第5話 世界と廻る物語 |
転生してもずっとかわらない『アザナ』という名前をもって、たくさんの世界を旅した。 痛いこともつらいこともたくさんあったけど、そのなかには優しいひとたちもいたんだ。 そのすべてを覚えていられたら、どれだけ素敵だろう。 -- side夢主1 -- 世界が思いのほかジブンという存在を嫌っていると知ったのはいつだろう。 はじめはささいな静電気だと思った。 バチリと触れた肌同士で小さな火花が起きた。 通りすがりの少年に触れたとき、育てた子に触れなくなっていったとき。 だがそれは年を重ねるごとに増えていき、それとともに身体の細胞がひとつひとつ破壊されていくような全身に鋭い痛みを伴うようになってきた。しまいにはオレのことを周囲の者たちが忘れていく。オレが苦痛でのたうち回ろうが、目の前にいるのにオレのことが目に入らない、オレという存在に気づかなくなる。 それは徐々におこった。 ジブンから遠い存在から忘れられていった。 そしてあるとき、ふと気づいた。 内容はしらなかったけど、ここが物語の世界だと。 原作のキャラが誕生したころ、ようやくオレはこの世界に原作があるのに気づいた。 彼らの姿と名前をみて、はじめてそこで前世の記憶で効いた程度の原作知識が呼び起こされた。 つまりこの世界には原作があったのだ。 そして世界はそのシナリオ通りに物語を進めたいらしい。だから原作が始まる頃には、異分子たるオレがいるのが気に食わなかった。 原作で登場したキャラに触れると、オレの存在はどんどん削れていった。 最後は、原作開始間近で、そのころにはもうオレもあきらめていた。 ああ、原作軸が始まるのかと。 世界に身体も生きた記録もすべて消されそうになった。 そんなときでもオレの親友と息子はさいごまで必死に手を伸ばしてくれた。 けれどこれにまきこんではいけない。彼ら二人は原作の重要人物なのだから。 伸ばされた手を、オレから突き放した。 バイバイ。 一つ目のオレの人生は、世界から消されて終わった。 それからオレは、いくつもの世界を回ることとなる。 二つ目の世界は、オレにはやさしくて原作が始まろうが世界から追い出されそうになろうが、かくまうようにずっとその世界にいさせてくれた。 そこでオレはオレを拾ってくれた人間に依存していた。そのせいでロジャーが死ぬとき、無意識に彼の魂だけ能力でからめとって、オレのなかにとりこんでしまっていた。自分の中にロジャーの存在があると気づいたのは、次の世界でだった。わびてもわびても元の世界に返すすべもなく、結局二人で異世界転生の旅をすることとなった。 オレはふつうのひとの魂だったから、何度目かの転生のとき、耐えきれず魂が壊れてしまった。 そのとき助けてくれたのが「時限の魔女」だった。 彼女と契約したことで、オレの魂は死ぬことができなくなってしまい、かわりに転生しつづけ生きることを義務付けられた。 生き続けてはいたけど、壊れた魂には蓄積はあまりできず、記憶はどんどん欠けていく…。 そこからは長かった。 オレは死ねないのだからしょうがない。 世界はいくつもいくつもあった。たくさんの人や、人以外のものたちが生きていた。 オレも時には人間でなかったこともあった。 原作がある世界のほとんどでオレは拒絶されることが多い。 それでも世界は譲歩してくれることも多く、オレが生き残るすべを用意してくれていたりする。 そんな・・・廻り続けるオレの物語。 だけどたまに友人だった後輩ちゃんと、その人生が交差することがあった。 その時間は原作がある世界だろうととても楽しかった。 そういえばその後輩ちゃんは、今どこの世界で、何をしてるんだろうか。 元気だといいなぁ。 *:..。o○★*゚・*:..。o○★*゚★.。.:*・゜★.。.:*・゜ 腱鞘炎になりかけながらひたすらお札作成を師匠様たちとこなして、立派な薬売り身なら内になった『神崎零』です。 5作しかない原作はすでに完了済み。 当然わたしの薬も商品として扱ってくれるようになったし、わたしも気づけば結界を張ったりできるようになっていたわけです。 いやぁ〜、本当に何年ここで頑張ってるんだろうね。 ちなみに該当する退魔の剣がないとのことで、あやかしを斬ることはできないことだけが残念だよ。 まぁ、“斬る”ことはできなくとも“退ける”ことはある程度できるし、わたしがもとから持っていた性質らしく薬売りさんとは違う方法で少しだけ祓うことができるようになったのでヨシとしよう。 -- side夢主2 -- あるとき、師匠に重い背負子を背負わされ、いつものようにあやかしを祓うのでその補佐をしてくれと声をかけられた。 そこにいたのは大きなあやかしで、いわゆる人間に忘れられた神様の成れの果てだった。 なんかのネタであった気がするけど、安易に祠を壊しちゃいけませんって言ってるでしょうに!!って思ったわたしは悪くないと思うんだよね。 めちゃくちゃにされた祠の周りを円を描くように天秤さんがかこむ。 そのあとをわたしの色違いの天秤さんが続くの、親を追いかけるお子さんみたいでちょっと可愛いと思う。 基本的にわたしは薬売りさんのサポートがメイン!だからお師匠様の天秤さんの内側、それも師匠とわたしの周りをわたしの天秤さんがゆるい円を描く。 さて落ちた神様は何処へ?…とおもっていたら、地面が大きくうねった。 「おやおや、これはまた」 『地面ごとなんてきいてないいいい!!!!』 神様は地面そのものでした。 ああ、土地神だからかい。 ダジャレかよ!って感じで、待っていたつもりが待ち伏せされていたようです!!メーデメーデ!管制室!こたえたまえ!! あやかしはここだぁぁぁぁ!!! まぁ、地面が蛇のごとく大きくうねったので、当然吹っ飛びますよねー。って感じでした。 ポーン!って吹っ飛ばされたんです。わたしだけ! お師匠様は吹っ飛ばされてる最中に途中の木の枝をつかみ、それを鉄棒のようにして回転して、木の枝に無事着地。 わたしはというと、ひぇー!っていう悲鳴を上げつつ吹っ飛ばされている最中…お師匠様が投げつけてきた札にまきとられ、無事保護された。 そのごなんだかんだあって、退治?というか浄化と沈静化に成功したんだけど。 オチ神様が巨大すぎたせいで空間に穴が開いちゃってたんだよね。 ひとつ考えるように腕を組み手を顎にもってきて「ふむ」と考え込んだお師匠様は、ひらめいたとばかりにわたしの天秤を呼び戻してせっせと背負子にしまい込んでいく。 あとその勢いで、秘伝の春画を入れようとしないください。 「いえ、これも必要かと」 『いるかぁぁぁ!!!!』 「そうですか。貴女、すぐお腹と頭が痛くなるようなので、頭痛薬と鎮静剤と。あと念のために解毒薬だけでも入れておきますね。ではこれで。お元気で」 『え?』 シャキシャキとお師匠様が薬をわたしの背負子に詰め込み詰め込み・・・ 気づけばポーンと背を押されていた。 とっさのことに対応できず、体がぐらつきそのまま落ちる。 なにがおきてるの!?とおもったら、笑顔でお師匠様が手を振っていた。 そしてわたしはおちた。 どこって、オチ神様が開けていった空間の穴にだ。 ヤダ無重力っぽい空間なのに、めちゃ落ちてる感がする!こわあすぎるわ!!!不思議の国のアリスかよぉぉぉぉぉ!!!! おちる!出口だ!っと、光に覆われたと思ったら別の世界にいた。 そして始まったわたしのトリップ人生。 トリップなので基本わたしはわたしの肉体ごと別の世界に紛れ込んでいる。 そのおかげで、前回の世界で身に着けた術や能力は継続して使えるのがありがたい。 ただし世界ごとに魔力や霊力やら法則性がちがうらしく、すべての能力がそのまま使えるわけではなく制約に阻まれてる時もある。 いろんな世界を回って気づいたことがあるからきいて! 異世界にとばされてから、わかったことなんだけど、わたしはどうも“自分がしる世界”、つまり“原作のある世界”にしかトリップしないということ。 それと、原作破壊はほとんどできないってことね。 原作をこう変えたい!って思うけど、うまくいかないの。あれ、腹立つわ〜。 いつも最終的には、原作の修正力に負けてしまう。 あ、そういえばセンパイとたまに移転先でバッティングすることあるけど、センパイといると高確率で原作の修正力から逃げられる気がする。あれもまた不思議現象だと思う。あのセンパイ、マジ何者?もはや人じゃなくないですかって思ってる。 センパイといえば、なんか無意識に原作破壊しててウケルるんですけど。 そんなセンパイが世界に転生してると、たいがい変な物語になっている。すっごいシナリオが激変するので笑える。まぁ、せっかく異世界トリップや転生してるんだし、原作にとらわれてばっかりより人生を楽しまないでどうするって感じ。 そりゃぁ、もうセンパイがいるときはより楽しませてもらってます。たまにセンパイにいじられるけど。 それといまだにセンパイは“ナニカ”視えてる気がするの、あれ怖い。 薬売りさんの弟子になった今となっては、“そこ”になにかいるのはわかってる。もはやセンパイは天秤さんだと思うことにしてる。 最近では超のつく直感力をえたらしく、もはや未来をあててくる。 センパイ、やっぱりいろんな意味で変だわ。あとコワイわ。 さぁ!今日もまた一つの【原作の物語】が終わったので、わたしのこの世界の人生はここまで。 そろそろ別の世界へ行くタイミングかな。 次はどんな世界だろうね。 次こそ原作を破壊できないかなぁ。できなくともめっちゃ、楽しんでやるんだからね! 夢主1と夢主2は次の世界へ旅立ちました---ただいま交差する世界を検索中...。 |