有り得ない偶然 SideW
++ 黒 子のバ ケ ++




閑話 神に乞い願えば






『ああ、それは"視線"の影響力だな』


「・・・・・」
『そう。視線だ。
たかが視線。されど視線。
視線は実際に触れていないのに、見られていることがわかるし、なんならその強さを肌で感じることがあるだろう。
例を挙げるなら"視線で穴が開きそう"とか"視線で人が殺せそうな殺意が宿っていた"とか言うアレだな。
実際に触られていないのに"視線の強さを感じる"ってやつだ。
目には力が宿る。っていうのは、あながち嘘じゃない。
実物を知らないからあくまで憶測だが、"力"の強い世界なんだ。であればこそ、よけいに視線一つでも多大な影響を与えるものとなりうる。
つまり多くの者がテニスコートを"見る"ことにより、目には見えない力がテニスコートという"場"に集まってしまったと考えるのが妥当だ。
テニスコートという空間上では、視線は選手にのみ集中する。全方位から客たちは空間の真ん中をみるからな。
結果、そこに集まった"力"が、場の中心にいる選手たちが"そう感じた"というイメージそのものを"現象"として具現化してしまったんだろうな。
そしてやっかいなことに、客が高揚することで一点集中に集められていたエネルギーがふくらみ爆発するようにあふれ、テニスコート外にも影響を及ぼした』
「・・・・・」
『よく頑張ったな。
人間、生きたまますりつぶされて、殺されて。それを繰り返して正気でいろというのが無理な話だ。お前はよく頑張った』
「・・・・・・・・・・」
『ああ、存分に泣け。誰もみちゃぁいないさ』




「・・・・・」
『なるほど。それでか』
「・・・・・」
『怒っちゃいない。気にするな。
まぁ、なんでお前がオレのことをしっているのかとは思ったが。それで納得した。お前にとってオレは漫画の中のキャラクターだったんだな』
「・・・・・」
『ああ、いや、気にしないでくれ。オレが"物語の登場人物"であろうが、大したことじゃないからな。
この世界で今を生きてる。それだけだ』

「・・・・・」
『買いかぶりすぎだ。オレは特に何かできるわけじゃないぜ?こうしてお前の話しを聞くぐらいしかできない』





 「―――ぁみや!――ぉーい!花宮ぁ!」
 「花宮ぁ〜どこ!?」





『おっと、時間切れのようだな』
「・・・・・」
『フハッ。そんな顔すんなって』
「・・・・・」
『代価は受け取った。お前はもう逝け。あの女の手の届かない、あるべき輪廻の輪に送ってやる。
ただ、あの女にうばわれたというお前の肉体の保障はできないが…』
「・・・・・」
『なら、問題ないな。あとはまかせろ』


『安心しろ。その"願い"、このオレがうけたまわろう』








「あ!花宮いた!」
「なにしてたんだ花宮?」
「こんなとこにいたぁ!」
「あれ?いま、だれかいなかったか?」


『さぁてな』









仲間とともに踵を返す花宮の足がふいにとまり、背後を振り返る。

『あ、あと。そこでずっと土下座してるあんた。てめぇいい加減にしろよな?』


世界を渡る者あり。
その者に土下座で謝罪する神の姿あり。

ただし、泣いて謝りすがる神の存在を認識できるは、世界を渡った者のみ。

さてさて。魂へ導を示し、神を認知するは、その者なにものか。
運命の女神"だった"者は、いまだその存在を知らず。

しかしながら、だれもしるよしもなしに、箱庭という世界の、その片隅で運命の歯車は廻り始めたのであった。








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