『火の意思を継ぐ者』 短編で終わっとけ!
- N ARUTO -



上.この世界の火の意思ってなんだろう?





「火影様。最近、他里で血継限界が消えるという事件が多発しているのですが」
「血継限界が?」
「ええ。そこでカカシ上忍率いる七班に今調査をさせています。
うちの里には血継限界が多いので、充分気をつけたほうがいいかと。とくに瞳術系の強い力を持つ一族は・・・」

 何かを考えるように話を聞いていたミナトは、ガタンとイスを蹴散らす勢いで突然立ち上がると――

「クシナとナル君があぶないっ!!」

「は?」

報告に来ていた忍は突然のことに目を点にしていたが、ミナトは「ボクのナル君が〜!!」と雄叫びを上げて、止める間もなく避雷針の術で消えてしまった。
残されたのは、大量の書類と、呆然とした忍だけ。





「ぬぁ〜るぅーくーん!!!」

 そこではシトシトと雨が降っていた。
大量に涙をながしながら、突然出現し、地の底から出るような声でナルトに飛びついたのは、背に『四代目火影』の文字が赤でデカデカとかかれ裾に炎を模した刺繍の施された白い羽織を背負っていた。
あらわれたのは、先程まで木ノ葉の火影の執務室にいたはずの波風ミナトだった。
 ミナトが現れた瞬間、眉を潜めて拳を握って、彼を殴り飛ばそうとしたナルトだったが、その前に自分の腕中にてぐったりとしているサイの存在をみるなり「ナル君に膝まくらされてずるい!!」とサイを吹っ飛ばした自分の父親に目を見開く。
そのままミナトに放り投げられたサイは、すぐに治療しようと背後で待ち構えていたサクラが軽々とキャッチして、あきれたような視線だけでこっちはまかせてと合図をナルトへおくる。
ナルトに抱きついて離れないミナトに対し、カカシだけが嫌なものでもみたように視線を反らしている。
カカシが慕っていた師が、物凄い過保護で親馬鹿だと知ったのは、彼らが下人任務をしているさなか。だというのに、いまだにカカシはこんなミナトの姿にダメージをうけるようだった。

「ナルくぅ〜ん!ナルくん!!」
「なんで、また父ちゃんがいるだってばよ!!仕事はどうした!!」
「ん。だって五代目もいるもん!」
「いまはその五代目の代役をやってたんじゃなかったのかよ!!ってか、火影がこんなところまでとんでくるなってば!!」

 ナルトは無理やりミナトを引き離すと、先程敵によって負った肩の怪我を医療忍術で治す。
その際に、ふところにもぐりこんでいた九尾が、服の襟元から顔を出し、ぷはと息を吐き出した。

『ミナトのバカ力のせいで死ぬかと思ったわい』
「大丈夫ってばキューちゃん?」
『なんとかのう』

 七班の面子にとってはすでになれきった、おなじみの光景である。
ナルトの前に突然現れてさわぐ四代目火影波風ミナトの姿も、またナルトに抱きついたミナトのせいで間に挟まれた九尾が悲鳴を上げるのも・・・。

「それで?今度はなんだってばよ」

「ん。そうだったね。ナルくんのソレに関わることなんだけど・・・」
「ソレ?」

 そこで火影らしい真剣な表情をみせたミナトが示したものに、ナルトは首をかしげる。
ナルトの首元には、木ノ葉のそれとはまた別に、“渦の国”のマークがはいった額宛があった。

「渦の国?」
「正確には、その“渦の国の血継限界”をもつ君自身」
「あ、オレのチャクラのこと?」
「大正解」

 うずまきナルトは、ぬいぐるみのような子キツネといつも一緒にいる。
それは腹の中に封じられた尾獣、九尾を具現化したもの。
里では二人だけといわれている黄色のような金髪をしているが、前髪だけ赤く、メッシュのよう。
今は七班全員がおそろいのマントを羽織っていて分からないが、つねにオレンジの忍服をきている忍。
とにかく目立つというのが、うずまきナルトだった。
さらには渦の国から来たうずまきクシナの息子であるナルトは、ミナトよりもクシナの血が濃いため、 そのチャクラはクシナ同様に鎖のようであり、その血は複雑な封印術を軽く行ってしまう。
里の多くの者が知っているのは、この世界のナルトは九尾の人柱力としてではなく、 渦の国出身であるクシナの息子であり、その渦の国の術を使うということのみ。
それゆえその首には、今は亡き渦の国の額宛がゆれている。
これはミナトと先代火影の意向であり、ナルトも好んでその額宛を持っていた。

 今回、ミナトが示したのは、その“渦の国”の額宛。

「・・・・・・ってことはなにか?オレが今回の任務でそのまま帰ってこないとでも思い込み、心配するあまり仕事をほっぽってきたと?」
「ん・・・えっと、ん〜。まぁ、そういうことかな」

「とっとと帰れこのやろう!!」


ドガッ!!

と、なんとも派手な打撃音が聞こえ、次の瞬間には『四代目火影』の文字が宙を舞っていた。

「ふぅー!もう、いい加減にしろってばね!」

 ナルトの口癖は「だってばよ」だが、切れるとまんま母親のクシナの「だってばね」という口調が出る。

 二人の金色の親子の会話をあきれたように見つめていたサクラとカカシの前には、深く息を吐き出したナルトが、見事に左腕を掲げて肩も鼻息も荒くいた。
その先にはアッパーを食らったミナトが、ドサリという大きな音を立ててサクラの側に落下した。

「な、ナルくん・・・すっかりクシナにそっくりになっちゃって・・・・・・ガクリ」

「サクラちゃん。父ちゃんを頼むってば。オレはサイを連れて戻る」
「はいはい。それにしても火影様もよくやるわよね」
「五代目はなんで四代目を野放しにしてるんだか。 先生も本性を隠すなら最後までキッチリやってくれれば良かったのに・・・・・・ハァ〜」


 そうして気絶したミナトを、彼が着ていた悪目立ちしすぎる外套を脱がし、それを裏にして金色の髪と顔が見えないように包み込むと、縄でしばりあげ、七班は里に戻ったのだった。
 カカシが、任務の報告を兼ねた四代目失踪の原因を説明しに行くときは、おかげで五代目火影の綱手が執務室にいて、何事もなく話は済んだらしい。



 その頃のミナトは――

「またナルトたちに迷惑かけたんだってばね!いい加減にしろってばね!!」

 赤く長い髪が噴出すチャクラによりあおられ、メデューサかなにかのようなそれはそれは恐ろしい顔で出迎えたクシナによって、自宅で説教を喰らっていた。
脇ではナルトがいつものこととその夫婦を素通りし、こちらもこれまたいつものこととサクラとサイが「ゆっくりしっててね」と笑顔で迎えたクシナに笑顔で答えて素通りしていく。
玄関付近で二人の声と、なにかの忍術が飛ぶ音、だれかの悲鳴がBGMに聞こえたが、七班のこどもたちはのんびりとテーブルで茶を飲みながら菓子を突っついていた。

「今日も平和だってばよ〜」
「そうね」
「あ。ナルト君。今日のケーキまずいです。前回の方が甘くてまったりとしていてよかったかと」
「そうねぇ。今日のはショートケーキにしてはしょっぱいわ」
「え、まじで?まぁ、母ちゃんが作ったケーキでないだけましだと思ってよ」
「「なるほど」」

 うずまきクシナの料理は絶品だ。
しかし彼女が洋菓子に手を出すと、奇声をあげる謎の生命体となる。
それはいまや木ノ葉隠れの里きっての七不思議。
こども達は、酸の液体を出して奇声をあげて走るチョコレートのことを思い出し、ナルトの作ったケーキを「美味しいわね」と食べほした。





 その後、血継限界行方不明の話は、木ノ葉隠れの里からは、三つの一族が候補に上がった。
 二つは、強力な瞳術を血継限界に持つ『うちは』か『日向』が、候補となり、その二つの一族の集落周辺には強力な結界が張られた。
最後の候補は、封印術にたけた一族の末裔たる『うずまき』の赤い二人の親子。
親子に関しては、二人そろって結界術に長けていたことと、四代目火影自ら警備に当たったので結界が張られることはなかった。
その三家の誰かから行方不明者が出るのではないかと危惧されたが、なぜか はたけカカシ が里から消えた。
 カカシ自ら報告を受けた五代目火影綱手いわく、その理由はカカシが車輪眼を持つことと、幼い頃にすでに術をかけられていたということだった。
瞬間、綱手より報告を受けた二人の金色がブチキレた。
カカシが綱手以外誰にも話さず里を出たのは、一人で犠牲になればいいウンヌン。 これは幼い頃に施された術なのでとくことはできない。死ぬ瞬間に、敵を巻き添えに自殺する。それ以外方法がない・・・・・・などなど。
それを聞かされた(自称)仲間を大切にする(らしい)ミナトとナルトが怒り狂った。
そのままブチギレた木ノ葉の金色二人が、物凄くステキな笑顔でもって、敵陣に『避雷針の術』で乗り込み、 九尾がとある場所で大暴れしたり、 起爆札付きの手裏剣多重影分身が綺麗に花火のように炸裂したり、 “渦の国”特有の封印術が暴走したり、 ナルトが生まれるとき使っていた“魂を消滅させる忍術”が派手に術式をひろげていた・・・・・・な〜んてことがあったり、なかったり、したらしい。

真実を知るのは――笑顔で仲良しな金色親子と、現実逃避をするように遠くを見ている銀髪の片目男のみ。










※昨日、1/2に録画しといたNARUTO映画『火の意思を継ぐ者』を観たら、 さっそくおもいついたので書いてしまった!!
映画を観ながら、もしうちのナルトさんならどうするかな〜とか思ってたらこんな話に・・・orz
なんたってうちのナルトは、 “うずまき”の血が濃い、成り代わったナルトで、髪は赤のメッシュ。
しかもミナトさんは超過保護だし。
九尾事件もなく、四代目夫婦が生きていて、三代目もまだ生きていて、さらにはうちは滅亡とかなくてみんな仲良しだったら、 原作どおりには絶対ことが進まない(汗)

最後は金色親子が仲直りをして終わりましたとさ。








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