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08. 欝な君の屁理屈論 |
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誘拐されたルークは、導師誘拐現場に居合わせたことで、導師を救出に来たダアトの軍人らによって無事保護された。 そうしてバチカルまで六神将とともに戻ってきたルークは、赤毛の少年の腕を離すことなく始終ニコニコしていた。 「話はきいています。あなたがたがルークを救ってくれたのですね。本当になんと礼を言えばいいのか」 脆弱な身体を押して息子を自ら迎えにやってきた館主の妻であり王妹であるシュザンヌに、四人の六神将たちは整った仕草でひざをつき頭をさげる。 ルークの誘拐にあたり、妹だからと犯人をかばいだてし罪を軽減させ、ルークを探すという名目で屋敷から逃げ出そうとしたヴァン―― の部下とは思えない“本来あるべき”振る舞をそつなつこなす彼らに、シュザンヌは柔らかい微笑みの下で、ルークの誘拐があのグランツ兄妹による独断であると推察する。 シンクやアリエッタ、アッシュはルークと同じかそれよりも幼く見えるというのに、きちんと軍人としての態度をわきまえている。 若干奇抜な格好が残念ではあるが、もちろん同伴しているディストも場をわきまえている。 その四人の姿に、すでにルークやダアトから事の顛末の詳細が書かれた書類を受け取っていたシュザンヌは、彼らと話をする価値はまだあるとし、顔を上げるように頷き、楽にする許可を出した。 「あら。あなあなたは?」 彼らが訪れた当初からその風貌は気になってはいたが、ルークがニコニコとしがみつくようにしてくっついている神託の盾騎士団特務師団長の少年の顔を目にしてシュザンヌは目を見張る。 しかしアッシュは、ルークがはりついていることさえ気にもせず、何事もなかったかのように視線が合ったことに目礼をしただけだった。 っが。 「母上。この方が本当物のルーク・フォン・ファブレだそうですよ」 ルークが笑顔のまま、それはもうあっさりと告げた。 それにその場にいた全員がギョッとしてルークをいっせいにみやる。 なかでも“本物のルーク”と断定されたアッシュなどは、「てめなに言ってやがる」と叫びそうになって、あわてて言葉を「て」で飲み込み、眉間に大量のしわを寄せて息をつめた。 「ジョゼット。旦那様をここへ」 ルークの発言は突然のことであったが、シュザンヌはいち早く我を取り戻すと、チラリと自分がはいってきた扉の方を一瞥し、顔色を真っ青にさせつつも扉を守って直立不であった兵士に頷くと、彼女の意図を理解した女兵士はすぐさま一礼して扉の外へとかけだしていく。 賢い彼女のことだ。緘口令とともに、すぐさまこの部屋の警備を固めるだろう。 シュザンヌは場が話をするために整えられていくのを感じ、六神将やルークに視線を戻した。 そこでは慌てふためいて小言でルークに文句を言ったり、頭痛を抑えるようなしぐさをしている彼らの姿があった。 それに、先程の話が事実であり、それに関する何かしらの証拠を彼らがもっていることも理解した。 そうでなくてはこのように慌てるはずがない。 「本物とはどういうことですかルーク」 「おそれながらシュザンヌ様、それはわたしめから…」 「神託の盾騎士団第二師団師団長ディスト殿ですね。あなたが何を知っているかはクリムゾンがきたあとゆっくりお話しください。他の方も同様に。 ルーク。わたしは貴方に聞いているのです。嘘偽りの情報は不要です。答えられますね?」 「はい、喜んで母上。 どうやらオレはレプリカという存在で、ヴァンが世界を壊すためにこの被験者ルークを浚って作らせた紛い物のようですね。予言が関係しているようですよ。 作られた人間とはいえ、生きているし感情があるし、怪我もしますし、いまだって脈を刻み心臓が動いているので、“紛い物”とはいえ、せいぜい“ルークそっくりな替え玉”程度の認識で十分かと。レプリカゆえにへそもありますし、死んだとき肉体が残るか残らないか以外はまったく人間と同じですよ。レプリカであるオレが保証するんでから間違いありません」 ニコニコとして告げるルークに、六神将たちはさらに驚愕の表情で固まった。 「あ、あなた、なぜヴァンのたくらみを?」 「レプリカであることになにも思わないのあんた?」 「母上」 「…しかたありません。彼らの今の発言には目をつぶりましょう」 「ディストとシンクの質問に対して返答するなら、オレの愚痴を聞いてくれた時にボソっと言ってたじゃん。どっちもさ。それから推測しただけ」 「……あ、ああ。そういえば言ってたねぼくだち」 「です」 「それを忘れるぐらい動揺していたみたいですね。お恥ずかしい」 「俺はもどるきはねぇぞ」 「どちらにせよ理由を話してもらおう」 「旦那様」 「父上、こっちがルーク・フォン・ファブレですよ」 シュザンヌよりまっすぐに視線を向けられ居心地悪そうに視線を逸らしたアッシュにむけ、タイミングよく声がかけられる。 ハッと顔をあげればそこには、ワインレッドの髪の男が静かにたたずんでいた。 それからしばらくの間、“ルーク”について六神将たちは知る限りの情報をしゃべることとなった。 その際に、不安定なレプリカの身体であるルークのこともあり、主治医としてディストがアッシュとともにのこることとなり、アリエッタとシンクは今後の処理をするために一度ダアトへ帰郷が決まった。 そして いまのいままでニコニコと微笑んでいたルークは、突如暗い顔をすると、側らに会った椅子をひきだし、どこからとりだしたのか天井に縄をかけると、そこに首をとおそうと・・・ 「「「「「「ちょっとまてー!!!!」」」」」」 「って、今の話の流れでなんでそうなるっ!!!」 「ちょ、ちょっとアッシュ!なんで自殺しようとしてるの!」 「…シンク。その言い方だとアッシュが自殺しようとしている風に言聞こえるです」 「え。あっそか。えーっと…あ、ルークがぁ!!」 「おまちなさないルーク!いったいぜんたいどうしたというのです!」 「はやまるなールーク!!」 「そんなに私が主治医になるのが嫌なんですかぁ!!」 縄に首をかけて死のうとしたルークに、その場にいた全員が絶叫してとめるはめとなったのだった。 「なんであんた死のうとしてるんだよ!!レプリカだって、あんたは存在を認められていたじゃないか!それの何が不満なんだよ!」 「そもそもローレライがあなたの乖離を止めているんですからもっと生きなさい!!このわたしがい貴方が生きるために協力は惜しまないと言っているのですよ!」 「ルークという名を背負わしたおれが憎いなら言葉でそう言ってくれ!」 「ルーク、アリエッタが知っている“ルーク”はあなた、だけです。ルークがいなくなると、アリエッタ、さびしいです」 「馬鹿な真似はよすんだルーク!!」 「そうですよルーク。レプリカでも人と変わらないと言ったのはあなたですよ」 おのおのろが必死になって椅子の上にたたずむルークにしがみついて、懸命にかれを現世へと引き留める。 彼等の心はその時ひとつになった。 なぜにっ!? 「はーはーはー…そ、それで。なぜ死のうとした?」 「ゼェーハー…か、かいりは…よかった。ぜーぜー、ぶ、ぶじですね」 「はー。はー。はー。う〜…アリエッタ…もう、だめ、ですぅ〜」 「ハー、ほんと、な、なん、なの…はーはー。いったいなんなのあんた!?」 「はぁ〜。ケホケホ。もしかしてルークと言う名前が嫌だったのです、か?」 「るー、るーく?」 身体を離した途端、窓から飛び降りようとしたり、花がいけられた花瓶から別の容器に水を移し替えて顔を突っ込んだり、書類の紙を手首にあてがって切ろうとしたり、羽ペンで心臓をさそうとしたり、しまいには乖離を誘発するかのように術を連発しようとしたり、すぐに別の手あの手で自殺をはかろうとするルークに全員が、護衛兵を呼ぶなんて暇も考えも浮かばず必死になって止めることとなった。 こんな全力疾走したことがないとばかりに、武将である六神将たちまで息を切らして方で息継ぎをしている状態だ。 そんな彼らに、死んだ魚のような胡乱な目で、ドンヨリとした雰囲気をまとったルークは首を横に振る。 「ならば、なぜ!?」 「レプリカとか関係なく、似た顔立ちの人間をそのまま連れ帰ってオレの代わりに公爵家のあととりにして、面倒事、いえ、失礼。家のことや政治やらをすべておしつけ、いえ、まかせてオレは もともとひきこもりで昼夜逆転して昼間起きてないような人間なんですよオレ。ここにいたってどうしようもないじゃないですか。 そもそも普通レプリカだとわかったら迫害しません? レプリカじゃなくとも偽物なのだから、その分の功績は本物にあたえて、偽物は市井におとすか、見つからないようにどこかに幽閉するとか。処分するとか。 それをなぜ、"予言の読まれなかった双子の兄弟"なんて設定を作って、どっちもそのまま引き取ろうとしてるんです? いや、もうこのさい、本物だけいればいいじゃないですか。 そもそもオレ、ルークじゃないんですよ〜。 もちろん自力でここに来たわけでもルークだって水から名乗ったわけでもありませんが。 これ以上 疲れてるんです。 ひとのはなしなんて聞いてくれない人間ばっか外にはいるようなので、このまま死んで楽になろうかなって。 むしろ非常識たちのせいで、人間不信になりました。 ひきこもったまま外に出なくてもいいし、跡継ぎとか気にもしないで、いままでのように衣食住を頂けるならよろこんでいます。公爵家の双子のご子息設定も受け入れましょう。その場合の理由は、先ほど言った"人間不信"ということで、“外の世界の非常識たちが怖い”のででてこないということにでもしてくださるとありがたいです。 それと忘れてましたが、オレと非常識な偽軍人女をのせたという馬車はどうやら、ぼったくりと詐欺を行ったようなのであとで罰するなり何でもしてください。ファブレのボタンをもたせたので、それを売って金にしたにせよ。彼の足はたやすくつくと思うの捕縛よろしく」 「「「「「「・・・・・・」」」」」」 「ちょっと、いいですかレプリカルーク。ところどころ本音が漏れてましたよ」 「ああ、しまった。この間、あなたがたに愚痴を聞いてもらってからスットパーがゆるんでいるようですね。 でも事実ですから」 「えーっと。ルーク、お主病弱だったのでは?」 「自分の子供、でなかったにしろ、我が子だった期間、少しでもオレ自身をみてくれていればそんな勘違い起きないのでは?父上」 「側に入れなくてすまないとは思っている」 「いえいえ。すべてはダアトでしょう。悪いのは。 側にいても、昼間寝て起きてこないし話もしないようなオレですからね。知らなくても当然だとは思いますよ」 「ガイならば知っていると?」 「そうね。ガイはあなたの親友でしょう?」 「え?ガイですか?なんでそこで、どうでもいいような人命が出るのか疑問ですね。彼は使用人として働きもせず、女も触れずフェミニストぶって、使用人と呼ばれている人たち全般に失礼にあたるような使用人の例を身近な存在として上げるは、ちょっとどうかと思いますが、あれは親友でも何でもありませんよ。自称です。 自称。それすなわち、自分だけがそう思っていること。そう呼んでいる事柄。すなわち自分以外はよんでいないこともあり得るのですよ。 ガイに対しての、オレからの評価としては“、ナタリアの料理をオレの代わりに食べてくれる盾”として残していただけです。 父上もガルディオスの遺児だとご存知で野放しにしていたのでしょうが。 奴ならば、逆恨みで父上が最も傷つく方法としてオレを殺そうと企んでいたらしく、毎夜毎夜オレを殺そうとしてくるので、二日目あたりからうっとうしくなって叩きのめして、奴の小さな命、逆にオレが握りましたが?それがなにか?」 「……」 「ガルディオスの、遺児?」 「あれが?」 「なんてことを、ガイ…」 「むしろあんたそういう性格だったんだねレプリカルーク。参謀やってる僕でもレプリカルークの思考なんか嫁やしないし、考えもつかないよ。お手上げだ」 「いまさらだろシンク。おれたちと会った時から軽く毒を吐いたあげく、用意周到にすべてを蜘蛛の糸でからめんしていただろうが」 「ああ、それもそうだったね。ぼく、いっぺんにいろんなことがありすぎて色々失念していたよ」 「っと、いうわけで、死んでもすぐにもどされてしまうので、オレに平穏をください」 そしてタイムリミットです。 「「「「「「は?」」」」」」 「朝陽がまぶしいですね〜」 良い夢を。 レプリカルークはそこまで言って日差しが窓から入ってきたのを目にすると、微笑みを浮かべてその場で倒れ込んだ。 ようやく腕を離してもらえたことにアッシュは安堵しつつ、意識が途切れるように身体を崩した相手を慌てて受け止める。 アッシュそのあまりの軽い身体に驚く。 それと同時に青白い顔や、服の下に隠された細い手足にも視線が向く。 「ファブレ公爵…」 「アッシュ。父と、母と呼んでくれませんか」 「……父上、母上。このルークは劣化、いえ、本当に体が弱いのではないでしょうか。 言葉巧みにごまかして、おれたちには辛いところを見せない。そのように意地を張っているようにみえるのですが」 「うむ…」 「レプリカとしてうまれたがゆえの弊害がどこにでているかわかりません。 公爵、彼は外に出たことがなかったのですよね?ならば極度の疲労がたまり、これから熱を出すかも命を脅かすかもしれない。 いまはとにかく休ませましょう。私が診療いたします」 「…ああ、たのむ」 後日。 キムラスカにて、予言のせいでかくされていたファブレ公爵家の双子の弟のことが世間に発表された。 この子息に関してはいくつも噂があり、アッシュというダアトの六神将に容姿が似ているとのことから、彼が体の弱い兄ルーク・フォン・ファブレのためをおもってのスパイであったとか。はたまたルーク自身がダアトに潜入していたために、病弱を理由にでてこなかったのではないか。はたや公爵がよそで作った隠し子なのだとか。――様々な噂は流れた。 その陰で、とある朱毛のこどもが、自らナタリア王女の料理を口にしてたおれたりと、騒動はあったのだが、脱予言に向けて動き始めたキムラスカの民たちは、ファブレの双子を歓迎し明るい未来にお祭り騒ぎだったという。 「夜。うん。きっちり寝たな。 ……の、わりに、なんで起きたら、みんなそんな生暖かい表情してるんのさ?」 「よかった!ルークが目を覚ました!」 「ルーク様ご無事でなによりです!」 「これからはおれがお前の代わりにこのファブレを支えていくからお前は安心して養生に励め」 「いや、てか。なんでオレ、まだファブレに残ることが決定なの?」 「旦那様と奥様にお知らせしてまいります!」 「ああ、たのむ」 「てかさっきのメイドは?いつオレにメイドがついたの?ガイ(という名のナタリア料理防止の盾)は?」 「まぁ、ルーク!あなたが倒れたと聞いて母は心配したのですよ。いまサフィール先生を呼んできますからね」 「ルーク。よくぞあの卑劣なグランツ兄妹の魔の手から無事帰還した!お前の弟、ともども心配して居ったのだぞ」 「ルーク。その名はお前のものだ。おれはお前にはなれん」 「ねぇ、だれかオレの発言も聞いて……」 「・・・・・・」 「人間不信になってやる」 |