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- 「夢主3」の異世界旅行記 -
01. 君が咲かす祝福の六花


通り魔がきて、マンガのようにかわせたりふせげるのでは?とどうにかなるんじゃないかと思ったら、考えている間に刺されて死んで、ラブラブのまま死んだ両親同様の場所に行くのだろうと思っていたら、幽霊になってさまよっていた。

約一週間を幽霊として過ごしたとき、時代錯誤な侍のような格好をした死神が現れ、このソウルソサエティーなる霊界に送られた。
そこで新しく生まれるのを待てといわれたのだが、なぜか“産まれ”てしまった。





-- side 夢主3 --
 




あれ?転生を待つんじゃなかったのか?
もう赤ん坊みたいなんですけど。

うんん?どうすればいいんだ?

動かない身体では何かできるわけではないし、言葉はどうも「あー」しか発せられないし。

まぁ、生まれたてだし。
なるようになるだろうと、のんびりしていたら、オレをとりあげてくれたと思わしき人が倒れていく。
しまいには騒ぎをききつけて入ってきた人までばったばった。
どうしたのさ?と思って声をかけようとしたけど、でるのは泣き声ばかり。
っていうか、オレまだ目も開けてないよね?視界は真っ暗で暗闇なのに、周囲の状況が分かるのって何でだろう?
それから生まれたてのオレは、疲れていたのかすぐに眠ってしまった。

視界の端に何か白いものがふわりと落ちてくるのを見た気がする。



それからすぐに不思議な夢を見た。


真っ白な草原の中で一輪だけ咲く花を見つけた。
花はまるで氷でつくった像のように透明でキラキラとしている。
けれどそれが氷像でない証拠にたまに吹く風にあおられ普通の草のように揺れる。
前世の影響からか、そくそんな花あるわけないだろと夢なのに突っ込んだ。
これはレストランとかである偽者ご飯と同じに違いない。

ああ、なるほどプラスチックの模造品ですか。
そうですか。

と、ひとり納得した。

それにしてもこの花はたった一つでこんな場所に生えていて、みているうちになんだかさびしいんじゃないだろうかと思った。
たとえ人為的に誰かが模造品を挿したにしても、実は自然なものなのかもしれないにしてもこれはないと思う。
自然に生えた本物の花だというなら、その場合は本当なら自然のまま花を抜くなんてしないほうがいいのだろうが、こんだけ広い場所にぽつんとひとつだけ咲いているのはかわいそうだったから家で育ててあげようと思った。
周囲を見回すがスコップになるようなものも植木鉢になるようなものもない。
しかたないので手で掘ろうとそっとその透明な花に手を伸ばした。

―――そこで目が覚めた。



次に起きたときは、揺り篭の上で寝ていた。
目を覚ましたと同時に思ったのは“抑えなくちゃ”と、本能のどこかでそう思った。
“なに”をか、なんてわからなかった。
とにかく『このまま』はだめだと思ったから、自分の身体の中からあふれ出ている“なにか”を抑えるよう意識を働きかけた。
すると湯水のごとくでているものが、水道の栓をしめるように、“何か”が落ちついていくのを感じた。

どこかでチリーンと金属と金属がぶつかり合うような音がしたきがした。

それがオレの赤ん坊暦一日目の出来事だった。


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