有り得ない偶然・花悲壮
-二人の入れ替わり日記-




短話@ 真を誘拐すれば黒子が憑く



字『よし。花宮真を誘拐しよう!

火『なにがどうしてそうなった!?」
字『だって、向こうの世界に大量の人間を連れて行くのは、“面倒”だしな』
火『え?そうでもないぞ。です。
そもそもなんでセンパイが面倒なんすか。やるの俺っすよ』





【 side 火神 成り代わり主 】





突然別世界の自分をさらってこようなんて突飛なことを言い出したのは、花 宮字(ハナミヤアザナ)。
こちらの黒バス世界の花 宮・・・の、成り代わり主である。
彼は、俺が火神大我(カガミタイガ)に成り代わる前からの、ぞくにいう前世からの知り合いだ。
前世でもずっと年上だったので、俺にとってあのひとは常に「先輩」だ。 そのため俺はもうずっとあのひとを、あだ名のかわりに「センパイ」と呼んでいる。

そのアザナセンパイが、また無茶苦茶なことを言いだしてくれた。

誘拐って。
っていうより、別の世界の人間を連れてくるなんて!?



・・・まぁ、できなくはないんだけどさ。

字『いいか、火神。まずお前がやっている異世界へ人間を送る方法を言え。“面倒じゃない”という理由を含めてな』
火『えーっと・・・理由っていうと、俺としては、ただテレビに人間を叩き込めばいいだけだし?』
字『その分の対価はなんだ?』
火『体力っすね。テレビの中にたたきこんだあとに、波長を合わせたりするのに、 ごっそり気力というか体力持ってかれる気がして疲れるっす』

ん?何が言いたいんだ?
アザナセンパイって昔から、言葉遊びが好きっていうか、言葉に必ず裏があるから、すぐには理解しづらいんだよなぁ。

分かりづらいから要点だけ言ってくれと視線を投げかければ、 原作の花 宮真(ハナミヤマコト)のようにあくどい笑みを浮かべた。
これ、原作を真似てるわけじゃなくて、 素で、表情も仕草も口調もそっくりだから、センパイの性格の悪さがよくわかるだろう。
だからというべきか、その笑顔がなんともいえないほどたまらない。

悪童顔こえぇ!!!

字『つまりだ。人数をたくさん向こうに送れば、お前が対価を払わなくてはいけない。
移動した人数分、お前が疲れるだけだ』
火『移動させてんの俺ですし、そりゃぁそうっすね。――っで?』
字『清兄やオレ、火神はもう向こうの世界にいっただろ。だけど黒子はまだ実際の真に会ってない。
だけどあの黒子だぞ。「僕だけマコさんに会えないなんて理不尽です!」とイグナイトをしかけてきかねない』
火『あーそういえば』

言われて思い出す。
この世界の黒子は、原作とは違い、花 宮や霧崎と交流がある。
まぁ、原因は、花 宮字と前世を共有する仲である俺が仲介したためであるが。

特に黒子と目の前の花 宮字は、背の低さで同盟を組んでいる。
平行世界の花 宮真と黒子は、電話越しではあるが趣味か何かで意気投合している―――それほどまでに、 この世界の黒子テツヤ(クロコテツヤ)は“花 宮”と仲がいい。

いままで何度か俺とアザナセンパイは、平行世界に遊びに行ったことがある。
しかしその事実を黒子には教えていないし、黒子も向こうの世界の住人に合わせろと言ってきたことはない。
それはたぶん、黒子が「向こうの世界に電話は辻手も直接会いに行くことはできない」と思っているからだ。
もし会いに行けると知れば、花 宮真好きの黒子のことだ。間違いなく連れて行けというだろう。
いままでそれを口にしなかったのは、やはり黒子自身が「平行世界にはいけない」と思いこんでるから。

字『納得したな。っでだ。オレだけじゃなく、清志、黒子、火神で向こうの世界に移動したとする。
その移動の対価が、お前が言うように体力だけだったとしよう。
たとえば一人の移動エネルギーは、一般男子の食事一食分だと仮定して。
この設定だと四人を移動させるから、対価は四食分。
その四食分を火神が食べれば、ゲームのごとく体力値が回復する。まぁ、あくまでたとえだけどな』
火『ご飯で回復って・・・俺って、便利キャラですね』

字『そこまではいいんだよ』
火『えー』
字『オレが言いたいのは、まずは火神の体力面を補充しなくてはいけない“面倒くささ”。
そして次が、移動した後だ』

火『移動後?』

字『続けるぞ。
向こうにもこっちの世界と同じ人間がいるのは、わかるな?』
火『ウッス』
字『そうすると、こっちから大人数を連れて行くと、同一存在と会ったときどうするかだ。たぶんオレがあの世界に関与しなくなった時点で修正力が働いて記憶は消える。っが、消えるまでの時間はかかる。
その間どうやって知人や本人達をごまかすか。オレや真だと、外見が違うから、ある程度は周囲をごまかせる。 だけど火神や清兄、黒子は、そうもいかない。
外見は身長まで瓜二つ。しかも髪の毛を染めようと、身長、口調、雰囲気も同じときている。 そんな人間同士が顔を合わせてみろ。どうなる?』

あ、なんか言いたいことがわかってきたかも。

字『オレが言ってるのは、大人数を変装させないといけないな。って、こと。
その変装の費用をだすこと。どうやって向こうの世界の住人をだますかってこと。 それらをふまえると、大人数での移動は“面倒だ”って話だ』
火『あーなるほど。たしかにそれはメンドーっすね。 キヨ先輩も俺も190cm代ありますから、髪の毛を染めてもごまかすのが難しいかもっってことですよね。 黒子は無表情がデフォだから変装しても・・・なんかすぐばれそう。あいつも雰囲気独特っすからね』

字『わかったか』

火『理解はしましたよ。っで?それがどうしたんすか?』
字『向こうの世界の花 宮真ひとりをこっちへつれてこよう』

火『え!』」

字『なぁに、効率と燃費を考えた結果だ』

ニヤリと口端を持ち上げたアザナセンパイは、やっぱりいたずらっ子のような、策士のような顔をしていた。
あんた、本当に、“花 宮真”に成り代わるには、適任だな。





* * * * *





向こうの世界の花 宮さんをつれてくる際に、場所は俺の家になった。
一人暮らしをしているため邪魔が入らないことと、この世界の花 宮一家に真さんのことを説明する手間が省けるからだ。

そうしてアザナセンパイがおかしな踊りのようなものを踊って向こうの世界に電話をつなげ、花 宮真がテレビの前に立ち画面に触れるように指示してもらう。
その後、センパイの指示で、ターゲットの座標を定め、俺はテレビに手を突っ込む。

そうやってテレビをとおして連れてきたのは、原作よりの世界の花 宮さんだ。

驚いて目をパチクリしていた花 宮真だったが、謝罪しつつアザナさんの暴挙について説明すれば、 呆れたようにため息をついた後しかたないとばかりに受け入れていた。
さすが!慣れってすごい。

それからコチラの世界の花 宮ことアザナさんの保護者である宮地清志(ミヤジキヨシ)さんが、いろいろ荷物を持ってやってきた。
宮地さんは、鬘をかぶって明るい髪を黒くしていた。
アザナセンパイには、女性に姿を変えるように言うと、黒と白をベースとしたゴシック系のワンピースを着せている。
宮地さんの紙袋からは、真さんようの衣装まで出てきた。 向こうの世界とこちらは季節が違うからと、真さんようにこちらの季節の服を持参してきてくれたらしい。
同じ花 宮でもサイズが違うだろうに。そこはぬかりないとか、どんだけ清志さんハイスペックなんだ。
しかも着替え終った二人を横に並べればわかるけど、【D.gray-,man】のリナリー姿(アザナさんの女バージョン)のアザナさんと、 真さんの服はデザインが対になっていた。

清「おいロジャーさん、今日は髪の毛はそのままでいいから、こっちこい」

しあげとばかりに宮地さんが、リナリーの胸元を飾る白いリボンをふんわりと結び終えると、蝶のロジャーさんを呼び寄せる。
普段はアザナさんの髪の毛の癖をおさえるように髪留めのふりをしている(実体化可能な)守護霊のロジャーさんが、 着替えがおわるのまって宙を舞っていたが、宮地さんの指示に従ってアザナさんのワンピースの胸元にとまる。
それだけで黒い蝶のアクセントみたいになっている。

清「真はこっちな。俺はこれ」

ポスリと黒いハット帽が真さんの頭にのせられる。
その帽子には黒い蝶の飾りが控えめについている。

2人をコーディネイトしおえた宮地さんは、自分の黒い鬘がはずれないようにピンで軽くとめ、首元にはシルバーの蝶のアクセサリーをひかっけて、伊達メガネまで掛けている。


ぶっちゃけて言おう。
なんだこのおしゃれな黒色トリオは。

わかっていたことだけど、こっちの世界の宮地さんは、アザナさんのせいですっかりファッションセンスがとんでもない。
へたすると黄瀬よりもおしゃれなのではないだろうか。

清「よし。んじゃ、いくか」
真「自分じゃ選ばないような服だな」
字『ふふ。でも私はこっちのほうが慣れてるかな。マコトもよく似合ってるよ』

さすがは前世なんでもござれな花宮字。
どこからだしてるのかわからないが可愛い声が喉から出ている。
あと、ゴシック系がよく似合います。

でも

真「・・・慣れてるって、お前。嘘だろ。だって普段のお前、【弱肉強食】とか【メイド萌!】みたいな変文字シャツばっか着てんだろうが」

そうなんですよね。
外見は原作通りでけっこうイイ線いってるのに、男の姿のときのアザナセンパイの洋服センスのなさといったら。
涙が出るほど痛々しいというか、一緒に横を歩きたくないというか。
女装の時はやたら、身ぎれいなのに。
なにかあのひとの中で価値観がどうなっているのか、いつか脳みそを解剖してみたいものだ。脳みそ解剖してもわかるものじゃないだろうけどさ。

字『私だって女の子よ。女子は身だしなみを整えるものでしょ』
真「女子・・・?」
清「そこはつっこまないほうがいいぞ真。アザナに性別求める方がおかしい」
真「そう、だな」

火『指パッチンで外見が変わるようなビックリ人間は、その人だけですから』

真字「『異世界行き来できる能力者が何言ってるの?/んだ?』」

さすが同一存在。
声が双子の様に揃いましたよ。

こちらも慣れたもので、宮地さんは同じ表情をしている二人の花 宮に苦笑を浮かべると、 その頭をわしわしとなでてて、二人を外へと促し玄関へむかう。
さすがは花 宮字の幼馴染みだ。“花 宮”の扱い方をよく理解している。

清「じゃぁ、火神、場所借りて悪かったな」
火『はいはい。夜ごはん食べ終わるころには、帰ってきてくださいね送ります』
真「たすかる」
字『ありがとう火神くん。いこマコ、きょー兄さん』

火『ほらさっさと出た出た。早くしないと黒子がきちゃいますよ』


にぎやかな黒色三兄弟(?)がでていき、パタンと扉が閉まる。

あーようやく静かになった。
それから数十分後、本日遊ぶ予定の黒子がチャイムを鳴らした。





* * * * *





わざとじゃないんだ。
そんなラブラブカップルの間を割り込むようなつもり。
本当にわざとじゃなかったんだ。

火『おふぅ・・・』
黒「どうしたんです火神君?」

黒子と部屋でしばらく遊んでいたんだけど、やっぱり外に行こうってことになって、たまたまちょっと遠出しただけだった。
そうしたら、あのおしゃれ三兄弟がいたわけで。

これは本当に偶然で。
べつに彼らのいちゃいちゃブラコン具合をさきたかったわけでも、邪魔をしたかったわけでもないんだ。
本当にたまたまだ。





俺の視線数十メートルさきには、高校生ぐらいの三人の黒髪の姿見える。
ひとりは眉が特徴的な青年。
彼はチョロチョロ動こうとする少女に「迷子になるぞ!」と怒って、その手をにぎりしめる。
そんな二人の横では、保護者らしい雰囲気をまとった黒髪の青年が、二人の様子に笑ってから二つの頭をワシワシと撫でている。

眉毛の少年は、花 宮。
少女の名は、リナリー。
保護者の長身の青年は、宮地清志。

リナリーは、本名を「花宮字」といった。
前世の能力を使って幻覚の姿を見せているだけらしいが、これ以前に字さんが女装した姿である。
通称この字さんの女装姿を似ているから"リナリー"と呼んでいる。そう、目の前の相手はいわば“少女モドキ”である。

その手を握っているのは、身長179cmある本物の花 宮
本名「花 宮真」。
“原作より”の別世界から、俺がつれてきた相手である。

双子のように意思疎通をみせる黒髪ツインズをみまもっているのは、こちらの世界の宮地清志さんだ。

宮地さんは目立つ容姿をしているため、事実上花宮が二人いるため説明(たとえばなぜ花 宮の身長が突然伸びたのかとか)などを考えると、知り合いにつかまりにくい方がいいとのことで、人目をひかないように鬘をかぶり、髪を黒にした。伊達メガネまでしている。


そんな真っ黒っけ(毛)の、仲良し三兄弟。
変装はしているが、おかげで際立ってキラキラしている。
変装って目立たないように地味に行するのが普通では?と頭をかかえてしまうほど、周囲から視線が向けられている。
選手として視線を浴びることに慣れているせいか、三人は微動だにしていないが。
イケメン滅びろ。

そんな三人を朝、俺の家から見送ったはずなのに、なぜか街中で遭遇してしまった。
本当に邪魔をするつもりはなかった。
なぜなら、黒子がいるから。
黒子がいると、彼らのブラコンタイムがブレイクされるのは目に見えていたためだ。



黒「あれは」

あ、俺のそばにいた黒子が、ついに三人に気付いた。
そしてその観察眼がこよなく発揮され、ひとりが宮地さんだとわかると、真さんをじーっとみて・・・

黒「花 宮さん?ですがあっちの女性、いえ、あれ花宮さんの女装ですよね?以前みたことがあります。じゃぁ、横のあれは花 宮さんじゃ、ない?ならあっちは・・・はっ!?まさか」
火『あー、せっかくの家族団らんだからな。邪魔は・・・って、黒子どこにいった!?』


黒「むわぁっこさ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!


一瞬でミスディレした黒子は、身長差でそこにいる“花 宮”を別人と認定し、 そのままドーン!と体当たりして、彼の腰に抱きつくようにして飛びつきに行っていた。

黒「マコさん!」
真「ぐっ!?な!?はぁ?おま、黒子?なにして・・・」
字『マコ!?』
清「ぶっふぁ。どっからきたんだこの弾丸小僧は。威勢がいいなぁ。黒子、お前どんだけwwwはは」

突然きた衝撃にはさすがの真さんも驚いていたが、リナリーがアザナさんの女装であると認識している黒子は、ギリギリと歯を鳴らして、 彼女を睨みつけた。そして真さんの手から、リナリーの手をはらいおとした。

黒「どいてください花宮さん!真さんから今すぐ離れてください!真さんは僕とお話するんです!」
字『女の子の手を叩き落とすなんて、どういう了見かな黒子くん?』
黒「リナリーさんがどんなにかわいくても女装男子に興味はありません」
字『むぅ。今はちゃんと女の子なのに。きょー兄さんも笑ってないで何とか言ってよ』
清「いや、ちょっとむりwwwじょ、じょそー男子とかwwwぶふっwwwwあってはいるんだがなぁwwwww」

火(そういえば、アザナさんが“変身する”って知らないやつは、リナリーの姿って アザナ先輩のハイイスペック変装=女装ってことになってたんだよな。HS変装の方が変身するより現実味があるのはわかるけど。
眉毛が細くなってる理由とか男の時は太いとか、眉毛がすぐ生えてるのかとか、誰か突っ込んでほしい。ん?今回のは前世の能力を使った幻術だったよな?あれ?女装だっけ?…まぁどっちでもいいか)


黒「真さん!これから一緒にお茶とかどうですか!○○の本について一緒に語りませんか!?」


ちょっと現実逃避(主として眉毛の神秘について考えていた)している間に、 すっかり黒子は彼らフラミャーズと一緒にでかける気、満々のようだ。

俺が黒子を止められなかったばかりに。
なんだか申し訳ない。

花「あー・・・なんでお前、オレがアザナじゃないってわかるんだよ」
黒「身長です!(キリ)」

リナリーの方が、実は花 宮なアザナセンパイより身長が高い。
花 宮字のままだと、現役バスケ部レギュラー陣のなかで、一番低いのは黒子ではなくアザナさんということになる。

そこを指摘され、真さんの横でリナリーが落ち込んでいる。
いわく「やぱり女の子に生まれたかった」とか。
ですよねー。女の子なら、身長が163cmは高い方。

アザナさんの身長、ねぇ。
いえ、俺は何もつっこみませんよ。
いつものことですし。
勝手に回復するでしょう。


黒「さぁ、どこにいきますか真さん!」
字『今日は三人で遊ぶからって、兄さん髪まで染めて頑張ったのに。なんで黒子くんも火神くんもきちゃうかなぁ』
火『そのションボリした姿のまま「アレン君」って言いながら、こくびをかしげて上目遣いとかされたら、まさにリナリーそのもの! ブッフォ!センパイ、どこをどうみても花 宮成分がないwwwどこにゲスを置いてきたんすかwwww』
字『ちょっと火神君、なに言ってるのよもう』

リナリーが花 宮字ではなく、リナリー・リーにしかみえなくて、かわいかったので、思わずつっこんでしまった。
ついさっきまで、巻き込まれてたまるかと思ったのに。

まぁ、いっか。
この姿の時のセンパイは、ゲスくないから。
怖くないwww

清「っと、忘れてるようだが、リナリー。俺のこれは残念ながら髪の毛を染めたんじゃなく鬘なwwwあと頑張ってはいないw」
真「愉快犯がここにいる」
字『兄さん。そこ、そんなに重要なこと?』


黒「せっかくなのでみんなででかけましょう!」


なぜか真さんの取り合いが始まった。
双子の妹が必死に友人から兄を取り返そうとする図に見えたのはなぜだろう。





黒色トリオの目撃情報は・・・

誠凛およびバスケ界。
イジョウなし。



とりあえず俺たちは無事何事もなく、その一日を満喫したのだった。










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リナリーがアザナではなく、本当にリナリーっぽいイメージで。
清・真・字が、黒髪三兄弟で。
真を本能で察知した黒子が、真からくっついて離れない。
――みたいな話を望む。



・・・力尽きたorz





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