すこし前までオレは、イタリアンマフィアの九代目の義息子であった。
そんな人生。
【家庭教師ヒット●ンREB○RN!】という漫画をご存じだろうか。
それに酷似した世界でオレは主人公に敵対するXANXASという男のポジションに転生を果たした。
――――っというのは、ひとつ前の前世でのことだ。
なぜならオレは、マフィアの抗争で流れ弾を食らって死んだからだ。
っと、いうのも冗談で。
まぁ、死んだのは確かなんだけど。死因たる理由が違う。
実は今度の死因は、窒息死である。
公園で仲間らと花見をしながらのんびりせんべいを食べていたのだが、周囲の鳥にもエサをまていたら、よくばった鳥が地面に落としたのや手のひら以外からも食べようと――オレが加えていたせんべいにも群がってきた。
そのときの両の手には鳥の餌。そして餌に群がる鳥。もちろんそのせいで身動きができなかったわけである。
餌に群がるあたりでもう理解しているだろうが、オレが口にくわえていたせんべいも餌と勘違いして鳥は襲ってきた。
そう。群がってきたのだ。
そのとき口はせんべいでふさがれているし。
鼻の穴をふさぐように、鳥がモフモフとモフモフと・・・。
顔面問わず全身を小鳥たちによっておおわれていたと思う。
そのまま、あえなく窒息して死んでしまったというオチである。
ちなみに仲間たちが気づき、「ザンザス!」とオレの名を呼ぶのが聞こえたが、そのときにはもう意識がブラックアウトしかけている最中だった。
死ぬ間際に感じたのは、のばされた仲間のものであろう手やそれにともなう温かい人の温もりなどではなく、全身をモフモフとした柔らかいものにつつまれる至福の感覚であった。
苦しかったけど。
そんな何とも言えない死に方であった。
そんなオレはまた転生してしまった。
あのモフモフフワフワにつつまれてまろやかなる至福を甘受して――そのまま目が覚めたのだ。
そして赤ん坊からオレは人生を新たに謳歌中である。
オレは、青峰 (アオミネ )。
それが今生のオレの名前である。
そして現在、オレの特徴と言えばコレ!長身だっ!
いいだろいいだろいいだろ!!やったーー!!
本当に今世の両親ありがとうな!!
今回のオレはいろいろ特別なことがあって、そのひとつがこの長身。そして二つ目が目立つ髪の色だ。
何十回も生まれて死んでを繰り返している中で、はじめて青い髪になった。
そしていままでなかった身長を手に入れることができた。
すっごいことだろこれって。
しかもさ、高校生になった今では、その身長は、外人さながら。
あまりの身長の高さに歓喜した。
なにこの視界の広さ!
身体測定後は、世界ってこんなに美しかったんだね!とおもわず叫んだほど。
いままでは転生の影響か、どうも成長が遅く童顔だし、たいがいが十代半ばで身長が止まってしまうのだ。
しかも小っさいまま!!!
それが今回なかったのだ。
今回のオレは、小学生のころにはもうほかの奴らより身長が高かった。
しかも転生を繰り返すに当たり、いままでの人生では、いつも周囲より一回り小さくて、あげく整列するときは一番前。
「まえーならえ!」のとき、ひとりだけポーズ違うあの位置だ。
初めてだったんだ子供のころから身長が高いなんて。これはまだ成長するに違いないと勝手に信じ込んだオレは、あまりの身長の高さに嬉しくなって、
もうこれは身長をアピールできるように運動を始めるべきだよね!?と思ったものだ。
だって運動した方が体にいいっていうからな。
それでなにをやろうか考えはじめた。
剣道なんかやると頭から防具をかぶるので押しつぶされて身長が止まりかねないので、却下。
野球は前世の仲間のひとりがやっていたし、いまもやろうとは思わない。むしろあれは身長を生かした何かじゃないから却下だ。
サッカーもなぁ。身長をアピールできるのってあれって、ゴールキーパーだけだろ。
ってなわけで、考えていた時にたまたま近所のストバスコートでバスケットをやっている男たちが目に入った。
コレだ!と思った瞬間、オレは彼らに弟子入りをし、バスケットを教えてもらい―――そのままはまったのが中学生まで。
これほど身長をいかせるスポーツはないと楽しくて楽しくてしょうがなかった。
けれどそれは中学三年まで。
中学生の時。
オレは生まれ変わるたびに、前世の記憶を経験ともに引き継いでいるから、運動神経には自信があるし、教えてもらったのがストバスというやつだったので、
メチャクチャなバスケをしていた自覚がある。
それでもついてくる仲間がいるから、バスケってこれでいいのかなぁって思もってったけど。今考えると、チートなオレについてこれらるだけの仲間のほうこそチートなわけで・・・。彼らは天才だった。そして気が付けばオレもそのくくりにいれられていて “キセキの世代” なんて珍妙奇天烈、こっぱずかしいあだ名をもらっていた。
オレてきには、あんな個人プレーなやつらより、「無名の五冠」のプレーの方が好きだったけどなぁ。
まぁ、世間の話題をさらうには、オレのチームメイトたちはひとりひとりが目立ちすぎていたんだろうとは思う。
でも全員のこと嫌いじゃないんだぜオレはな。
まぁ、そうはいうけど、ある日をさかいに、バスケットはオレにとっては楽しいものではなくなった。
バスケなんて、どうでもいいやって気分になった。
バスケが嫌になった。
だから高校はキセキの仲間と重ならない学校を、体育推薦なんかで行かず試験を受けた。
高校は無事に合格できたものの、オレの中学時代を知っているバスケ部のやつらが “キセキの世代” だからということで入部しろぉ〜と勧誘につきまとってきたのは、いうまでもないだろう。
おかげで平穏な学生生活がおじゃんだ。
“キセキの世代” なんて呼び名も才能あるやつも嫌いだ。
桃「っちゃん。ここにいたんだね」
夢『さつき・・・』
“部活の仲間” とその準備にいそしんでいたら、ガラリと引き戸があいて派手な桃色の髪のやかましい女子生徒が入ってくる。
それに眉をよせるのはオレだけだ。
“仲間たち” は、いつものこととばかり苦笑を浮かべているだけ。
こいつは幼馴染みの桃井さつき。
美女という種類にはいるらしいが、オレにとっては疫病神でしかない。
そもそもオレは彼女からも “キセキの世代” とも同じ学校に行くことがないように、念密に計画を練ったはずだった。
やつらの志望校を全部調べて、さらにだれにも志望校を言わずに、ひそやかに受験票を出したのだ。表向きには違う高校に行くとさえ宣言したというのにだ。
なのに、さつきはつきとめてきやがった。
さぁ、新たな学生生活の始まりだと高校の入学式初日。うきうきして玄関を開けたら、ウチの玄関前には同じ高校の制服を身にまとうさつきが待ち構えていた。
その瞬間。オレの高校人生は終わったと思った。
それにくわえ、さつきに関してまっとうな言い訳をのべるなら、オレは転生を繰り返しているので、合計した精神年齢が二けたを超えている。
だから普段はそんなに怒らないって思っていたけど、こいつに関してはもう無理だ。
こいつが美女?彼女にしたい?有り得ないね。
だって、オレにはただの幼馴染みでしかない。
むしろオレてきには、天敵というやつである。
同じ高校に入学してしまったからには仕方がないが、こう、オレの気持ちも少しは組んでほしいものだ。
あけっぱなしの扉も「またか」と渋い表情をする “部の仲間” もさつきはすべてまるっと無視して、
オレの腕をその細い両腕でガシリとつかんでくる。細い分、腕に食い込んでいてぇ。関節決めてるし!!
地味に痛い。
やつの目を見れば「にがさないわよ」とばかりにぎらついている。
桃「もー!っちゃんてばぁ。こんなところでサボッって」
まじでもうこいつやだ・・・。
夢『いい加減にしろよサツキ』
さぼるもなにもないんだが。
ちゃんと部活に必要な“ボール”は持っている。
なにがおかしいというんだ。
桃「だってみんな待ってるよ?」
夢『お前の上目づかいなんかきくかボケ。いつからオレがお前を見下ろしてると思ってるんだ』
桃「むーひどいなぁ。 でもね、っちゃん」
夢『あ゛?』
桃「わたし、知ってるんだよ?」
ニッコリと笑ったかと思うと、ぐるりと、オレの部活の仲間たちを振り返り――
桃「では! “調理部” のみなさぁーん!そんなわけで、今日からしばらく青峰くん、バスケ部に借りますね!お約束はあとできっちり!!」
夢『は?!』
「「「「いってらしゃーい青峰君」」」」
夢『はぁぁぁぁっ!?』
ニコニコ演説するように叫んだかと思えば、今度は、 “調理部” のやつらから「逝ってこい青峰」コールがかかる。
あの、先輩。間違いなく字が間違ってます。
呆然としているオレを無視し、さつきの笑みは深まるばかり。
桃「うっふっふ〜ん♪っちゃんを見習って、今日は外堀から埋めてみましたぁ〜。すでに調理部のみなさんはこちらで買収済みだよ♪」
オレの料理仲間や先輩に何を言ったこいつ!?
そう。ボールはボールでもオレが持っていたボールは、バスケボールではなく、調理用のボール。
恰好だって、赤いバンダナに、黒のエプロン。ボールを手にしていない片手には泡だて器と、まさに戦闘準備バッチシだったのだ。
オレは高校に入ってからバスケ部には入るまいと誓ったのだ。
だからこそ調理部に入ったというのに。
うるさい体育系運動部のあまたの勧誘をちぎってはなげ、ようやく入部届を出せたときの嬉しさはいづこへ。
くそっ!
幼いころからオレと情報戦をやっていたせいで、こいつ、だんだんと情報調査と解析能力以外のスキルも上げてきやがった。
おかげでスケットとして、いつもバスケ部に連行されるし!!!
助けを求めて調理部の仲間を見れば、「青峰くんが逝ってくれないとかわりに桃井さんが手伝うっていうし」「ごめんね!わたしたち、命が惜しいの!」
「わるい青峰!!死んで来い!」などなど大げさな態度で拝むように謝罪された。
おい!やっぱり字が間違ってるぞ!なんで「いく」がみんな「逝く」って発音すんだよ!!
この桃井さつきがなぜオレの天敵かというと、こうやって情報操作して周囲を巻き込んでやたらと、オレをバスケ部に連行しやがるからだ。
そもそもオレが前世では情報こそ命とばかりに、情報収集とそれを生かした戦術ばかりたてているような前世だったせいで、
その記憶と経験を持つ今、幼いころから側にいるさつきまで情報収集にたけてしまったのがことのはじまりだろう。
どうせ調理部の先輩たちや仲間たちはみんな「知ってますよ〜」とそれはもうラスボス的に微笑むさつきにナニカをちらつかせられたか、
先輩たちの発言にあったように「わたし、手伝いますね!」とか脅されたに違いない。
さつきの料理は地獄を見る。嘘ではなくマジで。
この神聖な調理室など使わせてなるものかと思い、初めのころはオレだってさつきのお願いをきいてスケットやったさ。
だがな。
そもそもオレがバスケをやめたのも、こうして調理部に入っているのもどちらの原因もこのさつきの料理音痴のせいだ。
もうそろそろオレにも自由があっていいと思うんだぁ。
でもだめだなぁ。
この学校はもうさつきの手の中だ。
あいつがくると、その行く先々でオレはあいつへの生贄扱いとしてささげられるのだ。
中学時代――情報能力を生かしたさつきが、幼馴染であるオレが入っている部のマネージャーをするのは必然だった。
しかしそれがいけなかった。
やつはオレの隙をついては、ドリンクや食べ物いれかえたりするわ、選手に謎の物質を食わせては病院送りにしまくる。
毒にも近いその料理音痴な彼女の作り出す謎の物質たちにより、オレはいくど赤十字マークのある場所に運びこまれことか・・・。
いまでは携帯の短縮ボタンの一つが、病院になっている始末。
夢『・・・はぁー。おいさつき、オレ、バスケ部員じゃないんだが』
桃「えぇなにいってるのよ。大丈夫大丈夫!
監督や先生たちもっちゃんが “キセキの世代” だってわかってるから、
ちゃんと勉強をおろそかにしなければ掛け持ちしてもいいって言ってたしね!
そもそもっちゃんてば常に点数いいから勉強落とすなんてしないものね。よかったね、先生たちも認めてくれて!」
夢『しらねぇよ!っていうかいつオレがバスケ部にはいるって言ったんだよ!!これもう何度目のやりとりだよ!!
まじでだれかつっこめよ!!!!』
制服の襟をつかんでひっぱるんですさつきが!
苦し!まじ死ぬ!
さつきのほうが身長が低くてバランスとれないから、そうやって変なところをつかまれると身動きが取れない。
あげくどうしてもひっぱるさつきに従わざるを得ない形になってしまって。
このドカスがー!!と前世の口癖がおもわず口から大声であふれ出ようと、ウチの学校のみなさんは苦笑で見送るとか・・・どうなの!?
いってらっしゃいと手を振って見送るなよ!オレは助けてと言ってるんだ!
ふざけんじゃねぇよ!
なんだよこの理不尽!!前世ではよく身長についてこの言葉言ったけどさ!いまはこの幼馴染みのせいだよ!
オレはバスケ部じゃないんだ!!
理不尽だ!
そもそもさ!ちゃんとレギュラーやベンチのひとたちが大勢いるんだから、そっちに譲れよ!なんでオレ!?
なんで呼ばれるんだよ!!!!!
だれかなんとかしてくれ!
そしてそのイタイ呼び名はやめろ!!
あ、そっか。 “キセキの世代” は五人のはずだから。
赤司、黄瀬、緑間、紫原、黒子の五人で “キセキの世代” だな!?オレは含まれてないよな!!同じカラフル頭だからってそれはないよな!?
ないと言ってくれ!!
【キセキ】呼びも、外堀から埋めてく情報女も、笑顔で「ようきたな青峰!まっとたで」とニコニコ笑う先輩も。
なにもかも。
理不尽だ!!!!滅びろドカスどもが!!!!おまえら、全員ドエスだ!ちくしょう・・・。
【後日談】
練習終了時に、持参していた(さつきがいつ何を仕込むかわからなくてこわいから常に肌身離さず持ち歩いている)水筒の中身を飲んで―――
そのまま脳天直撃したような背筋の悪寒と舌のしびれを感じた瞬間、意識がふっとんだ。
練習の間はさすがに水筒など持ち歩けなかったから、しかたなくベンチに置いておいたのがあだとなったらしい。
さつきのやつは、相変わらずの忍のごとく素早さで、オレの水筒を入れ替えてくれた。
オレが今飲んだのは、きっとオレお手製ドリンクではなく、さつき手製のドリンクに違いない。
すげかえられた中身のせいで、オレが地獄の河の番人に「お前何度目だ?」という同情のまなざしをいただいているころ。
慣れたどっかの誰かが、オレの携帯の短縮ボタンを押してくれたらしい。
短縮「1」は、今日も華々しく活躍したようだ。
目が覚めると見慣れたような白い天井。
かぎなれた薬の匂いに、もう本当にやだと泣きたくなった。
病室意識を取り戻したとき側にたまたまいたクラウメートからは、「ウチの学校に救急車来るのもなんだかなれたな」と苦笑していた。
退院するとき、医者が元凶たるさつきに説教をしていたが、あいつ絶対後悔してネェ。顔が反省してない。
だって言葉に出して言うなら、奴は心の中でこう思ってるはずだ。
「でも分量も確認して、しっかり測ったうえだったんですよぉまちがえるはずないです」とぶりっこした風に、心の中では絶対に非を認めていない。
幼馴染みだからこそ、さつきのイイ子面の下の本心が見える。
むしろ医者も慣れたもので、言っても無駄だなとばかりにため息をついていた。
頼むからそこで諦めるな医者よ!
オレの身の安全のために!!ぜひにも。
そうして帰り際。
もうマジ本気で二度とするなとさつき睨めば、「エヘ☆分量まちがっちゃたかなぁ?ごめんね」と舌を出してかわいらしく笑っていた。
常習犯の笑顔です。
マジで可愛くネェよこのクソアマがぁぁぁぁぁ!!!
カッケス!!!!