降「ねぇねぇ黒子」
黒「はい?」
部活帰り、ふいに降旗くんに声をかけられた。
降「どうして“キセキ”はバラバラになったの?話を聞いてるぶんにはみんな仲がよさそうだよね」
黒「ああ、それですか。青峰君ですよ」
火「あおみね?あいつがどうしたのかよ?」
黒「彼が言ったんです」
『みんなでいるのは楽しいけど。そうするとまたここ(帝光)みたいに、ひとつだけが強くなっちまって、だれも相手してくれなくなるだろ。
キセキの才能は、度を超えたものだ。それに一般人はついてこれない。
それじゃぁ、つまらない。
だからオレたちが全力を出せるように、全員バラバラの学校に行ってさ、たくさんの学校を強くしようぜ。
そうしたらひとつの高校だけが不公平じゃない。
それにオレらももっと楽しめるだろ。
一緒にそばに居続ける“仲間”どうしではできないことをしようぜ。お互いが敵でライバルであれば戦えるだろ。
それぞれが違う学校に行ったら、みんながライバルだ!
コートではいっぱいバスケしようぜ』
そう言って遊ぶことが楽しくて楽しくて仕方ないと言った感じでとびあがると、トンと軽い音を立てて軽々ダンクをきめた青峰くんは、才能に潰されそうになっていたキセキの世代をもう一度前に向かせてくれた。
あの言葉が僕らをささえてくれている。
降「へぇーいい話だね!」
黒「そうですね」
とはいうが。
本当は違う。
だって、あのすぐあとに青峰君はバスケをやめてしまったのだから。
彼は、僕にだけは、本当のことを教えてくれた。
降「ちょ!?く、くろこ!?」
火「どうした黒子!?」
黒「あ、いえ・・・なんでもありません。すいません。なんだか昔を思い出してしまって」
辛いこともたくさんあったけど楽しかったころ。
みんなが仲良くて。
そんなころを思い返していたら、思わず視界がにじんでいて、突然泣きだした僕に火神君たちが焦ったような声を出す。
それになんでもないとこたえて、ひとぬぐいすれば、涙はすぐに乾く。
だって――イイ話でオチがついたところを壊すような無粋な真似は、僕にはできません。
ねぇ青峰君。
君はよく頑張りましたよ。
そして君は相変わらずでしたねぇ。
『赤司は自分の戦略に自信を持ってんだろうなぁ。
ま、オレからしたら若い子たちは元気でいいネェって程度なんだが』
「彼らも意固地にならず安心すればよかったんですよ。上には上がいるって。あなたみたいな、ね。“抜けない存在”がいるって気づけばまだ楽だったのでは?」
『わざわざ教えてやる義理はねぇな。
そもそも“キセキの世代”とよばれるほどの才能があるから普通の奴らと一緒にバスケを楽しめない。その苦悩・・・青春だなぁ。そう思わねぇか黒子?』
「僕はあなたが純粋な子供の演技をさらっとしていることの方が不気味です。[一緒にバスケしようぜ]ってなんですかあれ。
あんな爽やかなバスケ少年、僕の知ってる青峰君じゃありません」
『オレにとっての脅威はさつきだけ。あれを相手にするぐらいなら、“キセキ”を相手にした方が百倍まし。
あいつら、“キセキ”のやつらが、何を抱え、何を悩んでるか。
オレがしらないわけないだろ。
だからあいつらが望むことを告げてやれば、若者たちはころっとだまされてくれて。
一緒にバスケを楽しむために〜とかなんとか甘い言葉を言えば、すぐにくいつてくる。青峰おじさんはすっかり悪役気分だよ』
「自分でおじさんて言わないでください。外見若いのに、あいかわらず精神年齢高いですよね青峰君て」
『はっ!!これでオレはバスケをしないですむってもんだ!
なにせ学校が違うんだから引き止める奴はいない!
それと黒子。お前にはミスディレがある!このまま姿くらませてにげちまえよ。
こうやってキセキをばらせば、さつきもそう簡単にはお前と同じ学校にいけない!』
思い返した過去シーンが少しおかしい気がしますね。
いえでもボクと青峰君の会話はいつもあんな感じでした。誰にも言う気はないですが。
・・・だってあれですよ。
まさかねぇ。
青峰君がキセキの進路をばらしたその本当の理由が、青峰君がバスケをしたくないっていうのと、桃井さんからの弁当攻撃が原因だとは・・・。
きっと、誰も思わないですよ。
その尊い犠牲のおかげで、中学時代のように愛妻弁当(モモイサン自称)をおしつけられることもなく、こうして僕は高校生活をとても有意義に過ごさせていただいているのですから。(青峰君という名の)おかあさん!僕は今、あなたのおかげで立派に生きています。
ですが生贄にされたはずの他のキセキたちは、情報戦の女王桃井さんの前には役には立たなかったようで、結局桃井さんは彼女自身から逃げたがっていた青峰君当人を追いかけて桐皇高校にいってしまった。
あわれ、青峰君。
その後試合改造でもよく青峰君の姿を見るので、結局まだバスケを続けているのでしょう。
青峰君の場合、高校では何も夢がかなわなかったのだなと思うとかわいそうになってくる。
今頃、レベルアップしているだろう桃井さんの被害に僕の代わりにあっているだろう君の苦労を思うと・・・。
本当にね。思わず涙で視界がゆがんだ僕は悪くないと思うのです。
キィとたまに耳障りな金属音を鳴らして、カラカラカラと小さなタイヤが回っている。
最近すっかり慣れたその音をききながら、今吉は苦笑を浮かべる。
今吉はその音を頼りにみつけた、同じ部の後輩ではないが随分顔なじみになってしまった親しい後輩の後ろ姿に声を掛けた。
「青峰」
『ああ、先輩。おひさしぶりです』
移動できるように小さなタイヤのついた点滴をカラカラひっぱりながら、背の高い青い髪の後輩が、穏やかな表情で振り返る。
それが本人の持って生まれた気質だとわかっていても。
今吉が知る 青峰 (アオミネ ) という後輩は、その大人びた柔らかい空気がどこまで行っても不似合な男だった。
高い身長、バスケをやっていたおかげでいい具合に筋肉が付きひきしまった身体、短い髪、鋭い目、色黒の肌。
どれをとっても日本人からはかけ離れた容姿は、そのまま荒々しく鋭利な刃物のような印象をあたえる。
本人の性格を知らないものが彼をみたならば、その第一印象はきまって、野性味あふれた・・・と語る者が多い。
しかし、そんな青峰の(いまとなっては)必須アイテムとなっているのが、バスケットボールでもなければ、点滴という事実。
「ほんとにひさしぶりやなぁ」
『ええ。二週間も入院とか、まじであり得ません』
「すっかり病弱感が板についてきてるで」
『楽しくないですねそれは』
「なぁ、青峰。もうバスケしーひんの?」
『なら。先輩が助けてくれますか?さつきのリーサルウェポンから』
点滴をひっぱりながら歩く青峰の横をゆったりとした速度でついてきていた今吉は、 のそのセリフにピタリと足を止める。
“最終兵器”
――その言葉にツッコミをいれるべきか、笑い飛ばすべきか考えたものの、チラリと の点滴が視界に入った。
それをみたとたんザァと音がしそうな勢いで、今吉は自分の血が勢いよく下がっていくのを感じた。
『先輩。どぎつい色合いの虹色のクッキーはいりませんか?さっき、さつきが見舞いにってくれたんです手製の』
「!?」
『オレもバスケしたい(まっとうに生きたい)なぁ。ねぇ、先輩。どうしたらオレは病院に入院しなくてすみますかね?』
それはもう爽やかとしか言いようがない笑顔が、青峰からむけられ。今吉は―――
スッっと携帯をポケットから取り出すと、眼にも見えぬ速さで指を動かし一通のメールを誰かへと送信した。
そのときの今吉の目は開眼していたとだけ、記していこう。
「ふー。これでええわ。青峰ぇ。お前に頭脳派の天才、紹介したるわ!」
メールが送信された音が小さく鳴ると、今吉はかいた汗をぬぐい、一仕事したとばかりに息を吐き出した。
そんな今吉に、青峰は嬉しそうな顔をして、ありがとうございますと笑った。
『これでさつきの情報戦に勝てますよね?』
「たぶんな。あいつはワシがしるなかで一番頭えぇよ。あ、再来週の日曜に“あいつ”呼び出しておいたからな。ほな、がんばるんやで!」
『はい!ありがとうございます!!持つべきものは優しい先輩ですね!』
「そうやろそうやろ。もっとほめたって」
『さすがです!』
「いや〜てれるわ〜・・・・」
そう言ってガシリと手を握りあった二人だったが、それから青峰が復帰して学校に戻れば再び青峰が入院するというじたいが発生し―――
突然メールが来たから、誰からだろうと思えば、中学時代の先輩からだった。
会いたくなかったが、相手は先輩。
しかも妖怪サトリ。
何かいい言い訳はないかと思ったが、断れなくなって、仕方なく了承した。
あくたいついて、そこらじゅうに八つ当たりした。
学校ではバスケの練習を五倍に増やした。
さんざん文句言われたが、しったことか。
そうして二週間後。
待ち合わせ場所でイライラしながらも妖怪をまっていると、携帯が鳴った。
電車が遅れたのだろうかと、携帯をひらけば
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From:今吉
Title:逃げろ!!
あおmぐfshffるhwぷ!!!
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「は?なんだこれ」
贈られてきたメールにはあちこち文が飛んでいて、まったく意味をなしていない。
暗号の可能性を疑ってみたものの、そうではないようで、ただ誤字がひどすぎるだけのようでまったく読めない。
しかも逃げろってなんだよ。
なにかの暗号かと思って頭をひねっていたら
「逃げるんや花宮ぁ!!!!」
リアルタイムに今吉さんが遠くから叫びながら走ってきていて、その背後にはなにか青いものが・・・
「はぁ!?」
決定的な運動能力の差だろう。先頭を走っていたはずの今吉さんが追い越され、周囲をキョロキョロと何かを必死に探す青い髪の男は、病院から抜け出してきたような病院服で片手に点滴を持っていた。
とにかく勘をたよりに走り出そうとする青色を必死に羽交い絞めして止めようとする今吉さんのすがたがあった。
青色が暴れてるせいで、カランカランと点滴のチューブがそれを支える棒にあたって音を立てている。
『たすけてください花宮さん!!』
「あかん!やめい青峰!!たしかにワシが紹介しよ思ったんは花宮だけど!ちょ!?ちょぉ!まていっ青峰ぇっ!!」
『もう。もうオレだけでは・・・花宮さんという方がいたらどうか!どうか返事をしてください!』
「答えたらあかんで花宮ぁぁあぁぁっぁ!!!だめやったら青峰!!おまっ!黒子クンみたいにあの子までまきこんだらあかんて!!他のことならどないいたずらしてもええし、一緒に参加したる!バスケ部に来んでもええから!!だけど!だけど“アレ”にまきこませるんだけはだめやぁぁぁぁ!にげるんや花宮ぁぁぁ!!」
「は?」
なんだか俺をさがしているらしい青いガングロが泣きながら暴れているのを必死に抑えている今吉さんが目に留まった。
「おまえはいいから病院もどれや!!」
『いまだけなんですって!さつきがいないのは!!』
「・・・・・・」
・・・“目に留まった”ということは、相手にも俺の姿が認識できる位置ということで。
青色の男の背後にいた今吉さんと視線があった。
とたん口パクだけで逃げろとつぶやいていた。
これはまじでなんかとんでもないことに巻き込まれるんじゃないかって思えて、今吉さんなんかみていなかったと俺は他人のふりを決め込んだ。
そもそも会いたくなんかなかったのだからこれはチャンスに違いない。
そこでクルリと足の向きを今吉さんたちとは反対に向けようとしたところで――
「しってますよ〜。
無冠の五将〈悪童〉の“花宮真”さんですよね?」
振り返った正面には、ピンクの頭をした女がニッコリと立っていた。
その笑顔にそらさむいものが背を走った。
俺のことなんざ、バスケをかじっている人間ならだれでも知っていてはおかしくない。
けれどそれとは違う意味で・・・思わず逃げようとした足がそのまま動かなくなる。
「!?も、桃井!おま!なんでおんのや!!!」
『ぎゃーーーー!!!さつき!おまえ!おばちゃんはどうした!今日は一緒に料理作るって・・・はっ!?まさか殺したのか!!!!おばちゃーーーん!!!お、オレいまから救急車を!』
「まて青峰!その前にお前がいけやぁ!!」
今吉先輩の悲鳴のような声が聞こえ、続いて背後でゴフッと音がしたと思ったら、先程まで騒いでいた青色が血を吐いて倒れていた。
その手が必死に俺にのばされてるとか・・・怖いわっ!
もうまじなんなんだよ!?
しかも今吉先輩が「遅行性か!?進化しとるやん!!」とつぶやいたのに、さらに顔が引きつる。
遅行性って、なんのことだよ?
俺は今なににまきこまれてるんだ?
いい予感なんかしない。
もうなりふりかまってられず、先輩や死にかけの青色や俺の行く手を遮るようにいた桃色とかを無視して走り出した。
桃色の女は「あら」と驚いたように小さく声を上げたものの、追いかけてくることはなく、なんなく桃色の横を素通りして俺は走った。
それから・・・。
「はーい花宮先輩!お元気ですか!実は今日っちゃんがですね」
「もしもーし花宮先輩?」
「ねぇきいてくださいよ先輩」
あの桃色から、ひっきりなしに電話がかかってくるようになった。
俺、携帯の電話番号教えてネェよ。
そもそも初日に携帯のアドレスも何もかも変えてやったのに、それでもかかってくる。
「やっぱしあの妖怪とかかわると碌なことない」
妖怪サトリが、あらたな妖怪を仲間に加えたらしい。
【後日談】
それはとあるバスケの試合の日のこと。
「霧崎はあまりいい噂を聞かないのだよ」
「まぁまぁそういわないの真ちゃん」
はじまった試合は違和感を呼んだ。
「ひとりひとりのレベルは高い。たしかに普通であれば強いと言えるだろう。しかし主力が一人もいないとは・・・こちらは捨て試合あつかいされたか。
霧崎は人事を尽くしてない。最低なのだよ」
「あ、ほんとだぁ一群がいないね・・・でも真ちゃん。それにしても変じゃない?レギュラー全員どこにいったんだろう。だって“ベンチにも”いないよ」
勝敗は秀徳が勝ったことで終わったが、試合終了後の後味の悪さと言ったら双方おかしな具合で感じていた。
「ううう・・・先輩。先輩たちは確かにゲスかったけど」
「こわかったけど」
「いいひとでした!!」
「「「「負けてすみません!!!」」」」
「え。やだ、なにあれ。霧崎の子たち泣いてるよ」
「・・・なんなのだよ」
「・・・ねぇ真ちゃん。なんか霧崎写真に向かって泣いてるよ?え?ドウイウコト!?」
一方その頃。
窓の大きな部屋にあつまる人間たちは、深々と溜息をついていた。
「なー花宮。青クンとかかわるのもうやめてくんない?」
「俺だってしたくてしてるわけじゃねーよ!!こいつのせいで桃井がしかけてくんだろうが!!!」
「おかげで秀徳との試合がパーだ。ほんとだったら勝てるはずだったのに」
「古橋なんかまだ意識戻らないし・・・」
「zzz」
「あかん、まだ吐き気がする。もーワシまでまきこまんといてや」
『あー・・・IQが高い花宮さんでもだめでしたね。オレ、これからどうやって生きてこう』
六つ器用にベッドが並んだ大部屋の病室内で、一番背格好の大きな青色が、横で寝ている今吉、霧崎のレギュラーメンツにせめられている。
しかしそれさえすでに何度も繰り返された行為であるのか、青峰はひとりベッドの上でうつろな視線を天井に向けている。
なおそれぞれの顔色は最悪で、霧崎のメンバーであるひとりは別室で面会謝絶状態である。
こうなった原因は、花宮をきっかけに青峰が霧崎メンバーと仲良くなったことが発端だ。
あれ以降桃色の魔王が、花宮に絡み始めたのだった。
そうして一週間ほど前など、練習を観に来ていた青峰の差し入れが、なぜかまずく、その後レギュラー陣が青峰とともに救急車で運ばれて――今に至る。
「女だとか関係ネェな。報復だ。いつかぜってぇーあいつ、泣かす!」
「あ、そのときは手伝うよお花」
『僭越ながらオレも』
「後輩と言えど、ワシももう限界や」
「あ、おはよ・・・俺も手伝おう」
ギリギリと歯軋りが広まる中で、あつい闘志が燃える。
中にはコートの上以上にアクドイ顔をした悪童や、眠っていたはずの大仏が起きてきたり。
みな一眼となって決意をかためたのだった。
っが、しかし。
「みんなー!お見舞いに来たよ!これたべて元気になってくださいね」
ガラリと扉が開いた。
響いた声に、その場にいた者たちはベッドに逆戻りすることとなるのだった。
“キセキの世代”がなぜバラバラになったのか。と、
秀徳VS霧崎のときレギュラーが出なかった理由。でした。
全部のお話がけっこう時間軸がバラバラでしたが、大丈夫だったでしょうか?(汗)
きっと夢主1に青峰が成り代わると、この先も彼らはギャーギャーすごすことでしょう。
これにて「青色はついてない」完結です。
ありがとうございました!