有り得ない偶然 SideW
-二人の入れ替わり日記-




花 宮≠花字 @
夢花が原作花 宮と入れ替わったらというIF。
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【 side 夢主な花 宮 】





頭部にむかって勢いよくボールがとんでくる気配がしたから、勘と空気の動きをたよりによけた。



――はずだった。

ちゃんと真横をボールがとんでいったのを目で見て確認だってしている。



なのに突然視界が真っ黒になった。
なにかがグルっとぶれる感覚がして、そのままひざから崩れ落ちる。



しかしその不快感もすぐに終わり、少しすれば目を開けることが出来た。


そこは先程までいた霧崎第一の体育館――ではなかった。


なぜか身体はあまり動かなかいため、視線だけで周囲を見渡せば、天井からしてどこかの体育館であることがわかるが霧崎の物ではない。
そして大量の観衆がいることから、なんらかの大会が開かれている公共の場だと判断できる。
そんな場所になぜオレは寝ているのだろう。



突然場所が移動する現象の原因は主に、オレが何らかの用途があって気絶した場合。 あるいはいつものトリップor転生にかかわるときだ。
まさかと思うが、急逝なんとかかんとかという病気だったとかで、オレって死んだのだろうか。

なんにせよ唐突だなぁ。

まぁ、転生&トリップしまくっているのでそこまで不安はないが。
頭がうまく働かないのは、なぜだ。
これが病気でなければ、転生の影響としか思えない。
そのわりには、オレはなぜどこぞやの体育のコートで横に倒れているのだろう。



観客のやつらがあわただしく何かを騒いでいて、それをあとまらない思考のままに、働かない頭でボォーっと聞いていた。
そうしているうちにかすんだ視界に、にゅうっといくつかの影が視界を覆った。

「花 宮ぁ!!気分はどうだ!?大丈夫か?突然倒れたからびっくりしたぞ!!」


目を開けた瞬間、この世で一番に会いたくない人間が、しかもドアップで現れたとき、ひとはどうするか。


ギャァァァァァァーー!!!!!!!


霞んでいた思考がいっきに晴れる。
覚醒したばかりのオレには視覚の暴力=凶悪いい子ちゃんアップ。


やだなにこの状況!?泣く。怖い。きもい。きょー兄 ヘルプぅっ!!!!


その瞬間オレは、体を起こすとかどうこうよりさきに、おもいっきり両の手を突き出して木吉との距離をとろうとした。
思わず目をつぶって手を出したので、べしっと木吉の顔面をオレの手のひらが覆った。
それに木吉の「あべしっ!!」なんてつぶれた声が聞こえたが知るか!!


『なにこの至近距離!?よるんじゃねぇよ!キモイわ!!
ってか、ここどこだ?さっきまで霧崎にいたのになんで誠凛のやつらがいる。
あ゛ぁ?こいつら、なんでこんなに怪我してんだよ?』


鉄平なんか、鼻を赤くしているのに、殴ったオレに「元気になったようでよかった!」なんてほざきやがった。
だから、何の話だ。
っというか、そこでお前は殴られた側なんだから怒れよ!と思う。
やっぱ、木吉おかしい。

オレ、本当にまじでさっきまで霧崎にいたのに。
あと十分したら3時だから休憩しようねって。
マネと話し合って、お茶の準備をしようかってときだったのは間違いない。
それにもうオレは三年生で、部活も引き継ぎだけだからとユニフォームなんて着る機会もなくなっていたはず。

なぜユニフォーム?

しかも目の前には、木吉とか誠凛のやつらが目の前にいる。
ってことは、いつものように転生や生まれ変わりや憑依ではありえない。
現に、周囲の人間はオレを"花 宮"と呼んでくることだし。
そうなるとオレは「病気で突然死したあげくの転生」というわけではないようだ。
なら、ここはどこだ?
場所が突然移り変わっていた理由がわからない。
記憶に穴が空いている?

なら、考えろ。何が起きている?
まず、第一に、ここが"オレが花 宮である世界"のままであると仮定する。
第二、ここはどこだ?しらない場所だ。
オレを含めたこの場にいる全員がユニフォームを着ているのはなぜだ?

時間軸が変わっているのは確実だ。

いや、まて。
自分の言葉に違和感を覚える。
この構図、この観客の多さ。
数か月前に見たぞこれ。

ここはウィンターカップの会場ではないか?
それならオレがユニフォームを着ているのも、誠凛が目の前にいるのもうなずける。


あ、ここ"過去"か。


でもなんだろうな。このいいようのないこの違和感は。



しかも誠凛のやつらが、木吉をなぐった(?)――というかおしのけたことを“暴力行為”ととったようで、ものすごく睨んでくるし。
ふと周囲を見回してもあのキチガイ夢女がいない。
オレを悪に仕立てようといつも誠凛や周囲をあおっていたのに。
まぁ、あの女がいるいない関係なく、誠凛は相変わらずオレを悪と呼び、いまだって木吉を殴ったことになっている。

そうだ。違和感の正体はこれだ。
"誠凛の生徒を洗脳していたマネージャの女"が、この場のどこにもいないのだ。

ピリリと、電流のようなものが脳を走る。
これはやたらとあたる勘からの警告だ。
それにちょっと不安になる。
オレの勘がささやく。
“違うよ” って。
“ここはオレの世界じゃないんだよ” と。

勢いのままに上半身を起こし、改めて周囲を見渡せば、霧崎の仲間たちが驚いたような顔でこっちを見て固まっている。
助けを求めるように “トリップ仲間” の火神ををみれば、あいつは心底頭に血が上っているとばかりにこちらを睨んでくる。

決定。ここは"オレの世界"ではない。

でも木吉がいる。霧崎の仲間たちもいる。
彼らはオレをみて、オレの名前である“花 宮”を名を呼んでいるじゃないか。

なのに・・・オレの世界じゃないっていうのは、どういうこと?


オレの知る人間が、オレをまるで珍獣でも見るかのような顔で取り囲んでいる。
珍獣ってなんだよ。


ああ、でも――“そういうこと”か。と、どこかで納得する自分もいる。


オレを見る人間たちは、知ってる顔だ。
見覚えのある顔であるのは間違いない。
でも、違うと、勘がささやく。

なら、なんだここは?

そうか。そうだったな。
オレは異世界には縁があるのだ。
同じようで違う世界なんて山の様に知っていたじゃないか。

つまりここは平行世界というわけか。

そこまで頭の中で計算が終わると、いままで警報を鳴らしていた勘が鳴りをひそめる。

思わずそれに溜息をつく。
なぜここまで厄介ごとに巻き込まれるんだろうオレ。


思考が回るからといって、オレの中身が冷静だと思うなよ。

目が覚めたときから、大嫌いな誠凛に囲まれていてオレのHPはすでに0だ。
せめて きょー兄 か ロジャー が側にいてくれればすぐにでも抱きついて、慰めてもらってHPを回復させるのだが、世界を超えてしまった今ではそれも不可能だろう。
いたとしても"この世界の宮地清志"だ。そのひとはオレの知らない存在だ。

いつも側にあった気配があればここまで動揺はしない。
けどそれが側にないから、本当はいますぐにでも癇癪を起すなり、叫んで暴れるなりしたいほど不安でしょうがない。


不安からくるものか、グラグラする頭を押さえつつ、ギリリと歯を食いしばって、無理やりだるい身体を起こす。
さっきまではそれほど気にならなかったが、動くと吐き気がしそうなほど頭が痛い。
いつまでもここに寝ている気はない。
なによりこちらのオレ達は、試合を終えた後のようだ。
あまりこんな観衆の目の前で、醜態なんかさらせるか。

おぼつかないものの、なんとか立ち上がる。
立ち上がってびっくりした。
視界の高さが違う。
体のしゃくがちがうから普段の感覚で動かすとうまく動かない。
それに慣れなくて、さらにぐらりと身体が傾く。

『クソがっ!!』

ふらりとした身体を足を出すことで踏ん張るものの、それに罵倒が口から洩れる。
なにがどうしてこうなったかはわからないが、頭が痛すぎて視界がちかちかする。身体もうまく力が入らない。
こちらの意思を無視してゆれる身体は、また床に舞い戻ろうとする。


まるで肉体と精神があっていないような錯覚が起きる。
ん?あ!原因は“それ”か。

精神と肉体があってないんだ。
つまりオレは肉体ごと平行世界に来たのではなく、平行世界のオレに憑依しているか魂または精神だけ入れ替わった状態なのだろう。


頭痛いな、ちくしょう。
まだなじんでない身体が、強制的な眠りへといざなおうとする。

やべ。また倒れる。

そうおもっていたら、ガシッ!と腕をつかまれ強制的に立たされる。
チラリと視線を向ければ、右腕を瀬戸が強くつかんでいた。

「それぐらいにしとけ花 宮」
『瀬戸…』

いつもより若干冷たい声。
その冷たささは、焦っているのか。それともオレを心配しているのか。へたをすると世界が違うから、こっちのあいつらとはそれほど仲が良くなくオレの無様さを貶んでいるのかもしれない。

これがこの世界の霧崎の奴らの“普通”なのだろう。

「帰るぞ花 宮」
「そ、そうだよ!もう試合は思ったんだよ花 宮」
「俺たちの負けだ。すまなかったな誠凛」
「いこう花 宮。事情、聴かせてもらうから」

なんかオレ、そのまま肩をかしてもらうような形で無理やりひきずられて退場しました。





――っていうかさ。
なんなの!?
つまりオレってば、過去の並行製菓の誠凛と霧崎の試合のさなかにぶっ倒れたんですか!?
火神がいるってことは、二回目の誠凛との試合終了後。
どんなタイミングで、コッチにオレがきたのですか!?
ごめんよこの世界のオレ。オレ、なんか凄い醜態さらしてる。
もう観衆の皆さんの前で、なんちゅうあおっぱじをかかせてくれたんです。

とりあえず心の中で叫ぶことにしました。
せーの!!


助けて!! きょー兄ぃーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!





 

+ + + + +




 


「ん?」
「どうした宮地」
「あ。いや。いまアザナの声が。気のせいだな」
「またか。宮地、もうお前ドルオタやめてブラコンと名乗れ」





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