 「なんて言うわけねぇだろ!バァカっ!!」 あ・・・ああ。よかた。 なんだ。いつもの花 宮か。 そういえば、「なんて言うかよ」って、あのセリフってさ、いつも思うけど、ツンデレっぽいよな。 いや、本人に言うつもりはないけどさ。 言ったら俺が潰される。 花 宮はよほど腹立だしいのだろう。歯軋りをして言葉を絞り出していく。 「俺の計算をここまで狂わせたのはお前らが初めてだ。一生後悔させてやる!次は必ずつ・・・」 つぶす!! そう続くはずだったのだろうに、花 宮は突然不自然に言葉を止めると そのまま糸が切れた人形のように・・・ ドサリ 「え」 「はな、みや?」 「お、おい」 突然倒れた花 宮にその場に騒然となる。 一番側にいた誠凛の木吉が、あわてて花 宮の側に腰を降ろしてゆさぶるも反応がない。 ついさっきまで敵対していた誠凛の奴らも不安のと心配を顔に乗せて、集まってくる。 俺達霧崎も誠凛の奴らをかきわけて、あわててかけよる。 花 宮の側に膝をついて声をかけるが、ピクリとも動かない。 閉じられた目は、先程までの悪意に満ちた表情はない。 何かを感じる前に、ストンと意識がおちた感じだろうか。 もしかて病気か? だが花 宮にはそんな持病はなかったはずだ。 「花 宮。おい!しっかりしろよ!」 「花 宮、冗談はやめろよ」 「・・・花 宮?」 「花 宮、起きろよ。なぁ、花 宮」 霧崎の仲間たちの声にも反応はない。 突然の事態に、これには観衆からもざわめきと救急車をという悲鳴が聞こえてくる。 いつも俺たちがいじくってそれに相応の物でかえしてくる不遜な態度がない。 わけがわからない。 いったい花 宮はどうしたんだ。 まさかこのまま目覚めないとかはないよな。 思わずそっと床に倒れたままの花 宮に手を伸ばそうとして 『ん・・・』 「あ!花 宮!?」 木吉の声が聞こえたかとおもえば、ピクリと花 宮の睫が揺れる。 そこから花 宮の目覚めは早かった。 しばらくは現状を理解していないのかボォーっと周囲に視線をさまよわせていたが、 「花 宮ぁ!!気分はどうだ!?大丈夫か?突然倒れたからびっくりしたぞ!!」 っと、なんだか泣きそうな顔で顔面すれすれでのぞきこむ木吉を前に、一気に覚醒したのか、花 宮の目がグワっとひらき、 『ギャァァァァァァーー!!!!!!!』 絶叫を上げて木吉から顔をそむけると、顔を離そうと手を突き出していた。 それがみごとに木吉の顔面にあたったことで、誠凛のやつらが今度は「せっかく心配してやったのに」「なんだこいつ」という雰囲気を醸し出している。 いやいや。今のは木吉が悪いだろう。 『なにこの至近距離!?よるんじゃねぇよ!キモイわ!!』 そうだ!そのとおりだ!花 宮に近づきすぎだ木吉め羨ま・・・じゃなくて、天然。なんて恐ろしい生き物なんだ。 雄たけびを上げるだけの元気があるようなので、そんな花 宮をみて、とりあえずどこか異常があるわけじゃなさそうだとわかってホッとする。 っが。 次に怪訝そうな花 宮からもれたつぶやきにギョっとする。 『ってか、ここどこだ?さっきまで霧崎にいたのになんで誠凛のやつらがいる。 あ゛ぁ?こいつら、なんでこんなに怪我してんだよ?』 自分で手にかけたくせに。 花 宮は なにを・・・ 言っているんだ。 だけど俺は、その言葉に、背筋に冷たいものが走った。 それは俺だけじゃないらしく、霧崎のスタメンメンバーたちも同じく思ったようで、驚きを隠せないで固まっている。 側にいたせいでそのつぶやきを耳にした誠凛もおかしな顔をして花 宮を凝視している。 花 宮は普段のゲスさはどこへいったのか、始終眉間にしわを寄せて顔をしかめる程度に嫌悪感やなんやらを抑えている。 口調は案外きつめだが、ゲスくない。 眉間押輪とて考える仕草に、少し違和感がある。 俺たちのしる花 宮は、こうゆうふうに顔をしかめたりするだろうか。 たまにカスとかクソとか騒いでいるのは、誠凛に負けた悔しさからか? そうだといい。 そうであれば、花 宮の記憶を疑わなくてすむ。 ああ、でも。優等生と悪童を使い分けていたときのように、その表情をころころ変えていた試合中の花 宮とは、別人のようだ。 思慮深く何かを考え込む仕草は、花 宮そのもの。 だけど花 宮は、良くも悪くも感情豊かで、そんな大人びた表情をずっとしていることなんてない。 みればみるほど、まるで自分たちが知っている花 宮と違うような気がしてしまう。 本当に彼は自分たちの名を呼んでくれえるだろうか。 それに、さっきの言葉がやたらと頭を駆け巡り、嫌な感じがぬぐえない。 彼は、さっきなんと言った? 彼は・・・。 本当に花 宮か? もしかして記憶喪失がなくなっていたりはしないだろうか。 彼は俺達を覚えているだろうか? そうだよ。まさか花 宮に限ってあるわけない。 ないはずなのに。 俺はなにをおびえているんだ。 ああ、どうか。俺の推測ははずれていてくれ。 とまどいぎみの花 宮に、「まさか記憶がないなんてことはないよな?」なんてことを直接聞くことはできない。 そんな勇気、いまの俺たちにはない。 声をかけて否定されたらと思うと、身動きができない。 いまはただ混乱しているだけ。 きっとそうだ。 しかし俺たちが動くことができないでいる間に花 宮は自己完結したらしく、思考からもどってきたらしく、おぼつかないものの一人で立とうとしていた。 けれどうまく力が入らないのか、またその身体が崩れかけるのにヒヤっとする。 あわててその腕をつかめば、若干焦点の合っていないうつろな視線がこちらにわずかに向けられる。 『瀬戸…』 花 宮と名を呼べば振り返る。自分がどういう状況なのかわかっていないのか、けれどその腕をつかむ俺をちゃんと認識して、ちゃんと名を呼んでくれる。 それで、少しだけ肩の荷が下りる。 俺たちのことを忘れたわけではないようだとほっとする。 あんな悪童でも花 宮は俺たちの主将なんだ。いなくなってもらっては困る。 ただ、この様子はいただけない。今にも意識がおちてしまいそうな様子に顔をしかめ、それに即、病院に担ぎ込もうと決める。 その旨を伝えようとコートにいる連中を見渡せば、声に出さずも即座に霧崎たちが頷き返す。それに満足し、俺はそのままつかんでいた花 宮を自分の首にまわすよう持ち上げ、肩を貸す形でさっさと花 宮をかついで会場をあとにした。 コートを出て控室につく前での間に花 宮の意識は完全に落ちていて、同じぐらいの身長であるため支えることができなくなってきたため、山崎たちの協力を得て背に背負うことになっる。 ぐったりとした花 宮を担いで俺達は即座に病院に駆け込んだ。 このとき俺はあまりに動揺しすぎて、脳の病気だったら動かさないほうがいいという発想がすっぽぬけていて、ついた病院でちょっと説教をされた。 解せぬ。 だったらわしわしめいいっぱいゆすっていた誠凛の木吉を一番最初に叱咤すべきだろう。 U←BackUTOPUNext→U |