03.子供×島×子育て |
時は流れた。 気がつけば、生まれてから三十年以上が過ぎました。 ::: side 夢主1 ::: 七つ違いの兄弟子は早々に托鉢、もといハゲにみがきをかけ、主と慕う者についていった。 そして侍の道を踏み外し、なぜか忍者の首領になった。 オレは転生の影響か成長が遅いらしく(とまったわけではない)、いまだに十代後半とまちがわれている。 それでも職に就けた。 水分があれば無尽蔵に墨が作り出せること、オーラを通わした墨をあやつれることで、刺青師になったのだ。 もともと絵を描くのは意外と好きだったので、それはオレにはピッタリの転職だった。 念能力で墨をじかに肌にしみこませるので、痛みもない。 なのでそこそこオレは知名度をえて、彫師として名を上げていた。 そうそう。この年月の間に、オレにも子供ができたんだ。 とはいえ、血はつながってない。 ある日、職場にオレの名前入りで「あなたの子です」と書置きと一緒に赤ん坊が置いてあったのだ。 調べたところ、以前オレの客だった女がおいていったとわかったが、オレが彼女の存在にたどり着く前に女はすでにこの世をさっていた。 どうしようかと悩んだ挙句、両親に相談すれば嬉々としてひきとれと言ってきたので、そのままオレの子として引き取ることとなった。 そんなわけで戸籍上はオレのこどもができたわけだ。 オレの子は、赤い髪に緑の瞳。 本当に偶然だが、オレと同じ色を持つ子供は、オレと両親にもよく似ていて、血の濃さを見せ付けられているようだと――保長を含めた知人たちには言われた。 何度も言うが、血は繋がっていない。のにだ。 そんなこんなでオレの両親のしごきに、遊び半分でついていけちゃう凄い我が子が誕生したわけである。 基本根無し草なオレは、子育てしつつ、あちこちで彫士の仕事をしたり、ハンターとしてネテロ会長にこき使われながら、旅をしつつの生活することが多かった。 そうしてあるとき、オレはネテロ会長に、ハンター試験の試験官にと任命された。 その時の試験は、結局オレのもとまで受験者は一名もたどり着かず、二つ前の試験で合格者が決まってしまった。 合格者は一人。 名をジン・フリークスという。 そう。あの原作においてとんでもないキーパーソンたりうる男の幼少時代である。 オレは用意していた試験がなくなったことで、きがゆるんでいたのだろう。 試験会場からの帰り道、うっかり飢えて死に掛けていた子供をオレが踏んだ。 謝罪の代わりに食事をおごったところ、なつかれた。 そいつの名は、ジン。 これが今期唯一のハンター試験合格者にして、あのジン・フリークスとの腐れ縁の始まりだった。 ――あの衝撃の出会いから、さらに数年後。 ここは後にとあるゲームの舞台となるはずの島。 横にオレによく似た赤毛の子供が、ツンツンした黒髪の小さな子供をあやしている。 たかいたかいと赤ん坊を持ち上げるオレの子、かわいい。 オレの子ももう12歳だ。今が一番かわいい盛りである。 そしてオレは、外見的にようやく二十代後半にみられるようになった。 これでようやく兄弟ぐらいいにはみられるようになったわけで、オレもはやく童顔を卒業して大人と思われたい。 さて、ここでひとつオレは目の前のヒゲ面に言わなければいけないことがある。 『このオレにこどもの面倒を見させるたぁどういう了見だ若造よ』 オレ、って怒ると笑顔になるんですね☆ しってました。 だからアルカイックスマイルなんです。 外見で侮ることなかれ。たとえこのヒゲ面親父ことジン・フリークスより、年齢はこうみても上だ。たぶん目前の青少年たちの二倍は生きている。 外見で笑われることが多いので最近笑うことで威嚇することを覚えたんですよ。 なにせオレはジン・フリークスやその横で正座しているバカどもの親世代の年齢ですからね。よくなめられるので、いい加減飽き飽きしていたわけです。 そもそもなぜオレが怒っているかというと、こいつらがあまりにビックリなことをしていたからだ。 まず正座して縮こまる七人の念実験を手伝うことになってこの島にきた当初のこと。 数十メートルはありそうなたかいたかいをしているヒゲ面男がいた。 そして笑顔で何かなぞの機械に子供を乗せようとしている双子の少女。 片手で赤ん坊の頭をわしづかみにしてぶんぶんとふりまわすでかぶつ筋肉マッチョ。 料理とはいいがたいみごとな焼いただけの謎の食材を子供に与えようとするやつ。 焦げは癌になります! ミルクをつくろうとしてちがうものをいれているひと。 泣く赤ん坊をよろこんでいると勘違い発言して、喜んでいるひと。いや、おしめかえてやれよ。ぬれてるだろ! などなど。 なってねぇ。なってねぇよ! 子供、死ぬぞ普通! いったらきりがないとんでもない子育て光景を見てしまい、思わずオレは彼らから赤ん坊を奪った。 そうして今に至る。 オレの前に七人を正座をさせ、説教中。 なお途中で足がしびれたとか、大の大人から悲鳴が聞こえたが無視した。 あれだけのことをされておきながら子供に怪我はなく、ジンの息子に対し、まじでこいつ人間かと思ってしまった。 オレの横で赤ん坊をあやしてるうちの子が、同じことをされたら間違いなく死んでる。 オレでも死んでる。 そのときのオレは、まさかあの赤ん坊が原作HUNTER×HUNTERの主人公になるとは思いもよらなかった。 まぁ、オレには知りうることもなかったのだけど。 と・り・え・あ・え・ず。 『なんで逃げ出してるのかな君たち?』 ジンはケロリってしてるし。 なぁ、一言いいか? 『てめぇらそこへなおれ!!』 -------------------- 世話した赤ん坊がゴン(主人公)であろうと、オレには関係はなかったんだ。 だってオレは、これ以上彼と接触することはなかったから。 それに、なによりは――必要なのは今。 オレの役目はこのバカな教育をしている奴らに子育ての何たるかを教えるだけ。 それだけだったよ。 オレがこの世界にいるのは、もうそろそろおしまい。 そろそろオレの、止まったままだった時計の針は動き出す。 |