00.さぁ、蝶となれ |
もう、すべてに疲れ切っていた。 この世界はそういう意味では、ちょうどよかった。 自分から何かをする必要がなく、戦争もはるか遠い国の出来事で。 世界にきらわれて痛みだけが残る消え方をすることもない。 大切なだれかが処刑される現場を見て泣き叫ぶこともない。 神様たちが喧嘩をしているようなこともない。 不思議な力がある人間は一人もいない。 人が氷漬けになったりも指パッチンで焔を出したりも、ゲームの世界に入り込むようなこともない。 不思議な建物にあふれ、不思議な生き物もおらず、かわりに現代地球ならではのビルもふつうにある。 殺人や事件が多すぎることもない。 ここにいるのに、気付いてくれない――なんてこともない。 ここは平穏で、優しい両親がいて、オレはただの力もない学生で。ここでは時が穏やかに流れていった。 まぁ、力はないとはいうけど、実際はあるけど使う意味がないっていうだけかな。 ねぇ、ロジャー。 青い光を放ち飛ぶ蝶の姿の君を見れるものはこの世界に何人いるだろう。 オレと同じ視界をみれるものはどれだけいるだろう。 人と人との距離感が少し遠く、己以外に手をさしのべるような優しさを置いてきてしまった都会の人々。 仕事だけをして、それで一生が終わってしまうような、平坦な一生。 穏やか過ぎるこの世界のこの国では、きっと身元が保証されていてお金があれば、ゆったりと人生を終えられる。 『そう、おもっていたのだけれどね』 「はじめまして!今日からお世話になる最上キョーコといいます!」 元気で、面白い子がオレの家に下宿してきた。 最初は黒い髪だった気がするけど。 きがついたら綺麗な長い髪をバッサリ切って、色まで染めて、ドピンクのつなぎを着ていた。 オレには人の顔はよく覚えられはしないのだけど、この子は姿が変っても見つけられそうだ。 だって―― 肩からなんか怨念みたいなの出てる(笑) この原石のような子が どこまで高みを目指すのか いまはどん底にいるこの子がどんな翼を手に入れるのか やがて素敵な蝶になるまでのその一生を そばでみてみたい ひとのこを見守るのも悪くないかもしれない。 そう、思えた。 |