『火の意思を継ぐ者』 短編で終わっとけ!
- N ARUTO -



下.黄色の悪魔による戦争の止め方





 血継限界のものが須弥山(しゅみせん)で消えるという事件を追い、怪我を負ったナルトとサイは、そのまま木ノ葉病院に入院していた。

「オレと父ちゃんがした決意は、世界から見たらちっぽけなものだったのか、それとも大きなものでコレがその成果だったのか・・・」

 点滴を持って窓から里の様子をうかがっていたサイの横に、気配もなく風の動き一つさせず隣で窓から外を見つめる青年に、サイは一瞬驚いたような表情を向ける。

「起きてたんだ?」

「まぁな」

 窓枠に頬杖をついたまま、なにをみるでもなく空見上げているのは、金色の髪に左前髪だけ赤いメッシュのうずまきナルト。
その頭には、ナルトと同じ箇所を、包帯をまかれた子狐の姿。
見ている分には、お騒がせの派手な忍者がそのまま大人になったような、それだけだ。
しかしそれは外見だけで、中身はサイでなくともいまいちよくわかってない者が多い。

ときにみせる大人びた、老熟した青い瞳。
ふだんの子供のような態度から一変したそれに・・・つかめなくなる。


 サイは暗部の『根』で訓練をつんだ身であるが、ことナルトに関しては、気配を探ることが難しい。
なので先程の突然横にいたようなことも、長年の付き合いから“ナルトだからそういうものだ”と認識しているので驚きはしても警戒は生まれない。

 うずまきナルトは外見どおり騒がしく、とにかく色彩的に目立つ忍である。
しかしその類稀なるチャクラコントロールは里でも一位、二位を争うほどの実力で、医療忍術と封印術に長けている。
あくまで事実なのかわからない話だが・・・噂によると表には出ないような術から現在広まっている術まで、名前を伏せてはいるものの数々の新術を開発。ときにはそれらの研究に携わっているらしい。
ただしこれはあくまで噂に過ぎない。
 事実としては、暗部のトップクラスの人間達にも気配を感じさせないほどで、普段は騒がしいのに目で捉えていないとすぐに空気に溶けるように存在感がない。
チャクラなどが見えているのではないかと思われるほど、ものの気配に敏感で、半径1km以内なら手に取るようにわかるというから桁外れの探査能力があることも有名だ。

 彼の才能は遺伝による天分のものか。努力によるものか・・・おしはかるのは難しい。

 ただ抜けているだけなのか、テンションが高いのは演技なのか?
頭のよさや力があるのを隠しているのかと思えば、実のところ隠し事言うのは四代目火影が自分の父親であるという こと以外は何も隠してないという。
だが、いまのように時たま見せる真剣な眼差しは、普段の騒がしいナルトとはかけ離れすぎてもいる。


 ゆえにナルトを知る者は、わけ分からないことこそうずまきナルトだと断言するようになった。

 サイはそんなうずまきナルトの、赤と黄色の独特な髪を視界に入れつつ、ヒルコの宣言を警戒して五代目に集められ、各所にとんでいく仲間の姿を視線だけで追う。

「外が騒がしいね」
「オレってばいまは、世の無情さを嘆いているところだってばよ。ヒルコだか汁粉だか、どころじゃねえってば」
「は?しるこ?」

「そう。この世界はたしかに甘い。しかも平和すぎるってコトだってばよ」

「意味が分からないな。
それに今は平和じゃないような?木ノ葉は、国と忍による大戦争がおきかけてるところで、里中は厳戒態勢がしかれてる」

 コテンと首をかしげたサイに、ナルトは「だぁー!!もう!」と二色からなる自分の髪をわしゃわしゃとかき、言葉を捜すようにうめいた。

「え〜っとなんだっけ?」
「さぁ?」
「あ〜・・・そうそう、始まりはあれだよな。オレがうっかりマダラを殺しちゃったこと」
「まだら?模様か何かかい?」
「いんや。死にぞこないの怨念。
しかもオレってばうずまきの血が濃いから、封印術がもっぱら得意だし? NARUOらしくないよな〜」
「ナルトらしくないって、ナルト君はナルト君では?」
「はは。そっちの“ナルト”じゃないってばよ。
ん〜どこからかわったんだろ。オレが生まれた時点で、原作とは違ってたんだよなぁ〜。未来を変えようと足掻いていたオレたちはただの馬鹿か?
そういえばマダラの次に何やったっけ?そうだ。三歳のとき、偶然ヒナタの誘拐事件に巻き込まれて、ヒザシのおっちゃんが生き延びた。
オレのうっかりのおかげで、四代目が巨大な敵と戦って死ぬこともなく、父ちゃんと母ちゃん&三代目も元気だしよぉ。
うちは滅亡も、おーちゃんが里抜けしたわけでも木ノ葉崩しをしたわけでもない。
ブラコンから更生させるべく暗部に放り込まれ活躍中のサスケが、一族を殺された恨みと愛憎劇により里抜けして復讐者になったわけでもない。
あの義賊集団【暁】が、まさか人柱力を集めようなんてするはずもなく、そんな奴らが里にせめてくるはずがあるわけもない。
あ、そうそう、アスマセンセー生きてるし〜。もうじき紅先生との間に子供生まれるしな〜・・・・・・ちょっと世界違いすぎない?」
「平和だね。
というか、大蛇丸さまが里抜けとか、あのサスケ君が復讐者とか。義賊と名高いあの暁を・・・・・・。
ボクはナルト君のどこから、そんな発想が生まれるのか気になるかな」

「・・・・・・人口密度激しく多いなこの里」

ナルトは呟くとハァ〜とため息をついて、再び窓に寄りかかってボォーっと空を見上げていた。





**********






〜 ナルト視点 〜



 オレ様何様、うずまきナルト成り代わり様だってばよ!
 今度の事件は、キメラの研究とかほざいた外見ガキによる犯行。
名はヒルコ。
たしか里の記録書に、随分と前にヒルコって名前の忍が里を抜けたと書いてあった気がする。
・・・しかもさ、綱手のばあちゃん達が言っていた三忍の親友ってのも“ヒルコ”だったような?

 まぁ、そのへんはどうでもいいや。
問題なのは、ヤツが空を映写機代わりに宣戦布告したときだ。
あの抜け忍。いうにことかいて「木ノ葉隠れの里の」と名乗りやがった。
そのせいで、砂と木ノ葉は戦争勃発寸前いや〜!!な状態。

ちなみに。
その映像が流れ
たとき、オレはサイと病院にいた。オレは寝ていた。



 今思えばアレが、ヒルコのアジトだったのだろう。

 オレたち七班は、消える血継限界の痕跡を追って須弥山(しゅみせん)にまでいった。
そこで敵のキメラによる攻撃を受けて、サイは空から落下。
オレはそのサイを救おうとして、キメラに肩を貫かれた。
傷自体は医療忍者でもあるから自分で癒した。
だけどちょうどそこへ“避雷針の術”でもってオレのもとにとんできた父ちゃんこと波風ミナトが登場。
その後、過保護な親父とばとったので、応急処置だけだった傷はひらくは、更に怪我を負うわして入院することとなった。
 実はオレが怪我をすると、魂規模で一心同体である九尾のキューちゃんも同じ場所に怪我をおう。
痛みの元はオレがおった怪我なので、痛いのはオレ。

「うー。二倍痛いってばよ!!」

でも。さっさと治る〜。
それがオレ。


 っで。もって、戦争?なにそれ大変だね〜とか思って「頑張れ父ちゃん」と、物凄くのんびり病院でダラダラ過ごしてた。
その間にも両親やサクラちゃんがきたりした。
そのたびに過激な親父は、医療忍者達と暗部たちに病室の出入りを禁止されおとなしくなっていた。
あぁ、これぞ平和だな。なんて思ってたけど、世の中そうはいかないようだ。



 ある日、何か挙動が可笑しい人が、見舞いに来た。
あれはシカマルが、焼肉に誘ってくれたので、病院をサイと抜け出した日のこと。
サクラちゃんに病室に推し戻された後、乙女の心が分かる本とかをサイに見舞いとして持ってきたカカシが、オレに歪んだ鈴を渡して直すように言ってきた。

「挙動不審。まさに今すぐ自ら犠牲になって消えようとする人に見えます。死亡報告書の届けは、生かす側の医療忍者として拒否するってばよ」

 もらった鈴をみて、カカシ先生の挙動が静かすぎて、思わず観察したままを告げたら、驚いたような顔をして苦笑していた。
なるほど。
やっぱり犠牲になりにいくことを決意した自殺志願者の顔だったか。

「そういえば、センセーって車輪眼もってたってばね」

 ヒルコは、5つの血継限界を欲していた。
あと一つだと言ったし、順番からしてほかに威力がでかそうな血継限界保持者は、この里のものしかない。
たぶん狙われるのは木ノ葉のうちは一族だろうとういうのは、考えればすぐにわかる。
それとさっきの意味ありげな表情からして、結びつくのは、先生のうちはオビトの目。

「なんでわかっちゃうかな?さすがは先生の子だな」

譲れないんだと言いながら、先生は見つめるオレの頭をくしゃりとなでた。

「言っておくけど、行っても無駄だってばよ」
「とめるなよ。これだけがあいつを倒す方法なんだから」
「なにする気かわからないけど、それは無駄死にだってばよ。だって・・・先生には」
「ナルト。それ以上言うな。わかってる」
「センセーはわかってないってばよ!」
「無理なんだよナルト。
オレにはすでにあいつの術式が刻まれてる。知らないうちに幼い頃つけられてたみたいなんだ」
「・・・・・・」


「カカシ先生・・・・・術式なら、君にはすでに複数の術がかけられている」


「複数?あぁ。そういえば先生の“避雷針の術”どこにかけられてるんだろうな」
「それとはまた違うけど・・・・・・まぁ、いいや。
オレってば忠告したからねカカシくん。『君にはすでに複数の術がかけられている』って」
「ナルト?」
「それに“避雷針の術”もなめないほうがいいってばよ。
そのせいでオレってば今入院してるんだし?あー黄色の疾風怖いなぁ〜」
「は、はは・・・先生の怒った顔が、そ、想像できそうで怖いけど、まぁ、その鈴頼むよナルト」
「オレたちに追われないよう気をつけてってばよ」

 オレはチームワークを見定めるときのあの二つの鈴を手のひらで転がしながら、オレの話なんかまったく聞いてなさそうな先生を病室から見送った。
せっかくオレが“カカシ君が忘れていること”を、思い出させてあげようと思ったのにな。
それってメチャクチャいいことなのに。
言おうとしたのに、それを全部さえぎるし。

しかも、もう完全に諦めてるところが壊滅的にだめだ。


『あやつ、車輪眼もろとも死ぬ気じゃぞ』
「の、ようだね。でも本当に恐ろしいのはヒルコじゃなくて“避雷針の術”なんだってばよ」

 だって、こうしてオレが寝込んでるしね。
父ちゃんはどこにでも飛ぶ。
ましてや。その父ちゃんの弟子たるカカシ先生も、オレ同様に身体のどこかに避雷針の術がつけられてるのは分かりきっていること。

それに・・・オレは、警告はした。


カカシくんには、複数の術がかけられていると――。


それでも自殺を望むようなら、もうバカだと思う。
それともオレがかけた術はショックすぎて忘れちゃったのかな?
なら思い出させたのに。
そうしたらヒルコにいいようにされたまんまになんかなってはずだけどね。


 どちらにせよオレはさっさと身体を回復させるのが一番重要だ。
うん。今日は寝よう。
眠い。





 それから数日後――。
 九尾の回復力と自分で医療忍術かけて、予定より早めに退院すると、さっそく一楽へ向かう。
頭にキューちゃんをのせて、病院着じゃなくいつものオレンジ忍服を着て、首には渦の国の額宛。ひたいには木ノ葉の額宛。
ああ、やっぱりこっちの方がしっくりくるな。
 オレはいつもの格好に、ほっと息をつき、ポケットに手を突っ込んでブラブラ歩く。
オレの歩調とキューちゃんのしっぽのゆれ具合がリズムのようでつい鼻歌を歌いたくなる。

「おっちゃん味噌!」

 病院食でない濃い味・・・久しぶりのラーメンはやっぱりうまかった。
肉が本当は好きじゃないオレは、入っていたチャーシューをキューちゃんにあげて、一楽の美味しいラーメンをしっかり堪能した。

 店をでたところで、カックンカックンと不自然に歩くカカシ先生を発見。
いかにも操られてますって感じですね。
どうやらヒルコの罠が発動した模様。
すぐに人気味にまぎれて見失ってしまったので、前世クオリティーを発動。
探査網を広げると、すぐにカカシ先生のチャクラをみつける。

「うぇーヒルコと同じ気配がするわ、いまのカカシ先生。きもっ」

 とりあえず先回りして門のところで、再度前世クオリティーを使って、気を総べて断つ“絶”を行って気配を完全にたつ。
カカシ先生はやっぱりあやつられているようでマスクに隠れていない眼が尋常じゃなかった。
そのまま止める門の忍二名(名前は忘れた)を瞬殺し、ユラユラとさっていった。


「ん〜。めんどっ」
「・・・・・・」

 面倒なのでカカシ先生は追わない。

 かわりにすぐに医療忍者のサガゆえ、倒れた二名の息を確認し、これじゃぁ警備にならないとため息をつく。
そこでしかたないかと、ずっと感じていたのう一つの気配にいろいろ頼むことにする。

「おいこら。見てないで手伝えってばよシカマル」
「っち。なんだよバレてたのかよメンドクセー」

 門の陰になる場所からシカマルが、居心地が悪そうに頭をかきながら現れた。
君ね。オレの探査能力なめんなよ。

「や。メンドクセーのはオレの方だってばよ。
ほらほら。緊急で門の警備に二名まわすように頼め」
「ってか命令系?命令するのは普通お前より上のおれの立場じゃね?」
「細かいこと気にしてるから脳のしわが増えて回転が速くなって困るんだよシカマル。
それにオレってば、自由を謳歌する人だからね〜いつもどこでも自由なんだってばよ」
「いみわかんねー」

「簡単に言うなら、今のカカシ先生なんかしらんといいたいかな」
「ナルトらしーっちゃ、らしいのか?でも普段のお前なら絶対見捨てられないだろああいうの」
「・・・なんでわかる」
「何年ダチやってると思ってんだよ」
「そっか。まぁ、今日は普段のオレじゃなかったってことで。今のところカカシ先生は見捨てます」
「“今のところ”ねぇ」
なんかシカマルがひとをおちょくるように意味深なニヤリとした笑みで、オレの言葉につっこみをいれる。
勝手に人の心読むなよと逆につっこみ返し、睨んでおく。

だって・・・

あれほど忠告したのにさ。
オレは何度も機会を与えたんだよ。
でも最初から諦めてるヤツは、自分から人の手を借りて助けてもらって足掻ききるなんて思いつきもしないのだろう。

伸ばされたら、オレはその手を間違いなく取ったのにさ。

なのにひとりで行っちゃうし、シカマルをオレのストッパーとしてよこすし。
だめだめじゃん。

ねぇ、カカシくん。


「おれに関しては聞かねーの?」
「なんでシカマルがいるのとか聞くのもめんどい。 どうせカカシ先生にオレをとめるようにいわれたんだろ? いやいや、本当にシカマルこなくても追ったり止めたりなんかしねーから。 それにほら、キューちゃんだって満腹で眠そうだってばよ。オレも眠いしー」
「・・・・・・おまえ、本当に何者?」
「なにってオレが特殊なんじゃなくて、病院できちんと問い詰めましたから〜。
なのに去ってくんだからもう追わないってだけだってばよ。
それにすべて暴露ってきましたよカカシティーチャー。
一人で挑むからって。
しかも行っても無駄だってオレが言ってんのに、オレの話ききゃぁしない。なので里抜けっぽいのも無視したんだってばよ。
あんなん、あとで避雷針でもくらって、父ちゃんに怒鳴られてればいい」

オレの言葉に、オレと父ちゃんの関係を知る数少ないシカマルは、あの日々の禁術ありの攻防でも 思い出したのか、うわーと脱力ぎみに顔を青くして声をあげた。

「こないだのオレのように父ちゃんに火影の実力見せ付けられて入院でもすればいいってばよ」
「こわっ!・・・今、お前がめちゃくちゃこわいとおもった」

 ぶるりと肩を震わすシカマルにオレは、あくびを一つ。
キューちゃんは満腹で眠くなったようで、すでにオレの頭の上で丸まって小さな寝息を建てている。
うらやましいぜコンチクショー。
オレも寝たいな〜。

 それにしても・・・これがもし原作のナルトだったら、真剣にカカシ先生を追うんだろうな。
しかもあのカカシ先生のことだから、“ナルト”には何も言わずに去っていきそう。

オレは自分から気付いちゃったけどね。
だから行くのか?って、病院で話をしたわけだし。

「っで?」

 オレが門から遠ざかるカカシ先生のチャクラを視線で追っていると、ふいにシカマルに肩をガシリとつかまれた。
チラリと見ると、シカマルの眼がギラギラとしている。

「『で』ってなんだってばよ」

本当になんだよ?
なんでオレ見て、面白そうなものでも見たように眼を輝かしてるわけ?

「ナルト。お前カカシにどんな術かけたんだよ」
「・・・・・・」
「どうせお前のことだから、あいつを殺させないためとか、色々と事前に仕組んでるにきまってる。
どうせ今見逃したのだってすでにそういったおっそろしー術がカカシにかけられてるからなんだろ?」

 まさかこうまでオレが拗ねている原因の確信をついてくるとは。

 ええ、そうですとも。
そういった術をカカシ君にかけてるから、ひとに助けを求めもせず、人に頼ろうともせず、人の話を聞かなかったカカシ先生に、オレはいじけ、後を追わなかったのだから。
だからカカシ先生に声をかけることもなく里の外に見送ったわけだし・・・。

「・・・・・・今の会話でそこまでたどり着くシカマルの頭の回転の速さのほうがこわいと思うのはオレだけだってば?」
「いいから吐け」

「はぁ〜。日向と同じ、いやもっと強力な血継限界封じを13年前にほどこしてある」

「まじ?」
「おう。むしろ血継限界封じの術の名誉ある第一番目の実験台こそカカシ先生だってばよ!
そもそもオレを誰だと思ってるんだってばよシカマル」
「なんて術を開発してやがる・・・しかも当時三歳って」
「それを思い出させてあげようとしたのに、聞く耳がないんだってばカカシ先生。
実際、オレ、術をいじくるのが趣味なんだよ。
まぁ、オレの趣味についてはおいといて。
ぶっちゃけ病室で一言でもなんとかならない?って聞かれればすぐに、解呪できたんだよカカシ先生にかけられたヒルコ臭い術」
「っげ・・・お前ならあの状態のカカシでもすぐに呪縛から解放しそうだとは思ってカマかけたけど」
「術かけたの見破った原因って・・・かまだったのか」
「相変わらず規格外だなぁ〜お前」
「ま、シカマルの頭もな・・・」

 それからオレとシカマルはのんびりと歩きながら、オレが開発した術や道具についてあつく語り合った。

「げ。まじかよ」
「さっきからそれが多いシカマルってばよ。ほかに言葉はないのかい参謀殿?」
「いや、まさかあの日向の術とかお前が作ったとは思わねぇじゃん普通。
しかも医療忍術の改善や、新術や道具の考案・作成で、名前は伏せられてるけどかなり有名なやつがいるって噂の、そのもとが、まさかナルトだとは・・・」
「しつれーだってばよ」
「だってお前、アカデミーではおれとドベ競い合ってじゃねーか」

 いたいところつくなぁ。
あれは日ごろの、恐怖の追いかけっこによる疲労で寝ていたり、頭が働かなかっただけで・・・。

「す・・・すべては、金色の過保護から逃げるため。体力をつけるためだってばよ」

言った瞬間、なんか納得された。
ちょっとぉ。涙出るんですが。
どんだけうちのおとん、過保護よ!?





 それからわかったこと。

 なんと真実がいろいろ発覚。
 オレが寝ている間に、カカシ先生ってば変態チックなヒルコの夢を見たらしく、つまり次に狙われるのは、カカシ先生であることは、もう何年も前に決定していたもよう。
さらに先生は、師たるオレの父ちゃんよりも先に五代目火影綱手にそのことを報告し、話を聞いたばあちゃんが「うわ〜」といいたくなるような術をカカシ先生にかけたらしい。
カカシ先生にかけた術のことも、オレが作った血継限界封じは禁術に指定されて隠し部屋に封印されちゃってたし、ばあちゃんに話さなかったのがあだになったようだ。
 ぶっちゃけ、ばあちゃんに呼び出されたオレと父ちゃんは、その話を聞いた瞬間「え〜。綱手様なんてことをしてくれたんです」「超二度手間だってばよ」と、二人して物凄い渋い顔をしていた。

なぜって。

綱手ばあちゃんがカカシ&ヒルコの死を呼ぶような術をけけたのがいけない。
そんなことしなくてもカカシ先生には、幼きオレが実験ついでに、車輪眼を奪われないよう封印術を施してあったのだ。
 封印術の内容は、害あるものが車輪眼を手にしようとしたとき、車輪眼の能力は完全に封印されてしまうというもの。
通称【血継限界持ち出し禁止】の術。
 つまり、時限式だろうがなんだろうが、敵地にカカシ先生がいるのなら、 オレの術が先に発動しているだろうから、万華鏡車輪眼があちらで作動しないわけですね。
 もちろん作成者はオレなので、術を施した形跡なんか残さなかったし 、害がなくなりしばらくすればすっかり能力も戻るというオマケつき。
さらに何度も術は機能する仕組みなので、カカシ先生は誘拐されてもなにやっても車輪眼は取られないんですよ。

それを詳しく説明した瞬間、ばあちゃんが絶句していた。

「だからカカシくんには無理だって言ったのに・・・」

というか、貴女がほどこした時限式の術は発動しません。
それぐらい強いんですよ血にかけた封印術というのはね。
特にオレのお手製は・・・。

ドンマイデす。

「ん。ところで綱手様、カカシ君はなんて言ってでたのです?」
「あ、ああ・・・。
幼い頃にかけられていた術だから、どうしようもないと・・・自分が犠牲になれば戦争も起きないと」


ブチッ


 オレのすぐ横からブリザードが突如発生した。
ちなみにチラリと横を見れば、そこにいたのはいつも以上にステキな笑顔の四代目火影様。
その恐ろしいまでの笑顔を見て、卓上に肘を着いていたばあちゃんが「ひぃ!」っと小さく悲鳴を上げた。
オレ自身はヒュ〜っと怒りが冷め、かわりになむさんと未来のカカシくんを思って念仏を唱えた。

「綱手様安心下さい」
「な、なにがだいミナト?」
「戦争は起こりません!月食だか日食だかキメラもなにもなかったんですよ」
「は?」
「だからちょっとカカシ君を迎えに行ってきますね」
「はぁ!?」
「ほら、いくよナル君」
「いってらっしゃ〜…って。オレもなのっ!?」

話についていけないばあちゃんを無視し、ステキ笑顔な父ちゃんは、呆然としているオレの首元にあった二つ目の額宛を掴むと、眼にも留まらぬ速さで印を組んで――“とんだ”。

「ぐぅぇ!ぐ、ぐるじぃ…!!!!」
「さぁつくよ。こうなったらすべての怒りはぜひカカシ君へ!
だってナル君。ボクより言いたいこといっぱいあるでしょ?」
「ゲホッ!ゲホゲホ…って、なぜわかる!?」
「そりゃぁナルくんの父親だしね」

 どっかで似たようなやり取りをシカマルとやったような?
 それにしてもこんなときだけかっこよく見えるってどうなんだろう。
せめて普段も父親ならソレらしい態度をって・・・あ、いや。それよりさすが火影。

なんかそのあといろいろ容赦なかった。

強いね〜火影って。
伊達じゃないわ。


 とりあえず道をいまだによったよった歩いていたカカシ先生の目の前に到着したオレたちは、 すぐにカカシ先生を操っていた術をオレが強引に解き、平手一発で目を覚まさせた。
そのままいまだ自己犠牲を望むバカに、さすがのオレもブチ切れた。
思わず父ちゃんの言葉どおり、言いたかったことを息もする間もなくならべたてすべて暴露していた。
オレとか頼れよ!とか、自意識過剰は良くないがオレを過信していい!とか、一人でためこむんじゃねーとか。思わずむくれてその場で解呪せず無視したこととか、子供の頃にオレと会ったのさえ忘れてることに腹が立ったとか。すべて勢いのまま吐き出していた。
さびしかったのもあるかもしれない。
なにより、始めから諦めていることが許せなかった。

オレと父ちゃんは、むかし、未来を変え、それにともなう代償を背負う決意をした。

それはすごく重くて、誰かを生かした代わりに、別の誰かが死ぬんじゃないかとか。
死ぬべき人を生かしても、時間や原因が違うだけですぐにその人を死神が攫っていくんじゃないかと・・・ それでも、いつもその恐怖から抗い続けてきた。

それに、オレは前世の記憶がある。
なによりここは忍の世界。カカシくんだって、父ちゃんだって、みな戦争を体験してるし、死の重みを理解している。
“死”の辛さを知っているのに・・・。
なのにどうにかなるはずのことに、命を無駄にしようとしている。
この場に来てもまだカカシくんは、まだ頼ろうとともせず諦めたままなのが許せなくて――


思わず拳で殴り飛ばしていた。

「やべっ!思わず螺旋丸ぶつけっちまったってばよ!?」
『ナルト・・・お主、言ってることとやってることが矛盾しておるぞ。あやつを殺す気か?』
「大丈夫大丈夫。生きてるよカカシ君」

 頭にいたキューちゃんに前脚でペシリと額を叩かれ、とっさに握っていた拳に慌てる。
オレは恩師になんてことを!?
慌てて医療忍術を施そうとふっとんでいったカカシ先生の場所に駆けつけると、すでにおおざっぱな治療を終えてニコニコしていた父ちゃんがオレの頭をぽんぽんとキューちゃんごとなぜた。

「父ちゃん・・・センセーは?」
「大丈夫大丈夫。傷は浅いヨ。これで少しはカカシ君も目を覚ますよ」
『いや・・・その前に永久に眼を覚まさないところに逝きかけておったぞ』
「ん。こういうのは全部敵のせいにすればいいんじゃない?」
「わぉ。父ちゃんが黒い・・・」

「でも簡単なことだよナルくん。カカシ君を餌に敵地に乗り込んでそのままヒルコにすべて鬱憤をぶつければボクもナルくんもすっきりさ!」

「『黒っ!』」

 あまりの腹黒さに、いまだに父ちゃんもどこかで切れていた部分があったのだと気付いた。
ほら、命とか仲間の大切さをカカシ君にといたのは、この金色ですからね。
やっぱり、諦めたカカシ君・・・じゃなくて、カカシ先生が今日は悪かったということで――



「じゃぁ、レッツゴーカカシセンセー!オレたち、あとから避雷針で乗り込むってば!生贄役頑張って〜」
「俺って生贄なのね・・・・・・ヒルコ大丈夫かな」
「こぉらカカシ君。敵を心配するより、まず自分を心配しなくちゃ(螺旋丸喰らったんだから無理せずにね〜)」
「(くらわすようナルトを誘導したの先生でしょうに・・・)もういや・・・」

 満面の笑顔で先生をみおくり、オレがお得意の探査能力でカカシ先生が敵地に入ったのを確認すると、父ちゃんに合図を送る。

シュンと音がして視界がぶれたと思ったときには、そこはもう敵地。

うん。もう話す必要もないよね。
オレたち好き勝手しましたよ。
あっはっは。

気がつけば、キンカン日食もすっかり終わってるし・・・・・・。
もうヒルコさんの策略完全パーですね。



 それにしても動切手だけじゃなくて、ヒルコは綱手ばあちゃんと仲良しだったのかな?
最後に綱手ばあちゃんを呼ぶ声が聞こえた。

せめてもと思い、最後の言葉をばあちゃんに届けることにした。








な の で。





「ばあちゃん。おみやげだってばよ!」
「ナルト?って・・・」

 他の忍びが来る前に、ヒルコから魂だけぶんどって、里に帰る途中で見つけたウサギに魂をつっこんでみました。
これはなに?って、もちろん九尾をぬいぐるみ形態にするときの封印術の応用です。
いや〜うずまきの血ってこういうとき便利だよね。
チャクラが鎖状なもので、魂とか肉体に作用しない場所に縄をかけやすい。

「ちょっと失敗しちゃったってば。でもかわいげが微妙にあるってばよ。
最後のときばあちゃんを呼んでたんだってばよ。かわいがってあげてね」
「な!?なんなんだそれは!?まさかキメラか?」
「ちがうって。綱手ばあちゃんに好意を持ってるウサギだよ。ただのう・さ・ぎだってばよ」

ただヒルコの顔したね。


「そう。ただの人面ウサギだってば」


てへ☆





 あ〜。それにしても・・・また人口増えるなぁこの里。
世界は今日も平和だ!!


その後、火影の執務室からなにやら悲鳴が聞こえたのは――気のせいに違いない。










※ぶっちゃけ、作者がこの映画のネタが続くとは思ってなかった。
でもさすがにあの短編で終わらせるには、はしょりすぎた気がして・・・(汗)
なので、なんとなく中間部分を入れたらこんなことに。

ちなみにナルトは心の中では「カカシくん」と呼んでいたりする。
このふたりの“封印術事件”は、またそのうち書きます。
今回はこの辺で〜








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