君は白でオレは黒 IF2
[有り得ない偶然] ポケモンBW2 × XY






01. 世 代 交 代





ちりーんと鈴が鳴るような音が聞こえた気がした。
あの優しい綺麗な音色は知っている。

『“リィン”?どこにいるんだ?』

気が付けばオレは肩に白いショルダーバックを背負って、赤いサンバイザーをして、幼い頃のトレーナーだったときの姿でそこにいた。
オレはいつの間に旅に出たのだろう?
旅に出たのなら、どうして相方であるリオルの“リィン”がいないんだろう。


?ヒュウ?』

周りを見渡しても、“リィン”や他のポケモンの姿さえない。いつも一緒だった兄弟や幼馴染のだれもいなくて、ただ“それ”は広がっていた。
暗闇だ。
それだけが周囲に存在した。

でも自分の姿がわかる。

じつは暗くないのだろうか。
それとも明るすぎて何も見えないのだろうか。
なんだか考えがまとまらなくて、明るいのか暗いのかもわからなくなる。
ただ、不安もなければ怖いとは思わなかった。
それはオレが長く生きすぎたせいで、感覚がマヒしてしまったせいか。
この空間がそういう場所なのか。

ちりーん ちりーん
聞こえる鈴の音色は、“リィン”がいつも持っている《やすらぎの鈴》のものだ。
ずっとオレを呼ぶように音は響いている。

ふと気づけば、足元がほのかに光っているのにようやく気付いた。だから自分の姿は見えたのだろう。
光っているというより、それだけが白いから暗闇の中で光っているように見えたのかもしれない。

でも他には何もない。
この場には暗闇と、ほのかに白く光る一本の道だけ。

それ以外は何もない暗闇の空間。
これでは戻っているのか進んでいるのかわからない。
ここにあるのは、ただどこまでも続く道。
それは立ち止まったオレの前と後ろに果てしなく続いている。
けれど、それだけがたより。
それだけがこの世界のあかりだった。
ほかはなにもなくてまっくら。
まるで道こそがこの世界のすべてのようだ。
認識能力が働かないから、上を歩いているのか横向きに歩いているのかそれとも普通に地面を歩いているのかさえ分からなくなる。

もしかするとこれは夢なのかもしれない。

それなら、この形容しがたい空間に何も違和感を覚えないのは、当然かもしれない。
ここはきっと夢なのだから。
だから道が一本で前後も左右もわからないのに。どちらが前で、どっちらへ進めばいいか考える必要がなく足が動くんだろう。


「ぴ、ぴかちゅう」

ふいに誰かに服の裾をクイっとひっぱられた気がした。
なにかに呼ばれたな。
そう思って背後を振り返れば、オレが歩いてきた方の道に、黄色いポケモンがいた。

そこにいたのはピカチュウだった。

『ピカチュウ?なんでこんなところに』

オレに何か用?としゃがみこんで、視線を合わせるように尋ねたら、ピカチュウはオレが今歩いていた方を指差して首を横に振る。
そのあとはこっちだよとばかりに、クルリとしっぽをゆらしてオレの前を歩いていく。

夢だから適当に歩いていたけど、やはり前か後ろは決まっていたみたいだ。


「ぴかちゅ、ぴっか!」
『あっちに、いけばいいの?』
「ぴかちゅう」

ぴかぴかと示されたのは、道の先。
ピカチュウは正解を出したオレに満足そうにうなずくと、道の先の方にたたずむ人間を指差した。
彼の役目はここまでのようで、ピカチュウは動かない。ただ「いってらしゃい」とばかりに手を振って見送ってくれた。
遠くだった人影が、気付けばすぐ近くになった。
そこにはヒトカゲをつれた青年が、焦ったように白い何かにマジックで文字を書きなぐっていた。

赤い帽子に、襟裾がちょっとはねた黒髪。赤いベストに袖のついた白いシャツ。
どこかで見たことがあるような気がするけど、会ったことはないような気もする。
ピカチュウが示したのはこの人のはずだから、オレは彼を手伝えばいいのかな。

『あのー』

必死そうだったから、控えめに声をかけたら、逆に驚かせてしまったようで、ビクッ!と肩を揺らして、あわてて白い何かを背後に隠して青年が振り返る。
あわあわとして、口をひらいたりとじたり。まるでコイキングだ。
帽子に隠れて目元までは見えないけど、そうとう焦っているようだ。
そんなトレーナーにあきれるように、彼の足元にいたヒトカゲがやれやれとばかりに肩をすくめてため息をついている。
それがなんだかおかしかった。

『大丈夫ですか?』
「キョ、【   】君!?…もう、そんな時間、なの」
『えーっと?なんでオレのこと』
「えっと。あの…」
『なにかお困りのようですけど。オレで手伝えることがあるなら』
「ち。ちがう!…そ、その。大丈夫。だから…」

赤と強い印象を残す彼が照れ隠しのようにうつむいたせいで見えた耳がこれまた赤くなっていて、なにをそんなに焦っているのか不思議に思う。
でもなんだか聞いてほしくなさそうだったから、「そうですか」とそれで納得することにした。
そうしたら彼はあからさまにほっとしたような表情で息を吐くものだから、なんてわかりやすくて可愛いい人だろうと、なんだか小さな孫でも相手にするような気分になってしまって、結構高いその彼の身長に届くようにと背伸びをしてその赤い帽子の乗った頭をついいつもの調子でヨシヨシと撫でてしまった。

「あ、あの…ごめ…‥まだ、できてなくて…だから」
『無理しないでいいですよ』
「だめ。無理、でも書かないと!だから…その、必ず!あとで届けるから!…それまでは」

『はい。待ってますね』

「ぅ…ず、ずるい」
『待ってます』

どっちがこどもだかわかんなくなってくるなぁ。
身長は赤い彼の方が高いのに、物凄い必死な様子に嬉しくなる。
口下手らしい彼が言いたいことがわかって笑って頷けば、帽子で半分隠れた顔がパー!と花が咲くように明るくなったの気付いた。

「かげ〜」
「あ、そうだった」

クイクイと朱い青年のズボンをひっぱるヒトカゲ。
それに青年が頷くと、今度はなんだろうと思っているオレの背後に回って背をおしてくる。

「君は、あっち。…他の子が、待ってる。から」
『はい?』

もう、本当に言葉が少ないな。
だれだよこんな不思議ちゃんキャラ設定を登場人物にだす夢見てるの。
・・・・・・って、オレだ。
そうだ、これは夢だったんだ。


夢だと認識したら、また“リィン”の鈴の音色が聞こえた気がした。

リィーーー・・ン。


どうして?いままで綺麗だと思っていた音色が、ふいにとんでもなく怖いものに思えた。
一歩歩を進めるごとに、背筋がゾクリと泡立つ。

なんか・・・


こわい


『……あの。どこに、いくんですか?』
「君の、最後の旅だ。“みんな”が、通った道。ぼくもきた」

なんでだろう。

どうして?

どうしてこれはただの夢じゃないと思うんだろう。
どうしてこの世界を夢であるというオレの考えを否定するように鈴は鳴り響く?
どうして鈴の音が導く方へ行くのが怖いと思ったんだろう。
どうして――

いきたくない!

――と、思ってしまうんだだろう。
赤い人におされて踏み出す一歩が重い。
きっと背を押されてなかったら、自分では進めなかったかもしれない。
ああ。そっか。
だからオレは始めに《すすむ》のではなく、《戻ろう》としていたのだろう。きっと無意識にも道を前に進むのが嫌だったから、真逆へ進んでいたんだ。ピカチュウはそれをわかって、ちゃんと進むべき道をしめしてくれたんだ。

なんでオレはすすみたくないのかわからないけど。
一歩足を踏み出すごとに、胸に開いた穴が広がっていくような虚無感に囚われ、いまにも泣きそうになる。
悲しくて哀ししくてしょうがない。
それがオレの足をとめるのだ。
ふんばって足を前に進めたくなくなる。想いが重しになってる。

「だめ。すすんで」
『でも!』
「…ぼくもここに来た。以前」
『いきたく、ない!!』

でも…どこかに諦めにも似た何かがあって。
そのあきらめが新たな光へつながるのだとわかっている。


でも。まだオレは、まだ――



「もう暗い、から、ダメなんだよ」



背をおす彼の温もりがあたたかいのに、嬉しいのか哀しいのかわからないのに涙があふれた。
ダメと言いながらも、そこに含まれる声音はとても優しく、さっきの子供のような彼とは違って大人のように静かだ。

オレがだだをこねるように足を踏ん張っている間にも、ヒトカゲの先導のもと、歩みはすすむ。


しばらくすすむと、フシギダネが目の前の暗闇から道をたどってやってきて、オレの足元に一度すり寄るとオレたちが歩いてきた道へと去っていく。
フシギダネにつづいて、ゼニガメ、ポッポ・・・。
赤い人に背を押されてすすむたびに、どんどんポケモンが歩いては去っていく。
なぜかそのどのポケモンにも見覚えがあった。
知識と知っているポケモンという意味ではなく、みんな、みんな“知っていた”。


だって、あれは――



「ありがとう『』、はじまりのゲームを遊んでくれて。ぼくたちの物語はどうだった?」
「かげぇ〜♪」


さぁ、行って。
赤いひとが笑っているような気がした。
みることはかなわなかったけど。

振り返ろうとしたら、ポンと背中を押された。
おもわずよろめいて一歩を踏み出せば、突然目の前に緑が広がった。


ザァァァーーーー

風が吹いた。



一瞬たたらを踏み、体勢を立て直してまっすぐと背を伸ばすように立つ。
振り返ってももう暗闇も赤い人もヒトカゲもいなかった。



オレは気付けば草原に立っていた。


一歩踏み出すたびに風が耳元で唸り、暗闇だった場所に草原が広がる。
導くような鈴の音色はいまだ鳴り響いている。
白い道も続いている。



道の先、遠くには和風の塔がたっているのがみえた。
そこから何かが近づいてくる。
今度はなんだろう。

なんでオレはこんなところにいるんだろう?

リンリンと鈴の音が導くように聞こえる。
そうだ。“リィン”はどこにいるんだろう?


そうしてしばらく歩いていると、影の正体がわかった。バクフーンだ。なにかを追うようにまっすぐに走ってくる。
そのままバクフーンはオレの横を通って、背後へ――。
なんとはなしにその光景を視線で追っていけば、いつからいたのか、ちょっと遠めの位置に、一人の少年が立っていた。
バクフーンはその黄色と黒の二色で彩られた帽子をかぶりゴーグルをかけた少年の横に並ぶと、ばう!と一声吠える。
その視線があの塔へ向けられている。
彼は何を見ているんだろうと進行方向を見れば、五重塔の上空をキラキラと金色の鳥ポケモンが優雅に飛んでいた。
そしてまた何匹化のポケモンと、そのトレーナーらしき少年と少女が駆けてくるのがみえた。
声をかけるべきなのかわからなくて、鞄のベルト部分をギュっと握る。
そんなオレの横を赤毛の少年と藍色の髪の少女が、オレを追い抜いて行って黄色帽子の彼の横に並ぶ。三人は笑顔でなにかをはなしていて。
仲良しだなぁって見ていたら、ふいに彼らがオレの方に振り向いた。

「「こわくないよ大丈夫だから!だから進んで!」」

ツインテールの少女と黄色帽子の少年の声が重なった。
どうしてわかるんだろう。
進むことに怖気づいてる心を見透かされたように投げられたその言葉に驚くも、すぐに彼等も同じ道をたどってきたのだったと思い至る。

「…っと。ごめん、先に行ってくれるか。あっちでレッド先輩がもたもたしてるんで、いまからせかしてくる!もちろん俺もちゃんと書いて渡すから。【   】もあとでちゃんと書いてくれよな!」
「ポケモンたちに必ずもたせて届けさせる」
「もう暗いからね、灯は必要よね。私たちに任せて!必ず届けるわ」

彼らは笑顔でそういうと、バクフーンたちをつれ、オレが歩いてきた道を戻って行ってしまった。
彼らが去ると景色はまた暗闇と白い道だけに戻る。



りーーー・・ ン

また鈴の音。



しかたなく、音にしたがって歩く。
たまに足を止めて振り返ってもあるのは白い道。うしろも、まえも。

歩いて歩いて。
どれくらい歩いたころだろう。

今度はなんだか潮騒のような音が聞こえて、耳を澄ませるように目を閉じる。
ザザンザザンと聞こえるそれは押しては返す波の音。
その中に微かに笑い声が聞こえて目を開けば、正面には海が広がっていた。



綺麗な海岸でたたずむ赤と青を身にまとう二人の少年少女が、オレに気が付くとこっちにおいでよとばかりに手を振ってきた。

「あそぼうよ【   】!そのうちおいつくから大丈夫だよ!」
「どうやら“たすき”はレッド先輩でつまってるみたいですしね。先輩たち、みんな、準備に戸惑ってるようですし。だったら先に準備しとけって思うんですけどねぇ」
「いっしょに遊ぼう!ほら!ポケモンたちも待ってる!」

笑顔があたたかい。
さっきまでビクビクしていたことも進むことの恐怖も忘れ、なんだかオレも楽しくなって『一緒に混ぜてよ』と駆け出していた。

面白いキャップをかぶった赤い服の男の子。バンダナをした青い服の女の子。
二人のもとまでたどり着いたら、二人に左右の手を片方ずつ握られて、「あっちだよ」とばかりにひっぱられる。
しめされた方には、青い海が広がっていて、クジラのような大きな青いポケモンが遠くを泳いでいる姿が見えた。
赤いラインが入った大きなクジラ。あれは――。
オレが呆然と見ていると、クスクスと楽しそうに二人が笑って、えい!っとばかりに背を押された。

海とは反対、今度は陸の方に身体が反転する。

突然のことで思わずつんのめって転びそうになって、砂浜に手をつく。
『何するんだよ』と言い返そうと顔を上げれば、そこには赤くて大きな怪獣のようなポケモンがじーっとこちをみてきていた。
びっくりして今度はしりから砂場について、オレはその大きなポケモンを呆然と見上げるしかできなかった。
そうしたら背後で笑い声が聞こえて、ごめんごめんと二人が手を差しのばしてくれた。
海を背にたつ二人の少年少女の背後にはあの青いポケモンがいて、
オレの背後の陸には赤いポケモン。

「ぐるるる」
「ぉぉぉーーん!」

「カイオウガもグラードンも遊びたいって!」
「人間を襲ったりしませんから大丈夫ですよ」
『そっかぁ。なぁ〜んだ、みんな遊びたかったのか!』

陸のポケモンと海のポケモン、男の子と女の子。みんなで遊んで遊びまくった。


どれくらいたったころか、空をセレビィがとんでいった。
ああ、もういかなくちゃ。

『そろそろ行くよ』

そう告げたら、「くらいけど大丈夫。道はあっちだよ」と女の子が教えてくれた。
みんなに手を振って、鞄を肩にかけなおして、また道を歩き出す。
時間も何もかも忘れてこんなにはしゃいだのはどれだけ振りだろう。そのせいかすこし元気出た。
もう戻らないよ。
歩くって決めたよ。

「うん!そうこなくちゃ!」
「いってらしゃい。あとはたのんだよ」

『はい!いってきます!』



ふたりに手を振って歩き出す。
まだ若干の抵抗はあるけど、それは鞄のベルトを強く握ることでこらえて進む。



――・・ィーーン。



ここはどこだっけ?
ああ、またまっくらだ。
あの太陽のようなこどもたちとわかれて、歩き始めて、鈴の音を頼りに進む。
こっちで道はあってるだろうか?
でも鈴の音色は、向こうから聞こえる。



久しぶりにいっぱい遊んだなぁ、ってさっきまでのことを思い返してにやにやしながら歩く。
思い出に浸りすぎたのが良くなかったのかもしれない。

正面からくる何かに気が付かなくて、ドン!とぶつかってしまった。
むしろぶつかられた?
何か明るい色の、黄色いものがぶつかってきた。
なんなんだよと思っていたら、さらには赤っぽいものが激突してきて、オレたちは団子状にからまった。

ぶつかってきたのは、首もとに緑のスカーフをした金髪に黄色い服を着た男の子。
次にポケモンの技と勘違いしそうになった衝撃第二段をおみまいしてくれたのは、赤いハンティング帽に赤いマフラーをした少年。
あとからかけてきた白いニット帽に桃色のスカーフをした女の子が、三人で尻餅をついてうめくオレ達を見て慌てたように男の子たちのかわりに頭を下げてきた。

あまりに一生懸命謝るもので、思わずこっちがいたたまれなくなって大丈夫だよと言って、なんとか顔を上げてもらった。
二人の男の子は女の子に怒られて、それからいそいでいたとはいえ前を見ていなかったのは自分たちだと非を認めて謝罪してきた。

『たいしたことないから大丈夫だよ』

さっさと立ち上がって怪我一つないことをみせつけてやれば三人はようやくホッとしたように息を吐いて、「ごめんな」と今度は笑顔を見せてくれた。
だからオレは「心配してくれてありがとう」っと返せば、三人はキョトンと驚いたような顔をしていたけどすぐに笑顔になる。
それから尻餅をついたままの二人に手を伸ばした。
今度彼等から帰ってきた言葉は「ありがとう」だった。

「ど、どうしましょう!?もう【   】さんがここまできてしまいました」
「ぼくたちもいそいでいかなきゃ!」
「だから【   】の世界も暗くなったときに、ルビー君に言われた通り先に準備しておくべきだったんだよ!」
「ご安心ください。こんなこともあろうとマジックの準備はバッチリですわ」
「でもまだ“たすき”は向こう側だろ」
「「あ…」」
「ほら!いそぐよ二人とも!」
「そうですね。ごめんなさい【   】さん。わたしたちが必ずとどけさせますので。いまは先にお進みください」

オレにはわからない話。
でも、うん。きっとオレも関係のある話。
三人はいそいでるからと言って去っていった。

手を振って“バイバイ”をする。



道はまだまだ続いている。
さらに道を進む。



歩いていると、一本の標識みたいなのがあって、それによりかかるように、トウヤさんが立っていた。
道しるべ。
見上げてみると、方向はすすむ方か戻る方へ矢印は向いている。
う〜ん。でも読めない。
標識にか書かれているであろう文字は、薄汚れていて霞んでしまってそこに文字があったであろうことしかわからなかった。

標識から視線を下ろせば、視線が合うのを待っていたとばかりにトウヤさんと目があった。
ふわりと笑ったトウヤさんに挨拶される。

「【   】も、ついにここにきたんだね。
・・・時間が流れるのは嫌になるほど早いと思わないかい?」
『そういいうものですよ、時間って。
それよりどうしたんですか“トウヤ”さん。旅に出ていたんじゃなかったんですか』
「とうや?……ああ、うん。そうだったね。オレは“ブラック”じゃなくて“トウヤ”だ。
うん。今日はね、お願いがあってきたんだ。いいかな?」
『もちちろんいいですよ。なんですか?』

トウヤさんは「これをあのこに渡してほしいんだ」と、ゼクロムの入ったモンスターボールをオレの掌に載せた。

『あのこ?』
「うん。このさきにいるだれかへ。君の手から次の子へ渡してほしい」
『あー‥えっ〜と。よくわかんないけど了解、しました?……でも』

そう。この子はNさんとトウヤさんをつなぐ・・・。
そう思ってトウヤさんをみれば、イタズラが成功した子供のような笑みで「もういいんだよ」と笑った。

「もう必要はないからね」

それってつまり会えたってことかな。 そっかぁ。よかった。
トウヤさんはNさんと会えたようだ。

『Nさんに会えたんですね!お話はしましたか!?』
「なにをはなそうかって。話したことはいっぱいだったんだけどね。きっと目の前に彼が現れたらおれは言葉が出ないよ」
『大丈夫!話す言葉なんて考えなくていいんです!生きていればいくらでも思い出はできるから。いいんですよ。無理やり考えなくて。それにそうなったらまた探して、また出会えばいいんです。だってオレたちは生きてるんですから。生きている限り会おうと思えばいつだって会えます!探しても会えないなら罠を張り巡らしましょう!それでもだめならポケモンも総動員して“本気”をだしてさがしだせば相手は逃げられませんよ!望めば、必ず会えるんですよ!』
「・・・君は。
【   】は、おれに似てるってみんなは言うけど。うん。やぱり全然似てないね」
『似てるのは兄弟間だけで十分です』
「はは。その調子!君は自分らしく進んで。
君の言うとおり、おれたちは生きてるんだから。ああ、語弊があるかな。“君は”生きてる。
おれは流されて旅をしちゃったけど、君は君の強い意志がある。からっぽだったおれとは違う。

――“まだ”だよ。君はまだ進むんだ。

君の道は、まだこんなにも輝いて、まだ先まで続いているんだから」

『?』


よくわからないけど。
トウヤさんの目はすごく真剣で、彼だけがオレに《輝いている》と告げた。
背を押してくれたいままでの人たちからは、「くらい」と「なにかを届ける」とだけ言われたのに。
彼だけが《続いている》と言う。
なんでかよくわからないけど、トウヤさんは他のみんなとは違う物が見えている気がした。

とヒュウの旅の最中、よくオレはトウヤさんに似ていると言われた。
でも実際会ってみると全然違う。
うん。やっぱり、ちがう。
同じようで、でも違う。
それでも。
トウヤさんは、とてもオレに近いものがあると感じる。
それはきっとトウヤさんとオレが同じ立居場にいたから――。
ん?立場?なんの立ち位置だろう。
それより、オレに似ていると思うなら、そのマイナス思考はダメだ。
だからねトウヤさん。きいて。

『あなたもオレも空っぽなんかじゃありませんよ!あなたが空っぽだったって言うなら、ポストトウヤと言われた自分はどんだけ空っぽですか?ってか、オレ、相当自分でも中身濃いと思うんですよ!だから“似ている”と言われたあなたも空っぽなんかじゃない!あなたも進んできた!オレが保証します!!』

ニィ!っとわっらって断言したら、驚いたような顔をした後トウヤさんはくしゃっと泣きそうな顔をして、

「本当におれはすすめたのかな?」
『じゃなきゃ、こんなところに貴方はいません!』
「できないことの方が多かったし。それにプラズダマ団の被害は…」
『アホですか?人間一人、できることなんて限られてるんですよ。あなたがすべて背負う必要はないんです!だからオレらがいるんですから!あまえてください!胸ぐらいいつだってかしますよ』
「うわー!もうそれ以上言わないで!は、はずかしいよ!!恥ずかしすぎて死ねるから! 話には聞いてたけど、なんてタラシ文句の乱舞なんだよ!!
ほんと、なんて子だ君は」

トウヤさんは照れたように叫ぶと、そのままオレにだきついてきた。
トウヤさんは真っ赤になった顔をオレの肩に埋めるように隠すも、なぜかそのままワシャワシャとオレの頭をなで繰り回してきた。
あ、ふわふわ。なんてつぶやきが聞こえたから結構満足しているのだろう。
しばらくそれを堪能した後、さっきとは違う明るい笑みを浮かべて、トウヤさんの視線がオレとあう。

「・・・・・でも、ありがとう――『』」

そっと離れた身体がさびいいと思う。
けれど手渡された温もりは覚えている。
うん。トウヤさんはからっぽなんかじゃないよ。だってこんなにもあったかい。

『げんきになりましたか?』
「うん。君のあたま、ボサボサだね。最初からだけど…」
『失礼ですね!これはおしゃれでボサっとしてるんです。でも、あなたが元気になってくれたなら、この頭、いくらあでもワシャワシャに貸しますよ。トウヤさんはもっとナデナデにみがけをかけてください!オレが惚れちゃうぐらいに』
「はは。君はおもしろいね。…うん。本当に、君がおれの後任でよかったよ」

後任って、やはりポストトウヤと言われたのは、ここでも継続なのか。
本当に別人にしか見えないんだけど。
なんでだろう。

まぁ、いっか。


トウヤさんの言葉に首を傾げるも、すぐにわかると苦笑を浮かべた。
そのまま彼はまっすぐに丘を示した。

「頼んだよ」
『はい!しっかり渡しますね』



しめされた先には、白い道。
そこには丘があって・・・。
っていうか崖だった。なんでかロッククライマーのようなマネをするはめになった。
ポケモンを使うという考えが一切浮かばなくて、非常に苦労をして岩肌を登り終えて、ゼェーハァーと死にそうになりながら息を吐き出せば、目の前に影ができた。
疲労を押して顔を上げれば、トウヤさんとは色違いだけど同じデザインのキャップをかぶった黒いベストをきたポニーテールの女の子が不思議そうにオレを見下ろすようにしゃがみこんでいる。
うっ。いまのオレより身長が高い。年上だろうか。だいたいトウヤさんぐらいかな。
彼女は地べたに膝をついているオレに首をかしげて言った。

「君、どうしてポケモンをつかわなかったの?ここまでくるの大変だったでしょう」

言われるまで本当に忘れていた。
思わずひらいた口が閉じず、そのまま愕然とその場に打ちひしがれることとなった。
そんなオレに彼女はクスリと笑い、Nが待ってるよと、立ち上がるのに肩を貸してくれた。

『N?Nさんがいるんですか?』
「いるよぉ。君をずっと待ってたんだ」
『え?トウヤさんじゃなくて?』
「私たちが待ってたのは“君”だよ」

わけがわからない。
そのまま、会ったこともないはずの見ず知らずの彼女に、グイグイと腕をひっぱられていけば、いつのまにかオレは雲の上につきでた塔の上にいた。
少し前には緑の長い髪に黒いキャップをかぶったNさんと、レシラムがいた。
キャップの彼女はオレの手を離すと、Nさんの横に立ち、ニコニコと成り行きを見守る。

「やぁ、待っていたよ。君を“あのこ”が呼んでいたからね。ようやく僕たちのもとに届いたんだ」
『へ?とどく?また“あのこ”?でもこんどのはトウヤさんの言ってたのと違うような…っていうかマジでそいつだれですか!?』
「“あのこ”はあの子だよ!ほら、あそこ!」

Nさんが、レシラムが、そしてポニーテールの彼女が同じ方向を見る。
その視線に促されてみやれば、そこにはキュレムがいた。

『は?』

キュレムはオレではなく、のポケモンだったはずだけど。
困惑していたらキュレムがノソリと動いて、口にくわえていた何かをオレの前に落として、そのままキュレムは氷の粒子をまき散らして飛び去っていく。
なんだろうと思えばそれは細長い筒のようなもので、けれど蓋はなくて中は空洞だった。
なんだろうこれ。
でも持って行かなきゃいけない気がして、これはとても大切なものだからって、その筒をそっと鞄にしまった。
ふとトウヤさんからゼクロムを渡すように頼まれたのを思い出し、鞄からモンスターボールをとりだせば、開閉スイッチを押していないのにポンと音を立ててゼクロムが飛び出て来た。
ゼクロムは一度こちらを一瞥するとひと咆哮して、バサリと飛び立ってあの彼女の側へと降り立つ。
Nさんとポニーテールの彼女のうしろに従うように白と黒のポケモンがならぶ。

「“トモダチ”はこれ以上先にいけないからね」

Nさんが言う“トモダチ”ってのは、たぶんポケモンのこと。
つまりゼクロムたちのことだろう。
あずかってくれるってことかな。

Nさんは優しくレシラムをなでれる。伸ばされた手に甘えるようにレシラムがすりよる。

「このゼクロムもよく育てられてるね!
この子を大事にしてくれたんだね、ありがとう【   】」

トウヤさんのゼクロム。
いや、オレのゼクロムだ。

あのこの背をなでる彼女に、なんだか誇らしくなる。
自分が育てたんだと胸を張って、大切な仲間たちのことを紹介できる。
やヒュウといろんなとところを旅してたんだよ。って。二人に駆け寄ってむしょうに『頑張ったんだよオレ』って言いたかった。
ふたりに、オレのこと。オレたちの旅のことを聞いてもらいたい衝動に駆られた。

体の年齢に精神がひかれてるのかな。
自分らしくもない子供らしい思考に――

ふと駆け寄ろうとした足が止まる。


「ふふ。それが正解だよ。だって君の道はまだ続いてるんだから。私たちや君の物語は終わっちゃったけど」
「“それ”を渡すまでは、走り続けてほしい」

Nさんと彼女の慈愛に満ちた瞳に、そういえばそうだったと思い直し頷く。
探しているモノもあった気がする。
なにかは忘れてしまったけど。
すでにここまでオレを導いてくれたなにかが、なんであったかなんて忘れてしまった。
忘れてしまった何か――それが探し物だろうか?
ちがうかもしれない。
わからない。
なんだか色々忘れてはいけない気がするけど、いまは違う目標があった。
それが自分を動かす。


いかなくちゃ。


オレがここからさらに先へ進もうとしたら、「これを持っていって」とポニーテールの彼女から白い何かを投げ渡された。

「ようやくプラチナたちから届いたの!わたしもブラックの想いも詰まってるわ。
それ、よろしくね!わたしからあなたへ。そして“あたらしい子”へ。
…ちゃんと渡してね。
持ってちゃだめだよ。だってもうこの世界は暗いんだもの」
『え?あ、はい?』
「うん。よろしい!じゃぁ、たのんだよ」

トウヤさん以外のみんなが言う。
この世界はもう“くらい”んだと。
灯が必要だ――と。

受け取ったそれは布のようなもの。
なにか書いてあるのがわかって、ひろげてみれば、《ポケモンリレー》って可憐な彼女の容姿とはかけ離れた達筆にしてなんだかのぶとくおもえる勇ましい字でかかれたたすきだった。
なんとなく内側を見てみると、ビッシリと色とりどりのマジックでメッセージやら似顔絵やらいろんなものが書かれていた。

あ。レッドさんの「よろしく」って言葉の横に書いてある赤いのはもしかしてリザードンなかな?絵、へたすぎ。
あんだけ悩んで結局その一言し書かなかったのかあの人は。
○かいてパっていうのは、パールのことかな。わかりづらいよ。いや、わかりやすいと言えば分りやすいんだけどね。
よくわからない足跡のようなものはポケモンのかな。
あ、これ鈴の塔の絵だ。ちょ!?だれこれかいたの?めちゃくちゃうまいんですけど。
ハートフルでいこうぜ!はい。いきたいですね。
テンガン山へぜひ観光へ――って、それは無理だろ!?
世界を平和に。みんな友達で。って、いい言葉だなぁって思って下にあるサインにびびる。ああ、そう。これ書いたのNさんなのね。

たくさんの言葉たち。

そこに込められた「自分たちの分まで先へ」その想いが伝わってくるようだった。
彼等はこれをオレが“新しい子”に渡すために、物語の終わりに縮こまっていたオレの背を押してくれたんだとようやく理解する。

最後にトウヤさんの名前を探して、黒いマジックの文字を見つけた。

―――道は続いている。

その言葉を胸に刻み込んで、オレは鞄とは反対の肩からたすきをかけて走り出す。




まだまだリレーは続いてる。




そうだったね。
オレはこのたすきを渡さなくちゃいけなかったんだ。

その先にはきっとオレが探している何かもあるんだろう。
いそがなきゃ。
もう時間は迫ってる。

いかなきゃ。



走って走って。

気が付けば横をオレの仲間になったポケモンたちが、オレと同じ速度で一緒に走ってくれる。
でも途中でおわかれ。彼らは「頑張って」と応援の言葉を残して一匹一匹はなれていってしまう。
それでも彼らの声援があったからこそ走り続けられた。
本当は彼らと別れたくなくて、一緒にいたくて、追いかけたくなって・・・何度も足を止めかけた。
別に進まなくてもいいじゃないかって思ったら、そのたびにポケモンたちが「まだダメ」だと叱咤するのだ。
もう疲れたよ。こんなんじゃぁ、みんなにあきれられたかなと横を見れば、みんなが凄く優しい目で「がんばれ」っていうから。
鼻がツンとした。なんだか涙があふれてきて。

そんなこと言われたら走るしかないじゃないか。



体力なんてあんまりないのに。
オレらしくなくて。
だらけずに休まず走った。
頑張ってがっばって走った。
道しか見えなかった場所。暗いだけの世界。
たまにすれ違う人がいると世界は一瞬灯がともる。
他のなにもかもがあるのかないのかよくわからない場所。
でもまっくら。
だからオレは、“先輩たちの分まで”光を求めて走り続けた。



ふいに、前方がまぶしく思えた。
光が――さした。

その正面には一つの人影があって


「よぉ。久しぶり "レッド" 」

茶色の髪をツンツンさかだてたヘアースタイル。
緑のジャケット。
肩にイーブイをのせたイケメンは、立ち止まったオレの背後へむけて爽やかに笑った。

「 "グリーン" 、はやい」
「ようやく来たか。寄り道してるおまえが悪い」

コツンと靴音が響く。
そちらみやれば、最初に分かれた彼とは雰囲気も年齢も何もかも違う "レッド" が、ピカチュウを肩に乗せてたっていた。
こちらの "レッド" もやはり赤い帽子をかぶっているけど、髪の毛はストレートの黒髪で、表情筋がほとんど動かない。相棒だって違う。
"グリーン" もひどく落ち着いた雰囲気をしていて、ふたりとも大人びて見える。
"レッド" は "グリーン" の横に並ぶと、その綺麗な赤い目でオレをみつめてきた。
その瞳がいままで会ってきた皆と同じく優しい光をたたえているのに意味が分からなくなるも、彼が微笑んでいることにておどろく。

「ひさしぶり『』」

『ひ、ひさしぶり。っていうか "レッド" …、それに "グリーン" まで。
なんで。あなた達がここに?ここは二人が生きる場所とは世界が違うでしょう?』

「まぁ、つもる話もあるけど。僕も "レッド" もお前に渡すものがあったんだよ」
「・・・(こくり)」

『え?でもあなた達はオレの前世の世界の住人。この《ポケモンリレー》には関係ないんじゃ』

「・・・正解」
「だからこそだ。ぼくはも "レッド" も君が持っている“たすき”とは関係がない。 でも黒の彼が言って言っただろう?「お前の道は続いている」って。その手助けに来たんだよ」
「手を、だして」
「僕らは君に彼らのような思いを渡すことはできない。でもかわりに、僕と "レッド" からはこれを」

光の正面に立つ二人から手を出すように促されて、臆病風に吹かれながらも差し出せば、コロンコロンと赤と白のものが一つずつオレの掌に転がり出る。

「この子たち、なら。“いける”から」
「こいつらは『』、おまえといきたいってさ」

手にしたボールは金属のはずなのに、中に包みこんんだ命の温かさがうつったように、二つのモンスターボールはひどく温かく感じた。
"レッド" と "グリーン" の肩にのっていた二匹が、突然うつむいたオレを心配するように肩に乗ってきた。
頬釣りされた。
暗闇の中は寒かったんだ。だって明かりが消えてしまっていたから。
でも二匹とも生きている温もりがした。
掌の、このモンスターボールと同じように。

それに涙がこぼれ出た。



本当はね。
オレの冒険は、きっとここまでだって知ってたんだ。

だれだっておんなじ。
いつかは大人になる。
子供だった時を忘れて、キラキラした日々は思い出になるんだ。

オレたちはこどものままでいられないから。
いや、もしかすると…オレにたすきを渡してくれた人たちは子供のままでいるしかないのかもしれない。

どちらにせよね。
時は流れたんだ。


もうオレももヒュウも別々の道を歩んでいて。
旅をしたのも随分昔のことになってしまった。

旅のあいだずっとつけていたレポートはあの日のまま――

旅は中断していたのを知っているよ。
だから気持ちだけがそこでとまって、終わってしまった。
最後にレポートを書いたのはいつだったっけ。
そこからオレは一歩も動けないままだったんだね。

とまったままのレポート。



そっか。
この世界は夢じゃないんだね。
もう“終わって”しまった世界なんだ。
だから。
ほら。

パチンとスイッチがきられたから真っ暗だ。



なのに道は続いていて、オレはたすきを持っている。
この道はきっと続いている。

だからオレは渡されたモンスターボールをポケットにしまって、たすきを強く握って、涙をぬぐう。
ほら、ポケットのなかはこんなに温かい。

だから大丈夫。


「ああ。そのいきさ」
「道はある、から」

"グリーン" と "レッド" の言葉に、もう一度「大丈夫」とそのおまじないを口ずさんで、このたすきを預けてくれた人々の顔を思い出し、胸に刻み込み、ふたりが脇にそれたことで広がった道に一歩足を踏み出す。


光へ。

動き出した世界に手渡そう。
この先にいる《彼》にこれを――。



人影がみえた。
たすきをわたすべきひとだとすぐにわかった。

向こうから伸ばされた手が、オレにないおしゃれな服装でちょっとびっくりした。
ああ、つくづく《彼》はオレとは違うんだなって思った。
きっと《彼》はオレとは違う旅をするんだろう。
違う仲間と、たくさんの新しい冒険を。
徐々に《彼》の姿がはっきりしてくる。
それと同時に胸がギュゥってしめつけられそうな気持になったけど、渡さなくちゃいけない。
持ってちゃダメって言われたしな。

肩から白いそれをとって、伸ばされた手へ――


ズボッ!!


『へ!?』


オレは突然足元に開いた穴にストンっと落っこちた。



『えぇぇぇぇぇぇ!?』
「みゅうぅ♪」
「ぴっ!?」「ぶ、ぶぃーーーー!?」


「「っ!?」」


誰かの、オレの名を呼ぶ悲鳴のような声が、穴の入り口から聞こえてきたけど、それにこたえる余裕はオレにはなかった。
手からスルリと抜けた布の感触があったから、ちゃんとたすきは光の向こうのひとへ渡せたんだとは思う。

最後にみた《彼》は、 "グリーン" とは違うオシャレっけにあふれてて、そんでもって穴に落っこちて突如彼の目の前から下へと消えたオレに物凄く驚いていて、目を開いていた。


オレもびっくりだよ。
最後の最後で落とし穴ってなんなの!?

っていうか、最後の最後まで不愉快極まりないストーカーの声が聞こえたのは――――


錯覚だよね?










あれ?
オレの旅、終わらなかった?


え?!
うそ。



続くのか…これ。


せっかくたくさんの人が見送ってくれたのに。
ここまでくるのにたくさんの人に背を押してもらったのに。

・・・・・・。
ごめん。
つづくらしい。








----------
追記:
ゲーム世界の世代交代。
夢主はWB2の主人公。
最後に出てきた二人はゲーム世界の住人ではない赤と緑。

ゲームの新作が出るともうゲームの電源はいれられない……。
一度クリアしてしまえばゲームのレポートはそのまま。
そんなゲームの、ゲーム世界の住人視点の――新作発売日寸前のこと。








<< TOP /   Next new world!! >>