有り得ない偶然 Side1
++ HXH++



07.ゲーム×カード×熊男現る!?
※時間軸はいろんなサイト様の情報を確認しましたがどれも数年のずれがあったため、正確なものとは2,3年の誤差がある可能性もあります。
なお、この世界のヒソカは、原作軸では23歳ということで。


龍姫事件か5年後。
うちのヒソカは6歳になった。
身内贔屓といってはあれだが、6歳になったうちの子はそれはもう可愛い。いまは目に見えるすべてが興味津々な時期なようで、ヒヨコのようにオレの後をついてきては目を輝かせている。かわいい。
なお、兄弟子の服部半三保長に子供が生まれ、ハンゾウの名を一部漢字を変えて与えられ与えられ子どもは半蔵と名付けられた。

オレは30を超えたそこそこいい年齢になったはずなのに、一族の血の影響か父と同じように成長が止まっている…というか止まってはおらず、緩やかに成長中。で、あればいいなと思っている。
なにせ父親の年齢が三桁超えているのに20代後半の姿をキープしているので、とまっているのか成長中なのか自信がない。

それはさておき、オレの周りの子供が大きくなったということは、他の人間たちも成長しているわけである。

例えば、オレが28歳の頃にハンター試験の試験官をやることになった時(ただし一次試験で合格者が1人だったためオレの用意していた試験まで受験者が到達することはなかった)に、空腹でぶっ倒れていたので奢ってやった子供(当時はオレの胸ほども身長はなかった)も、今となっては立派な青年に成長している。

うん?うーん、立派、ねぇ?

『島を1つ買ったから遊びにこいというから来てみれば!』



立派になったはずの当時の欠食児童は、身長だけはでかくなり、オレと大体同じぐらいに身長はのびていた。

名をジン=フリークス。
飯をおごったオレに礼を言うためだけに執念で探し当てジャポンまでやってきたあげく、連絡先を押し付けてきて、「元気か?」「今何してる?」から始まるやり取りをかれこれいい回数続けてくる存在である。

友達というには年が離れすぎているが、外見は似たり寄ったりのお年頃だからあり…なのか?

まぁ、そんなこども――いや、もう大人に近いんだよな。「この男」ということにしよう――この男、なんと莫大な金額を投資して、ゲームを作ろうとしていた。
ゲームの名前はグリードアイランド(G.I)。作成者全員の頭文字をとったそうだ。 既製品のゲーム機を使用できるソフトをつくり、そのソフトが入場の鍵になっていて島に飛べる。島ではいろんなアイテムカードにできて、いろんな念能力で島は運営されている。

などなど、様々な構想を練った夢の島の話をされた。
そのときのキラキラしたジンの目は、「ゲームに夢見ちゃって、それを実現できると思い込んでいる夢見る少年」そのものだった。

機械のゲームなんて、うちの国では、やってるやつ見たことないぞ。せめてコマや花札やトランプくらいか。
オレもゲームとは縁があまりない。
前世でもゲームなんてあんまりやらなかったからなぁ。それに時間を費やすぐらいなら別のことをしていた。
オレ自身はゲームをやらないが、前世でゲームにドはまりしすぎる人間というのをよく見てきたので、この男もまたはまってしまったあげく、自分で作ろうなどと思ったのだろう。
その気持ちはわからなくもない。

ただし、褒めるにしろなんにしろ、規模がやばい。
範囲がなんと小国家規模なんだがこのゲーム。
もはや夢物語を逸脱している。
しかももう島を一つ買ったっというから、夢どころか現実化しつつある。やる気がたぎりすぎている。

人智を超えた無謀さよ。

『島1つをゲームの舞台に使うとか!島というかこれもはや大陸だろ!小さい大陸そのまんまじゃん!!
そのために神字を覚えろとか。なんなら書いてくれとか!!断る!ロボットでも作ってそいつらにやらせろ!!人間にできるかぁっ!』

確かにオレの能力は水分を水に変えるし、なんならその墨を操れるし、その墨で描いた絵には能力を付与することが可能だ。
操った墨を定着させることもできるので、こうして今入れ墨師という仕事もしているわけだし。
ただし墨を動かしたり、与えた能力を持続するには、オレのオーラを常に代価として消費する必要がある。
《黒姫》や《慈黒》は基本「絵」の状態でオレの黒い服の中に紛れている。
それでもいつでもその能力が使えるということは、常時展開型であるがゆえだ。
つまりあの二体でさえ、オレのオーラを日々吸って存在を保っているということだ。
それをこの島全体にやれとか無理だ。

あと、神字とか覚えるのがクソ面倒くさい。断固拒否である。

神字というのは、文字一つで意味を持ったりする漢字のようなものである。
ただし漢字と違って「ハンター文字」の一部であり(つまり記号だ)、特に重要な意味や力を持つ文字や象徴的な文字を指す。
ハンター文字の中でも、特定の文字や組み合わせが念能力やアイテムの効果を強化する役割を持つこともある。これは特に重要な文字や象徴的な文字を指し、念能力やアイテムの効果と関連する場合があることから、世界の深い理解や能力表現の一部として位置づけられている特殊な文字だ。
特殊文字というか、特殊配列といったところか。
神字となる文字の並びを探すのも覚えるのもいやだ!そもそもオレは今の能力と今の生活に満足しているので!

つまり――

『手伝えるかっ!!』

「仲間と一緒に島買ったから、島に遊びにこいよー」と、それはそれはめっちゃ軽く言われたので、めっちゃ軽い気持ちで来た。
なんなら別荘に日帰りで遊びにきたバカンスレベルの気分だった。
だからヒソカもつれてきちゃったし、政権交代の影響で御庭番集等の忍たちが右往左往しているというので預かっていた兄弟子の赤ん坊も背負ったままだ。

招待主である男もといジンとの待ち合わせ場所につけば、背中に背負った赤ん坊を見て「2人目を産んだのか?」と第一声で言われた。
再会の喜びはないのかお前は!
ジンの頭を引っ叩いたオレはきっと悪くない。

『オレは男なので産めないし!産んでないし!うちの子は1人ですぅ!!これは兄さんの子です!見ろよこの黒髪黒目を!オレの要素、微塵もないだろうが!…まったく』

兄弟子こと保長は、剃髪にする前はそれは見事なストレートの黒髪の美青年だったんだ。
ハネ毛で真っ赤なオレの髪と似ている点などどこにもない。
せいぜいが肌の色が同じ東洋人ポイということぐらいじゃないか。

『そんな膨大な計画に付き合う気はないからな』
「なんだよぉーケチィー。少しくらい手伝ってくれてもいいだろ。お前の能力ならあっという間に終わるだろ」
『んなわけあるか!念能力の何かを強化するどころか、その神字はオレを弱体化しかさせねぇよ!』
「そうかぁ?」
『そうなの!第一、いまオレ子育てでめっちゃ忙しいから、何日もお前のままごとに付き合ってる暇はない!今日はバカンスできたの!』

ジンの仲間たちも育児経験が煮らしく、興味津々にオレの育児指導を聞いている。
ジンは飯と遊びと寝かして世話すればいいんだろう。カンタンカンタンと笑うが、育児なめんな。
本物の育児はそんなものではない。
育児の大変さをわかってない。

「子供の面倒くらい見れるぜ俺たちで」
『みれてないだろ』

そう言いながら、手近にあったぬいぐるみの足をつかんでさかさまに持って抱っこのまねごとをするジン。
おい、ぬいぐるみの足がテメェの顔のそばにあるぞ。赤ん坊をさかさまに抱き上げる気か?正気か?

ジンが抱いているそのぬいぐるみが赤ん坊であるなら、まずは頭を上にしろ。
あとその角度は人間の首を絞め殺すものであり、赤ん坊をあやす角度じゃない。
赤ん坊に限らず、誰でも首折れるからな。
お尻はしっかりささえろ。
ご飯とおしめかえの泣き声の違いは分かるか?
赤ん坊にごはんをあげるタイミングと、ミルクの温度はわかるか?
その沸騰して煮えかえって誰もが火傷しそうな白い物体Xは何だ?

もう、やだわこいつ。
あきらかに子育てにむいてない。

怖くて預けられない。

ぬいぐるみを抱っこするジンを、ヒソカが顔を引きつらせて見上げていた。
オレは抱っこ紐でしっかり抱きあげている赤ん坊をジンに触らせてなるものかと思ったし、手を伸ばして抱っこしたがるジンから思わず遠ざける。

もしこいつに子供できたら、赤ん坊は死ぬのでは?っと、ここ数時間で思った。

『まぁ、恋愛とかしそうもないし、結婚とは無縁そうだからなぁお前。子どもとかできないか』
「いや、なにがあるかわからないぞ。もしかすると俺もいつか運命と出会っちまうかもな(笑)」
『なにをのんきな。そう思うなら、しっかり育児できるようにぐらいなれ』

さも楽しげに言われるが、ジンが父親になるなんて本当にその時は浮かばなかった。
まさかこの数年後、この大バカ者に子どもができるなんて誰が想像しようか。



それからなんだかんだ説得され、先に折れたのはオレだった。
ジンがしつこすぎた。

「せっかく来たんだから、少しだけでも手伝ってくれよ。みただろこの島の規模を」
『たしかにでかい。
それにわざわざ手間暇かけて島に遊びに来たのになにもしないで帰るのもなぁ』
「だろだろ!だからさぁ〜」

はぁー。

『条件がある』
「お。なんだ!ついにやるきになってくれたか」
『まずは、オレは島に在中しない。その2、オレにゲームをやらせるな』
「うんん?」
『この島の加工を手伝うのはまだいい。ただ、そこにオレの能力は当てにするな。島に神字を刻みたいのなら、ロボットでも作らせて労力を減らせ。それくらいなら11人も仲間がいるだからできるだろ。そうでもしないといつか疲れた仲間が逃げるぞ。
在中しないと言ったのは、オレはこの島以外で生活してるんだから、ゲームの管理者になる気はないという意味だ。
あとそのゲームが完成したとしても、オレに招待状を送ったり管理者をさせたりするんじゃねぇ。ぜってぇ島から出れなくなるからイヤなんだよ。むしろこのゲームに参加できないようにしろ。ゲームなんざしたことねぇから、ここでゲームやらされたら即死確定だ』
「あー、たしかに。お前の国、そういうあそびってなかったもんな」
『駒回し勝負ならできるが』
「このゲーム最初に説明したとおり、そういう軽いもんじゃねぇからなぁ。おう、わかった。その条件は飲む」

よかったぁー。
これでややこしいゲームに巻き込まれないで済む。
頭を働かせるゲームって苦手なんだよなぁ。

その後、能力なしでいいからと、少しだけでいいから手伝ってくれと拝まれた。あげく抱き着かれ、逃がさないとばかりにしめつけられ、しかたなしにジンのお仲間たちと、島をゲーム化するためのミーティングに参加させられた。

まず役立ったのは、前世のプログラマーであった時の知識だ。
それと神字と称されるものが、一文字で意味をもたらす効果があるため、漢字と同じ考えできること。
文字の組み合わせにおいては上記の二つがとても効力を発揮し、ゲームには詳しくないオレでも神字の並びや配列などの相談に乗れたことだろう。

ジンとゲーム制作者メンバーとともに話をしつつ、ハンター文字の配列調整をして神字へと変換する作業は意外とのめりこんでしまえた。
おかげで、半日だけのバカンスのはずが、数日島にいるはめとなった。
むしろ数日では収まらず通うはめになったが。

その間、赤ん坊にふれてこなかったらしいジンの仲間に赤ん坊の扱い方を教えた。
うちの息子も積極的にお兄ちゃんをしていた。

ねぇ、六歳の子が赤ん坊の押し目変えたりミルク作ったり遊んだりしてくれるんだけど。
うちのヒソカ、すっかりお兄ちゃんなんだけど。尊い。
しかもハンターとしてめちゃくちゃ優秀なはずのジンの仲間たちに、育児の指導してる。まじで天才じゃね?

ジンを含めた仲間たちは、かわるがわる、ときには恐る恐るといった感じではあったが、泣く赤子を面倒見てくれた、
メンバーの中に子育て経験者はいないようだったが、将来何かの役に立つかもと、すすんで育児について教えてほしいと言ってくる子もいた。勉強熱心で、いいこだ。

これなら、なんとか――とか思っていたら

『ジン!!!!お前なにをしている!!』

ジンが兄弟子の子をぶん投げやがった。
まって。赤ん坊がお星さまになりそうなぐらいお空高くにいるんですが。豆粒すぎて見えないんですが。うちの子が呆然として口を開いたまま閉じられなくなって、空を見上げているんですが。

おいぃぃぃぃぃ!!!!!

「え、なにってタカイタカイだろ。赤ん坊ってこういうの好きってきいたことあるし」
『限度があるわっ!どんだけ上に投げとばしてるんだお前は!殺す気か!!!』

ご本人曰く、「たかいたかい」のつもりだったらしい。高すぎだ!
ビル数階分とか高すぎる!!!!
これだから一般人を超越しちゃったハンターという生き物は…。

無事受け取るから大丈夫だって。っと、ヘラリと笑ったジンをゆるさない。
一発顔をぶん殴っておいた。
お前、絶対に父親にはなるなよ!

『《黒姫》!』

キャッキャっと泣いているのか笑っているのかわからない程上空の小さな声をたよりに、《黒姫》に上空の赤ん坊を救出してもらう。
パクンと空中に移動した《黒姫》が赤ん坊を丸のみにし、次の瞬間にはオレの影からひょっこりと《黒姫》が顔を出し口から赤ん坊をはきだす。
無事に赤ん坊を受け取るとようやくほっとする。
おにいちゃんなヒソカも慌てたように駆け寄ってくると、心配そうにオレの腕の中でぐっすり寝てる(気絶してるのかもしれない)赤ん坊を見て肩から力を抜く。

『おい、ジン!お前は一度能力者じゃない一般人の生活を学びなおせ!お前の仲間たちをみろ!みんなまじめに育児について学んでるだろうが!』
「え〜!」
『えーじゃない!うちの子の爪のアカでも煎じて飲みやがれってんだ!』
「え、ボク?パパじゃなくて?」
『うんそう!そう!ヒーちゃんは下の子の面倒をちゃんと見れてすごいよぉ!ここにいる大人たちはダメダメでね。
だからヒーちゃんの爪の垢でも飲まして、できるようにさせてあげたいぐらいなんだよぉ!』

後にこの経験が、G.Iでシッター機能を生み出すことへつながる。

〈メイドパンダ〉――絶滅寸前の珍獣。大変きれい好きで、料理が趣味。個体によっては洋裁やガーデニングもたしなむ。
何よりも人間の子供の面倒を見るのが得意。





+ + + + +





その日は、いつもと同じようにジンが家まで押しかけてきて、そのままG.Iというゲームの実験に巻き込まれた。

ジンに拉致られ、やってきましたグリードアイランドの拠点地。
なお、人質として息子と兄弟子の子も連れ出された。

隙を付いてこどもたちをつれて逃げようとしたが、エレナとイータに島を封鎖され、空間を飛びこえて逃げようとしたらレイザーに殴られ気絶させられた。
気が付けば椅子に縛られ、G.I製作者がずらりとオレを囲んでいたという状況だ。

縛られているせいで、横にいるヒソカが、オレのかわりに赤ん坊をあやしてくれている。
できたこである。

実質、手をだせないオレからすると、こどもたちを人質にとられているも同じ状況なので、しかたなくこの現状を甘んじて受け入れているというわけだ。
ああ、いっそのこと縄から抜け出して子どもたちを連れて逃げるのは・・・だめだな。だって敵は最強の念能力者11人だ。
死ぬわ。


そんなわけで、しぶしぶ実験に協力することになった。



なんの実験をするのかと思えば、今日は〈β・リサイクルルーム〉の検証だそうだ。

〈β・リサイクルルーム〉は、先日完成したばかりのカードだ。
効用はこの部屋に壊れた物を入れておくと、24時間後には修理され新品同様になっているというもの。

そもそもオレは先程、念の防御もせずレイザーの攻撃を食らったことにより、瀕死の重傷を負ったらしい。
ジンとは腐れ縁で、かなりの回数を共に過ごしたことがあるとはいえ、このG.I製作者ズの中にくわえてもらえるほどオレは能力があるわけじゃない。
おかげで一撃で死に掛けた。
慌てた彼らによって止血等の応急処置をしたもののこれ以上は無理だと、細かいことが苦手なG.I製作面子は思ったらしく、できたてホヤホヤのカードを使用した。
それが〈β・リサイクルルーム〉だった。
原作ではバリバリ使用可能状態となっていたG.Iだが、この世界ではいまだ作成途中。
仮に能力を添付して形となったものには〈β〉とつけられている。
〈リサイクルルーム〉もまだ量産できる段階ではない。それにオレを放り込んでくれたらしい。
おもうに、そのリサイクルルームとやらに生物を入れてよかったのかが、実のところ一番気になっている。なんとかオレは生きているのが救いである。

うちの子が、おおざっぱすぎる彼らを必死で止めようとしたがだめだった。軽くあしらわれ、軽くあやされていた。
もうどうとでもなれ!という気持ちで、オレはカードを使用されたのだった。

っで、完全に復帰すると思われる24時間以内にオレが我に返ったことにより、外に出された。
それによりオレは――


縮んでいた。



ケガはすっかりなくなったが、代わりにオレは15歳ほどの年齢まで若返っていた。
若返りの薬はこのゲームの中にはあるが、それとは別にオレは縮んでいた。
ああ、30年もかけてようやくあそこまで育ったのに。

『ありえねー…なんてことだ』

人種ウンヌンを抜かしてさえ、オレは同年代の人間達より小さかった。
血の影響でどうも成長が遅いらしい。
それなのに十代に戻るとか。
ありえなすぎる。
あんまりだ。

あまりの悔しさに腐れ縁であるすべての原因たる男をにらみつけたが、悪い悪いと笑って流された。

流石に哀れんだ他の仲間が、オレの念とかけられた念を調べてくれることになった。

念能力って、操る者が死んでも能力だけ分離されて残るんだよ。オレが幽霊だと思っていたアレである。強い想いに不可思議の力が影響を与えてしまったものであり、体が分離されれば、操者の意志など関係なく残り続ける。
つまり〈β・リサイクルルーム〉を使用した本人にもとけない状況なのだ。

エレナとイータの綿密な念との調査により、〈β・リサイクルルーム〉の中に入っていた時間分経過すれば、その念の効果が消えるだろうとの事だった。
さらにと告げられた彼女達の言葉にオレは本気で血の気が引いた。
あのまま24時間完全に入っていたら赤ん坊になっていたか、戻りすぎて"消滅"していた可能性があったようだ。

「細胞ね」「そうね」
『それ、戻りすぎだから!!』

「まぁ。さすがはだな。運がいい」
『運だけでオレを実験台に選ぶなや!!』
「いいじゃない。どうせいつも助かるんだから」
『よくない!!本気でよくないからイータ!!かならずいつか寿命より先にお前等にオレが殺される!』
「殺すわけないじゃない」
『今死にかけたわ!』
「「「「・・・・・・」」」

『ってか、そんなのどうでもいいけど、もうオレを実験台にすんなよ!!』


そして〈β・リサイクルルーム〉は、“絶対に時間が来るまで扉を開けてはならない”というルールが追加された。
それもこれもオレが実験台となって証明した結果である。
なぜ“開けろ”ではなく“開けてはならい”のかというと、途中で開けてしまうと元の原型が壊れるためだ。

〈β・リサイクルルーム〉を完成させるには、“戻る”の定理に、“どこまで”という時間軸を指定する必要性が発覚し、カードの改修が求められた。
〈β〉版における現在の“戻り”具合は―――『生き物』ならオレのように若返ってしまうか、ただの肉片になるか…。
それも指定時間である24時間きっちり入っていた場合、念の効果が切れる代わりに、もどされたその状態で固定化されてしまうらしい。
つまり失敗していたらオレは、子供か細胞から人生をやり直さなくてはいけなかったところだ。
固定化ということは下手をすると、成長さえしないかもしれないのか。
なにそれ、酷すぎる。

今は24時間きっちり入っていたわけではないので、〈β・リサイクルルーム〉に入っていた時間分たてば自然と元の姿に戻るという。
それを聞いてどれだけほっとしたことか。
目の前にいる奴らは全員、「二次成長(第二次性徴)のある外国人羨ましい」と思う気持ちをぜひ味わってほしい。

ここで24時間できっちりとはいっていれば、壊れた“物”限定なら、元に戻っていたという。
ちなみに〈β〉版では、カード一枚に付与された念の量がすさまじく、24時間以内にだしてしまうと“物”でも鉛筆だったら木と黒檀にまでもどってしまった。

ねぇ、ようオレ無事だったね。


それから〈β・リサイクルルーム〉は改良に改良を重ねられた。
再生というよりは逆行機能だろう。
この"物"の“形”を戻すまでにとどめることに成功するのはまた後の話。

うん、その辺は身をもって体験したよ。



そんなわけで、オレ 黒筆 はただいま、15歳です。同年齢の大陸男子どもとくらべたら、なんか小さいが!東洋人っはこれが普通なの!
現在青春真っ盛りな15歳のジンと同じとは思えない。頭一つ分自分小さいがな!!
おのれ大陸人!

あー、かなしい。本当に悲しいことに着てた服がぶかぶかです。
なんか情けない格好で、はずいんですけど!!





「じゃぁ、これね。いつ姿が戻ってもいいように服よ」
「あと予備はいまのところはそれで我慢して」

渡されたのはエレナとイータの服。
あとはオレがこの島に予備にと置いていた服(こっちはいまはサイズが合わなくてデカい。泣ける)。
双子達の服は、今の姿のオレに合うのが彼女たちのサイズしかなかったからだが…スカートじゃないのでよしとしよう。
せめて男物にしてくれよと思ったが、この場にいる男メンバーのだれともサイズが合わなかった。
やはり泣ける。

しかたなしに双子女子から借りた服をうけとり、渡されたカバンにいれたところで、ハテ?と首を傾げる。

なぜ、鞄?
必要なときに取りに行けばすむのではないか?

そう思っていたら、双子とジンがニヤリと笑った。

「鞄の中には必要最低限の食料と道具もはいってるからね」
「さぁ、"次"行くわよ!」
「次は一日で帰ってこれねーかも知れねーからな。あ、そうだ。カードの使用後にそのまま逃げんなよ。ちゃんと島に戻ってこいよ。こちには人質がいるのを忘れるなよ」

ジンの言葉に背筋に冷たいものが走る。
いかにも何日も島の“外”に出なきゃいけない気がする言葉の言い回しですね。
ついでに“そういったカード”はオレの記憶の中では、いまのところ一つしかない。

『ま、まさか…』

一歩後ずさりする。

『ハハ。てめーら、本気で容赦ねーな』

この外道どもが!

ヒソカをみれば、赤ん坊の半蔵を抱きしめたまま、不穏な気配を察知しているようでオロオロとオレとジンたちをみている。

うう。しばらくひーちゃんに会えないらしい。
もう、まじかんべんしてくれよ。

そもそも今この子を置いてオレがいなくなったら、ひーちゃんは原作時に原作そのままのヒソカになちゃったらどうするんだ。
うちのこ、本当はひーちゃんじゃなくて、ヒソカっていうんだぞ!あの狂喜のピエロだぞ!
…いや、まてよ。
原作あんまり覚えてないけど、原作のヒソカが変態だったのは覚えている。
でもなぁ〜変態的な性質やら常に笑顔を張り付けているところとか能力とか、うちの母に似てるし、なんなら殺人を別に否定している家じゃないしなぁ。むしろ生き残りたいなら相手を殺せとしつけられているし……うむ、このままうちの一家がヒソカを育てても原作のアレになってそうではある。
ごめん。なんでもない。原作の狂気ピエロでもなにも問題なかった(笑)

問題はそっちではなく、オレの安全の有無だな。


「頑張れよ
「「これもみんなわたし達のためよ」」
「そうそう」
「帰ってきたら感想教えてくれな」
「無事を祈る!」
『これみよがしにそういうときばっか意気投合してんなっ!!』
「それやぁー、ねぇ」
「そうそう」

うちのお子様が加勢できないのをいいことに、G.I製作者達、計6人全員が笑って手を振ってくる。
その様子に、あらかた言動から推測はできていたが、確信した。爽やかな笑顔でにじり寄ってくるジンが何を隠し持っているかを。

「お前が適任なんだ。外に飛ばしても転移の能力があるからサクッと帰ってこれるしな」
『やっぱり"そういうカード"か。いや、そりゃわかるがなぁ』

オレ、今育児中だったのに。つまりすごく忙しい。
なのに、なんでこうも余計な実験に巻き込まれてるんだか。

はぁー。っとため息をついたところで。

「ぅあぁ?ぅえぇぇぇぇぇーーーー!!!!!」
「え!?いま泣くの!?えっと、おむつかな?ごはんかな。ほ〜ら泣かないなかない」

今までおとなしくヒソカの腕でだっこされていた赤ん坊が、盛大になきごえを上げ始めた。
びぃぇ〜!っという突然の大声に、その場にいた優秀な大人(ハンター)たちが、想定しない出来事にビビッて一瞬固まる。

その隙をついて、ジンがカードをポケットから出すより早くオレは念を発動させた。

『ただでやられてたまるかよ!!《黒姫》!』

オレは特質系能力者である。
呼び出した《黒姫》は、墨でできたような真っ黒な鯉。彼女が泳いだ後には墨の池が宙に出来上がる。
それは影と影をつなげる。俗に言う空間を捻じ曲げる移動術だ。

敵前逃亡で悪いが、オレの影と知っている建物の影をリンクさせた。

「あまいぜっ!!」

『くそ!!』

しかしオレの行動は少し遅かった。
《黒姫》によって空間が繋がるより早く、ジンの発動した〈離脱(リーブ)〉のカードが効力を発揮した。


〈離脱(リーブ)〉――対象プレイヤー1名をG.Iの行われている島の外へ飛ばす機能を持つカードだ。



そうしてオレの視界は白く染まった。





+ + + + +





『ふざけんな!くそったれ!!』


外部との接続を切られて戸惑っていた《黒姫》を抱きしめ、二人(?)で強制転移に目をつぶって耐えた。
気分?ああ、気分は死ぬほど最悪だ。
なんだか一瞬で飛ばされたというよりは、ぐるぐると流れるトイレの中にでも流されたようだった。
やがて眩暈が終わって、濃い緑のニオイに目を開けると……



おっさんがいた。
髪も髭も伸び放題。髭面の熊のようなモッサモサの男が、多分呆然としてこっちを見ている。モサモサすぎて顔が見えんので、雰囲気でなんとなく驚いているのかと思っただだけだ。

『だれだおまえ!?ってかここどこだよ!《黒姫》場所わかるか?』

いかにも山暮らししてますといった風なヒゲ面の山男を無視して、抱きしめていた《黒姫》を宙に放す。
目の前の相手もいかにも野生児っぽいがオーラの整い方からして、念能力者ぽいので気にせず、《黒姫》を使う。
《黒姫》は水の中を泳ぐ普通の鯉と同じように、宙をゆらりと優雅に泳ぐ。
やがて何かがおかしいと首をふるふる横にふった。

「《クロヒメ》って、まさか“”か!?」

『オレに魔獣の知り合いはいません(親戚はいますが)!!人違いです!』

体外知り合いの能力者は、オレの念能力については教えている。
あのジンだって何度も共にした依頼で見せているので、だいたいわかっているだろう。
だが魔獣(もとい龍)の血を継いでる一族とかそういうのは、父の道場仲間以外には口外してはいないので、魔獣ネタ破棄っと通じないだろう。
それでいいのだが。

相手の熊男は、小麦色に焼けた肌をし、体全体薄汚れて泥まみれ。
服という服はなく、下半身の大事な部分を布切れ一枚で覆っただけ。
しまいには体長5メートル以上は優に超える巨大な魚をロープ一本で肩に担いでいる。
そんでもって豊臣秀吉がうらやましがりそうな、濃いヒゲヅラ。もみあげと顎とつながってるせいでもはや熊。
全身から人外感があふれだしていて、魔獣にしかみえなかった。

だけどその声は聞き覚えがある。

ありすぎてムカついたので、無視させてもらった。

『《黒姫》…逃げるぞ』

「まて!!」

とっさに逃げようとしたら、数刻前同様に肩を掴まれた。
イヤイヤながらも、振り返るとキラキラと目を輝かせた――ジン=フリークス(魔獣ver)がいた。
しかもオレが知っているよりも随分ふけた顔だ。

「死んだと思ってたが。本当に=クロフデか!?
お前随分縮んだなー。もしかしてオレが作ったG.Iで〈魔女の若返り薬〉でものんだ副作用か?」

若返り薬って、お前どんだけ種類多いカードゲームつくってんだよ。
オレはそれにはかかわってないが、女子とかめっちゃすきそうだな。

『…本当にジンか?(魔獣じゃなくて?)』

オレのこの姿を見たときと同じジンの笑い声。
楽しそうにペシペシと頭をたたかれるのも慣れた感覚。
つぶれると思うほど乱暴なソレ。





そして話される驚愕の事実――

『はぁ!?あの恐怖の人体実験からもう十五年以上たってるだと!?』

しかも、この時代の俺はすでに死んでいるらしい。
まさかあのまま帰ってこれなくて死亡認定されたのかと思いきや、死んだのはおととしのことらしい。
なんだ。けっこう長生きできたんじゃん。
死因とかは未来が変わる可能性があるからと教えてはくれなかったけど、特にその辺は興味ないかな。
だって、前世ではけっこう若く死んでしまったし、40歳以上生きれれば大円満。満足だ。

「イヤ…なんというかな。俺もよくわからないんだ。死んだというか行方不明というか。あの時お前は念能力は使えなかったんだ。だから逃げられず殺された…ように俺はみえた。だから墓はある。まぁ、空だがな」

『…ふ〜ん。まぁ、オレてきには、その死亡原因より、あの恐怖の人体実験後、オレがいつ戻れたかの方が心配なんだが。なにより、子どもたちをお前らだけにあづけておくの、本当に不安でしょうがない。
あとこの17年で起きた大体の情報が欲しい』
「あ、ああ。そうか。あのときは2時間くらいで戻ってきたはずだ。
つか、お前の息子やばい感じに、なんというか変態というか快楽殺人鬼のように成長してるんだがあれはいいのか?」
『別に問題ないかな。うち、基本的に"やられる前にやれ"って育てるし。人体の急所は父に最初に仕込まれるし。あの子が身を守れてるなら、戦闘狂になっても…というか、うちの母が前例としている存在しているので、笑顔張り付けたピエロになろうが、なるべくしてなったというか』
「あ、ああ・・・なる、ほど?お前の母親も父親も知らないけど…え?いいのかそれ?」
『生き残れているんだから。あの子が選んだ道は正解だったってことさ』
「なんちゅー放任主義。俺が言えた義理じゃぁないが」

『で?最近の出来事でなんかないの?オレのいた時から何か大きな変化とかあった?』
「わり。えーっと、今は1999年だ。そうだなぁ、政治の話はべつにいいか。じゃぁ、一番側近の話題だと。そろそろ今期のハンター試験が開催されるんだ」
『へぇまだ続いてたんだ試験』
「そりゃぁそうだろうよ。たぶんネテロ会長がたとえ死んでも続くんじゃないか。
でだ。なんと今年はオレの息子が試験を受けるって噂で聞いてな。ワクワクしてる」
『へぇ〜。お前の子供とかまじでどうでもいい・・・・って、ちょっとまて!ジンに子どもぉ!?あのタカイタカイで子供を投げ殺しかけたあのジンが!?』
「ひでぇ言われようだな」
『酷くない。やられた真実をそのまま言っただけ』

なんと、あのタカイタカイで兄弟子の子を殺しかけたあの若造に、こどもができるとはねぇ。
時間の流れとはすごい。
あんな悪ガキでしかなかったやつを父親にさせるなんて。

いや、まて。「放任主義」ウンヌンの発現のとき、「俺が言えた義理じゃない」とも言っていたな。
つまり、この男も放任主義というか手元で育てていないと。
やっぱりこの男、ダメ親父なんだ。
まぁ、そうでもなければ、こんなどこかもわからない森の中に、こんな薄汚い格好でいるはずもないか。

『それでさ…』
「どうした?」

『いや、ま、ともかくさ』





あんた服着ろよ。
















トラブルにより気付いたら未来に飛ばされていたオレ。
なんと今度は、原作軸からの開始らしい。

うへぇ〜。メンドイ。
かかわりたくないなぁ。

2時間ほどで元の時間に戻れるようなので、それだけが救いだ。






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