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03. オレと円盤とこの世界 |
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<side リース> 目が覚めたら赤ん坊だったオレ。 この世界はどうやらONE PIECEという物語の一部か、似通った別の世界ということらしい。 どれだけ漫画の登場人物と同じ人たちがいようと、同じように時間が流れようと、ここは原作とは違う世界。 なぜなら“オレ”というイレギュラーな存在がいることこそこが、ここがパラレルワールドである証。 きっとオレの今の現状は、UFOに攫われて実験でもうけている最中なのかもしれない。 だからこれは夢なのかもしれない。 そんな 夢のような一時だけの時間にすぎないのだろう。 ・・・・・・考えたくはないが。 例えば、あのUFO騒動のせいでオレは死んでしまったとしよう。 すると現状についての考察案がひとつふえる。 これはオレの夢。はたまたONE PIECEの類似世界に転生したかのどちらか、だ。 転生――それはどこの二次元だと突っ込みたい。 もし、そうならこの夢は死ぬまで冷めないということになる。 オレはどうなったんだろうか―― ********** 赤ん坊になる前。 あのとき自分は日本の高校生で、まだまだ17歳で―――。 死を前にしても走馬灯は出ず、ただただ週間雑誌を手にしたまま、目の前に飛び込んできた銀色の円盤に驚きつつ意識が途切れたのだ。 それ以前は・・・はずかしながら、自分が“自分以外”の存在になるなんて思いもしなかったから、のんびりとジャンプを読もうとしていたのだ。 残念ながら自分は先読み派であり、新巻なんてめったに買うことはなくて、だからあのときも家で読もうとしていたのだ。 週刊雑誌といえば、ときには学校の帰りにコンビによって漫画雑誌を立ち読みしたりして、月の小遣いをうまくやりくりしていたものだ。 ただそれが毎回できるわけでもなく、また毎週買えるほどは金がなくて、かなりとびとびにしか読んではいなかったけれど・・・。 その愛読である週間雑誌の中で、オレが一番好きなのは、ONE PIECEという。 海と海賊の話で―― 続きが気になって仕方なかったんだ。 あの物語は、今が架橋だったから。 だからここ最近はできるだけジャンプを買っていた。 その日も同じように、早速読もうとしたところで、『ありえないもの』が空からふってきた。 そして眩しい光が視界を覆いつくし、次に目を開けたらオレは小さな赤ん坊になっていた。 未知の円盤、転生、漫画の世界、赤ん坊からの再出発による色々。 ―――ええ、色々です。 本当にいろいろとありえないです。 一番ありえないのは、オレの中ではダントツ円盤である。 二番目は赤ん坊生活一週間。 実はいまも円盤の中でオレ自身は宇宙人たちの前で寝ているのかもしれないとか思うが、この世界で目覚めてから痛みも五感もすべてが正常であることから、とりあえずオレは“生きている”という認識を強く考えるようになった。 なにかの創作小説で読んだ気がするが、転生やトリップなど、動けない赤ん坊として生きるというのは、自我がしっかりしている人間には辛いものらしい。 たしかにその通りだった。 さすがのオレも始めは照れた。 他の者ならこれを羞恥と呼ぶだろう行為――排泄処理とかご飯とか。 でもそれも始めだけ。 一週間もすれば抵抗もなくなるのがオレ。 だってねぇ。赤ん坊が生きていくためにはどれも必要なことだし、そこは死活問題であって照れている暇なんかないと強引に自分を納得せざるをえない。 なにより愛情を傾けて優しい温もりをくれる人たちの何を嫌がる必要がある? そんなわけで、そこら辺はなされるがままに従いましたとも。 漫画の世界?転生? この二つの単語だけで、信じられずに呆然としてしまう。 世界の形も今の状況もハッキリ言ってしまえば、本当にありえないことばかりだ。 そんなありえないことを体験しているオレの名前はリース。 オレがオレであったときの名前は――昔の名前はすっかり忘れた。 ――この世界でのオレはモンキー・D・リース。 生まれかわったとか、漫画世界だとか、赤ん坊生活も気にしてないよ。 気にしてないつもりだ。 でも、ここであえていうのならば、言いたい事が一つ。 名前をつけたのはだれだぁ〜!! できるなら、リースなんてどこかのクリスマス飾りのような名前はないだろうと思う。 “リース”っていうのは、男名でも有り得なくはないと思えるんだが、どうもオレの名前だけは違う気がする。 普通“リース”っていってすぐに思いつくのは、さ……クリスマスリースなんだけど。 だけどね。 なぜか、こう、ヒラヒラピンクな飾りをイメージさせるんだよね。 本当になぜかね! さらにいうとオレの名前と、時間軸を計算するに、一つ気付いたことがある。 漫画の流れを思い出すに、次に生まれる“エース”は、オレの“リース”という名をもじって名付けられたんじゃないだろうかってことだ。 原作はともかく、この世界限定の話として、この世界におけるエースの命名に、少なからずオレの存在が関わっているのなら、もっと考えようがあったんじゃないかと・・・いろんな意味で泣けてくる。 のばせばいいってもんじゃないけど、もしかすると響き的に似ているから、レースとかリィーンとかエリーなんて乙女っぽい響きの名前になっていたかもしれない。 だがオレは男だ! エリーだけは簡便だ!! だけどさ。 いやね、リースってのが男名であるのはわかるんだけど、こう、直感がささやくんだよ。 “それは女の子のための名前です”と。 そのせいで、どうしてもオレの名前は、女名にしか思えない。 そんなピンク&レースを思わせる名前より、キースとかルースとかルークやリュークとか、伸ばしても男名にしか思えないような、もっとまともな名前はなかったのかとつっこみたい。 この際“エース”につながるのならスペードだっていい。ハートはさすがにいやだけど・・・。 とにかく他のもっと、それも相応の男らしい別の名前を考えてほしかった。 まぁ、いまとなっては、本当に『今更』に違いはないし、それで呼ばれるのが当たり前になっちゃったからしかたないから諦めるけど。 オレがピンクの妄想から抜け出すために妥協したんだ。 とにもかくにもだ。 どうやら地球からきたオレは、転生だか憑依だかして、このONE PIECEの世界にきてしまったらしいのは間違いない。 なんで漫画の世界に来たのかは、さっぱりわからない。 思い当たる事はあるにはある。 キラメク銀……の円盤。 どう考えてもそれしかないよな。 ――なにをどう間違ったのやら・・・。 いやいや、円盤が落ちてくる時点ですでにオレのいた世界も十分何かが間違っているとは思う。 まぁ、あの円盤の話は置いておいて。 どう頭を絞っても帰る方法はまったく思いつかないので、この際きっぱりと地球への思いは諦める。 夢が目覚めれば戻れるかもしれないけど、それも怪しい。 いつ戻れるのか・・・戻れるかもしれないとも思いつつ、少しだけ期待をもって、今は生きることだけを考える。 例えばオレが円盤にあたって死んだとしても。たとえ地球を侵略しにきた宇宙人に攫われたか殺されたか下のだとしても、円盤の衝撃でトリップしてしまったのだとしても・・・少しだけ夢を見よう。 その夢が覚めるまで生き残ると決めて。 もしかすると強力な磁場の影響で尋常じゃないことばかり起きるという不思議航路―――偉大なる航路 (グランドライン)―――には、異世界へと渡る方法とかあるのかもしれない。 あるいは空間や軸移動に関する悪魔の実とか・・・ないとは言い切れないだろう。 けれど、例えオレが向こうの世界に戻れたとしてもそこには、“生前のオレ”の肉体はもうないのではないだろうか。 それはすべてわからない。 だけど、もしあったとしても、たぶんあの円盤によって粉々になっていると思う。 そうでないと、オレがこのONE PIECEの世界で新たに生まれた理由がわからない。 あの後の自分の身がどうなったかはわからないから、あくまで仮定だが、あんなものが直撃したんだ。 元の世界に戻ったとしても“生前のオレのまま”に生きていける確立は、皆無といっていいだろう。 だが、もしも戻れたとして――その場合は、こちらで誕生した“リース”がどうなってしまうかが気になるので、『帰る方法』を探す気はない。というか、諦めた。 諦めた。 だからそのかわりにオレは、生き残る方法を探している。 これは夢。 だけど“今”は生きている。 だから生きる。 もしかすると向こうの世界では死んでしまったのかもしれない。 それなら、なんて短い命だったのだろう。 だからよけいに、強く生きたいと思ってしまう。 夢が終わるまで、オレは生きることを決して諦めないだろう。 “前”より、もっと、もっと長く・・・。 しかし、この世界が、ONE PIECEに酷似した世界だというのなら、ここでは力と海賊が謳歌する。 そうなるとここでは力がすべてだ。 元日本男子のオレとしては、常に命の危機に直面するような冒険よりも、日がな一日空を見上げながら、のんびりと穏やかに暮らせればそれでいい。 ガープさんに会ってしまったからには、原作側という立ち位置なのはわかるが、できるだけオレの未来が平穏無事に過ごせるよう努力をしていきたい。 そう、モンキー・D・リースは、戦いがメインとなるこの世界が許さなかろうと、基本血を誰かに流させるなんてもってのほかで、自分が痛いのもイヤというような人間である。 この世界にありながら、オレは争いごとが嫌いでしょうがないのだ。 でも(一度はいってみたかった)大学にもいけず、大人にもなれずに17歳という若さで一度人生にピリオドをつけられてしまったせいか、もっともっと生きたいという欲だけはある。 だから生き抜くためと、オレの穏やかな暮らしのためにも、島から一歩も出なくていいから、オレを原作のような事象に巻き込まないでくれと日々祈り続けている。 オレは17歳よりもっと生き残るために、平穏を望んでいる。 世界は変わってしまったし、一瞬の夢かもしれないが、せかく人生をやり直せるんだ。 前よりももっと長生きしたいと思うのも当たり前だろう。 しかし世の中、そうはうまくいかない。 平和を愛するオレがいるのは、海賊が跋扈する世界。 そこに平穏はない。 ここがそのまま漫画の世界なのか、あるいはそれに酷似した世界なのかはともかく、生前のオレがよく知る漫画ONE PIECEそのものの世界観であり、常識を超えたキャラ達が実在の人物としているのだ。 予想外だったのは、その主要キャラたちが、オレの場合身内にいたことだろう。 モンキー・D・リースは、モンキー・D・ルフィの実の兄であり、祖父はいわずもがな世にその名を響かせし海軍将校『拳骨のガープ』そのひとである。 さらには父親もエースも意外と名の知れた存在となっていくのは間違いないわけで――。 これだけ強烈な面子の血縁者であり家族ともなれば、ルフィが17歳になったときの“オレの立場”がどうなっているかわからなくて怖い。 一つだけ確信を持っていえるのは、否応がなくオレは何らかの事件に巻き込まれていそうだということだ。 そもそも“リース”なんて存在はONE PIECEにはいないキャラだが、本当にあのルフィと血がつながっているという事実に当初どれだけ驚いたことか。 こちらにて生まれたばかりの頃は、てっきりルフィに成り代わってしまったのかと思って酷く焦ったものだ。 はじめオレの立場というのは“生まれる時期を間違ったルフィ”程度に思っていた。 しかしそれも始めだけ。 それが実は『成り代わり』ではなく『長男』として生まれたのだと気付いたのは、オレが生まれて数ヶ月ほど後だろうか。 きっかけは海賊王が自首をしてきたときだと思う。 祖父に連れられてロジャーと会ったときは「あぁ、大海賊時代が始まるのだな」とその時はのんきに思っていた。 だけどオレは海賊王と実際に会って、そのときのロジャーの言葉を聞いて、とんでもない誤解だったと気付いた。 まだルフィは生まれていないだけなのだ。 その証拠にロジャーは「これから生まれてくる俺の子を頼む」という言葉を吐いた。 そこで少し自分の存在は、イレギュラーすぎる気がしたのだ。 なんとなくだが、エースを頼まれるなんて、これは“ルフィの立場”ではありえないのではないかと――。 ◇ モンキー・D・リース ◇ 好きなもの、平穏 嫌いなもの、銀の円盤 将来の夢、前世の人生より長く生きること(できれば平穏に) 原作軸より22年前の5月1日。 新たに始まったオレの二度目の人生。 原作とは少し異なる世界でのオレの世界は、グルグルと渦を巻いて波乱万丈に始まった。 【願い事】 ・・・・・・おもったけどさ。 元一般人なオレにどうしろと? 未来でも変えろというのだろうか。 うん、絶対無理だね。 ただただオレは願う 「どうかこの先、何事もなく長生きができますように・・・」と―― |