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03. 交わされた約束 |
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side リース あのとき、自分は―――。 ワンピースという物語のことで頭がいっぱいだったんだ。 新巻が出るよりも先に、ジャンプで先読みをするのがオレの日課だった。 その日もジャンプを買って、ワンピースを読もうとしていた。 続きが気になって仕方なかったんだ。 あの物語は、今が架橋だったから。 だからいつもと同じように発売日当日にジャンプを買って、早速読もうとしたところで、 ちょうどありえないものが空からふってきて…… 目を開けたら小さな赤ん坊になっていた。 ―――いろいろとありえないです。 漫画の世界。転生? ありえないことを体験しているオレの名前はリース。 ここであえていうのならば、言いたい事は一つ。 できるなら、リースなんてどこかのクリスマスの飾りのような名前はないだろうと思う。 もしかすると響き的に似てるからリーンなんて乙女っぽい名前になっていたかもしれないし。それよりはましだとは思うが、『リース』ってさ……クリスマス以外にもなんだか、こう、ヒラヒラピンクな飾りをイメージさせるんだよね。なぜかね。 そんなピンクレースを思わせる名前より、キースとかルースとかルークとか、リュークでもなんでもいい…【エース】につなげるつもりなら、それ相応の男らしいもっと別の名前を考えてほしかった。 まぁ、いまさらだし別にいいけどね。 なにをどう間違ったのか。 いやいや、円盤が落ちてくる時点ですでにオレのいた世界も十分何かが間違っているとは思う。 とにもかくにもだ。 どうやら地球からきたオレは、転生だか憑依して、このワンピースの世界にきてしまったらしい。 なんで漫画の世界にきたのかはさっぱりわからない。 思い当たる事はキラメク銀……の円盤。 まぁ、あの円盤の話は置いておいて。 どう頭を絞っても帰る方法はまったく思いつかないのでこの際諦める。 かわりに力と海賊が謳歌するこの世界でも十分に穏やかに暮らせればそれでいいので、そっちへ向かう努力をしていきたいと思う。 この世界でのオレはモンキー・D・リース。 モンキー・D・リースは、モンキー・D・ルフィの4つ違いの兄だ。 祖父はいわずもがな知られた将来海軍中将の座を約束されているあの『拳骨のガープ』そのひとである。 自分の存在は原作にはいないキャラだが、本当にあのルフィと血がつながっている。 なにせこの目で、自分を生んでくれた女性のもとで、ルフィが生まれたのだから疑う余地もない。 ポートガス・D・エースとは血の繋がりはないが、オレの一年後に生まれたので、彼もまた自分にとっては弟のようなものだ。 その義弟と、ただいま海を漂流している。 そろそろ現実逃避はやめて、この後の状況を考えなければいけないだろう。 憑依かもしれないが、とりあえず転生ということにしておく。 オレがリースとして転生をして、目覚めてから早くも5年がたった。 最近ではすっかりリースと呼ばれることにも抵抗はなく、体もオレのものだといえるし、この世界にも随分馴染んだ。 同じようにエースは4歳になったし、ルフィも生まれた。 順調かと思える人生だったが、しかし5歳になったばかりのオレは日々死を目の前にしている。 それは目の前の「海」を見てもいえるだろう。 オレとしては原作に関わっていろいろ変えてしまわないように、穏やかに暮らしたいんだが…。 いやいや、むしろ面倒ごとが物凄くイヤなので、ひっそりと静かに暮らせればそれでよかったわけで、強くなんかなりたくなかったわけなんだけど。 現在は波の上で揺られているので、命の安全という意味では状況がかなり悪い。 それ以前に、オレは3歳になってからはちょくちょくじいちゃんに風船で空に飛ばされているのだ。 エースもまた3歳になったらじいちゃんに飛ばされ始めた。 時には密林ジャングルに放り出されていたり…5歳児になにしやがる!?とくいつたのはもう何度目か。 これのどこが命の危機じゃないといえる? どう考えても命の危機でした。 本当にいくつ命があってもこの世界では足りない。 こうやってエースといた日々を思い返すだけでも、じいちゃんほど子供の育て方を間違っている人間はいないように思えた。 とりあえずオレはエースを守るという約束を“あの人”としている。 だから守る。 でも、例えその約束がなくとも…それ以前に長男が弟を守るのは当たり前。 エースもルフィもみんなオレの家族だ。みんな(…とりあえずじいちゃんも)の生命力の強さは漫画で見ていたから知っているけど、守れる限り守りたいと思う。 ただその守りたい気持ちはいまは少し違った意味で「まもらなきゃ!!!」って状況だったりする。 それはエースが後々黒ヒゲのせいで海軍につかまることを心配するよりも先に、しなければいけないことができたということ。 それをなしえなる=オレたちを守ること。 これをしなければオレたちは、前に進めないのだ。 そう。ズバリそれは―――まず、じいちゃんからエースを守ること。 そうでないと、今頃ジャングルやらなんやら、大自然によりオレたち二人は間違いなくやられているだろうから…。 オレと約束をした“あの人”はもういない。 だけど、今は意味も少し違ってるきもするけど、ちゃんと守るよ。 守れる力がある限り守って見せるから! その約束というのは―――エースの母親、ルージュさんと交わしたもの。 すっかり家族同然、血のつながりがない方が不思議なぐらいエースとオレは仲良くなった。 エースとの出会いは、今から4年ほど前。オレがわずか一歳のときだ。 一歳とはいえ、まだまだ子供。 しかし“リース”には生まれた時から、すでに高校生だった「オレ」という存在が宿っていたため、目が覚めたときから記憶はしっかり残っている。 それが0歳だろうが1歳だろうが、オレは覚えているし、エースが生まれた瞬間のことは強くこの心に刻まれている。 ――エースがうちにやってきたのは、オレが生まれてすぐ、ゴールド・ロジャーが処刑されてまもなくの頃だった。 ++++++++++ <四年前> ある日、いつも飛び回っていたはずのガープのじいちゃんが、腹に赤子を宿した女性をかくまうように家に連れてきた。 まだルフィも生まれておらず、うちには母さんとオレとじいちゃんだけだった。 親父はそのときにはすでに革命家として名が売れていて、雲隠れの達人と化していたので除外する。 …なんとも因果なことか。 じいちゃんがつれてきた女性は、海賊王として処刑されたロジャーの妻ポートガス・D・ルージュだった。 そのときオレは、ついにきたかと思った。 彼女のことはどこから海軍に流れたのか、海軍はロジャーに妻と子供がいるのを知り必死になって探していた。 みつかればお腹の中の子供共に、二人とも殺されるだろう。 それが海賊王の唯一の危惧。 じいちゃんはオレという孫がいたこともありロジャーの最後の頼みをすぐにきいてしまったらしく、彼女を探して"南の海"のバリテラからルージュさんを連れてきた。 そうして彼女とエースの存在を見事に海軍からだましとおした。 そもそもエースはロジャーの処刑前には生まれているはずだった。 それがうまい具合に海軍の操作網をくぐりぬけたのは、じいちゃんが盾になっていたからだけではない。 海軍は海賊王処刑前に生まれ子供ばかり探していたので、まだ生まれていないというのは予想外だったようだ。 ルージュさんはもう一年以上も妊娠したままだ。 一年以上。それが示す言葉は、体内ですでに死んでいるのではないかという状況を彷彿とさせるが、それでもまだお腹の中の命は消えていないと、医者も彼女も宣言する。 運よくうちにいた母さんがすでにオレという出産例もあり、ルージュさんの面倒をかいがいしく見ていた。 赤ん坊というのは十月十日で生まれるとされる。 それが20ヶ月も生まれず母親の胎内で生き続けたというのは、本当に奇跡のようだ。 まるで海軍から彼らの命を守ろうと何かが働きかけているかのようだった。 その奇跡があるから、オレは彼女こそこの世で一番強い人だと思う。 その、子を思うやさしさが奇跡を生んだとも。 誰よりも強くて、優しかったルージュさん。 だけど、いま、ルージュさんはいない。 彼女は死の間際、一度だけエースをだきしめた。 それから彼女は心配げにルージュさんのベッド脇にいたうちの母に別れの挨拶をし、続いて普通ならこんな子供に何を言ってもわかるはずがないのに…エースを頼まれた。 まるでオレが見ていたことを知っていたように。 「リースくん。この子を、お願いね」 まだ一歳になったばかりの子供になにをいっても本来はわかるはずがない。 だがそこにいたのはオレだ。 ただの一歳児ではなかったから、ルージュさんの目を見て頷いた。 「ありがとう」 そうして彼女はいってしまった。 彼女はロジャーの死後1年と3ヶ月の間こどもを探す海軍から必死にその命を守り続け、妊娠発覚から計20ヶ月の間腹にエースを宿したまま戦い、自らの命と引き換えにエースを生んだ。 オレはこの世界に生まれて、この世の誰よりも彼女と彼女の引き起こした奇跡を尊敬する。 だからこそ。 前以上に、エースを守ろうと誓った。 ++++++++++ 最近の脅威であるじいちゃんからの特訓(?)中。 「ぶっちゃけ、今ここで守らないと…オレも死ぬ」 小さな小船の上で、エースと一緒にナイフをもって、巨大生物とにらめっこ中。 うん、怪獣を相手にかっこいいセリフなんて吐けません。 死ぬ寸前のお子様2名漂流中。 修行どころじゃないです。あぁ、やっぱりもう少し航海術を念入りに学ばないと。 めんどくさい。 だけどこのままではまた今日の二の舞になりそうで……。 「まだ、風船の方がましというものです」 「リースなに落ち着いてるんだよ!なんとかしろ!!」 「…エース。ここはとにかく二人で打破しよう。ふたりで!」 「ぎゃぁーーーー!!きたー!!」 あぁ、ルージュさん。もしかするともすぐあなたの元にたどり着いてしまうかもしれない不幸をお許し下さい。 なんでオレとエースが漂流しているかというと、じいちゃんである。 それ以外にいないから。3歳児を密林に放置し5歳になったら海に流したりする奴は。 そんなわけでぶっとんだじいちゃんから逃れるため、オレとエースはじいちゃんが来たといわれてあわてて逃亡した。しかし逃げ出したことがばれて気絶させられた。 っで、気がつけば海の上で、海王類が目の前にいるという状況だった。 いつも思うけど、糸があるわけでもなく、今までこれでよくオレたち無事に家に戻れたなぁとか思う。 現状―― ・・・鳥の顔をした海王類、接近中。 口がでかいです。 「ぎゃぁー!!たすけてーリース!!」 「あははははは」 「うわーん!リースが壊れた!!」 「はははは……」 どうしろってんだ!?この状況!!! |