有り得ない偶然 Side1
++ タイバニ ++
01.その子供は同じ名前の猫を飼っている
「なんだぁ。またきたのか」
悪い気分じゃぁないだろう?
「そりゃぁな!んで?今日は何の用だ?俺、この後仕事でさ」
『せっかくかわいい・・』
「あー!まてまてまて!!お願いします!その情報はほしい!!仕事なんて嘘です!」
『はぁー。そうだろうとは思ってた。あまりベンさんを困らせてやるなよ?』
「わーってるっての!お前はおかんか」
『そのつもりはまったくないな。まぁ、あんたのことが気になるのは、おかんじゃなくてもみんなそうだろうさ。主に私生活とか』
「う・・・あ!そうだ!それより!・・・ん!情報!情報くれよ」
『話を逸らすところがまさに子供と同じだろ。まぁ、いい。そうだな、今回は・・・・
「・・・そんなことが。そっかぁ、みんな元気そうでよかったわ」
『元気じゃないのはあんただけだろ。少しやせたんじゃないか?』
「いや、元気が取り柄よ俺。だから、そんなに頻繁に様子を見に来なくてもこっちはこっちでしっかりやってるんだぜ」
『三食すべて炒飯のくせに?』
「いや、まぁ・・・その。あれだ!あれ!!」
『その辺ことは、飯と酒でもやりながらゆっくり話そうか』
「だからお前本当に何歳!?俺より年上じゃないよね!?おとうちゃんびっくりなんだけど!?」
『くっくっく。さぁてな』
「やだ。うちの子、父親の俺より父親らしい」
:: side 夢主1 ::
ハロー!元神様で、その後猫生を生きて200年。
人間に化けれるようになって土方十四郎という名を得て、人間の子供を拾って育て。
我が子をかばって、ザクッとうわぁ〜!っとそのままポックリいちゃったオレです!
わるい、調子乗った。3行のつもりだったけど、十分長い説明だったな。
死んだオレは、転生のために彷徨っていたが、ふととある男の祈りの声が聞こえたんだ。
そいつの願いを叶える力がオレには少しだけ残っていた。
生まれる前の最期の悪あがきにと、その力をすべてつかって、とある妻子に命を与えようとした――そのまま力を使い切って、輪廻の輪に戻ろうとしたのだ。
戻ろうとしたんだよちゃんと。
だが、しかし。
命の音って心地いいんだよね〜。
赤ん坊の鼓動をきいているうちにうつらうつらしてしまい、力を注ぐだけだったのが、うっかりオレの魂まで注ぎ込んでしまった結果――気付いたら、加護を与えようとしていた女性の子供として生まれてました。テヘペロ。
よかったことは、うっかりオレが宿っていた子供の命をうばわずにすんだこと。
別の命、つまり双子のかたわれとして生まれることになった。
鏑木 椛(かぶらぎ もみじ)です。
どうぞよろしく。
* * * * *
運命というのは、実在する。
それは魂に与えられた一生分の道標。けれどそれは絶対の物ではなく、抗うことができるものである。
現にそのおかげで、オレはとある夫婦を救うことができたのだ。
オレを出産するとおまけつきだが(笑)
いままでの前世のことはあまり覚えてないのだが、どこかいつだかの世界でオレは神であったことがあったようで、その力は今世にもしっかり受け継がれている。
しかしその力もすでにとても弱くなっている。前世が動乱の時代であったため、生と死を司るその力を使いすぎてしまったのだ。
それでも残った力で、一人ぐらいは助けたいと――そう思って、転生する前に一人の女性に加護をあたえた。
正確には与えるつもりで、転生前の自分の魂事与えてしまったわけだが。
まぁ、加護もそうだが、オレというもう一人の子供を産んだおかげで、彼女の運命は大きな変動を見せた。
命を与えるというのは神としてもとても力らを使う。せいぜい寿命を引き延ばすことがせいいぱいだ。
運命を変えたとはいえ、オレにできたことは、身体の弱い彼女の・・・さだめられた期間をいじり、ほんのすこし。ほんのすこしだけ、その幸せを長くしてやることだけだった。
普通の人間の寿命で考えるなら、それはとても短い時間だろう。
それでも彼女は、最期まで幸せだと言ってくれた。
オレにとってもよい母親だった。
こんなわけのわからないオレを気味悪がることもなく、オレの能力を受け入れてくれて、大切にして育ててくれたのだから。
で。
そんなオレは今、猫である。
「もみじ!ちゃんと迷子札もった!?カリカリと煮干しは一気に食べちゃだめだからね!」
首もとをなでられながら、猫用の小さなポーチを首につけてくれた双子の姉に「大丈夫だよ」とニャーンと返事を返す。
オレも始の頃は全く知らなかったのだけど、なんとこの世界にはNEXT能力というものがある。
NEXTとは、特殊な力を持った者たち、いわば超能力のことである。
オレはその能力を持って生まれたのだが、それがなぜか"白猫になる能力"だったのだ。
たぶん前世が猫であった影響だろうと思う。
ちなみに加護に関しては、NEXT能力というわけではないので身体が青く光ることはない。
オレの能力の発露は生まれてすぐだった。
生まれてからしばらくして母に抱かれていた時のことだ。体がうずっとして母の腕の中でもぞもぞしていたら、身体が青く光って真っ白な猫の姿になっていた。
父は身体中の力が倍になる能力者だったこと、母がヒーローオタクであることから、“猫に変身してしまう”オレのことは案外あっさり受け入れられたのは救いだろう。
ただし、まだまだ地域によっては能力者を忌諱する傾向があるところも多い。
ここオリエンタルタウンでもその傾向はまだまだあり、父は能力者であることを隠している。
最近になってようやく能力者への偏見も随分薄れてきたところだ。
それもこれも中央都市であるシュテルンビルトで、能力者をヒーローと祭り上げてTVで追いかけるようになったためだ。そのおかげで、
能力者=ヒーローというように、悪いイメージだけではなく良いイメージの方が大きくついてきたのだ。
そもそもオレは生まれたときから自我があったので、一度能力が発現した後は自在に操れることができた。
能力者が悪人というイメージがついていたのは、この能力の発現時に自力でどうこうすることができず暴走し、周囲に被害をおこすという事態が頻発ししたためだ。
まぁ、オレの場合は人語を話せるわけでもなく、ただ猫の姿に変身するだけなので、ただの飼い猫でとおる。
オレの能力は、白い猫になること。
これは前世での姿と同じで、真っ白な毛に、尻尾だけがふさっとしている。
前世との違いは、蝶にしかみえない模様が白い身体の背中の腰辺りにあることぐらいである。前世ではその模様は耳あたりにあった。
オレの魂を維持している魔女からもらった指輪は、人の姿では左手の薬指に青い指輪の形で常についているが、猫の姿になると指輪が消える代わりに蝶の模様として身体のどこかに出る。
慣れた猫の姿はとても気楽でいい。日光浴とか最高である。
しかしあまりに猫の姿でいることが多いと、家に双子の片割れがいないことを疑われてしまう。
そうなった時のことを考えて、鏑木椛は身体が弱いためあまり家の外に出れないということにした。
実際に母の身体が弱いこともあって、それは周囲の人々を十分に納得させるものとなって浸透した。
鏑木家には、子供と同じ名前の猫がいる。猫は外に出れない子供が名付け、自分の代わりに外を見てくるようにと可愛がっている。
なぁ〜んて逸話が後々出回るが、発生源?さぁて、どこだろうねぇ。
一つ言えることは、オレが家族にふりなことを許すはずがないだろう。ってこと。
さぁて、今日も意識を自分に向ければ、体が一瞬青く光ったかと思うと姿は真っ白な猫へ変化する。
双子の姉が、猫用鞄を装着してくれれば準備万端。
今日はなにをしようか。
そうだシュテルンビルトまでいくのもいいかもしれない。料理ができない父親が単身赴任中なのだ。そろそろ彼の様子も見に行かないといけないだろう。
猫なので電車も無賃乗車になっちゃうけど、猫が迷い込んだ程度にしか思わないだろう。
どうせだから父親の様子を見た後は、シュテルンビルトの井戸端会議にでも参加しようかな。
あの辺はとんでもない情報がごろごろしている。聞いているだけでも楽しいのだ。
下手をすると人間以上に猫たちの方が物知りであったりする。
なんの会議かって?
そんなものきまってるだろう。
猫の集会だ。
猫以外厳禁。
人間はついてくるなよ。
首もとの(保健所よけ迷子札)プレートが太陽にキラキラ。
シッポをふりふり。
うん。いい天気!
それでは、いってきます!
「いってらっしゃい椛」
『ニャ〜ン♪』