世界に笑顔を
- N ARUTO -



11.波の国へ Lv2
(VolではなくLv。誰かの脅威レベルを示しています)





 -- side オレ --





タズナさんと出会って、えんやこら。
暗部が鬼兄弟を倒しちゃって、とある金髪が乱入して……。
弱ったキューちゃんを抱きしめつつ、視線が空を向いていたオレ。

ワクワクしていた原作の一番初めの大イベント≪波の国≫編。
始まりがとんでもない感じでねじ曲がったけど・・・なんとなく、この後どうなるのか想像もつかない展開になってきている。
死ぬはずだった人が生きているだけで、こうも物語りは変わるのかと、なんともいえない心境である。

「おーい。ナルト・・・大丈夫かぁ?」

さっきまでの親バカ事件を思い出しているうちに意識が遠くに行っていたらしい。
イチャパラを読みながら先頭を歩いていたカカシ先生が、いつのまにかオレの目の前で手を振って意識の有無を確認していた。
名前を呼ばれて、やっと空から視線を七班の仲間やタズナさんに向ける。
心配そうなサスケやサクラちゃん、カカシ先生から再度「大丈夫?」と声をかけられた。

「だ、だめだってばよ・・・」

なんとか笑ってみたものの、それはとても無理やりで、口端が引きつるようにヒクヒクと持ち上がっただけで、へへと乾いた笑い声が漏れた。
それにほとんど分かりづらいあのカカシ先生の表情までひきつった。

「なぁ、ナルト。お前さ、・・・里に帰るか?」
「それって、二度とオレに里を出るなって言ってるってば?」
「あ、いや。そうじゃなくてね。さっきのセンセ…いや、火影様をみちゃうとついね(任務を終えて戻ったとき里が残ってるか心配にもなるってものでしょ)」
「ダメだカカシ。任務はスリーマンセルだ!」
「そうよカカシ先生。それじゃぁ、ナルトがかわいそうじゃない」
「み、みんなぁ〜」

腕の中でキューちゃんが、キュイと小さく鳴いて頷いた。
タズナさんは、とにもかくにも任務続行してもらえるとわかりホッと息をついているが、なぜかチラチラ木ノ葉の方とオレを交互に見るのはやめてほしい。
今後ともタズナさんには、ぜひ四代目火影の先程の様子を秘密として墓まで持っていってほしいものだ。
そんな想いを込めて視線を向けたら、意を汲んで頷いてくれた。
口が音を発せずに、わかっておると告げらたのには、なんかホロリと涙がこぼれた。

「オレ、恵まれてるってばね〜」
「そうかもね。それにしてもナルトも大変だね〜(おれとしてはミナト先生のことがかなりビックリだったけど)」
「だよねだよね!カカシセンセーもそうおもうってば?
あー!もう!!任務ごとに毎回こられちゃたまんないってばよ。
ちなみにカカシ先生。いまだから言うけど……」
「え?なに?(なんか嫌な予感が)」
「実はオレたちの自己紹介のときから…あの金色に、先生の命ねらわれてたって、知ってた?」
「え・・・・」

はい。暴露です。

だって自分の身は自分で守ってほしいしね。
オレを生徒にもった時点で、うらやましいという波風ミナトによる呪いが発動する。それとともに君は父ちゃんによりターゲットロックオンされてます。
頑張って下さい。

なんかゴーン!って鐘の音が聞こえそうなほど、カカシ先生はうなだれてしまった。
あぁ、魂が抜けたか。

だってねぇ――

「父ちゃんの犠牲者がオレだけなんて許さない」

お前も苦労するんだな。





そんなこんなでオレたちの波の国への旅は、まだまだ続く。
むしろ始まったばかりであることをお忘れなき用に・・・。








**********








タラッタラン♪
 目の前にさかさまに木からぶる下がっている桃地再不斬がいる。

「・・・・・・」
「・・・」

思ったんだけど、頭に血は登らないのだろうか。
父ちゃんのせいで精神ダメージを喰らいすぎてあのあともずっとやる気がないオレは、きっと虚ろな表情をしていたはずだ。サクラちゃんにはさっき死んだ魚のような目と言われたし。
そんなオレの表情をみて、再不斬の顔が引きつっていた。
「なんだこいつ気持ちわりぃやつだな」とボソっと突っ込まれた。
なんだかんだもあったもんじゃない。
オレとしては再不斬?抜け忍?並の国?ガトー?なんかもうどうでもよくなっていた。
とりあえず再不斬をみつめてはみたものの、とくに感慨はわかず、はぁ〜とため息をついて、何も見なかったことにして彼から視線を逸らして、サクラちゃんやサスケたちの元へと戻る。

「もう、癒し生物はいなかったってばよ」
「癒し生物?」
「ナルトのことだから、サスケくんがもってるそのうさぎのことでしょ」
「今度はどうしたのナルト?」
「いや…。うん、強い…敵?が、いたようないなくなったような?」
「あいまいだなぁナルト。なにかあったなら先生に言ってね。タズナさんは狙われてるんだから。ないんか見つけたなら、敵かもしれないし、できるだけ自己完結しないでね」

無理だな。
自己完結しないということは、止めるということ。それすなわち、被害はオレたちにもくるということなのに。

「はぁー」

せめてさっきみたいに変わり身用とはいえ、ウサギでもいれば癒しだったろうに。
なのに何かの気配を感じて草をかき分けた先にいたのは、怪しく笑っていた逆さづりの男。
かわいくもないし、モフモフでもないし、癒されませんでした。
逆に胃がちょっといたくなった。

そういえば再不斬氏は笑っていた。
とはいえそれは最初だけで、すぐにオレの顔をみて怯えられたが。

「自己完結しちゃだめだってば?ならさ、先生。水系と風系の技、どっちと戦いたいってば?」
「は?」
「いや。うん。いま、あれをとめるとこっちに風系の術が飛んでくるんじゃないかと思って」


ああ、いやだいやだ。
オレの錯覚じゃなければ、もう一つぶるさがっているもの見ちゃった気がする。
再不斬がぶるさがっていた樹のさらに一本背後の樹に、満面の笑顔で、同じように逆さづりでたたずむ金色とか――。

再不斬は水。
ちなみにうちの親父は風の性質です。

アハハハと乾いた笑いに、なにかを察しったようにサクラちゃんとサスケが、いち早く遠くで吹いた風の気配に背を向け、「さぁ先に進みましょう!」とタズナを引っ張って押して歩み始めてしまう。
オレも同感。
わからないのは、カカシ先生だけ。

「ナルトぉー。どったのあのふたり?」
「ほら、先生も。しっかり護衛の任務は果たすってばよ!」
「え。うん」

カカシ先生には背後を見ないようにグイグイ押して、タズナさんと並べる。
キューちゃんがオレの頭の上でガクブルと震えていて、オレのいい耳にはなんちゃってで、再不斬氏の悲鳴っぽいものが一度聞こえた。
チラリと背後を見やれば、その背後の林の木々からザブン!と水の竜が顔を出したが、すぐに丸く渦巻く風が粉砕して――金色の閃光が光った。

「オレが帰るまでに木の葉の里が残ってるといいんだけど。あ、おーちゃんがなんとかしてくれるかな」

ふふふと笑ったオレに、タズナさんを含めた全員がひいた。
酷いな。
酷いのはオレではなく、あの金色だろうに。








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