有り得ない偶然 SideW
++ 黒 子のバ ケ ++




承: 夢見るモノの「夢」物語






はじまりは、ある女神の戯れだった。

女神はまずはじめに、つまらない世界を面白くしようとしただけだった。
そのためにあまたの人間たちを"原作"のある創作世界にとじこめた。
多くの人間たちが喜ぶなか、一人だけ絶望し死をのぞむ少女がいた。
それが気に食わなかった女神が、少女願いとひきかえに、その肉体をうばうことにしたのだ。

その少女は、別の神によって好きな世界への転生する権利を与えられていた。
その特権をめあてに、女神は少女の記憶と肉体を奪って成り代わった。

そこで女神は一つの過ちを犯した。成り代わる際に人の記憶に付随する感情をすべて切り捨てたのだ。
女神は自分たち神がいなければ何もできない人間たちを下に見ていた。
そんな小さきものたちの感情など知る価値もないと判断したためだ。

少女に与えられていた特権は好きな世界への転生。
その権利を使用し、女神は少女の肉体に意識のカケラをいれこむと、少女が死の寸前まで好んでいた漫画の世界へと転生を果たした。

しかし女神は人間を下に見すぎていたため、人間の感情の動きやそれにともなう思考のありかたについていけなかった。
ゆえに女神は、人間として生きるために"まね"をすることを思いついた。

それは少女の記憶の中にあった創作の話であったり、女神がいままでみてきた"異世界へいったものたち"の言動をである。

女神は、"夢主"や"主人公"なトリッパーや転生者たちがまず今まで自分たち神に望んだ希望の数々を思い浮かべ、続いて人間自分がまず何を好むかを考える。
人間たちは基本的になにかしらの能力をほしがった。つぎにもてたいという話。
女神はもてたいということがいまいち理解できなかったが、人間たちがよく異性をはべらしまくる構図を思い浮かべた。
たしかに人間とは存在自体が下等な生き物なのだから、せめて目見麗しいものだけに囲まれていたいと考えつく。

そして―――おちた。

なにが悪かったのか。
人の子に成り代わった女神は、わがままで傲慢、"こうあるべき"という思い込みに飲み込まれてしまった。
そのまま自分のがのっとった少女の記憶が大きく影響し、記憶にある漫画の原作を幾度も振り返るうち、しだいに女神だった者は、漫画のキャラクターをはべらそうと考えるようになっていた。

どうしてそういう思考に到達したか女神だったものは、もう気づけない。

自分こそが『神に選ばれた転生者』だと"思い込んだ"女神だった者は、自分という存在をキャラクターたちに持ち上げさせるために、悪役を選び、悲劇のヒロインを演じることとしたのだった。
悪役とされたのは、作者でさえ唯一の悪と定めた花宮である。
彼がいるから自分は悲劇のヒロインとなりえるのだと、女神だった者は花宮をはめることを決めた。

そうやって動き出すは、トンチンカンな狂った物語。



しかし、女神"だった者"はしらない。
世界の歯車は大きくずれ始めていることを。

それは"いてはいけない"者が、その世界にいたからか。

"いてはいけない者"――
それは、女神のことか。
はたまた別のイレギュラーなる存在か。

運命は大きなうねりとなり、黒い濁りとなり、狂わせた元凶へとゆっくり伸ばされつつあった。















++ side ワタシ ++



ある人間の女についていた特権を利用させてもらって、ワタシはあの女が最後まで好んでいたマンガン世界への転生をはたした。
転生といってもワタシ自身が生まれ変わったのではなく、ワタシの意識をのせたあの女の肉体を物語の神が作り出した箱庭におろしただけのはなし。
女はもともと大人だったのが漫画の世界に行って中学生になった。だからすきに肉体も改造してやった。
今回は漫画の主事項たちは高校生なので、肉体を高校生のものに。


この世界に来てから、人間どもがすぐに群がってくる。
これが噂に聞くハーレムというやつなのかしら。
醜悪な下等生物にむらがられることのなにがいいのかわからない。


「離しなさい!あんたなんかねぇ好みじゃないのよ」

ああ、うっとうしい。
この男は何を考えてるのかしら。

きもちわるい。

ワタシはまとわりつく男の手を勢いよく払ってやった。



ワタシの名前?
そんなものきいてどうするの?
あなたみたいな奴に教えるわけないでしょ。

「自分の姿を鏡で見直してからでなしてきなさい!!」

ハエを払うように追い払えば、声をかけてきた男は逃げていく。
まったく。
あんたみたいなの、お呼びじゃないのよ。
男は選び放題。
向こうから勝手にやってくる。
それは男も女も変わらない。

なるほどこれが“魅了”ってやつなのね。
人間って不便ね、こうやって魂の格を落としてやってようやく話しかけてくるなんて。

でも、話しかけられるのも、ワタシが優遇されるのもすべてがあってしかるべきことなのだから。
ワタシのほうが格が上なのだから人間ごときに、ワタシがどうこうされるはずがない。
そもそもワタシの道を妨げる方がおかしいのよ。

だって。ワタシはこんなにすばらしいのだから。
ワタシはこの世界(物語の中)では、特別なんだから。
そもそもこんな下等な生き物と違ってワタシは運命の女神なのよ。
いまは人間に成り代わって、人間のフリをしているけど。きっと“魅了”の力がなくても、一目見ただけで魂の質が違うと人間どもは魂で感じ取って膝まづいていたはずだわ。

ほら、みてごらんなさいよ。
街を歩けば、みんなが振り返る。そしてあまたの男たちが声をかけてくる。 待ち合わせをしたりしてワタシがだれかを待つべく立ち止まれば、すぐに声をかけられる。
それだけ魂の違いがみんな分かっているということね。
ふふ。ワタシはそれだけ魅力的ってことだもの。

だけどね、ワタシの横にいていいのは、【黒子のバスケ】のキャラクターだけ。
けっしてモブなんかが触れていい存在じゃないのよワタシは。


ワタシはあのひとだけのもの。
これはイレモノの女に代わり、私がキャラクターと愛をはぐくむための物語。
だからワタシはあのキャラクターが現れるの待っている。

それまでは誰にもワタシに触らせたりしないわ。

ねぇ、はやくきて。
ワタシを愛してると言って――





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この外側のイレモノの名前は、●● ●●●。
存在そのものを奪ってしまったので、その人間としての名前がいまのワタシのものとなった。
この女は、ワタシが地上に落とした針に刺さったので、別の世界への転生を果たさせてあげた。だというのに、その新たな人生に悲嘆して消滅を選んだ。あの女に与えられていたせっかくの特典がもったいない。
だからワタシが有効活用してあげることにしたの。

そう、これは遊戯よ。

神々の良くやる遊びの一つに過ぎない。
ワタシはずっと働いて、しっかり役目をこなしていたわ。だからこそ、たまの休暇や遊びはぐらい許さるはず。
ワタシは女神。
ちっぽけな人間という生き物に、生きるためのしなりを与え、道を導く――運命をつかさどるもの。

ただし、今は人間だ。
人間の器を得て、人間の振りをしている。しょせんごっこあそびだ。

器となった女は、消滅願望者だった。
死にたがっていたから、ワタシがかわってあげたのだ。
あの女が別の世界で生きる予定だった残り分の人生を代わりに生きてあげるなんて、ああ、本当にワタシの何と寛容で優しいことか。そんなワタシとはうってかわって、人間というのはなんと欲深く、薄汚く、哀れで矮小な生き物なのだろう。汚いったらありゃぁしないわ。

ええ、そう。イレモノの女を殺したのはワタシ。

でも異世界転生をもちかけたのはワタシの弟、物語を紡ぐ神。
だから弟神は、この肉体の人間に罪の意識を感じて、いくつかの願いを叶えてくれたわ。

一つ目は、力。
これは人間と暮らすため、この物語の中の世界に来たことで女神としての制限を設けられてしまった当てつけ。
ワタシのお願いを何でもかなえてくれる下僕が欲しかったから、誰もが従う力を望んだら、弟神から「魅力の力」とやらをわたされた。
本当はそんなもの不要なのはわかりきっているわ。だってワタシは女神。運命の女神よ。
たとえいまは人間の小娘の器に入っていたとしても、魂からあふれるワタシの魅力になびかないはずがないもの。
たからといって人間を侮っているつもりはない。だからこその力だ。
それに。ああ、残念なのは、魂と器があっていないことよね。どれだけワタシの魂が洗礼され高貴さがあろうと、器はぶさいくな人の子のもの。
それではせっかくのワタシの美しさを感じ取れず、ワタシの言うことを人間たちがきいてくれないかもしれない。
人間たちがワタシの言うこと聞くのは必然。魂の格が違うのだから。
そうよ、ワタシは高位存在なのだから、なにをしても許されて当然よ。

二つ目は、生きたい世界というか時間軸の指定。
これは【黒子のバスケ】の世界にしたわ。
その原作開始一年前、場所は主人公組の近く。つまり同門のセンパイという立場かしら。

三つ目は、絶対的な生活の保証。
当然でしょう。ワタシはバカじゃないの。
どっかの夢だけを追いかけるような脳なしの人間どもと違うのよ。
事前準備は必要でしょう。
何せ人間というのは、どこの世界に行こうが金がないと死ぬのだ。
これは人間たちが思い描くような魔法があふれた世界でも同じ。それを運命の女神であるワタシが知らないとでも思っているのか。ワタシがいままでどれだけの人間に運命を定め、どれだけの人間を異世界へ転移させたか。だからこそ金の重要性はわかっている。
だからこその生活の保証だ。
これは金のことも住居のこともすべて含めてよ。
ここで住民票とかお金とかなければ、あやしまれてしまうもの。弟神があれほどうるさく言ってきたのもわかるでしょう。
他のバカな夢小説の主人公は、きっと気付かないわね!彼らは自分の願いばかりにどん欲だもの。
けれどここで、住む場所もお金のことも気付いたワタシは、誰よりもきっと素晴らしいわ。

そもそもなぜ黒バスの世界かだって?「この身体の女の願いをかなえる」そういう大義名分でこのイレモノに付与された権限をいろいろ頂いたのだから、願いはきちんと叶えなければね。
神とは"そういうもの"だし。

そういうわけで、このイレモノが好きだった世界に遊びに行くことにしたの。
そしてイレモノが好きだといったキャラを落とすまでがワタシの遊びタイム。

そう、ここは弟が身の作った架空の世界。
原作と呼ばれる漫画をもとに作られた、漫画に酷似した者たちが設置された世界。
たしかこのイレモノは、主人公の火神大我や黒子テツヤという二人組が好きだったはず。

なので、弟にはワタシをあの二人の傍にいれるように設定させた。

ワシは神。
運命をつかさどるモノ。
だからこそ、夢を求める人間たちの願いがどのようなものかもわかっている。
たくさん見てきたもの。
注文の多い人間の魂とは幾度も会ったことがある。


なにより、ワタシは可愛い人形のようにめでて、大切にされるべき存在。
他の冒険や魔法の世界のしなかったのは、接触や暴力の多い場所になんかにいったら、服が汚れてしまうわ。それは可愛くてきれいなワタシには似合わないでしょう。
だからイレモノの望んだいたって平凡なスポーツ漫画の世界にしたの。

惜しいのはイレモノの美的感覚が悪かったことよね。火神とやらはそれほどキレイではない。むしろキセキと呼ばれるカラフルなメンバーたちのほうが、ワタシにとって好みの外見は多い。
だがイレモノの女は違った。スポーツ漫画の中で一番黒バスが好きで、みんなかっこいいし、輝いていたと思っていた。
女の存在そのものを食らった今、その記憶を持っている(感情は付属していない)ので、しかたなくターゲットを火神とするしかなかった。

もちろんメインディッシュである火神と黒子をワタシのものにしたら、この漫画でもっとも素敵(イケメン)なキャラクターたちもワタシのものにする予定。むしろイケメンは前菜かしら。なんにせよ彼らなら、可憐で高貴で素敵なワタシにはピッタリだもの。

そういえば、すでに黒子たちのセンパイとして入学が決まっていたからしらないけど、人間て本当に面倒くさい生き物ね。
月ごとに試験というのがある。
頭の良さとか授業内容とか全く興味がないけれど、魅了のおかげか、すでに回答が書いてあるテスト用紙を渡される。これは授業をさぼっても平気そうね。それにしても下僕も案外使えるわ、便利ね。これでわたしも学生として違和感がないようにすごせるというもの。

あとはバスケ部がせつりさっれるのを待って、夢物語の主人公のようにそばに行くためにマネージャーにでもなろうかしら。なにをするのかわからないけど。きっとキャーキャー応援していればそれでいいのよね。
なにせイレモノノ記憶では、女子はスポーツ部活の周りでキャーキャー騒いでいるものだったから。そういうものでしょう。
下僕を使ってあとはうまく誘導し、来年主人公たちが来るまでゆっくり過ごしましょう。

ふう。なんて完璧な計画なのかしら。
他の夢小説にあるような、アホな望みで、神の施しをすべてを使い切ってしまうバカな人間たちとワタシは違うのよ。


だからね、ワタシは女王様でないといけないの。
この世界の"あなたたち"は、ワタシの言うことを聞かないといけないのよ。



ねぇ。
ワタシを見て。
ワタシが好きだと言って。





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弟神との取引を終え、目が覚めたら、知らない部屋にいたわ。
その日は、誠凛高校の入学式一日前だったの。

ワタシの部屋だと思われる部屋のクローゼットには、漫画でみた誠凛の白い制服が入っていた。
それに願いがかなったのだと知り、浮かれて自分に似合うかと制服をあてて鏡をみた。
鏡を見てとても驚いた。
そこに映っていたのは、キラキラとした金髪の長い髪の可愛い女の子。
桜色のぷくりとしたつややかな唇。パッチリ目の明るい茶色の瞳。
よくよくみてみれば制服を持つこの手も白く、とても可憐だ。
肌もシミ一つない。

どうやら弟神が気を使ってくれてぶすからかえてくれたようだ。

「ああ、これが今のワタシなのね」

ほらごらんなさい。
やっぱり可愛い女の子になれた。



ただ、このときのワタシは気づかなかった。
鏡に映ったそれが、"虚構"であり、"魅了"による錯覚だと・・・ワタシはしらない。







――翌日。
学校の入学式が終わって、教室に集められた生徒たちは自己紹介をするよう指示があった。

「●● ●●●です。好きなものはえーっと、ふふ。やっぱり秘密です。でもぉ!将来の夢は大好きな人と結婚することです。
クラスのみんなとは仲良くなりたいです。みんな!よろしくおねがいしますね!」

こうやれば魅了の力が増す。そう思って、可愛さに拍車がかかるように、"人間が考えるという可愛さ"をためしてみた。

ワタシは一瞬でクラスメイトたちの目を集めていた。
ああ、なんて爽快。
気持ちのいい感じなの。

ワタシは自分が思っている以上に演技がうまかったようね。
これでは演劇の神もお手上げではないかしら。

うっかりしていたから、キセキの世代と同じ学年にしてほしいと願うのを忘れてしまっていたわ。
でも、ワタシはキャラクターの一人である相田リコと同じクラスとして仲良くなることができた。
これをきっかけにバスケ部にはいればいいだけよ。
計画に問題はない。



ああ、来年が楽しみだわ。

早く来て。
はやく。はやく。はやく。はやく。はやくはやくはやくはやくはやくはやく・・・




ワタシ に会いに来て。

―――そして一緒に、 ア ソ ビ マ ショ ウ。


ねぇ、火神クン。黒子クン。





 









:: オマケ ::

(ゾワリ)

火『ッ!?』
氷「どうかしたのかいタイガ?」
火『なんか寒気が』
氷「風邪かい?今日は早めに帰ったほうがいい」
火『あー・・・いや、いい。たぶん大丈夫だ』
氷「たぶんって」
火『なんか来年、日本に帰りたくないなって思った』
氷「?ずっと楽しみにしてたのにおかしなことを言うんだね」
火『なんかスッゲェー嫌な予感がする』








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